養育費の減額請求を拒否したい

離婚問題

養育費の減額請求を拒否したい

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

離婚する際にお子さんがいる場合は、養育費をいくら支払うかについて協議することが一般的です。
しかし、養育費を支払う側が再婚し、扶養家族が増えたといった場合に、養育費を減額してほしいと主張される可能性があります。

養育費の減額を請求されたとき、その請求を拒否することはできるのでしょうか。
本記事では、養育費の減額を請求された場合の対応について解説していきます。

養育費の減額請求は拒否できる?

離婚する際に養育費をいくら支払うか協議し、公正証書や調停調書などで金額を取り決めていたとしても、取り決め以降、当事者やお子さんの生活に変化が生じている場合には、その変化に即して養育費の減額が認められる可能性があります。

義務者から養育費減額の話があった場合、必ず承諾しなければならないわけではありませんが、合意できない場合には、養育費減額調停を申し立てられる可能性もあります。

そのため、養育費の減額を拒否したいと考えている方こそ、義務者の話をしっかり聞き、対応策を考える必要があります。

養育費の減額が認められる条件

民法880条では、「扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる」と規定されています。

このように、養育費の減額が認められるか否かは、養育費を取り決めした時点と減額請求した時点で事情変更があるかどうかが重要なポイントとなります。

事情変更の具体例としては、義務者が再婚して扶養家族が増えた場合、支払義務者の年収が減少した場合、権利者の年収が増加した場合等が挙げられます。

養育費の減額請求を拒否したい場合の対処法

義務者から養育費の減額を主張された場合は、まず、義務者と金額について話し合っていくことになります。
もっとも、義務者がいきなり養育費減額調停を申し立てる可能性もありますので、その場合は、調停への対応を検討する必要があります。

連絡を無視せず話し合う

上述したとおり、養育費減額を拒否したい方こそ、義務者の話をしっかり聞く必要がありますので、義務者からの連絡は無視しないようにしてください。
義務者の話をしっかり聞くことで、そもそも法的に減額請求が認められるかどうかを判断することができます。

法的に減額請求が認められないと考えられる場合には、減額請求を拒否するという対応をすることも1つの手段となります。

他方、法的に減額請求が認められる可能性がある場合は、減額請求を拒否すると調停を申し立てられる可能性がありますので、むしろ話し合いに応じ、調停で認められるよりも減額幅を小さくする方向で合意した方が良いでしょう。

生活が苦しいことを証明する

義務者の話を聞き、法的に減額請求が認められる可能性がある場合は、権利者側も事情変更があったと主張することで、養育費の減額を回避することができる可能性があります。

例えば、権利者の生活が苦しいことを証明し、権利者側の収入が取り決め時よりも低くなったと主張することで、義務者側からすると、養育費の減額を主張したのに、権利者側の収入が低くなっているため、むしろ養育費が増額されるリスクを考え、減額請求を断念する可能性もあります。

生活費が苦しいことを証明する方法としては、取り決め時の権利者側の収入と現在の権利者側の収入が分かる資料をそれぞれ提出し、比較することが考えられます。

調停で調停委員を味方につける

養育費減額調停を申し立てられた場合は、調停で調停委員を味方につけることも重要です。
調停委員は、当事者の間に入って話合いを調整する方ですので、調停委員を味方につけることができれば、こちらにとって有利な条件で相手方を説得してもらえる可能性があります。

例えば、相手方が減額請求をしてきたのに対し、実際に養育することの大変さ、現在の養育費の金額ですでに生活が苦しいこと等を調停委員に伝えることで、調停委員から相手方に対して減額の幅を小さくするよう打診してもらえたりする可能性があります。

折り合いをつけ減額幅を減らすのも1つの手

上述したとおり、減額請求が法的に認められる可能性がある場合は、減額の幅を小さくすることも1つの選択肢といえるでしょう。

義務者としては、生活が苦しいからこそ、養育費の減額を求めていることが大半です。
調停で時間をかけるよりも、早い段階で養育費の減額が見込めるのであれば、多少減額の幅を小さくしてでも合意したいと考える義務者も多いでしょう。

そのため、早期解決に応じる条件として、減額の幅を小さくするよう交渉していくことも検討すると良いでしょう。

養育費の減額拒否に関するQ&A

養育費の減額請求を拒否したら、勝手に減額されました。残りを回収できますか?

公正証書や調停調書において、養育費の金額を決定している場合は、義務者の一存で勝手に養育費を減額することはできず、減額する場合は協議や審判で内容を変更する必要があります。
そのため、勝手に減額した金額の残額については、公正証書や調停調書を用いて強制執行することが可能です。
他方、単に協議書を作成していたにすぎない場合や口頭で合意したにすぎない場合は、減額した金額の残額について強制執行をすることはできません。
その場合には、減額に応じることを条件に未払い分はしっかり払ってもらうなど、強制執行以外の方法で回収を試みる必要があります。

再婚を理由に養育費が減らされるのは納得できません。私はシングルで頑張っているのに…。減額拒否できますか?

義務者が再婚をしたことで扶養家族が増えた、という事情は、養育費の取り決め時に存在しなかった事情となりますので、事情変更が認められ、養育費の減額が認められる可能性があります。
もっとも、再婚相手の収入によっては、扶養家族として見るべきでないケースもありますので、その場合には減額を拒否することができる可能性もあります。

再婚の予定があるので養育費を減らしたいといわれましたが相手が本当にいるのか疑問です。拒否できますか?

再婚相手の有無については、義務者の戸籍謄本等から確認することが可能です。
義務者が戸籍謄本等を示さない場合には、再婚相手がいるか不明ということで、減額を拒否することも1つの方法かと思います。
なお、減額調停が申し立てられた場合でも、調停委員から戸籍謄本等を提出するよう言われることが多いので、義務者が戸籍謄本等を提出しない場合は、調停においても減額が認められない可能性があります。

算定表通りの金額なのに、支払いが苦しいから養育費を減らしたいといわれました。拒否できますか?

算定表どおりの金額であるにもかかわらず、支払が苦しいと義務者が主張するということは、取り決め時よりも収入が低くなったか、扶養家族が増えたといった事情が背景にある可能性があります。
かかる事情が生じたとなると、事情変更があったとして減額が認められる可能性がありますので、その場合は減額を拒否することは難しいと思われます。
減額の幅を小さくするなど、減額拒否以外の方法を検討すべきかと思います。

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養育費の減額請求を拒否できるかは弁護士にご相談ください

以上のように、養育費の減額請求を拒否することができるかどうかは、養育費の取り決め時より事情変更が存在するか否かがポイントとなります。

事情変更の有無によっては、減額を拒否するという方法もありえますし、減額を一定程度受け入れて減額の幅を小さくするよう交渉した方が良いケースもあります。
初動を間違えないようにするためにも、養育費の減額請求をされた方は、ぜひ一度、弊所へご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。