監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
交通事故に巻き込まれた場合、被害者としては、相手方に対し、交通事故に伴う精神的な苦痛を慰謝料として請求することができます。
そして、交通事故の慰謝料の算出基準には、①自賠責保険基準、②任意保険会社基準、③弁護士基準の3つの基準があります。慰謝料の金額は、基本的に、自賠責保険基準より任意保険会社基準の方が高額になり、任意保険会社基準より弁護士基準の方が高額になります。
しかし、弁護士に依頼することなく、ご自身で相手方の保険会社と交渉した場合、弁護士基準より低額な保険会社の基準での金額を提示されることが殆どです。ですので、納得のいく慰謝料を得るためには、ぜひ弁護士にご相談ください。
目次
弁護士基準とは
「弁護士基準」とは、過去の裁判例などに基づいて設定された基準です。「裁判基準」とも呼ばれています。上記のとおり、基本的には、他の基準で算出した場合より、高額な金額となります。
しかし、被害者自身で示談交渉した場合、相手方保険会社が弁護士基準による支払いを認めることはまずありません。
弁護士基準の入通院慰謝料相場は2種類ある
弁護士基準では、入院期間と通院期間によって定められた入通院慰謝料の2種類の算定表があり、その表を目安にして慰謝料額が算出されることになります。骨折など軽症でない場合は別表Ⅰ、むち打ち症で他覚所見がない場合等の軽傷の場合は別表Ⅱという表を用います。
表の見方ですが、縦軸が通院期間、横軸が入院期間で、それぞれの期間が交差する箇所が慰謝料額の目安となります。
しかし、表は、1カ月単位になっており、ピッタリ1カ月間で治療が終了するわけではありませんので、端数が出るケースが多いかと思います。端数の計算については、日割り計算して算定することが必要です。例えば、通常の怪我で1月と20日通院した場合、2月の通院慰謝料と1月の通院慰謝料の差額を30日で割って、1日当たりの慰謝料を計算し、そこに20日をかけることで、端数(20日分)の通院慰謝料が計算できます。
通常の怪我の場合
それでは、具体的な例を用いて実際に計算してみましょう。
【例:入院1ヶ月、通院4ヶ月、実通院日数60日の慰謝料の計算】
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | AB | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 | 328 | 334 | 340 |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 | 318 | 325 | 332 | 336 | 342 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 | 329 | 334 | 338 | 344 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 | 331 | 336 | 340 | 346 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 | 328 | 333 | 338 | 342 | 348 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 | 335 | 340 | 344 | 350 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 | 337 | 342 | 346 | |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 | 334 | 339 | 344 | ||
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 | 336 | 341 | |||
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 | ||||
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 | |||||
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 | ||||||
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 | 326 | |||||||
13月 | 158 | 187 | 213 | 238 | 262 | 282 | 300 | 316 | ||||||||
14月 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |||||||||
15月 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 286 |
縦軸の通院期間(4月)、横軸の入院期間(1月)の期間が交差する箇所の慰謝料の金額は、130万円です。
なお、実通院日数によると通院期間は2カ月となりますが、弁護士基準による慰謝料は「実通院日数」ではなく「通院期間」で計算します。
ただし、通院が長期にわたる場合で通院頻度も少ないような場合には、実通院日数の3.5倍程度の慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもあります。
他覚所見のないむちうち等、比較的軽傷の場合
次に、比較的軽傷の場合についても、計算してみましょう。
【例:入院1ヶ月、通院4ヶ月、実通院日数60日の慰謝料の計算】
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | A’B’ | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | 204 | 211 | 218 | 223 | 228 |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 | 206 | 212 | 219 | 224 | 229 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 | 207 | 213 | 220 | 225 | 230 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 | 208 | 214 | 221 | 226 | 231 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 | 209 | 215 | 222 | 227 | 232 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 | 210 | 216 | 223 | 228 | 233 |
6月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 | 211 | 217 | 224 | 229 | |
7月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 | 212 | 218 | 225 | ||
8月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 | 213 | 219 | |||
9月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 | 214 | ||||
10月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 | |||||
11月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 | 193 | 199 | 204 | ||||||
12月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 | 194 | 200 | |||||||
13月 | 120 | 137 | 152 | 162 | 173 | 181 | 189 | 195 | ||||||||
14月 | 121 | 138 | 153 | 163 | 174 | 182 | 190 | |||||||||
15月 | 122 | 139 | 154 | 164 | 175 | 183 |
縦軸の通院期間(4月)、横軸の入院期間(1月)の期間が交差する箇所の慰謝料の金額は、95万円です。
通常の怪我の場合(別表Ⅰ)と比べると金額は低くなりますが、自賠責基準や任意保険会社基準よりは増額されることになります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士基準の後遺障害慰謝料
交通事故の被害者が後遺症をもたらす傷害を負った場合には、相手方に対し、後遺症慰謝料を請求することができます。
後遺症慰謝料についても、入通院慰謝料の場合と同様、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準があり、基本的には、弁護士基準が最も高額になります。
弁護士基準では、下表のように等級ごとに支払基準が設定されています。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
弁護士基準の死亡慰謝料
交通事故の被害者の方が死亡した場合,死亡させられたことに対する慰謝料を請求することができ,この場合の慰謝料を死亡慰謝料といいます。
また,死亡慰謝料についても,入通院慰謝料や後遺症慰謝料の場合と同様,自自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準があり、基本的には、弁護士基準が最も高額になります。
弁護士基準では、下表のように亡くなった被害者の属性ごとに支払基準が設定されています。
亡くなった被害者の属性 | 死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他(独身の男女、子供、幼児等) | 2000万~2500万円 |
自力で弁護士基準による交渉をするのは難しい
被害者自身が示談交渉した場合において、相手方保険会社が弁護士基準による支払いを認めることはまずありません。
相手方保険会社としては、なるべく支払額を抑えたい立場にあるため、保険会社基準以上の金額は支払えないと拒絶されるでしょう。
また、交渉が決裂した場合に個人で訴訟を提起することも非常に困難です。
ですので、慰謝料の増額を希望する方は、交通事故に精通した弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士であれば、解決のための必要な知識を持っており、訴訟等の法的手続を視野に入れて交渉することができるため、交渉段階でも、弁護士基準(裁判基準)に基づく解決を認めてもらいやすくなるでしょう。
弁護士基準の慰謝料請求はお任せください
弁護士に依頼した場合の費用を考慮しても、結果的に弁護士に依頼した方が確保できる慰謝料の金額が高額になるケースは珍しくありません。万が一、費用倒れになる可能性が場合には、ご依頼いただく前にその事実をお伝えしていますのでご安心ください。また、ご自身が加入している保険に「弁護士特約」という制度が付いていると、保険会社が弁護士費用を補償してくれるため、費用の心配なく弁護士のサポートが受けられます。
弁護士に依頼することなく、ご自身で相手方の保険会社と交渉した場合、弁護士基準より低額な保険会社の基準での金額を提示されることが殆どです。ですので、納得のいく慰謝料を得るためには、ぜひ弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)