監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
バイク事故には、バイクの運転者が大怪我をしやすいという特徴があります。そのため、慰謝料が高額になりやすいのですが、バイク事故には自動車事故では考えにくい状況で発生するものがあり、過失割合の決め方が難しいケースも存在します。
ここでは、バイク事故の慰謝料を請求するときに気をつけるべきことや、バイク事故で多く見られる状況における過失割合等について解説します。
目次
バイクが被害者の交通事故慰謝料は車同士と比べて高額になりやすい
バイクの運転者が交通事故の被害者になった場合、車同士の事故と比較すると、慰謝料が高額になりやすいと考えられます。これは、バイクの運転者は自動車と異なり身体が露出しているため、事故に遭ったときには大怪我をするリスクが高いからです。
大怪我をすると、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料等が高額になりやすいため、慰謝料の合計額は高額になります。
基準による慰謝料の差について
バイク事故であっても、自動車の事故であった場合と同様に、慰謝料を算定する基準は自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があります。そして、通常の場合には、自賠責基準が最も低い金額になり、弁護士基準が最も高い金額になります。
特にバイク事故については、被害者が大怪我をするケースが少なくないため、自賠責基準で請求した慰謝料と、弁護士基準で請求した慰謝料との金額の差が大きくなります。そのため、弁護士に依頼して、弁護士基準による慰謝料を請求するメリットは大きいと考えられます。
反面、バイクが加害者だった場合は慰謝料を回収しきれない場合も
バイクが交通事故の加害者である場合には、被害者は慰謝料を全額受け取れないリスクがあります。なぜなら、バイクは任意保険の加入率が低く、対人賠償保険の加入率は50%にすら届いていないからです。
バイクであっても、自賠責保険は強制加入であるため、バイクが加害者の場合、被害者は自賠責限度額までの補償を受けることが可能です。しかし、賠償額が大きいケースでは、自賠責限度額を超えて加害者に請求することになります。このとき、加害者の資力が足りなければ、回収しきれないおそれがあります。
バイク特有の過失割合と慰謝料への影響
バイクの事故では、車同士では起こらないようなシチュエーションで交通事故が発生するケースがあります。
バイク特有のシチュエーションにおける過失割合について、以下で解説します。
バイクのすり抜けによる事故が過失割合に影響するケース
バイクのすり抜けにより、事故が発生する場合があります。
渋滞している自動車の左側をすり抜けたところ、左折した自動車に巻き込まれたら、基本過失割合はバイク2:車8になります。
また、上のケースと同様にしてすり抜けたバイクが交差点で右折車と衝突した場合には、基本過失割合はバイク3:車7になります。
ドア開放車にぶつかった場合
ドアを開放した自動車にバイクがぶつかった場合、基本過失割合はバイク1:車9です。ただし、この割合は、様々な要素を考慮して調整されます。
例えば、ドアの開放を予測できる状況であれば、基本過失割合はバイク2:車8になります。ドアの開放を予測できる状況として、タクシーが停車した場合や、駅前のロータリーに自動車が停まった場合等が挙げられます。
過失があると受け取れる賠償額が減る
交通事故に遭った際に、相手方だけでなく自身にも過失があると、「過失相殺」によって受け取れる賠償額が減額されてしまいます。これは、自動車の事故でもバイクの事故でも変わりません。
インターネット上には、損害賠償額を計算してくれるツールが公開されていますが、被害者の過失がゼロだったときの概算が算出される等、実際に受け取れる金額とは異なる数字が出てくるケースがあります。
例えば、渋滞しているときに、自動車の左側をバイクがすり抜けて交差点に進入し、右折した対向車と衝突した場合には、基本過失割合がバイク3:車7となります。このケースで、バイク側の損害額が500万円、自動車側の損害額が200万円だとすると、「500万円×0.7-200万円×0.3=290万円」により、バイク側が受け取れる賠償額は290万円になります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士の介入によってバイク事故の慰謝料を増額できた事例
ご依頼者様がバイクで走行していたところ、交差点で右側から一時停止をすることなく進行してきた車両に衝突された事例です。
この事故によりご依頼者様は、肋骨骨折や右肺挫傷、全身打撲等の大怪我を負ってしまいました。
ご依頼者様は、担当医に後遺障害診断書を作成してもらう直前にご相談に来られたので、弁護士は担当医に対して、後遺障害診断書に記載してほしい内容についてのお手紙を作成しました。その結果、ご依頼者様は、後遺障害等級14級9号に該当するとの認定を得ることができました。
その後の示談交渉においては、ご依頼者様の怪我が大きいことや、後遺障害を負ったことから、逸失利益と後遺障害慰謝料について特に強く主張しました。
結果として、こちらの請求額通りの逸失利益と後遺障害慰謝料で、保険会社との交渉を成立させることができました。
バイク事故の慰謝料は弁護士にご相談ください
バイク事故に遭ってしまった場合には、弁護士にご相談ください。バイク事故により重傷を負ってしまうと、弁護士基準で慰謝料を請求するメリットが大きくなります。また、過失割合が少し変動しただけでも、慰謝料額が大きく変動します。
しかし、相手方は、弁護士から請求されなければ、弁護士基準による支払いをしてくれることはありません。また、バイク事故の過失割合は、当事者が出していた速度等の要因によって変動しやすいので、相手方の主張を鵜呑みにすると、不当に低額の慰謝料しか受け取れないおそれがあります。
弁護士であれば、弁護士基準による慰謝料の請求を、妥当な過失割合によって行うことが可能です。事故に遭ってしまったら、なるべく早い時点で弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)