団体交渉の進め方

公開日:2020年10月16日
  • 団体交渉、労働組合対策

労働組合から団体交渉の申入れがあった場合、会社としてはどのように対応し、団体交渉を進めればいいでしょうか。

このページでは、団体交渉の進め方について解説します。

団体交渉の流れと進め方について

団体交渉の申し入れがあった場合の初動対応

労働組合から団体交渉の申入れがあり、その内容が会社として交渉に応じる法的義務がある事項(義務的団交事項)であった場合、会社としては正当な理由なく申入れを拒否することはできません。したがって、団体交渉の申入れがあれば、まずは交渉を求められている内容が義務的団交事項であるか否かを検討する必要があります。また、労働組合が書面のやりとりではなく対面での交渉を求めている場合、会社側は原則として対面での交渉に応じなければなりません。

会社としては速やかに申入れへの回答を行い、団体交渉を実施しなければならない場合は準備を進める必要があります。

団体交渉の事前準備と予備折衝

通常、労働組合が会社に団体交渉を求める際には団体交渉申入書という書面が届けられ、この書面に労働組合の要求などが書いてあります。会社は団体交渉の事前準備として、まずは団体交渉申入書に書かれている労働組合の主張を把握した上で、それに対する会社の主張の構成や解決の見通しなどの交渉内容について検討するとともに、協議の進め方や団体交渉の日時・場所の決定など、手続面の準備も行うことになります。

また、団体交渉に先立ち、労働組合側の主張の確認や整理、協議の進め方の決定などのために労働組合との事前打合せをすること(予備折衝)が有効な場合もあります。

団体交渉に向けて決めておくべき事項

団体交渉の出席者・発言者

原則として会社側、労働組合側のいずれも、交渉内容について決定権を持つ者が担当者として団体交渉に出席します。したがって、会社側の出席者としては、代表取締役などの会社代表者のほか、当該団体交渉における交渉内容について決定権限を持つ人事部長、支店長なども担当者となり得ます。

労働組合側は後で述べるように大人数で参加することもあり、それにより協議の円滑な進行を阻害されることがあります。問題解決に向けた有意義な交渉を実施するためには、初回の団体交渉に先立ち、出席者・発言者を決定しておくよう労働組合に伝えた方がよいでしょう。

団体交渉の場所

団体交渉を行う場所としては、会社の会議室や労働組合事務所の会議室、外部の貸会議室などが挙げられます。労働組合が団体交渉の申入れとともに団体交渉の場所を指定してくることがあります(多くは、会社の会議室や労働組合事務所の会議室を指定してきます。)が、会社としては必ずしも指定に応じる義務はありません。

また、反対に会社側が労働組合の要望と異なる場所を一方的に指定することが問題となる場合もあります。団体交渉の場所については、可能な限り、予備折衝などの中で会社・労働組合双方の合意により決定すべきです。会社としては、従業員の目につく自社会議室や組合側のホームグラウンドである組合事務所の会議室は避け、貸会議室等を使うことが最善である場合が多いでしょう。

団体交渉の日時

団体交渉の日時についても労働組合が一方的に指定してくることがありますが、会社の業務や団体交渉に向けた準備の都合上、指定に応じられるとは限りません。

しかし、都合がつかないといってあまり先延ばしにすれば、団体交渉申入れに対して誠実に交渉する義務への違反になりかねません。会社としては、代替の日時を提案した上で早期の開催に向け労働組合と協議し、団体交渉の日時を決定する必要があります。

団体交渉の費用負担

団体交渉の会場として社外の貸会議室等を借りる場合、その費用が発生するため、その費用の負担についても事前に決めておく必要があります。

会社にとっては労働組合側が費用を負担することが望ましいとも思えますが、そうなると費用が発生することを理由に、貸会議室等の外部会場ではなく会社の会議室や労働組合事務所の会議室などを会場とすることを主張される可能性があります。会社としては社内の会議室等ではなく社外の貸会議室等を会場としたい場合、会社が費用を負担することとしてもよいでしょう。

弁護士への依頼の検討

団体交渉への対応について弁護士に依頼するか否かも、早期に検討すべき事項です。労働組合側の主張の把握・分析やそれに対する反論の準備、そもそも会社として交渉に応じる義務があるか否かの検討など、入口での対応を誤ってしまえば、争いが泥沼化したりすることになりかねません。

そうした事態を避けるには団体交渉の申入れに対する初動対応の時点から労働法務の知見に基づく正しい対応を行う必要があり、そのためには早期に弁護士に依頼することが有用な場合が多いといえます。

団体交渉当日の進め方

団体交渉の協議内容

労働組合からの要求の全てについて団体交渉に応じる義務があるとは限りません。

会社として団体交渉に応じる必要のある事項(義務的団交事項)は、組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものです。報酬や労働時間などの労働条件、人事評価や配転、解雇などの人事に関する事項はこれに含まれます。

一方、経営方針や管理職の人選、生産設備といった事項については基本的に労働条件等の労使関係に関わる事項ではなく義務的団交事項に含まれませんが、労働条件に影響のある場合には義務的団交事項に含まれます。会社として交渉に応じる必要のない事項については、その旨を労働組合に伝え、協議内容から除外すべきです。

録音や議事録の作成

録音や議事録を残すことにより、交渉当日の協議内容のほか、交渉手続に不当な点が無かったか、会社が誠実に交渉に対応したかを記録することができます。議事録の作成は手間になりますが、労働組合に作成を委ねると、協議内容や交渉中の対応など会社側に有利なものが記録されないおそれがあります。

そのため、会社の方で議事録を作成することが望ましいといえます。録音についても、録音を行うか否かや、会社と労働組合のどちらかが録音する場合は他方に編集していない録音データを交付することなどを取り決めておいた方がよいでしょう。

団体交渉の場で会社がやってはいけないこと

団体交渉中や終了後に、労働組合から書類への署名を求められることがあります(「議事録」という題名である場合もあります。)。しかし、労働組合が準備してきたものである以上、会社にとって不利な内容であることは想像に難くありません。

また、「議事録」という題名であっても会社側の人間が署名することで労働協約の効力を有する書面となる可能性があります。いかなる題名や内容であれ、団体交渉のその場で渡されたものに、十分に内容を吟味しないまま署名してはいけません。

労働組合との団体交渉の終結

労使間で合意に至った場合

協議の結果、労使間で合意に至った場合、合意の内容を合意書にまとめます。労使間で合意したということを証拠として残すため、会社側だけでなく、従業員・労働組合側の署名押印も必ず取り付けなければなりません。

団体交渉が決裂した場合

団体交渉が決裂した場合、労働組合が労働委員会や労働局紛争調整委員会といった第三者にあっせん手続を求めたり、裁判所に労働審判や労働裁判を求めたりすることが考えられます。これらは当事者間で折合いがつかない場合に第三者を交えて問題解決を目指すもので、会社としても問題を早く解決したい場合には会社から申立てをすることも可能です。

また、労働組合が労働委員会に不当労働行為の審査申立てや、労働基準監督署への申告を行うこともあります。会社としては、労働委員会や労基署に対して、交渉内容や手続に問題が無いことを説明しなければなりません。

団体交渉に関する裁判例

会社の団体交渉義務について判断したカールツアイス事件について解説します。

事件の概要

A労働組合とカールツアイス社(X社)の間では何度か団体交渉と協定締結が行われていたところ、数度目の団体交渉でA組合が申し入れた協議事項について、X社は交渉に応じませんでした。

この対応が不当労働行為にあたるとして、A組合は労働委員会(Y)に救済申立てを行い、YはX社に対し、誠実に団体交渉に応じるよう命じました(救済命令)。X社はこの救済命令の取消しを求めて訴えを提起しました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は次のように判断し、X社が団体交渉に誠実に対応する義務を果たしていないとして、 X社の請求を棄却しました(東京地判平成元年9月22日労判548号64頁)。

すなわち、使用者が正当な理由なく団体交渉を拒んだ場合だけでなく、(団体交渉に応じてはいるものの)誠意をもって団体交渉にあたったと認められない場合も、労働組合法7条2号が禁止する団体交渉の拒否として不当労働行為となる。団体交渉では労働組合の主張に対する回答や会社の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示したりする必要があり、労働組合の要求に応じることができない場合でもその根拠を示して反論するなどの努力をすべき義務がある、とされました。

ポイント・解説

この裁判例では、使用者には誠実に団体交渉にあたった上で合意達成の可能性を模索する義務があり、この誠実団交義務に違反すれば、団体交渉の拒否として不当労働行為にあたるとされました。会社として労働組合の要求には応じられない、譲歩する余地がないと判断した場合でも、その根拠を十分に説明しなければ、誠実な対応を尽くしていないとして団体交渉を拒否したものとされる可能性があるため、注意が必要です。

早期解決には冷静かつ粘り強い交渉が必要

団体交渉では、労働組合の要求が会社としてもそのまま受け入れられるものであることはほぼありません。相互に納得できる条件まで譲歩して折合いをつけるためには、粘り強い交渉が必要です。

また、頭に血が上ってしまい冷静な判断ができない状態で交渉にあたれば、不適切な対応をして不当労働行為であると責められてしまったり、会社にとって不利な条件を誤って受け入れてしまったりするおそれがあります。団体交渉の場では,冷静な対応が必要です。

団体交渉の進め方に関するQ&A

団体交渉にかかる回数や期間はどのくらいですか?

団体交渉で問題解決に至るまでには、数週間から1か月程度に1回の話合いが少なくとも数回は行われることが多く、その場合2、3か月程度を要することとなりますが、問題が複雑である場合や双方の主張の折合いがなかなかつかない場合など、さらに長期間を要することも少なくありません。

双方の主張が平行線で合意に至らない場合、何か解決策はありますか?

会社が団体交渉に誠実に対応して議論を尽くしたにもかかわらず、双方の主張が平行線で合意に至らない場合、団体交渉を打ち切り、第三者(労働委員会、労働局紛争調整委員会)によるあっせん手続や、裁判所での手続(労働審判、労働裁判)による解決を目指すことが考えられます。

2回目以降の団体交渉の日程は、どのように決定するのでしょうか?

一般的な定期開催のミーティングのように、団体交渉の中で2回目以降の団体交渉の日程を決定することもできます。しかし、会社としてはその場で決定することを避け、日程調整の上、文書で回答することとした方がいいでしょう。

団体交渉は業務時間中に行わなければならないのでしょうか?

団体交渉は業務時間中に行う必要はありません。業務時間中の開催が状態化してしまうと、会社業務に支障をきたすだけでなく、相手が現に会社の従業員である場合、給与の発生する業務時間中に団体交渉を行うことをも認めることになってしまうことから、業務時間外の開催とする方がよいでしょう。

労働組合からの要求は、団体交渉の場で回答しなければならないのでしょうか?

事前に想定され回答を準備している要求については交渉を進めるために団体交渉の場で回答すべきですが、想定外の要求や質問、検討に時間を要する事項などについてまでその場で回答する義務はありません。十分な検討をしないまま回答することは会社にとって不利益をもたらす可能性があるため、その場で回答することが差し支えないと考えられるものを除き、持ち帰って検討の上、書面や次回の団体交渉の場で回答するようにするべきです。

団体交渉を会社の施設で開催するよう要求されましたが、拒否することは可能ですか?

団体交渉の場所は合理的な範囲で労使自治に委ねられるため、合理的な理由がないにもかかわらず会社が会社施設での開催を拒否する場合は団交義務違反となります。反対に、労働組合側が会社施設での開催を求めることが不合理な場合、会社が施設での団体交渉を拒否することは可能です。

労働組合側の参加人数が大人数である場合、どのような対応が必要ですか?

法的に労働組合側の交渉権限を持つのは、組合の代表者か組合から委任を受けた者です。労働組合が大人数で押しかけてきた場合、大人数がまとまりなく発言して怒号や不規則発言が飛び交うような状況では協議もままならないことも多いですし、会社としてもそのように協議が困難な状況で団体交渉に応じる義務はありません。

労働組合側の交渉担当者が定まり、交渉ができる体制が整うまで、交渉の実施を留保するべきです。参加人数について事前に書面等で団体交渉に入る前に、参加者の限定や交渉者の決定を求め、応じないようであれば開催を延期しましょう。

会社が団体交渉を打ち切ることができるケースについて教えて下さい。

交渉を十分に尽くさないまま団体交渉を打ち切れば団交義務違反となりますが、労働組合側の主張に対して根拠や資料を示した上で具体的な説明を行い反論するなど、使用者が誠実に対応しても合意に至らず交渉が行き詰った場合は、交渉を打ち切ることができます。

団体交渉に向けて、事前に想定問答集を作成することは認められますか?

すでになされている、あるいは予想しうる労働組合の主張に対する回答、反論の準備を十分に行うことは、団体交渉に誠実に対応する上で必須です。そのため、想定問答集の作成は認められますし、団体交渉に向けて事前に行うべきことといえます。

社長の代わりに、部長や課長などの管理職が団体交渉に出席することは可能ですか?

社長ではなく、団体交渉の担当権限を有する労務担当役員や人事部長などの管理職が団体交渉に出席することは可能です。

なお、組合側から出席を求められた管理職者に交渉担当権限はあっても協約締結権限まではない場合、そのことを理由に交渉を拒否するのではなく、交渉には応じた上で、合意が成立した時点で締結権限を有する者と協約成立の努力をすべきであるとされています(全逓都城郵便局事件、最判昭和51年6月3日労判254号20頁)。

団体交渉で労働協約を締結した場合、現在の就業規則はどうなりますか?

労使者間の合意による労働協約は、会社が一方的に定めたルールである就業規則に優先します。そのため、就業規則のうち労働協約の内容と相反する部分は無効となりますが、それ以外の部分については有効です。

また、労働協約は会社とそれを締結した労働組合の間での取決めであるため、原則としてその労働組合の構成員との間でのみ適用され、労働組合に関係ない従業員との間では就業規則の内容は変更されません。

団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識が必要となります。まずは弁護士にご相談下さい。

団体交渉に向けた事前準備、交渉への同席、組合の主張への反論や解決策の検討、労働協約内容の精査など、団体交渉を有利に進めるためには、団体交渉の全過程において専門的な知識が必要であり、労働法務に精通した弁護士の関与が有用です。

団体交渉の申込みを受けたら、まずは弁護士にご相談ください。

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