保護観察処分とは?
保護観察中のルールや生活について
ここでは、保護観察処分とは何か、保護観察中のルールや生活についてご説明いたします。
目次
保護観察処分とは
保護観察処分とは、犯罪をした人又は非行のある少年が、社会の中で保護観察所の指導監督を受けながら更生を図る処分のことをいいます。刑務所等の矯正施設で行われる施設内の処遇に対して、保護観察は施設外、つまり社会の中で処遇を行うものであるため、社会内処遇と言われています。
保護観察の対象者
保護観察処分少年
保護観察処分少年とは、非行により家庭裁判所から保護観察の処分を受けた少年のことをいいます。更生保護法48条1号に定められていることから、「1号観察」と言われています。
少年院仮退院者
非行により家庭裁判所から少年院送致の処分を受け、その少年院から仮退院となった少年のことをいいます。更生保護法48条2号に定められていることから、「2号観察」と言われています。
仮釈放者
懲役又は禁固の刑に処せられていたものの、仮釈放を許され更生保護法40条の規定により保護槓子に付せられている者をいいます。更生保護法48条3号に定められていることから、「3号観察」と言われています。
保護観察付執行猶予者
刑の執行猶予と合わせて保護観察付の言い渡しを受けたものをいいます。更生保護法48条4号に定められていることから、「4号観察」と言われています。
保護観察の種類
一般保護観察
一般保護観察の対象となるのは、一般事件(交通事故事件以外の事件)により保護観察に付され、短期処遇勧告がなされていない者が対象です。
一般保護観察は、保護観察に付されてからおおむね1年を経過し、3か月以上継続して良好な成績を獲得していた場合には、保護観察処分が解除されることになります。
一般短期保護観察
一般短期保護観察とは、社会適応を促進するための指導を中心とした短期間の保護観察を行うことによって、保護観察対象者の改善更生を図る制度です。
一般短期保護観察の対象となるのは、一般事件(交通事故以外)により保護観察に付され、短期処遇勧告がなされた者が対象です。
一般短期保護観察は、おおむね6か月以上7か月以内の期間に解除が検討されます。10か月以内に解除できない場合には、保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いた上で、一般保護観察に切り替えられることになります。
交通保護観察
交通保護観察の対象となるのは、交通関係事件で保護観察に付され、短期処遇勧告がなされていない者が対象です。
交通保護観察は、できるだけ交通事件対象者の保護観察を専門とする保護観察官や交通法規に通じた保護司が担当するように配慮されていることに特殊性があります。
交通保護観察は、おおむね6か月経過後に解除が検討されることになり、一般的保護観察よりも短期間で解除されるのが一般的です。
交通短期保護観察
交通短期保護観察の対象となるのは、交通関係事件で保護観察に付され、短期処遇勧告がなされた者が対象。
交通短期保護観察は、おおむね3か月以上4月以内に解除が検討されることになります。6か月を超えて解除できないときは、保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いた上で、交通保護観察に切り替えられることになります。
保護観察の期間
成年に関する保護観察の期間は、裁判官が言い渡した期間となります。
少年に関する保護観察の期間は、原則として少年が20歳に達するときまでと規定されています(更生保護法66条)。ただし、保護観察に付することを決定したときから少年が20歳に達するまでの期間が2年に満たないとき、には、保護観察の期間を2年とされています(同条)。
もっとも、少年の改善更生に資すると認められるときは、期間を定めた上で、保護観察を一時的に解除することができ(更生保護法70条)、また、保護観察を継続する必要がなくなったと認められるときには、保護観察は解除されることになります(同法69条)。
保護観察官と保護司
保護観察官
保護観察官は、犯罪をした人や非行のある少年が社会の中で自立できるよう、その者たちを取り巻く地域の力を活かしながら、再犯・再非行の防止と社会復帰のための指導や援助を行う者です。なお、保護観察官は、法務省の職員で国家公務員に属します。
保護司
保護司は、民間人としての柔軟性と地域の実情に通じているという特性を活かし、保護観察官と協働して保護観察にあたるだけでなく、犯罪や非行をした人が刑事施設や少年院から社会復帰を果たしたとき、スムーズに社会生活を営めるよう、釈放後の住居や就業先などの環境の調整や相談を行うものです。
なお、保護司は、保護観察官とは異なり、民間のボランティアです。
保護観察の遵守事項と良好措置・不良措置
保護観察対象所が、一般遵守事項や特別遵守事項を守り、社会の一員として更生したと判断された場合には、「良好措置」を取られることがあります。他方、一般遵守事項や特別遵守事項を違反してしまった場合には、「不良措置」を取られることがあります。
一般遵守事項
保護観察中の一般遵守事項は、更生保護法第50条に規定されています。特別遵守事項とは異なり、保護観察中の者全員に共通して定められているものです。
一般遵守事項の内容は、①再犯・再非行をしないよう健全な生活態度を保持すること、②保護観察官や保護司による指導監督を誠実にうけること、③住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長に届け出をすること、④③に届け出た住居に居住すること、⑤転居又は7日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の許可を受けることとされています(更生保護法50条)。
特別遵守事項
特別遵守事項は、一般遵守事項とは異なり、それぞれの者の犯罪傾向に応じて定められた遵守事項となります。特別遵守事項は、保護観察所長が、それぞれの者ごとに保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いた上で定めます。
保護観察中の再犯
保護観察中に再犯を犯してしまうことも少なくありません。
保護観察中に再犯を犯してしまった場合、不良措置や再処分等が行われることになります。
不良措置には、仮釈放者に対しては仮釈放の取消しや保護観察付執行猶予者に対する刑の執行猶予の言渡しの取消しがされることがあります。
保護観察中の生活について
面接
保護観察中、月に数回、保護司との面接があります。
そこでは、保護観察対象者の生活状況を聞いたり、遵守事項を守っているかどうかの確認、悩みごと等の相談やその指導等が行われます。
学校生活
中学校や高等学校に在籍している保護観察対象者についても、他の保護観察対象者と同様に遵守事項を守って生活することが義務付けられています。
保護観察対象者が継続して、遵守事項を守って学校に通い続けられるようい、本人に指導・助言をしていくとともに、保護者に対しても指導・助言を行います。また、学校やそのほかの関係機関と連携した上で、保護観察対象者が学校に通い続けられるような環境を整えるようにします。
仕事・結婚
保護観察中であっても、もちろん仕事を始めたり、結婚したりすることはできます。もっとも、保護観察中は、保護観察官や保護司に「生活状況を報告する義務」があるので、保護観察対象者が仕事を始めたり、結婚する場合には、「生活状況」に変化が生じるため、保護観察官や保護司に報告しなければなりません。
旅行
保護観察中であっても、旅行をすることができます。 もっとも、7日以上の旅行をする場合には、あらかじめ保護観察所の長に許可を受けなければなりません(更生保護法50条)。
また、海外旅行については、パスポートを申請する際に、「保護観察中か否か」というチェック項目があるため、当該項目にチェックをした場合、パスポートが交付されない可能性があります。
少年事件や保護観察についてのご相談は、弁護士へご依頼ください
少年事件は、手続が成人の刑事事件の場合と異なり、特に専門性が不可欠な事件となります。少年は心身ともに未熟ということもあり、とても難しい問題が多く存在しています。
また、保護観察についても、今後の生活に大きく影響するものといえます。
数多くの少年事件や保護観察に関する意見を多く扱ったことのある弊所であれば、少しでもご依頼者様のお力になれると思います。
迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。 まずは、お気軽にご相談ください。
この記事の監修
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兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。