労務

答弁書を書くうえでのポイントについて解説

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

  • 労働審判

労働審判における答弁書は、主張を整理し自らの立場を明確に示すための重要な基礎資料です。限られた期日で判断が下される手続の性質上、事実関係と証拠を簡潔かつ的確に示すことが欠かせません。

本コラムでは、説得力ある答弁書を作成するための実務的なポイントを解説します。

労働審判を有利に進めるには「答弁書」が重要

労働審判を有利に進めるには、最初の段階で提出する「答弁書」が極めて重要です。審判は短期間で結論が出されるため、ここで事実関係や争点、自身の主張をどれだけ明確かつ論理的に示せるかが判断に大きく影響します。

答弁書は、審判委員に自分の立場を理解してもらうための“基準点”となる重要な資料なのです。

答弁書は誰が作成するのか?

労働審判の答弁書は、原則として当事者本人(労働者または会社側)が作成します。ただし、法律的な主張や証拠整理が重要となるため、内容に不安がある場合は専門家である弁護士が作成をサポートすることが一般的です。

最終的な提出者は当事者本人ですが、実務では、短期間に事実関係や争点、自身の主張を明確かつ論理的に示す必要があるため弁護士が作成・提出を代行するケースが多いです。

労働審判の答弁書に記載する内容とは?

労働審判の答弁書には、主張を整理し審判委員に自分の立場を明確に伝えるため、一般的に次のような内容を記載します。

  1. 争点ごとの事実関係
    相手方の申立書の記載を認めるか否か、否認する場合は理由を明確に示します。
  2. 自らの主張
    労働条件やトラブル発生の経緯などを、時系列で分かりやすく記載します。
  3. 法的な根拠や考え方
    退職の有効性、残業代の計算方法、ハラスメントの評価などについて、自分の見解を整理します。
  4. 添付する証拠の整理
    就業規則、給与明細、メール、メモなど、自らの主張を裏付ける資料を一覧として示します。
    これらを簡潔かつ論理的にまとめることで、審判手続を有利に進めやすくなります。

関係者の供述を記載することは可能?

関係者の供述を答弁書に記載することは可能です。むしろ、事実関係を裏付けるうえで有用とされる場面もあります。

ただし、関係者の供述を答弁書に書いても、その人の陳述書がある場合に比べると証拠価値は弱いです。関係者の供述を答弁書に記載する場合には、その関係者の署名捺印のある陳述書を別途添付することが望ましいでしょう。

答弁書を書くうえでのポイント

労働審判の答弁書を書く際の主なポイントは、次のとおりです。

争点を正確に把握しておく

相手方の主張に対し、認める点・争う点をはっきり区別することで、審判委員が全体像を把握しやすくなります。

会社の主張が伝わるよう具体的に記載する

複雑な説明は避け、発生した事実を「いつ・どこで・誰が・何をしたか」の順で具体的に記載すると読み手に伝わりやすくなります。

そのうえで、退職の有効性、残業代の計算方法、ハラスメントの評価など争点になっている、自身の見解を整理します。自身の見解に有利な裁判例や文献をもとに主張をすればより説得的になります。

事実を裏付ける証拠を記載する

特に争点に関する重要な事実については、主張だけではなく、就業規則、給与明細、メール、メモなど、自らの主張を裏付ける客観的証拠を提出する必要があります。

メモ等を証拠として用いることは可能か?

メモを労働審判の証拠として用いることは可能です。実務でもしばしば提出されます。ただし、証拠価値には特徴と注意点があります。

  • 出来事をその場で記録したメモ
  • 日時、状況、発言内容を書き留めたノート

などは、事実経過を示す資料として一定の信用性が認められます。

ただし、メモは本人が作成するため、第三者が関与していない、作成時期の真偽を争われやすいことなどから証拠価値は限定的です。
そのため、メール・勤怠記録・音声・第三者陳述など、より客観性の高い証拠と併せて提出すると効果的です。

相手の主張に対する認否を明確にする

相手方の主張に対する認否を明確にすることは、答弁書作成で最も重要なポイントの一つです。労働審判は短期間で判断がなされるため、どの事実が争点なのかを明確にすることが審判委員の判断を左右します。

主張が食い違う部分を明確にし、特にその争点に関する自分の主張や証拠を的確に論理的にまとめることが極めて重要です。

安易に全てを認めない・否認しない

相手方の主張に対し、安易に「全て認める」「全て否認する」とすることは非常に危険です。

安易な一括認否が危険な理由としては、不利な事実まで認めてしまう可能性がある、本来争うべき重要な点を見逃してしまう、反対に、全否認すると信用性が低く見られることがある、審判委員が争点を把握しづらくなるため不利に働くこともあるといったリスクが存在します。

一度提出した答弁書の内容を変更・追加できる?

一度提出した答弁書の内容を変更・追加することは可能です。

しかし、労働審判の答弁書は、第1回期日前に、会社側の主張や立場を労働審判委員会(裁判官1名、労働審判員2名)に伝える最初の機会であり、その後の審理の方向性を左右する重要な資料となります。

1年以上解決までにかかることもある訴訟とは異なり、労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終結させる短期集中型の手続きです。このため、最初の答弁書で会社側の主張を漏れなく、客観的資料をもとにかつ簡潔に分かりやすく提示することが必要不可欠です。

事案によっては、第1回期日の後に和解勧告をされることもあり、労働者側の申立書と使用者側の答弁書の内容で裁判官や労働審判員の心証が固まっていることもあります。

このため、労働審判の答弁書の出来不出来によって、労働審判手続における会社側の勝敗を決めてしまう可能性の高い重要な書類といっても過言ではないため、安易に追加で主張すればよい、主張内容を変更すればよいといった考えは注意が必要です。

答弁書には提出期限があるので注意

労働審判では、期限は裁判所からの通知や審判手続案内に明記されており、通常審判期日の前までに答弁書の提出を求められています。
期限を過ぎると、裁判官や労働審判員に十分に自分の主張や証拠が伝わらない可能性があります。

提出期限を確認したら、余裕を持って作成・整理して、追加主張や証拠を後から出す場合も、期日までの提出を意識しましょう。

提出期限までに間に合わない場合は?

提出期限までに答弁書が間に合わない場合でも、関係者の陳述書作成に時間を要するなど、事前に裁判所に連絡して事情を説明するようにしましょう。

ただし、提出期限の延長は、基本的には認められないため、ご自身で対応が難しい場合には、早急に弁護士に相談してください。法的主張や証拠の整理方法も含めた対応をアドバイスを受けることができます。

労働審判では答弁書の内容が非常に重要となります。答弁書の作成は、労働問題を得意とする弁護士にお任せください。

労働審判の答弁書は、第1回期日前に、会社側の主張や立場を労働審判委員会(裁判官1名、労働審判員2名)に伝える最初の機会であり、その後の審理の方向性を左右する重要な資料となります。

1年以上解決までにかかることもある訴訟とは異なり、労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終結させる短期集中型の手続きです。このため、最初の答弁書で会社側の主張を漏れなく、客観的資料をもとにかつ簡潔に分かりやすく提示することが必要不可欠です。

事案によっては、第1回期日の後に和解勧告をされることもあり、労働者側の申立書と使用者側の答弁書の内容で裁判官や労働審判員の心証が固まっていることもあります。

このため、労働審判の答弁書の出来不出来によって、労働審判手続における会社側の勝敗を決めてしまう可能性の高い重要な書類といっても過言ではありません。
答弁書の作成は、労働問題を得意とする弁護士にお任せください。

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姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
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