新型コロナウイルスによる自宅待機命令

公開日:2020年8月28日
  • 新型コロナウイルス

新型コロナウイルスに感染した労働者が職場に出勤した場合には、職場がクラスターとなり職場全体に新型コロナウイルスが蔓延し、業務を停止せざるを得なくなり、会社が大きな損害を被ることが容易に想定されます。

そのため、感染している可能性がある労働者を職場に出勤させないこと、すなわち、労働者に対して「自宅待機命令」を出す必要性は高くなってきます。

新型コロナウイルス流行に伴う自宅待機命令

「自宅待機」とは、使用者が労働者を出社させるのが不適当と判断した場合に、当該労働者を出社させずに自宅で待機するように命じる措置をいいます。そもそも、使用者が労働者に対して、自宅待機命令を出すことは可能でしょうか。

自宅待機命令の効力について

業務命令としての自宅待機命令とは

使用者は、原則として、随時、人事権の行使として自宅待機命令を出すことができます。もっとも、正当な理由のない自宅待機命令は、人事権の行使の裁量を逸脱・濫用したものとして違法となります。

新型コロナウイルスによる就業制限は可能か?

そして、①労働者が新型コロナウイルスに罹ったことを理由とする自宅待機命令や②労働者が新型コロナウイルスに罹った疑いがあることを理由とする自宅待機命令は、正当な人事権の行使として適法ですから、就業制限も可能です。

自宅待機中の給与を支払う義務

新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合に使用者が自宅待機中の給与を支払う義務があるかどうかは、使用者に「使用者の責に帰すべき事由」があるかどうかによって変わってきます。

では、「使用者の責に帰すべき事由」とはどういうことでしょうか。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは

労働基準法第26条によると、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」となっています。

つまり、使用者の責めに帰すべき事由がある(=経営者の自主的な判断で休業する)場合には休業手当を支払う必要があり、使用者の責めに帰すべき事由がない(=不可抗力で休業する)場合には支払いは不要ということになります。

厚労省見解では、使用者の責めに帰すべき事由なし、つまり不可効力による休業と言える要件を二つ示しています。

(1)休業の原因が事業の外部より発生した事故であること(外部性)。例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請などのように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因で休業していること。

(2)事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること(回避可能性)。

この2つの要件にあたれば、使用者の責に帰すべき事由がないことになります。

派遣社員への自宅待機命令

派遣の契約期間中にもかかわらず、自宅待機を命じられて業務をさせてもらえないとき、自宅待機の理由に「使用者の責に帰すべき事由」があれば、自宅待機中の賃金の支払いを求めることができます。

ただし、個々の事情によって、賃金の全額を請求できる場合と、賃金の6割にあたる休業手当を請求できる場合とがあります。

自宅待機の要否は派遣元、派遣先のどちらが判断するのか?

賃金や休業手当の支払いを求めるには、まずは派遣元に交渉してみましょう。派遣元に交渉する前に、次のことを確認しましょう。

・自宅待機の理由(派遣元に尋ねる)
・派遣先の都合による休業の場合の派遣元の責任(雇用契約書を見る)

確認ができたら、自宅待機の理由によって、賃金の全額または休業手当の支払いを求めましょう。賃金や休業手当を支払う義務があるのは、あくまで派遣元です。

自宅待機命令に関するQ&A

就業規則に規程がなくても自宅待機を命じることは可能ですか?

自宅待機命令は、人事権の行使としてなされるものであるため、就業規則の根拠は不要です。

社員の家族に風邪の症状がある場合、自宅待機を命じるべきでしょうか?

風邪の症状と新型コロナウイルスの初期症状が判別しづらいため、風邪の症状であったとしても、当該社員も新型コロナウイルスに感染している可能性がある以上、ひとまずは自宅待機を命じるべきです。

自宅待機中に有給休暇を取得してもらうことは可能ですか?

労使間でそのような合意があれば可能です。もっとも、労働者の意思に反して有給休暇を取得してもらうことを強制することはできません。

在宅勤務が可能な社員に自宅待機を命じた場合、休業手当の支払いは必要ですか?

上記、「3-1「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは」のとおり、厚労省見解では、使用者の責めに帰すべき事由なし、つまり不可効力による休業と言える要件を二つ示しており,休業させる前にリモートワークや配置転換を検討していなければ、(2)の事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること(回避可能性)という要件を満たしません。

そのため、在宅勤務が可能であるにもかかわらず、自宅待機命令を命じることは、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたるため、使用者は、労働者に対して休業手当を支払う必要があります。

新型コロナウイルス感染の疑いがある社員を自宅待機とした場合、傷病手当金は支給されますか?

厚労省見解では、被保険者に発熱などの自覚症状があるため自宅療養を行っており、療養のため労務に服することができない場合には、傷病手当金の対象となりうるとしています。

新型コロナウイルス感染の疑いがある社員を自宅待機とした場合も、これと同様と考えられるので、傷病手当金の対象となりえます。

自宅待機命令と出勤停止命令の違いについて教えて下さい。

自宅待機は業務命令であり、出勤停止は懲戒処分であると言えます。自宅待機は業務命令なので、就業規則上の定義がなくても実施できます。

一方、出勤停止は懲戒処分であり、就業規則の規定なしに実行することはできません。自社の就業規則を今一度見直してください。

新入社員を自宅待機させる場合、休業手当の支払いは必要ですか?

採用内定というのは、始期付き解約権留保付労働契約が成立しているとされ、通常であれば、入社日である4月1日には労働契約の効力が発生しているので、使用者の責に帰すべき事由により自宅待機をさせるとすれば、通常の社員と同様の休業手当の支払いが求められることになります。

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染した場合、労災は適用されますか?

労災が適用されるためには、新型コロナウイルスに「業務上」感染したことが必要です。

ここで、「業務上」とは、業務が原因となったということ、つまり、業務と新型コロナウイルスに感染したことの因果関係が必要です。自宅待機中の感染ということは、業務とは無関係に新型コロナウイルスに感染したということなので、業務との因果関係が認められず、「業務上」感染したとはいえないため、労災は適用されません。

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