監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
交通事故に遭うと、治療費や通院の負担だけでなく、仕事や家事への影響にも不安を抱きやすくなります。
その中でも、多くの方が悩まれるのが「示談金がどのように決まるのか」という点です。
また、示談金と慰謝料の違いが分かりづらく、提示された金額が妥当なのか判断に迷う場面もあります。
この記事では、示談金に含まれる内容や相場の目安、確認しておきたいポイントについて、分かりやすく解説します。
目次
交通事故の示談金とは
交通事故の示談金とは、事故によって生じた損害を補うために支払われる金銭のことです。
対象となる損害項目は、治療費などの実際にかかった費用だけでなく、通院による精神的苦痛に対する慰謝料や、仕事を休んだことで得られなかった収入など、多岐にわたります。
示談交渉では、民法第709条が定める「不法行為に基づく損害賠償」の考え方をもとに、被害者が受けた損害をどの程度補えるかを双方で話し合いながら金額を決めていきます。
示談金と慰謝料の違い
「示談金」と「慰謝料」には、以下のような違いがあります。
- 示談金
交通事故で生じた損害全体を補うために支払われる金額をまとめたものです。
治療費、休業損害、車の修理費、慰謝料など、さまざまな損害項目が含まれます。 - 慰謝料
慰謝料は示談金の一部であり、事故によって受けた精神的苦痛への補償です。
慰謝料は、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料に分かれます。
示談金はいつ支払われる?
示談成立から入金までは、1~2週間程度が目安とされ、書類の提出状況によって前後する場合もあります。
示談金は、双方が示談内容に合意し、示談書へ署名したあとに支払われます。
支払までの期間は事故の状況や治療期間によって変わりますが、治療終了後や、後遺障害等級に認定されるなど、すべての損害額が確定してから示談交渉を進めるのが一般的です。
示談金には請求期限(時効)がある
示談金の請求には時効があり、事故の翌日や症状固定の翌日を起算点として進行します。
期間を過ぎると請求が難しくなるため、早めの手続が大切です。
詳しい請求期限については、下表をご参考ください。
| 事故の種類 | 起算日 | 時効 |
|---|---|---|
| 物損事故 | 事故の翌日 | 3年 |
| 人身事故(後遺障害なし) | 事故の翌日 | 5年 |
| 人身事故(後遺障害あり) | 症状固定の翌日 | 5年 |
| 死亡事故 | 死亡の翌日 | 5年 |
| 加害者不明の事故 | 事故の翌日 | 20年 |
| 加害者不明の事故 | 加害者が判明した時 | 3年または5年 |
交通事故の示談金に含まれるもの
交通事故の示談金には、下表のような項目が含まれます。
| 入通院慰謝料 | 事故による怪我の治療や通院で生じた精神的苦痛に対する補償 |
|---|---|
| 後遺障害慰謝料 | 事故の怪我が後遺障害として残った精神的苦痛に対する補償 |
| 死亡慰謝料 | 事故で被害者が亡くなった際に、被害者本人の苦痛や遺族が受けた精神的苦痛に対する補償 |
| 治療関係費 | 治療費・入院費・薬代・通院の交通費など、怪我の回復に必要だった実際の支出を補う費用 |
| 後遺障害逸失利益 | 後遺障害によって働く能力が下がり、その結果将来得られるはずだった収入が減る分の補償 |
| 死亡逸失利益 | 被害者が交通事故によって死亡しなければ得られていた収入の補償 |
| 休業損害 | 事故による怪我のために仕事を休み、収入が減った場合に補われる補償 |
| その他 | その他、付添看護費、車の代車費用、介護費用、家屋改造費など、事故の状況や必要性に応じて認められる支出が含まれる |
交通事故の示談金の相場
| 状況 | 示談金相場 |
|---|---|
| 死傷者のいない物損事故 | 数万~30万円程度 |
| 後遺障害が残らない人身事故 | 数十万~100万円程度 |
| 後遺障害が残る人身事故 | 数百万~数千万円程度 |
| 死亡事故 | 数千万~1億円程度 |
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故で怪我を負い、入院や通院が必要になったことで生じる精神的苦痛に対して支払われる補償です。治療期間の長さや通院回数などを参考に算定されます。
慰謝料の計算には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの基準があり、それぞれ算定方法が異なります。
なかでも弁護士基準は最も高い金額となる傾向があり、どの基準で請求するかによって受け取れる額に差が生まれます。
| 通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1ヶ月 | 8万6000円 | 軽傷19万円/重傷28万円 |
| 2ヶ月 | 17万2000円 | 軽傷36万円/重傷52万円 |
| 3ヶ月 | 25万8000円 | 軽傷53万円/重傷73万円 |
| 4ヶ月 | 34万4000円 | 軽傷67万円/重傷90万円 |
| 5ヶ月 | 43万円 | 軽傷79万円/重傷105万円 |
| 6ヶ月 | 51万6000円 | 軽傷89万円/重傷116万円 |
軽い接触事故だった場合の示談金相場は?
軽い接触事故では、通院期間が短く、請求できる費用項目も限られるため、示談金の金額は一般的に数千円〜数万円程度にとどまる場合が多いです。
例えば、擦り傷があり、1週間ほどで治る軽い怪我であれば、通院日数が少ないため、入通院慰謝料も数万円ほどに収まるケースが一般的です。
また、外傷が見当たらない場合でも、一度病院で診察を受けておけば「通院1日」として扱われ、自賠責基準では1日4300円の慰謝料が認められます。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故の怪我が完治せず、痛みやしびれ、可動域の制限などの後遺障害が残った精神的苦痛に対する補償です。
事故前と同じ生活が送りにくくなる負担を考慮し、金額が算定されます。
症状固定後には、後遺障害等級認定申請の手続を行い、等級が認められると後遺障害慰謝料が発生します。
後遺障害等級は1級から14級まであり、等級が重いほど生活への影響が大きいと判断されるため、慰謝料額も高くなる仕組みです。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 1650万円(1600万円) | 2800万円 |
| 2級 | 1203万円(1163万円) | 2370万円 |
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 1150万円(1100万円) | 2800万円 |
| 2級 | 998万円(958万円) | 2370万円 |
| 3級 | 861万円(829万円) | 1990万円 |
| 4級 | 737万円(712万円) | 1670万円 |
| 5級 | 618万円(599万円) | 1400万円 |
| 6級 | 512万円(498万円) | 1180万円 |
| 7級 | 419万円(409万円) | 1000万円 |
| 8級 | 331万円(324万円) | 830万円 |
| 9級 | 249万円(245万円) | 690万円 |
| 10級 | 190万円(187万円) | 550万円 |
| 11級 | 136万円(135万円) | 420万円 |
| 12級 | 94万円(93万円) | 290万円 |
| 13級 | 57万円 | 180万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が亡くなった場合に、被害者本人が受けた精神的苦痛と、遺族が受ける深い悲しみに対して支払われる補償です。
金額は、被害者の家族構成や生活状況、家庭で果たしていた役割などを踏まえて判断されます。
自賠責基準では一定額が定められていますが、弁護士基準では家庭内での立場や扶養状況に応じて金額が変動する点が特徴です。
【自賠責基準】
自賠責基準の死亡慰謝料は、金額があらかじめ定められているため、一律で支払われるのが特徴です。
例えば、被害者に遺族が3人(被扶養者あり)の場合では、400万円+750万円+200万円となり、1350万円が死亡慰謝料として支払われます。
| 被害者本人の慰謝料 | 400万円 |
|---|---|
| 請求権者1人 | 550万円 |
| 請求権者2人 | 650万円 |
| 請求権者3人以上 | 750万円 |
| 被扶養者がいる場合 | 200万円 |
【弁護士基準】
弁護士基準の死亡慰謝料は、家庭内での役割や扶養の有無など、被害者が果たしていた社会的・家庭的立場を重視して金額が決まります。
自賠責基準と同じ例の場合、弁護士基準の死亡慰謝料は2800万円となります。
| 一家の支柱 | 2800万円 |
|---|---|
| 母親、配偶者 | 2500万円 |
| その他 | 2000万~2500万円 |
積極損害
積極損害とは、交通事故によって「実際に支払った費用」や「支出が必要になった金額」を補償するものです。
事故後の生活で追加発生した支出が対象になります。
【積極損害に含まれるもの】
- 治療費・・・診察料、検査費、薬代など
- 通院交通費・・・電車・バス・タクシーなど通院に必要な交通費
- 入院雑費・・・入院中に必要となる日用品の購入費
- 付添看護費・・・家族が付き添った場合の費用や、職業看護人を依頼した場合の費用
- 介護費用・・・後遺障害により介護が必要になった際の費用
- 装具・補助具費・・・コルセット、義足、車椅子など必要となった装具の費用
- 住宅・車両の改造費・・・生活動作に支障が生じた場合の自宅改修や車両改造の費用
消極損害
消極損害とは、交通事故に遭わなければ本来得られていたはずの収入が減ってしまった場合に補われる損害のことです。
事故によって働けなくなったり、後遺障害により労働能力が低下することで生じる「将来の経済的な不利益」を補う点が特徴です。
【消極損害に含まれるもの】
- 休業損害・・・事故の影響で働けず収入が減った分の補償
- 逸失利益・・・後遺障害や死亡により、将来得られるはずだった収入が減る分の補償
休業損害
休業損害とは、交通事故の影響で仕事を休まざるを得なくなり、その期間に収入が減ってしまった場合に補償されるものです。
給与所得者だけでなく、事故の影響で売上が落ちた自営業者も対象になります。さらに、専業主婦(夫)も、家事労働が「経済的価値のある労働」と評価されるため、休業損害を請求できます。
支給額は、事故前の収入や家事の負担状況をもとに算定され、事故によって失われた労働の対価を補うことを目的としています。
交通事故の休業損害について逸失利益
逸失利益とは、交通事故によって後遺障害が残ったり、被害者が亡くなったことで、将来得られるはずだった収入が失われた分を補う損害賠償です。
後遺障害が残る場合は、労働能力喪失率と後遺障害等級をもとに計算されます。
死亡事故では、被害者が生きていれば得られたと考えられる収入を基準に、生活費相当分を差し引いて計算するため、「死亡逸失利益」として高額になる傾向があります。
交通事故における逸失利益について交通事故の示談金シミュレーションツール
示談金がどれくらいになるのか事前に知りたい場合は、示談金シミュレーションツール(損害賠償計算機)が便利です。
治療期間や通院日数、後遺障害の有無などを入力するだけで、簡単に示談金の相場が確認できます。
ただし、示談金シミュレーションツールは、「被害者の過失が0」であるケースを前提にしているため、実際の金額とは異なる可能性があります。
より正確な金額を知りたい場合は、弁護士への相談がおすすめです。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の示談金を増額させる4つのポイント
完治または症状固定まで治療を受け続ける
交通事故の怪我は、途中で自己判断して通院をやめてしまうと、治療期間が短く見られてしまい、示談金が低くなる可能性があります。
示談金は、治療の内容や通院状況をもとに金額が決まるため、医師から「完治」または「症状固定(これ以上大きな改善が見込めない状態)」と説明されるまでは、継続して通院することが大切です。
治療の記録がしっかり残ることで、適正な賠償額の判断にもつながります。
適切な後遺障害等級を認定してもらう
交通事故の怪我が治療を続けても完治せず、痛みやしびれ、関節の動かしづらさといった症状が残る場合は、後遺障害等級認定申請を行うことが重要です。
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などを新たに請求できます。
後遺障害等級は、症状の程度によって1級から14級まで分かれており、適切な認定を受けるには医師の診断書や検査結果など、症状を裏付ける資料が欠かせません。
弁護士基準で請求する
示談金をできるだけ適正な水準で受け取りたい場合は、弁護士基準での請求を検討することが重要です。
弁護士基準は、自賠責基準や任意保険基準とは算定方法が異なり、一般的に高い水準で評価される傾向があります。
ただし、弁護士基準は弁護士が交渉に入ってはじめて適用されるもので、被害者本人が主張しても受け入れられないケースが多く見られます。
適正な示談金を受け取るためには、弁護士への相談・依頼をおすすめします。
適切な過失割合で交渉する
過失割合は示談金の金額に大きく影響するため、事故状況に基づいた適切な割合を主張しなければなりません。
相手方保険会社は、支払額を抑える目的で、被害者側の過失を実際より大きく評価しようとする場合があります。不正確な割合がそのまま適用されると、本来受け取れるはずの示談金より低い金額にとどまるおそれがあります。
そのため、事故状況を示す写真やドライブレコーダーの映像など、客観的な資料をそろえることが重要です。
弁護士介入の結果、示談金が増額した事例
(事案の概要)
依頼者が狭い道路で前方の車とすれ違おうとしたところ、相手方車両が前進できず、突然バックしてきました。その結果、後退してきた相手方車両と依頼者の車が衝突しました。
相手方保険会社から約180万円の賠償案が提示されましたが、適正額か分からず、当事務所に依頼されました。
(担当弁護士の活動)
担当弁護士が賠償案を精査したところ、本来含まれるべきである後遺障害逸失利益が全く含まれていないこと、休業損害・入通院慰謝料が低額であることが判明しました。
そこで、弁護士が示談金の再計算をした上で、相手方保険会社との交渉を開始しました。
(結果)
相手方保険会社は交渉開始当初、増額に消極的でしたが、担当弁護士が粘り強く交渉した結果、約161万円増額した約341万円の示談金を受け取ることができました。
示談金を適切な額で受け取るためにも、示談交渉は弁護士にお任せください
示談金を適切な金額で受け取るためには、治療状況の整理や後遺障害等級認定申請の手続、過失割合の検討など、専門的な判断が欠かせません。
これらを被害者ご自身だけで進めようとすると、保険会社との交渉に時間を取られたり、説明に納得できないまま話が進んでしまうことがあります。
交通事故の示談金に不安がある場合は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
弁護士であれば、示談案の確認から医学的資料の収集、損害額の算定、相手方保険会社との交渉まで一貫したサポートが可能です。
適正な金額での解決を目指すためにも、まずは一度お話をお聞かせください。

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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
