盗撮で逮捕!受ける可能性のある
刑罰と逮捕後の対応
盗撮 公共の場所、乗り物等で盗撮した場合 |
6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金 (迷惑防止条例8条1項、5条1項2号(東京都の場合)) |
公共の施設内で盗撮した場合 | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 (建造物侵入罪:刑法130条) |
映画を盗撮した場合 | 10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(知的財産権侵害) | のぞきの場合 | 拘留又は科料(軽犯罪法1条23号) |
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盗撮という言葉はよく耳にしているかと思いますが、実は「盗撮罪」という犯罪は存在していません。ここでは、盗撮という行為に対してどのような犯罪が成立するかをご説明いたします。
また、携帯電話のカメラ機能が発展したこともあり、盗撮行為に対する検挙件数は近年増加しており、再犯率も高い犯罪類型です。
目次
盗撮事件とは
盗撮とは、一般的に許可なく、人の身体や下着等を撮影することを言いますが、近年ではそれにとどまらず、映画等を撮影する行為も盗撮行為として含まれています。 ここでは、盗撮行為についてご説明いたします。
盗撮にあたる行為
盗撮に当たる行為には、公共の場所や乗り物で盗撮する行為や公共の場所以外で盗撮する行為があります。公共の場所の具体例としては、駅構内、商業施設、路上等があります。
のぞきの場合
撮影をしなかったものの、のぞき行為を行った場合には、軽犯罪法1条23号に該当することになります。都道府県によって異なりますが、迷惑防止条例にのぞき行為を禁止する旨の記載がある場合には、迷惑防止条例違反にも該当することになります。
盗撮で問われる可能性がある刑罰
盗撮行為は、盗撮場所や盗撮状況によって適用される法律が異なり、刑罰の重さが変わってくるため、注意が必要です。
迷惑防止条例違反
迷惑防止条例違反とされる盗撮は、「公共の場所又は公共の乗物」という場所で盗撮した場合に成立します。この場合の罰則は、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。
常習性が認められた場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となり、通常の盗撮行為に比べて加重されています。
迷惑防止条例違反について詳しく見る軽犯罪法違反
軽犯罪法違反とされる盗撮は、人の住居等、公共の場所以外で盗撮した場合に成立します。軽犯罪法違反の罰則は、1日以上30日未満の拘留又は1万円未満の科料となります。
児童ポルノ禁止法違反
児童ポルノ禁止法が対象としている映像は、①18歳未満の児童を相手とする性行為、又は18歳未満同士の性行為又は性交類似行為、②18歳未満の児童の性器等を触る行為等、③18歳未満の児童が衣服の全部、又は一部を着衣がない児童の姿態であって性欲を興奮刺激するものという児童ポルノです。
このような児童ポルノを所持していた場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
また、児童ポルノを提供した場合には、3年以下の懲役又は300万円の罰金に処せられることになります。
児童ポルノ禁止法違反について詳しく見る住宅(建造物)侵入罪
盗撮するために他人の住居に侵入した場合には、住居侵入罪も同時に成立します。また、盗撮するためにビル等の住居以外の建造物に侵入した場合には、建造物侵入罪も同時に成立します。
盗撮するという目的のために住居(建造物)に侵入したことから、盗撮行為と侵入行為それぞれに犯罪が成立し、それぞれ牽連犯という関係にあります。この場合、2罪を比べて重い罪で処罰されることになり、住居(建造物)侵入罪(3年以下の懲役又は10万円以下の罰金)が科せられる可能性が高いといえます。
知的財産権侵害
上映中の映画、撮影が禁じられている美術品等を録画、撮影した場合、知的財産権侵害とした罪に問われることになり、その場合の罰則は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処されることになります。
盗撮での逮捕
現行犯逮捕について
盗撮事件における現行犯逮捕の場合として、撮影しているところ、若しくは撮影し終わったところを被害者に見つかった、警察官に目撃された、周辺の人に目撃された際にその場で逮捕される場合があります。
現行犯逮捕は現に犯行を行っているか、又は犯行を行い終わったことが要件となります。
後日逮捕について
盗撮行為を行った当日に逮捕されるのではなく、後日、警察官から逮捕令状を見せられて、通常逮捕される場合があります。逮捕令状は請求を受けた裁判官が発行するものですが、裁判官は「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があると判断した場合に逮捕令状を発行します。
したがって、通常逮捕により逮捕される場合は、捜査機関の捜査により裁判官が「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があると判断されていることになります。
逮捕されない場合
盗撮行為を行ったとしても、当該行為が検挙されない場合は存在しています。盗撮行為がばれず、気分が舞い上がったことにより、犯行がエスカレートするケースは少なくありません。
そして、現行犯逮捕されなかったとしても、後日通常逮捕されるケースも少なくありません。
逮捕後の流れ
盗撮をしたとして逮捕された場合、48時間以内に検察へ事件が送致されます。送致を受けた検察は24時間以内に対象者を勾留するかどうかを決定します。勾留されなければそのまま釈放となりますが、勾留された場合には、最大20日間捜査を行い、起訴するかどうかを決定することになります。
逮捕後の流れについて詳しく見る20歳未満の未成年が盗撮行為をした場合
20歳未満の未成年者が盗撮行為を行った場合、刑事事件ではなく少年事件に該当することになり、「少年法」が適用されることになります。
少年法は、少年による犯罪行為や非行行為に対して、今後犯罪を犯さないように教育し、更生することを目的としています。刑事事件と異なり、少年法は懲役や罰金という処罰は科されず、少年院や観護措置という処分になります。
盗撮で逮捕されたくない・起訴されたくない
盗撮で逮捕され勾留されてしまえば、最大23日もの間、留置施設に収容されてしまうことになります。そうすると、会社に出勤することができず、逮捕された事実が会社にばれてしまうことも十分考えられます。会社にばれてしまえば、最悪の場合、会社から解雇される可能性があります。
その後、起訴された場合、有罪率は99.9%と言われており、前科がつく可能性が高いといえます。そうならないようにするためにも、早期の段階で弁護士に相談し、身柄拘束から解放されるようにしましょう。
盗撮に関する裁判例
⑴ 判例
最高裁判所第三小法廷平成19年11月27日
⑵ 判断
被告人が、女性を少なくとも約5分間、40m余り付け、背後1ないし3mの距離から女性の臀部(着衣の上から)をデジタルカメラで撮影した行為について、最高裁判所は、被害者が撮影に気付いておらず、また、被害者の着用したズボンの上から撮影されたとしても、迷惑防止条例の規定する、「卑猥な言動」に該当するとした。
⑶ 解説
盗撮の対象は、一般的に身体や下着を思い浮かべるところですが、着衣の上から長期間録画した場合に盗撮に該当すると判断した判例です。最高裁判所による判断ですから、下級裁判所は当該判断に従った判断をすることになります。
盗撮の事件でよくある質問
盗撮で使用したカメラには過去に盗撮したデータも入っています。そのせいで罪が重くなりますか。
容疑をかけられた盗撮以外の盗撮、つまり余罪がある場合には、常習性があると判断される可能性があります。
常習性があると判断された場合には、罪が重くなる可能性があります。通常の盗撮行為に対する罰則は、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金となりますが、常習性が認められた場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となり、加重されることになります。
性依存症を理由に盗撮の罪が減刑されることはあるのでしょうか。
性依存症は、性に関する問題行為を自分の意思でコントロールすることができない状態のことをいいます。性依存症の傾向があり、専門機関に通うなど治療の努力をしている場合には、減刑される可能性があります。
性依存症の傾向がある場合には、ご自身の努力で再犯を防ぐことは簡単ではありません。専門機関を利用し、治療を行うことにより、自分の意思でご自身の行動をコントロールできる一歩を踏み出すことができます。
その他、精神疾患等を理由に減刑される場合もあります。
海水浴場で水着の女性を盗撮したのですが罪にあたるのですか。
海水浴場という公共の場所で、水着の女性を許可なく撮影している行為については、迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。水着ではなく、ズボンの上から臀部を撮影した行為について、迷惑防止条例違反とされた事例もあります。
盗撮で実名報道されてしまう可能性はありますか。
実名報道される可能性はあります。報道されるか否かの基準は不明ですが、社会的にも関心がある場合や、事件の態様が悪質だった場合には実名報道される可能性は高いといえます。
私有地に入り、トイレの外窓から盗撮をしたのがばれてしまいました。
盗撮目的で私有地に入った行為については住居侵入罪が成立します。そして、公共の場所以外での盗撮行為であるため、迷惑防止条例違反ではなく、軽犯罪法違反が成立します。
盗撮という目的を達成するために私有地に侵入したことから、住居侵入罪と軽犯罪法違反は牽連犯という関係にあり、重い罪である住居侵入罪で処罰される可能性があります。
デリヘルでの盗撮がばれ、店から示談金を要求されました。
盗撮がばれて気が動転してしまい、要求されている示談金を払おうと思っているかもしれません。
要求されている示談金が正当な金額だとしても、紛争の蒸し返し等を防ぐために示談書を作成した上で支払うべきです。また、要求されている示談金があまりに高額である場合には、減額の交渉をするべきです。
示談書を作成する、示談の減額交渉、いずれの場合においても弁護士に相談するべきといえます。
使用するカメラを無音に改造して盗撮を行いました。
通常発生するシャッター音を無音に改造し、盗撮行為を行った場合、犯行態様が悪質と判断され、罪が重くなる可能性はあります。
盗撮による逮捕で社会生活への影響を少なくしたいなら急いで弁護士へ!
盗撮行為については、逮捕段階であれば勾留阻止に向けた弁護活動、勾留されてしまった場合には不起訴処分に向けた弁護活動を行います。 盗撮行為により逮捕されてしまった場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。
他方、盗撮行為は、何度も繰り返してしまう犯罪行為であるため、弊所では再犯防止に向けた活動に力を入れており、ご依頼者様の将来にも貢献できると存じます。
数多くの盗撮事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。
迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。
この記事の監修
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兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。