養育費算定表で養育費の相場を調べる方法

離婚問題

養育費算定表で養育費の相場を調べる方法

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

まだ成人していない子供がいる夫婦が離婚する場合において、特に気になるのは「養育費はいくらになるのか」ということでしょう。この疑問に答えるために、養育費算定表が用いられます。
養育費算定表は、夫婦の年収や子供の人数等により、養育費の金額を算定することができます。ただし、算定されるのは標準的な養育費の金額であるため、状況によっては増額・減額することもあります。
ここでは、養育費算定表の使い方などについて詳しく解説します。

目次

養育費算定表とは

養育費算定表とは、養育費の相場を分かりやすくまとめた表のことです。この算定表は、標準的な生活をしている前提で作成されており、実際の養育費の金額は諸事情によって変動します。
算定表の金額は、以下の事情によって変動します。

  • 両親の年収
  • 両親の所得の種類(給与または自営)
  • 子供の人数
  • 子供の年齢

基本的に義務者の年収が高ければ高いほど、また、権利者の年収が低ければ低いほど養育費は高くなります。

新養育費算定表について

養育費算定表は、2019年に新しくなりました。従来の算定表は、時間の経過とともに、養育費が必要な金額よりも安く算定されるようになってきていたため、新たな養育費算定表では金額が今までよりも高く算定されるように修正されています。
なお、新養育費算定表が公表されたからといって、既に取り決めた養育費の増額を、新算定表だけを根拠に求めることはできません。

養育費算定表の使い方

養育費算定表は、以下の流れで使用します。

①子供の人数と年齢を確認する
②裁判所のHPから該当の養育費算定表をダウンロードする
③相手方の年収を確認する
④自分の年収を確認する
⑤相手方と自分の年収から、養育費の金額を確認する

この使い方について、以下で解説します。

子供の人数と年齢を確認する

養育費算定表は、子供の人数や年齢に応じて分けられています。そのため、何歳の子供が何人いるかによって、該当する養育費算定表を確認することになります。

裁判所のHPから該当の算定表をダウンロードする

養育費算定表は、裁判所のHPに掲載されているので、誰でもダウンロードして利用することができます。
該当のページにある、表1~表9が養育費算定表です。この中から、子供の人数や年齢に応じた算定表を用います。

養育費算定表(裁判所)

義務者(支払う側)の年収を確認する

該当する養育費算定表をダウンロードしたら、養育費を支払う側の年収を確認します。
このとき、養育費を支払う側が会社員などで給与を受け取って生活しているか、自営業であるかによって養育費が変わるので注意しましょう。

権利者(もらう側)の年収を確認する

養育費を受け取る側(権利者)の年収を確認します。
養育費を受け取る側についても、会社員などで給与を受け取っている場合と、自営業である場合とでは養育費が変わります。

2つの年収を辿り、養育費の金額を確認する

養育費を支払う側と受け取る側の年収および「給与受給者か自営業者か」を確認したら、養育費算定表の交差するマスが、いくらの養育費とされているかを確認します。
養育費には2万円程度の幅が設けられています。その範囲でいくらにするか等は、双方で交渉します。

養育費算定表の結果はあくまでも相場

養育費算定表で算定される養育費は、あくまでも標準的な生活をすることを前提とした相場です。そのため、支払う側と受け取る側の双方が合意すれば、より高い金額にすることも、より低い金額にすることもできます。
養育費の金額の交渉では、相手方を納得させるために、算定表とは異なる金額にする合理性を訴えることが大切です。仮に、子供の学費や病気等の事情によって多額の費用がかかる等の事情があれば、養育費を増額してもらえる可能性があります。

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養育費算定表に関するQ&A

養育費算定表に関してよくある質問について、以下で解説します。

養育費算定表以上の金額をもらうにはどうしたらいいですか?

養育費算定表よりも高額の養育費を受け取るためには、協議や調停で、義務者に養育費の金額を受け入れてもらう必要があります。義務者に納得してもらうためには、「子供を私立の学校に通わせたい」等の正当な理由を説明する必要があるでしょう。
なお、養育費を高額にするために転職や退職をすることはおすすめできません。元々稼いでいた程度の金額を稼ぐ能力(稼働能力)があるとして,自身の収入が減ったにもかかわらず養育費の算定は元の収入を基準として行われてしまい,結果として得られるお金が減ってしまう可能性があります。

古い算定表で金額を決めました。新養育費算定表の金額で支払ってほしいのですが、どうしたらいいですか?

残念ながら、新養育費算定表が公表されたことだけを根拠として、古い算定表により受け取っている養育費を増額してもらうことはできません。
増額の交渉をするときには、相手方の収入が予想以上に増えたことや、自身の収入が想定外の事情で減ったこと等の理由を訴えるべきでしょう。

子供に障害があるため医療費がかかります。それでも算定表の額しか支払ってもらえないのでしょうか?

子供に障害がある場合には、養育費を算定表の金額よりも増額してもらう要素になると考えられます。なぜなら、障害のある子供には医療費や介護費等の費用がかかると考えられるからです。

新算定表の額が高すぎると調停を申し立てられました。減らさなければいけないのでしょうか?

養育費の減額を求められても、基本的には応じる必要がありません。ただし、審判になったときに、裁判官が減額を正当だと認める確率が高い事情がある場合には、交渉によって養育費の減額幅を抑える努力をするのが望ましいでしょう。
養育費の減額請求が正当だと認められる確率が高い事情として、養育費を支払っている者の収入が、予測困難な事情で大幅に減ったことや、養育費を支払っている者が再婚する等して扶養家族が増えたこと等が挙げられます。

再婚を理由に算定表の金額よりも養育費を減らしたいと言われました。受け入れなければいけないのでしょうか?

“再婚”を理由に、減額が認められることがありますが、必ずとは言い切れないのが実情です。
例えば、養育費を支払っている側が再婚して扶養家族が増えれば可能性が見出せますが、再婚による扶養人数に変動がなければ減額を求めるのは難しい場合もあります。
再婚したのが受け取っている側であれば、再婚相手にそれなりの収入があり,子供と養子縁組をすれば減額が認められ得るでしょう。一方、再婚相手が低収入だったり、子供と養子縁組をしなかったりすれば、養育費の減額が認められないこともあります。

子供が4人以上いる場合の養育費算定表がありません。相場はどう調べればいいでしょうか?

子供が4人以上いる場合には、養育費算定表では養育費の相場が調べられません。そこで、両親の「基礎収入」や子供たちの「生活費指数」を用いて養育費を算出します。
養育費を支払う側の「基礎収入」は、それぞれの年収のうち、税金等を差し引いた金額です。
「生活費指数」は、14歳以下の子供は「62」、15歳から19歳までの子供は「85」、大人は「100」とされています。
子供の生活費は、以下の計算式で求めます。

養育費を支払う親の基礎収入×養育費を受ける子供の生活費指数の合計÷(養育費を支払う親の生活費指数+子供全員の生活費指数の合計)

養育費は、以下の計算式で求めます。

子供の生活費×養育費を支払う親の基礎収入÷(養育費を支払う親の基礎収入+養育費を支払われる親の基礎収入)

上の子を夫が引き取り、下の子2人を私が引き取ることになりました。算定表はどう見たらいいのでしょうか?

養育費算定表は、1人の親が、子供全員の世話をしている状況を想定して作成されているため、双方の親が子供を引き取った場合には用いることができません。そのため、「算定表によってそれぞれが受け取れるはずの養育費を算定し、差額を支払う」といった単純な処理は行えません。
双方の親が子供を引き取ったケースでは、養育費の計算方法として、様々な考え方があります。考え方の1つとして、一方が全ての子供を引き取った状況を前提として養育費を算定し、子供の年齢による「生活費指数」を加味して差し引きするものがあります。

算定表に書かれている年収は手取りですか?支払額ですか?

算定表に書かれている年収は、手取りではなく給料全額です。なぜなら、養育費は給料から税金や社会保険料が差し引かれることを考慮して金額が決められているからです。

養育費のことでお困りのことがあれば、弁護士への相談がおすすめ

養育費について困っている方は、弁護士にご相談ください。
日本には、養育費を受け取ることができていない親が数多く存在します。仮に養育費を支払ってもらえたとしても、勘違いによって低額になってしまっているケースや、交渉の過程で譲歩しすぎたために算定表よりも低額になってしまったケースが少なくありません。
弁護士であれば、算定表による養育費の金額を基準にしながらも、特別な事情についても考慮しながら交渉することができます。
一度決めた養育費の金額は、簡単には変えられません。離婚を検討している方や、これから養育費を請求する方はもちろん、自身や相手方に何らかの事情の変化があった方につきましても、まずはお気軽にご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。