監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
- 労働審判
労働審判制度は、労使間の紛争を、その実情に即して迅速、適正かつ実効的に解決するために設計された制度です。
労働審判では、最終的に解決金の支払によって紛争を解決することが大多数です。
この記事では、解決金の決定プロセスと、会社側がとるべき戦略について詳しく解説します。
目次
労働審判で会社が支払う解決金の相場は?
労働審判では、最終的に会社が労働者に解決金を支払うことが多いです。
2020年及び2021年に地方裁判所において調停又は審判で終局した労働審判事案785件を対象事案とした、労働政策研究・研修機構の調査では、解決金額の最多階層は100万円台、中央値は150万円、平均値は285万2637円でした。
労働審判における「解決金」とは?
労働審判における解決金は、単なる一つの請求項目ではなく、複数の債権請求を統合した概念です。
労働者が主張する各種請求(未払賃金、慰謝料、ボーナス相当額など)を、労働審判の和解において一括して処理するために用いられる金額のことを指します。
解決金の金額はどのようにして決まるのか?
解決金の金額を決めるに当たっては、いくつかの基準が考えられます。
月給を基準として決定する
不当解雇事案等において、月給を基準として解決金を算定することがあります。
この場合、月給×○か月分という計算となりますが、最終的に何か月分の給料相当額を支払うかについては、使用者と労働者の責任割合等を考慮して調整していくことになります。
会社と労働者の責任の割合で決定する
現実の労働紛争では、会社側に一方的な責任があるのではなく、程度の差こそあれ双方に責任があるという状況も多いです。
労働審判では、この責任割合を判断し、解決金の額を調整することが行われます。
例えば、解雇理由の妥当性に疑いがあるものの、労働者側の勤務態度に問題があった場合、月給6か月分が基本となるところを、労働者側の責任を40パーセント評価して3.6か月分に削減するといった柔軟な調整が行われます。
この責任割合の認定に当たっては、会社側の解雇手続の適正性、労働者への改善機会の提供の有無、労働者の勤務態度不良の重大性・反復性等の諸要素が考慮されます。
責任が同程度であれば解決金は不要か?
責任が同程度と判断される場合、直感的には相殺により解決金は不要と考えられます。
しかし、実務ではほぼ全ての事案で何らかの金銭給付が成立します。その理由は、労働審判の本質的特性にあります。
労働者側が労働審判を申し立てる背景には、常に金銭請求があります。申立人(労働者)が金銭的なメリットを全く受けずに紛争を終結させるインセンティブは存在しません。
そこで、たとえ責任が同程度でも、合意による解決のために一定額の解決金を支払うことが望ましい場合があり、一概に解決金が不要とはいいきれません。
解雇期間中の賃金を支払う
解雇の有効性が争点となっている事案では、解雇期間中の賃金(バックペイ)の計算が重要な要素になります。仮に解雇が無効と判断される場合、法的には労働関係は継続していることになるからです。
解雇から和解までの期間が長い場合、その間の生活保障をどの程度会社が負うべきか、という問題も生じます。特に、労働者が既に新たな職を得ている場合、その給与との関係で調整されることもあります。
会社の業績は解決金の額に影響するのか?
一般的には、解決金の額に対する会社の業績の影響は限定的です。
しかし、会社の支払能力(資力)が乏しい場合には、解決金支払の実現可能性が勘案され、解決金の額に影響が及ぶということも考えられます。
不当解雇について争われた場合の解決金
不当解雇事案は、労働審判における最も典型的な紛争類型です。
このタイプの事案では、解決金の金額は、解雇の有効性の判断に依存します。
解雇の有効性によって金額が変動する
労働審判委員会が開示する心証(裁判官の判断傾向)により、解決金の額は大きく変動します。
解雇については、労働契約法上の解雇権濫用規制があり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、当該解雇は無効となります。
解雇が有効と判断される心証が示された場合には、解決金の金額は低くなり、解雇が無効と判断される心証が示された場合には、解決金の金額は高くなります。
労働審判の解決金をなるべく抑えるには?
労働審判の解決金をなるべく抑えるには、以下のような方法が考えられます。
解決金の交渉を弁護士に依頼する
労働審判における和解交渉は、単なる言い値での交渉ではなく、法的主張と事実認定に基づいた戦略的な交渉です。
弁護士に依頼することで、見通しを持った上で、解決金について戦略的に交渉を進めることが可能となります。
労働者側にも責任があることを主張する
労働者側にも責任があることを主張することで、会社側の責任割合を小さくできる可能性があります。
そのためには、具体的な主張及びそれを裏付ける証拠が必要となります。
以下、労働者の勤務態度が不良であったケースを例に、会社側がとるべき対応について説明します。
まず、単に「勤務態度が悪かった」というような抽象的主張をするのではなく、問題があった行為の日時、行為の内容、それに対する会社側の注意・指導記録を時系列で示すなど、具体的に主張していく必要があります。
会社による注意・指導の記録について、面談記録等が残っているのであれば、それが証拠として提出することが望ましいです。
他の証拠としては、労働者とのメールのやりとり、勤務記録、顧客からのクレーム記録等が考えられます。主観的評価のみではなく、客観的な証拠を揃えることが重要です。
また、労働者の勤務態度不良により、会社側が受けた具体的損害(失注した案件、損害賠償請求を受けた事例等)を主張することで、責任割合の考慮につながります。
労働者保護の必要性が薄いことを主張する
労働者保護の必要性が薄いことを主張するのも、解決金を抑える手段となります。
例えば、解雇の有効性が争われている事案において、解雇後、労働者が速やかに新たな職を得た場合には、労働者の経済的損失は軽微であると主張することができます。特に、同等またはそれ以上の給与の職を得た場合の説得力は高いです。
また、試用期間中の労働者や有期契約労働者といった、雇用関係の継続性に対する期待値が低い労働者については、保護の必要性が相対的に低くなります。
労働審判の早期解決を目指すなら解決金による和解も検討すべきです。お悩みなら一度弁護士にご相談ください。
労働審判制度の最大の特徴は、その迅速性にあります。
申立てから3回以内の期日を経て、通常は2~3か月で決着がつきます。この短期間の中で、会社側にとって最適な解決を実現するためには、戦略的かつ早期の対応が不可欠です。
また、解決金の額の判断には、労働法に関する知識が必要となります。
労働審判における解決金についてのご判断に迷われている場合、労働法に精通した弁護士への相談が有効です。ぜひ一度弁護士に相談ください。

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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
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