監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
家族が交通事故に遭い、怪我をしてしまったときには、両親等が付き添うこともあるかと思います。そのとき、かかった交通費等の費用を相手方に請求できるのかについて、気になる方もいらっしゃるでしょう。
負傷の程度が重い場合等、一般的に付き添いが必要だと考えられる状況であれば、「付添費」の請求が認められる可能性があります。しかし、必ず認められるわけではないため注意しましょう。
ここでは、付添費の概要と認められる条件、金額の相場等について解説します。
目次
付添費とは
付添費とは、交通事故に遭って負傷した被害者のために、家族等が看護や介助をするためにかかる費用のことです。付添費は、被害者本人に対する慰謝料などとは別に認められます。
主に、被害者本人だけでは入通院等に支障がある場合に支払われます。
付添費が認められる条件
付添費は、交通事故の被害者が、負傷等により付き添いを要する状態になったことを条件に認められます。被害者の負傷の程度だけでなく、年齢によっても判断されるため、子供や高齢者については、付き添いの必要性が認められる可能性が高くなります。
また、病院等における看護体制によっても付き添いの必要性は変わります。完全看護体制が整えられている病院等に入院した場合には、付添費の必要性を保険会社から否定されることがあります。
子供に付き添う場合は条件が緩和されている
子供が12歳以下であれば、付添費は被害の程度に関係なく、基本的に認められます。もしも、子供が入院中に13歳以上になったとしても、打ち切られる心配はあまりありません。
一方で、事故のときに子供が13歳以上であった場合には、軽傷であれば身の回りのことが自分でできるため、付添費の必要性の判断が行われることになるでしょう。
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付添費の内訳と相場
付添費として、次のような費用が認められる可能性があります。
- 入院付添費
- 通院付添費
- 自宅付添費
- 将来介護費
- 通学付添費
これらの費用について、相場とともに以下で解説します。
入院付添費
入院付添費は、被害者が入院している期間中に、付き添いが必要になった場合、家族等が付き添ったことについて支払われる費用です。
ただし、入院付添費を請求できるのは、被害者の看護や介護を行ったケースに限定されており、ただお見舞いするため等の交通費などについては請求できません。そのため、請求するときには、被害者を看護等しなければならなかったことを証明する必要があります。
入院付添費の相場
入院付添費は、自賠責基準では1日あたり4200円です。しかし、弁護士基準では1日あたり6500円が相場とされています。
但し、症状の程度により、また、被害者が幼児、児童である場合には、1割~3割の範囲で増額を考慮することがあります。
通院付添費
通院付添費とは、通院期間中に家族等が付き添ったときに支払われる費用です。
症状または幼児等付添が必要と認められる場合には、被害者本人の損害として認められます。
例えば、脚を骨折してしまった場合等では、付添がなければ通院が難しいでしょう。そのため、通院付添費の請求が認められる可能性があります。
通院付添費の相場
通院付添費は、自賠責基準では2100円です。しかし、弁護士基準では3300円が相場とされています。
自宅付添費
自宅付添費は、自宅での療養期間中に家族等が付き添った際に支払われる費用です。
事故により、身体が不自由になる場合もあれば、ほとんど身体を動かせなくなる場合もあります。そのため、自宅付添費は、怪我の程度によって金額も大きく変わることがあります。
自宅付添費の相場
自宅付添費は、自賠責基準では2100円です。しかし、弁護士基準では、見守りや助言で足りる程度の状態であっても3000円程度が相場とされています。さらに、常時介護が必要な状態では6500円以上が相場とされています。
将来介護費
将来介護費とは、交通事故による怪我の治療が終わった後も、将来に渡って必要になる付添費です。
交通事故による負傷には、脊髄損傷などのように、どんなに治療しても回復しないものがあります。そのような負傷により、将来に渡って介護が必要になってしまうほど重度の後遺障害が残ってしまった場合には、将来介護費を請求できる可能性があります。
将来介護費の相場
親族等が行う将来介護費は、弁護士基準では1日あたり8000円が目安になります。しかし、後遺障害の程度等、個別の事情に応じて金額が増減します。
後遺障害が重い等の理由で、職業付添人が介護を行うケースもあります。職業付添人とは看護師等の資格を有する専門職のことであり、多くの場合において介護費が親族等よりも高額になり、実費相当額として1日あたり1万円~2万円程度が目安となります。
ただし、職業付添人の介護費を受け取ることができるのは、職業付添人でなければならない理由があるときだけです。そのため、家族が偶然にも看護師等であったとしても、職業付添人の介護費が認められるとは限りません。
通学付添費
通学付添費とは、子供が通学するときに家族等が付き添った場合に支払われる費用です。脚を負傷したケースや、通学カバンが持てないケース等では請求可能だと考えられます。
通学付添費の相場
通学付添費は、明確な相場が存在せず、個別の事情に応じて妥当な金額が支払われます。1日あたり3000円が認められた裁判例があるため、これが1つの目安になると考えられます。
仕事を休んで付き添いをした場合は付添看護費と休業損害と比較する
交通事故の被害者に付き添いをした親族等が仕事を休んだ場合には、休業損害を請求すると付添看護費よりも高額になるケースがあります。そのため、付添看護費と休業損害を比較して、より高額な方を請求することができます。
ただし、休業損害を請求すると、職業付添人に依頼した場合に支払う報酬よりも高額になるケースもあります。このような場合には、親族等が休業するよりも職業付添人に依頼する方が合理的であるため、職業付添人に支払う報酬が請求できる金額の上限とされています。
プロに付き添ってもらった場合の付添費は実費精算
家族等に付き添いができない事情がある場合や、怪我の程度によってはプロの付き添いが必要となるケースもあるでしょう。このような時、付添費は基本的に実費請求となります。つまり、看護師や介護福祉士などに支払った報酬額を付添費として請求します。
そのため、プロに付き添いを依頼した場合は、領収書を受け取って保存する等して、かかった費用を明らかにできるよう準備する必要があります。
交通事故の付き添いに関するQ&A
交通事故の付き添いに関してよくある質問について、以下で解説します。
子供が通院を嫌がり暴れたため、夫婦で仕事を休んで付き添いました。付添費は二人分請求できますか?
子供が通院を嫌がったという理由では、二人分の付添費を請求するのは難しいでしょう。
付添費は、付き添うことが必要でなければ支払われません。付き添いの必要性は、被害者が年齢や怪我の程度等を根拠として客観的に判断されます。
付き添いが1人だけで足りたと判断されれば、付添費は1人分となります。
子供の付添看護料は12歳以下しか支払われないと聞きましたが本当ですか?
被害者が12歳以下の子供である場合には、怪我の程度に関係なく付添費が認められる可能性が高いです。これは、入院中に13歳以上になったとしても、入院が継続している間は認められることが多いです。
一方で、入院した時点で13歳以上であった場合には、怪我の程度により付添費が認められないおそれがあります。怪我が重度であり、誰かの付き添いが必要であれば認められます。
姉に子供の通院付き添いをお願いしました。通院付添費は支払われますか?
子供の通院に付き添うのが、その子供にとって近親者である場合には、通院付添費は支払われます。
付添費は、付添が必要なときに請求できるため、付き添ったのが親の姉であったとしても請求可能だと考えられます。
両親が入院している病院まで来てくれました。駆けつけ費用は請求できますか?
交通事故にあって、両親等の親族が病院に来てくれた場合には、交通費等の費用を加害者側に請求できます。
病院に来るための交通費等は、自賠責保険には規定がないので請求できないと考えられます。しかし、家族が交通事故に遭ったときに、病院に行くのは当然のことだと考えらえます。
そのため、家族が病院に駆けつけるための交通費等についても、相手方に請求できる可能性があります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の付き添いに関して、お困りでしたら弁護士にご相談ください
交通事故の被害者に付き添って、交通費等の費用がかかってしまった場合には、弁護士にご相談ください。
付添費用は、両親等が付き添った場合には、請求を忘れがちな費用です。また、請求したとしても、弁護士基準で請求するのと他の基準で請求するのとでは、金額に隔たりが生じるおそれがあります。
弁護士であれば、細かな項目も見落とさずに請求できます。交通事故の被害者のために遠方から駆けつけた場合や、数週間に渡って付き添わなければならなかった場合等、金額が大きくなりそうなケースでは、特に弁護士の見解を確認することをおすすめします。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)