労務

ハラスメントの調査報告書とは?書き方やポイント

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

  • ハラスメント

社内でハラスメント事件が起き、被害の報告を被害者等から受けた場合、まず、内部調査を行います。

ハラスメントの内部調査を経て、「調査報告書」を作成します。

調査報告書は、ハラスメントの疑いがある事案を解決するために、重要な資料となります。

ここでは、ハラスメントに関する調査報告書の記載事項や書き方のポイント等を解説いたします。

ハラスメントの「調査報告書」とは

ハラスメントの「調査報告書」とは、企業が実施したハラスメントについての調査結果がまとめられた文書になります。

ハラスメントの内部調査は、

  1. 被害者の意向確認
  2. 緊急措置の検討
  3. 当事者・関係者からのヒアリング
  4. ハラスメントの有無についての事実認定
  5. 調査結果の通知
  6. 調査報告書の作成

という流れに沿って行われます。

このような流れで、ハラスメントについての調査を行い、ハラスメントに関する事実が認定されたあとに作成されるのが通常です。

調査報告書を作成する目的

ハラスメントの内部調査後に調査報告書を作成する目的は、①再犯防止策を実行するため、②諮問委員会等の外部へ説明するため、③加害者の懲戒処分を決めるためにあります。③については、加害者側が懲戒処分に納得できず、訴えられた際の証拠にもなります。

このような目的のために、調査報告書を作成しますが、口頭ではなく、書面で行うことが重要です。なぜなら、口頭では言った・言わないという事態が生じてしまいますが、書面で報告することにより、そのような事態を避けることができるからです。

調査報告書の作成者

調査報告書を作成するのは、ハラスメントの内部調査を担当した者が作成することになります。

ハラスメントの内部調査を行うのは、社内の者が行うのではなく、中立な調査を行うために、弁護士など外部の者に委託することも多いのです。

例えば、被害者や加害者の直属の上司などが調査を行った場合、調査の中立性がないとして、ハラスメントの内部調査自体の効力が失われてしまいます。

そのようなことを避けるために、ハラスメントの調査委員会は、中立性が担保できる者で構成されるようにするべきです。

【テンプレート付】ハラスメントの調査報告書の書き方

ハラスメントの調査報告書

ここでハラスメントの調査報告書のテンプレートをご紹介いたしますので、書き方を参考にしてください。

【調査の目的】
ハラスメントの調査、有無の判定、再発防止策を策定することを記載してください。

【調査方法】
当事者や関係者へのヒアリング、証拠資料の収集・分析など具体的な調査方法を記載してください。

【調査結果】
ヒアリング内容、調査により判明した事実関係、ハラスメントの態様などを記載してください。

【調査の結論】
ハラスメントの有無に関する事実認定、調査委員会としての結論などを記載してください。

【調査の提言】
ハラスメントの再発防止策などを記載してください。

【調査担当者】
調査を実施した者の名前やメンバーの独立性などを記載してください

【調査実施期間】
調査を実施した期間を記載してください。

【調査報告書作成日】
調査報告書を作成した日を記載してください。

その他、調査報告書に必要な事項等あれば、追加していただければと思います。

ハラスメントの調査報告書を作成するポイント

以下では、ハラスメントの調査報告書を作成するポイントについてご説明いたします。

客観的かつ公正に記載する

まず、【客観的かつ公正な観点から、事実を正確に記載する】ことがポイントとなります。

客観的かつ公正でないと、ハラスメントの調査の効力自体に影響してしまいます。

調査によって判明した事実から、どのような結果・結論が導かれたのかという流れを分かりやすく記載するべきです。

なぜなら、読む人、すなわち、処分権者にもわかりやすいように書かなければならず、そうでなければ適正な判断ができないからです。

弁護士などの専門家からアドバイスをもらうことにより、適切な報告書を作成することができるので、労働問題に詳しい弁護士に相談してみるといいでしょう。

再発防止策は具体的に記載する

そして、調査報告書には、【再発防止策を記載】するようにしましょう。そして、再発防止策についても具体的かつ実行可能な内容にしなければなりません。

抽象的な防止策・執行不可能な防止策を記載しても、企業としては防止策を行うことができないからです。

ハラスメントの再発防止策の具体例を挙げますので、ご参考にしてください。

  • 行為者に対する再発防止研修の実施
  • ハラスメントに関する会社の方針の周知・啓発
  • 全社員対象の面談やアンケート調査
  • ハラスメントの調査マニュアルの整備

調査報告書の開示義務について

ハラスメントの調査報告書を作成したあと、ハラスメントの当事者から、「調査報告書を開示してほしい」と言われることがあります。特にハラスメントの事実が認められないという報告をした場合に、被害者が納得できないとして開示を請求される可能性があります。

原則として、調査報告書を開示する義務はありませんが、後に生じるトラブルを防止するために、ハラスメントの当事者に開示することを前提とした報告書にすることが望ましいといえます。

もっとも、開示することを前提とした報告書といっても、そのような報告書を作成することは容易ではないので、弁護士などの専門家にご相談することをお勧めします。

ハラスメント調査や報告書の作成は、専門家である弁護士への相談がおすすめです。

これまでハラスメント調査や報告書の作成についてご説明いたしました。ハラスメントの内部調査において、調査報告書は非常に重要なものとなります。

ハラスメントの内部調査を行い、調査報告書を作成するということについて、労働問題の知識が不可欠です。弊所の弁護士は、これまで労働問題を多く扱い、多くの事件を解決してきました。

弊所の弁護士であれば、労働問題に精通しているため、調査報告書の作成だけでなく、作成された調査報告書のチェック・アドバイスもすることができます。調査報告書の作成段階ではなく、内部調査の段階で、弁護士に依頼しておく方が安心できることも多いと思います。

まずは、お気軽にお問い合わせください。

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姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
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