逮捕・監禁罪が成立する場合と
逮捕後の対処法
ここでは、逮捕・監禁罪が成立する場合と逮捕・監禁罪を犯し逮捕された場合の対処方法についてご説明いたします。
目次
逮捕・監禁罪とは
逮捕・監禁罪とは、人の身体に直接働きかけ、ないしは一定の場所からの移動を困難にして人の行動の自由を奪う罪のことをいいます。もっとも、人に対して「動くと殺すぞ」等と脅す等、心理的な働きかけによって自由を奪うことは、脅迫や強要罪に該当し、逮捕・監禁罪には該当しません。
逮捕・監禁罪の成立要件
逮捕・監禁罪における「逮捕」はどのような行為か
逮捕とは、身体に直接強制を加えて行動の自由を奪うことをいいます。典型例としては、人の身体を縄で縛って動けなくすること、手錠等により拘束することが挙げられます。逮捕は、身体に対する直接的強制により行動の自由を奪うことが本質であるため、直接的に身体的拘束を受けていれば、器具等を使用している必要はありません。
逮捕・監禁罪における「監禁」はどのような行為か
監禁とは、一定の場所からの脱出を困難にして移動の自由を奪うことをいいます。典型例としては、鍵のかかった部屋に閉じ込めることが挙げられます。
監禁罪は、物理的な意味で人の身体に強制を加えることを内容とする罪であるため、心理的な働きかけにより自由を奪ったとしても監禁罪は成立しません。入浴中の女性の衣服を奪い風呂場から出られなくするような場合には、心理的な働きかけのように思えますが、実際に外に出ることができなくなるのであれば、その場所からの移動の自由が奪われており、監禁罪が成立することになります。
「不法」であること
逮捕・監禁罪の成立には「不法」であることが必要となります。ここで、「不法」とは、逮捕・監禁行為に正当な理由がないことが必要となります。法令行為(刑事訴訟法上の逮捕等)や被害者の承諾等がある場合には、逮捕・監禁罪は成立しないことになります。
移動の能力を有しない者でも客体になれます
判例は、逮捕・監禁罪の保護法益として、移動しようと思えば移動できる自由としています。したがって、移動の能力を有していない者でも客体になることができます。裁判例は、生後1年7か月の幼児を監禁した場合、認知症の母親を緊縛した場合にも逮捕・監禁罪が成立するとしています。
逮捕・監禁罪の刑罰
逮捕・監禁罪の刑罰は、「3か月以上7年以下の懲役」となっています。「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が刑罰である暴行罪に比べて重いものとなっています。
ここで注意が必要なのは、逮捕・監禁罪には罰金刑が規定されていないことです。
したがって、検察官は、逮捕・監禁罪を犯した者に対して罰金刑を求刑することができず、懲役刑しか求刑することができないのです。
逮捕・監禁罪に問われるケース
ここで、逮捕・監禁罪に問われるケースについてご説明いたします。
誘拐
刑法は、略取・誘拐罪についても規定していますが、ある者を誘拐するために、その者の身体を拘束した場合、身体を拘束する行為について、逮捕・監禁罪が成立する可能性があります。
また、女性を強姦目的で自動車に乗せたまま移動した行為について、その女性の移動しようと思えば移動できる自由を奪っているため、逮捕・監禁罪が成立する可能性があります。
いじめ・虐待
いじめや虐待の一環で、ある者を部屋に閉じ込めた場合、「児童虐待の防止等に関する法律」の規定が及ぶことになりますが、状況等によっては、逮捕・監禁罪が成立する可能性があります。
私人逮捕
刑事訴訟法上では、私人による逮捕を認めていますが、私人が逮捕した場合には、逮捕罪が成立するのでしょうか。逮捕・監禁罪は、当該逮捕行為が「不法」でなければならないので、犯罪者に対して私人による現行犯逮捕をした場合には、逮捕行為に正当な理由があるといえるため、「不法」とはいえず、逮捕・監禁罪は成立しないことになります。
逮捕・監禁によって被害者が怪我や死亡した場合
刑法221条は、逮捕・監禁致死傷罪を規定しています。本罪は、逮捕・監禁罪の結果的加重犯だと考えられています。逮捕・監禁の手段として用いた暴行・脅迫行為から致死傷結果が生じた場合のみならず、逮捕・監禁行為から生じた場合にも本罪が成立することになります。たとえば、監禁中に被害者が逃げようとして怪我をした場合、逮捕監禁致傷罪が成立することになります。
逮捕・監禁罪で逮捕された場合の対処法
逮捕・監禁罪にとより逮捕されてしまった場合には、早期の段階で弁護士に相談することが必須となります。弁護士に相談することにより、早期の段階で身体拘束から解放される可能性が高くなります。また、逮捕・監禁行為に正当な理由がある場合には、捜査機関にその旨を主張しましょう。
被害者との間で示談が成立した場合には、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。
逮捕・監禁事件を起こしてしまったら、早急に弁護士にご相談ください
逮捕・監禁罪については、逮捕段階であれば勾留阻止に向けた弁護活動、勾留されてしまった場合には不起訴処分に向けた弁護活動を行います。
逮捕・監禁行為により逮捕されてしまった場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。
数多くの逮捕・監禁事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。 迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。 まずは、お気軽にご相談ください。
この記事の監修
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兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。