窃盗罪とは?
構成要件や刑事処分について
ここでは、窃盗罪が成立するための要件、刑罰、逮捕された後の流れ等をご説明いたします。
目次
窃盗罪とは
窃盗罪とは、他人の財物をその人の意思に反して自己の占有下に置くことにより成立する犯罪です(刑法235条)。例えば、通りすがりの人のポケットに入っている財布を盗む行為が窃盗罪にあたります。他方、誰の占有にも属さない物を自己の占有下に置くと占有離脱物横領罪(254条)が成立します。例えば、誰かの忘れ物を拾い、勝手に自分のものにする行為が占有離脱物横領罪にあたります。
なお、窃盗罪は、他人の財物を窃取しようとしたものの、自己の占有下に置くことができなかった場合、すなわち、未遂の場合でも処罰されます。例えば、通りすがりの人のポケットに入っている財布を盗もうとして触ったものの、気づかれて盗むことができなかった場合、窃盗未遂罪が成立します。
窃盗罪の刑罰
窃盗罪の刑罰は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります。 どのような刑罰になるかは、事件の内容、被害金額、前科の有無、示談の成立の有無等により処分や刑の重さが決定されます。
窃盗罪は、常習的に行う者も多く、その場合には、通常の窃盗犯よりも重い3年以上の懲役に処せられることになります。
親族間の場合の特例
窃盗罪には、親族相盗例という例外が規定されています(刑法244条)。親族相盗例とは、親族間の犯罪については、刑が免除されるという例外です。この規定は、「法は家庭に入らず」という考え方に基づいています。
親族相盗例は、配偶者、直系血族又は同居の親族の間で窃盗罪を犯した場合に適用されます。なお、親族とは、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族のことをいいます(民法725条等)。
「配偶者、直系血族又は同居の親族」以外の親族との間の窃盗罪については、親告罪であるため、被害者が告訴をした場合のみ処罰の対象となります。
窃盗罪の構成要件
窃盗罪が成立するためには、①窃盗した物が他人の占有する財物であること、②窃取した者が不法領得の意思を有していること、③窃取したという事実が存在していることが必要となります。 以下で、各要件について詳しくご説明いたします。
他人の占有する財物
窃盗罪が成立するためには、窃取する対象が「他人の占有する財物」でなければなりません。ここで、「占有」とは、占有意思に基づき、財物を事実上支配している状態をいいます。裁判例で占有が及んでいるとして認められたものは、自宅内にあるものの、その所在を失念した財物、自宅前の公道に放置された自転車、公園のベンチに置き忘れたが、200メートル離れた時点で置き忘れたことに気づいたポシェット等があります。
不法領得の意思
最高裁判所は、「不法領得の意思」について、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思であると述べます。簡単にいうと、自分のものにしようとする意思があることです。
不法領得の意思は、毀棄隠匿罪や使用窃盗と区別するために必要とされています。
例えば、人の財物を壊す目的で盗った場合には、自分のものにしようとする意思はないため、不法領得の意思がなく、毀棄隠匿罪が成立することになります。
窃取
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
窃盗罪は、一般的にこっそり盗むという風に考えられていますが、ひったくりのように公然と財物を窃取する場合にも窃盗罪は成立します。
窃盗罪に問われる可能性のある行為
窃盗罪とは、万引きを想定する人も多いかと思います。しかし、窃盗罪には様々な行為を対象としています。例えば、ひったくり、置き引き、車上荒らし、無断充電なども窃盗罪に問われる可能性のある行為です。裁判例では、磁石でパチンコ玉を当たり穴に誘導する行為や窃取したキャッシュカードを用いて現金自動預払機から現金を引き出す行為についても、窃盗罪に該当するとしたものもあります。
万引きなどの常習犯の刑事処分
窃盗行為を繰り返し、何度も刑罰を受けている場合には常習累犯窃盗罪に該当し、通常の窃盗罪よりも刑が重くなる可能性があります。
ここで、常習累犯窃盗罪とは、①過去10年の間に、窃盗罪で6か月以上の懲役刑を3回以上受けたものが、②常習として窃盗を行った場合に成立します。常習累犯窃盗罪の法定刑は、3年以上20年以下の懲役となります。
窃盗罪の時効
刑事事件における時効とは、公訴時効といい、公訴時効を過ぎると検察官が公訴を提起することができなくなります。
窃盗罪の公訴時効は、7年とされています(刑事訴訟法250条)。
もっとも、刑事事件としての時効が成立した場合でも、民事事件としての時効が完成しておらず損害賠償を請求される場合もあるので注意が必要です。
逮捕後の流れ
窃盗行為を行ってしまった場合でも、窃取した財物の金額が比較的低い場合には、逮捕されない可能性があります。他方、被害金額が大きい、前科を有している、犯行態様が悪質である場合には、逮捕・勾留される可能性が高くなります。
窃盗罪を犯し、逮捕勾留されてしまった場合には、被害者との間で示談等を成立させることが重要となります。
逮捕された時の流れについて詳しく見る窃盗罪に問われた場合の対応について
ここで、窃盗罪に問われた場合の対処方法について述べます。
窃盗罪に問われた場合には、まず被害者との間で示談を成立させることができれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。被害者との間で示談ができなかった場合には、「贖罪寄付」といって反省と贖罪の気持ちを表明するために、公益活動をしている団体などに寄付をする方法もあります。その他の方法としては、窃盗行為を行ったことについて真摯に反省しているという態度を示すことも重要です。
窃盗症(クレプトマニア)の場合には、再犯率が高いため、専門機関の治療等を受けるなどして、再犯防止に努めなければなりません。
窃盗罪に問われた場合は、弁護士へ相談を
窃盗行為については、逮捕段階であれば勾留阻止に向けた弁護活動、勾留されてしまった場合には不起訴処分に向けた弁護活動を行います。
窃盗行為により逮捕されてしまった場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。
他方、窃盗行為は、何度も繰り返してしまう犯罪行為であるため、弊所では再犯防止に向けた活動にも力を入れており、ご依頼者様の将来にも貢献できると存じます。
数多くの窃盗事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。
迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。
まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修
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兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。