交通事故の治療で6ヶ月通院した場合の慰謝料

交通事故

交通事故の治療で6ヶ月通院した場合の慰謝料

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

交通事故で怪我をすると、長期間の通院を余儀なくされてしまうことがあります。重症であれば、通院期間が6ヶ月に及ぶケースもあるでしょう。
通院期間が6ヶ月になると、通院慰謝料だけでも決して少なくない金額になるケースが多いです。しかし、相手方は賠償金額を抑えようとするのが通常であり、どのように対応するべきかを知っておかなければ、十分な慰謝料を受け取れないおそれがあります。
ここでは、通院期間が6ヶ月に及んだときの慰謝料額や、治療費の打ち切りを通告されたときの対応等について解説します。なお、1ヶ月の日数にかかわらず30日/月として計算します。

6ヶ月の通院期間ではどれくらいの慰謝料がもらえるのか

6ヶ月の通院期間では、慰謝料額は何日通院したかによって変わる場合があります。また、弁護士基準を用いる場合には、怪我の程度によっても金額が変わります。
例えば、入院せずに通院期間が6ヶ月、実通院日数が60日であった場合について検討します。なお、慰謝料額は最新の基準で計算します。
自賠責基準では、通院期間の日数(30日×6=180日)と実通院日数の2倍の日数(60日×2=120日)を比較して、少ない方の日数につき、1日あたり4300円として計算します。この場合には、自賠責基準の入通院慰謝料は「120×4300円=51万6000円」となります。
弁護士基準では、算定表を用いて慰謝料額を調べます。入院期間なし、通院期間6ヶ月であり、他覚所見のないむちうち等の怪我をした場合には89万円、他覚所見のある骨折等の怪我をした場合には116万円とされています。

自賠責基準弁護士基準
むちうちで他覚所見がない場合や軽傷の場合60×2×4300円=51万6000円89万円
それ以外の怪我(骨折等の重傷)60×2×4300円=51万6000円116万円

通院期間とは

通院期間とは、基本的に、通院治療を開始した日から、「治癒」または「症状固定」と診断された日までとされます。なお、通院前に入院していた場合には、入院開始日が起算日となります。

実通院日数とは

実通院日数とは、実際に医療機関に通院した日数のことです。なお、リハビリのための通院や、事故の当日の通院も実通院日数に加算されます。ただし、同じ日に2回通院したとしても、実通院日数は1日として扱われます。
実通院日数が少ないと、自賠責基準による慰謝料が減る等の影響が生じます。そのため、「なるべく毎日のように通院した方が良い」といった誤解を招くこともありますが、過剰診療はかえって不利になることも多いため、医師が必要だと判断した日数だけ通院するべきでしょう。

通院が少ないと慰謝料が減ることがある

自賠責保険から支払われる慰謝料は、【通院期間】と【実通院日数×2】を比較して、少ないほうに日額を支払います。また、弁護士基準でも、通院期間に対して実通院日数が極めて少ない場合には、【実通院日数×3.5(他覚所見のないむちうち等の怪我の場合、実通院日数×3)】を通院期間とされることがあります。
いずれにしても、実通院日数が影響することがおわかりいただけるでしょう。

実通院日数が少ない場合の慰謝料はいくらか

例えば、入院なし、通院期間6ヶ月のケースで、<1ヶ月につき1日しか通院しない場合>と<1週間につき1日しか通院しない場合>を弁護士基準で計算していくと、以下のようになります。

<1ヶ月につき1日しか通院しない場合>
実通院日数:6ヶ月で6日
通院期間:21日(6×3.5=21)
通院慰謝料:1ヶ月分の7/10(=21/30)

<1週間につき1日しか通院しない場合>
実通院日数:6ヶ月で約25.7日
通院期間:90日(25.7×3.5=90)、すなわち3ヶ月

なお、1週間につき3日通院している場合、通院期間は原則どおり6ヶ月とされます。
上記の各ケースについて、弁護士基準で受け取れる通院慰謝料を、以下の表にまとめたのでご覧ください。

弁護士基準の慰謝料(入院なし、通院期間6ヶ月)
月1通院週1通院週3通院
むちうちで他覚所見がない場合や軽傷の場合19万円×7/10=13万3000円53万円89万円
それ以外の怪我(骨折等の重傷)28万円×7/10=19万6000円73万円116万円

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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相手方から治療費打ち切りの話が出た場合の対応

相手方から治療費を打ち切ると伝えられても、治療を打ち切る義務はないので、医師が必要性を認めれば治療を継続することができます。
交通事故の治療期間については「DMK136」という言葉が存在しており、打撲は1ヶ月、むちうちは3ヶ月、骨折は6ヶ月が目安とされています。この期間が経過すると、相手方は治療費の打ち切りを打診してくることが多いです。
治療費を打ち切られた後の費用は立て替え払いをして、後で相手方に請求できます。この立て替え払いの際には、健康保険を利用することが可能です。

まだ通院が必要な場合

治療費の打ち切りを通告された時点で、まだ治療が必要な状況であれば、医師に診断書を発行してもらい、そのコピーを保険会社に提出する方法があります。診断書には、なるべく、医学的な根拠に基づいた今後の見通し等について記載してもらうのが望ましいでしょう。 もしも、医師の診断書があっても治療費を打ち切られてしまいそうな場合には、弁護士に相談する必要があると考えられます。

6ヶ月の通院後、「症状固定」と診断されたら

6ヶ月の通院後であっても、まだ痛み等が残っており、改善される見込みがない場合があります。
このような場合について、以下で解説します。

症状固定とは

症状固定とは、治療を継続しても症状の改善が見込めない状態のことです。この状態になったら、治療費の支払いは打ち切られてしまいます。
早すぎるタイミングで治療を打ち切ってしまうと、治るはずだった症状が残ってしまうリスクがあるだけでなく、後遺障害慰謝料の支払いにも影響が生じてしまうリスクもあるため注意が必要です。

後遺症が残ったら

後遺症が残ってしまい、それが後遺障害であると認められれば、等級認定される可能性があります。後遺障害等級認定されれば、等級に応じて金額が定められた後遺障害慰謝料が支払われます。
後遺障害等級認定を受けるためには、医師に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。しかし、医師は医療の専門家であるものの、後遺障害診断書の書き方にまで精通しているわけではありません。また、より高い等級に認定してもらうためには、被害者側で他の書類もすべて準備して、被害者請求という方法で認定の申請を行うべきです。
そのため、後遺障害等級認定を申請するためには、弁護士に相談するのが望ましいでしょう。なお、以下のページでは後遺障害等級認定について詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

後遺障害等級認定の申請方法

主婦が6ヶ月通院した場合の慰謝料

主婦であっても、サラリーマンと同じように、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、死亡慰謝料を受け取れます。また、慰謝料の他にも、主婦は休業損害(主婦休損)を受け取ることが可能です。金銭的な収入のない主婦が休業損害を受け取れるのは、家事労働を家政婦等に依頼すると費用がかかるため、家事労働には経済的な価値があると解釈されるからです。

家事ができなくなって家政婦に来てもらった場合

主婦が交通事故に遭ってしまい、家政婦に家事を依頼した場合において、家政婦に支払った依頼料を全額請求できるかはケースバイケースです。例えば、依頼料が高額であると判断されれば、全額が経費として認められる可能性は低くなります。
なお、家政婦への依頼料を受け取ると、家政婦に依頼した日の主婦休損は請求できなくなります。これは、主婦休損が「家事労働ができなかったことに対する補償」として支払われるお金だからです。

6ヶ月ほど通院し、約800万円の賠償金を獲得した事例

本件は、赤信号無視の相手方車両に追突された事例です。
依頼者は、頚椎捻挫および頚椎症性神経根症と診断され、約6ヶ月間の通院治療を続けて、頚椎除圧固定術を受けました。
その後、依頼者は脊柱の変形障害があると評価され、後遺障害等級11級7号の認定を受けましたが、相手方は30%の素因減額を主張してきましたため、訴訟(裁判)提起をしました。
裁判所も、当初は20%以上の素因減額を考えるべきとしましたが、弁護士の反論によって、素因減額は認めないという心証に変わりました。そして、最終的に既払い分を除いて約800万円の賠償金を支払ってもらう内容で相手方と和解しました。

6ヶ月通院した場合の慰謝料請求は弁護士にお任せください

6ヶ月通院して慰謝料を請求するときには、弁護士にご相談ください。通院期間が6ヶ月に及ぶ場合には、慰謝料は大きな額になるケースが多いです。しかし、相手方は支払いを抑えるために、過失割合や素因減額等について主張するおそれがあります。
弁護士であれば、高度な医療論争にも対応可能であり、相手方の主張に反論することができます。加えて、相手方は自賠責基準に近い金額を提示することがありますが、弁護士は慰謝料を弁護士基準で請求することができます。
通院期間が長いのに、賠償金額が十分でなく不満であるという方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。