監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
交通事故で怪我をした場合、整骨院に通うこともあるでしょう。その場合、整形外科(病院)に通院する場合と比べて、慰謝料はどうなるのでしょうか。ここでは、交通事故の治療で整骨院に通う場合の慰謝料の相場や注意点などについて解説します。
目次
整骨院に通院しても慰謝料はもらえる
通院したのが病院ではなく整骨院であったからといって、慰謝料がもらえなくなるということはありません。ただし、後述のように整形外科の医師の了承を得ないまま整骨院のみに通院すると、医学上必要な治療のための通院であると認められず、慰謝料の支払いを受けられなくなってしまう可能性があります。
「整骨院への通院は慰謝料が半額になる」は本当?
整骨院への通院については慰謝料が半額になるというルールはありません。ただし、事故による怪我の治療について整形外科への通院がほとんどなく、大部分が整骨院への通院である場合、病院での治療と異なり医学的に必要とされる治療を受けたわけではないとして、相手保険会社から提示される慰謝料額が半額程度になることがあります。整形外科と整骨院を併用する場合でも、整骨院にだけ通い病院に全く通わないということは避けましょう。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故で整骨院に通院した場合の入通院慰謝料の相場
整骨院だけでなく整形外科にも通うことが前提となりますが、通院期間・通院日数に応じた慰謝料の支払いを受けられます。同じ通院期間・日数でも、弁護士が介入しない場合の自賠責基準と弁護士が介入した場合の弁護士基準(裁判基準)では支払いを受けられる金額が異なってきます。
たとえば、交通事故によるむち打ち症、頚椎捻挫や腰椎捻挫などで通院治療を行った場合の金額の相場は以下のようなものです。
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
43万円 | 79万円 |
整骨院に通院したい場合の注意点
整骨院に通院したい場合、いくつか注意しなければならない点があります。
病院(整形外科)の医師に相談し、整骨院通院の了承を得る
相手保険会社が損害賠償として治療費や慰謝料を支払うのは、事故による怪我の治療として必要な通院に対してです。整骨院は病院と異なり医療行為を行うところではなく、整形外科の医師の指示・了承がない場合には相手保険会社が治療費や慰謝料の支払いに応じないことがあるため、整骨院への通院について医師の了承を得ることが望ましいです。
保険が適用される治療かどうかを確認する
相手保険会社による治療費支払いの一括対応がない場合、自費で通院し、支払い分を相手保険会社に請求することとなります。その場合、健康保険が使えるか否かによって、自費で立て替える金額も大きく異なってくるため、保険が適用される治療かどうかを事前に確認した方がよいでしょう。
病院(整形外科)にも通院する
整形外科での診察を受けなければ、事故によって負った怪我について示す証拠となる診断書の発行もなく、医学的に治療の必要性がある怪我を負ったことが認められない(ひいては治療費や慰謝料の支払いを受けられない)可能性があります。また裁判実務では、整骨院での治療費について争いとなる場合、医師による指示の有無が重要な判断要素の1つとなります。整骨院に通院する場合でも、整形外科にも通院するようにしましょう。
後遺障害が残りそうな場合も整形外科への通院が重要になる
相当期間の治療を受けても痛みや痺れなどの症状が残った場合、後遺障害の認定を申請することがあります。この場合、医師が発行する後遺障害診断書が必須となりますが、それまで整骨院での治療しか受けていない場合、いきなり整形外科に行っても後遺障害診断書を書いてもらえるものではありません。医師からするとそれ以前に怪我の診断をしておらず、経過も分からないためです。その点でも、治療開始当初から整形外科へ通院していることが重要となります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
整骨院への通院と慰謝料に関するQ&A
整骨院に毎日通えば、その分慰謝料はもらえるのでしょうか?
通院慰謝料は、通院の日数が多いほど多くもらえるというものではありません。自賠責の基準では2日に1回の通院、弁護士基準では(怪我の内容によりますが)3~3.5日に1回の通院で通院期間に応じた慰謝料が最大となり、それ以上通っても慰謝料の金額が増えないばかりか、治療費がかさむことから相手保険会社に早めに治療費負担の終了を持ち掛けられる原因にもなりかねません。痛みなどの症状がひどくて多く通院せざるを得ないという場合以外は、上記程度の通院頻度にとどめるべきでしょう。
保険会社に、整骨院への通院は治療費として認めないと言われてしまいました。医師の許可は取っているのですが、どうしたらいいでしょうか?
医師の許可がある場合は、それを保険会社に伝え、医学的見地から治療のため必要とされている通院であることを主張しましょう。それでも保険会社が負担を認めない場合は、裁判で争うことも考えられます。いずれの場合も、医師の許可は口頭だけでなく、証拠となる書面の形で得るべきでしょう。
整骨院に通院した場合の治療費や慰謝料の請求は弁護士へご相談ください
交通事故の治療で整骨院に通院するにあたっては、治療費や慰謝料が相手保険会社からきちんと払われるか分からず不安になることもあると思います。上記で説明したような医師の指示の有無や整形外科・整骨院それぞれの通院の頻度についてのお悩み、保険会社が治療費や慰謝料の支払いを拒否した場合の対応など、難しい問題が出てくることもあります。そのような場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
-
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)