成年後見制度とは|相続における役割と手続き

相続問題

成年後見制度とは|相続における役割と手続き

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

相続人の中に、認知症、知的障害、精神障害等になっている人がいる場合、遺産分割協議を行うことができません。その場合、成年後見制度を利用して、遺産分割協議を行うこととなります。
そこで、ここでは、成年後見制度についてご説明いたします。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などが原因で判断能力が低下してしまっている者を保護する制度です。家庭裁判所に対して、成年後見人(後見人・保佐人・補助人)等の選任申立をし、家庭裁判所が選任した成年後見人等が本人の利益のために、本人に代わって行動することとなります。

相続の場で成年後見人が必要なケース

遺産分割協議や遺産分割調停等、遺産に関する話し合いの際、成年後見人が必要となります。なぜなら、遺産分割協議や遺産分割調停等遺産に関する話し合いは、高度な内容が含まれており、自分にとって有利かどうかの判断をしなければならないからです。相続人が認知症で判断能力が不十分な場合には、遺産に関する話し合いを行うことができないので、成年後見人を選任しなければなりません。

相続人が未成年の場合は未成年後見制度を使う

相続人が未成年者の場合には、未成年後見制度を用いることになります。
成年後見制度と混同されやすいのですが、しっかりと区別しましょう。
未成年者は、原則として行為能力が不十分であるため、未成年者が単独で遺産分割協議等を行うことができません。
そのため、相続人が未成年者の場合には未成年後見制度を用いなければなりません。

成年後見人ができること

成年後見人は、被成年後見人の身上監護と財産管理をすることが職務となります。
身上監護の具体例としては、住宅の契約や介護施設への入退所等の契約等となります。
他方、財産管理の具体例としては、現金・預貯金の管理、不動産の管理や、税金等の支出などの管理も含まれます。

成年後見人になれるのは誰?

成年後見人は誰でもなれるということはなく、民法847条において、欠格事由が定められています。特に、被成年後見人(成年後見人を必要としている人のことをいいます。)と成年後見人になろうとする者との間で、利害対立があるときについては、その者は、成年後見人になることができません。
したがって、民法847条に規定されている欠格事由に該当していなければ、成年後見人になることはできます。

誰が申し立てすればいい?

成年後見人は、家庭裁判所に対して、成年後見人を選任する旨の申立てが必要となりますが、成年後見人選任の申立てをすることができる者は、「本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、補佐官特任、補助人、補助監督人又は検察官」となります(民法7条)。
なお、四親等内の親族というのは、相続人本人からみて、四親等内である必要があります。

成年後見制度申し立ての手続き

成年後見制度申し立ての手続は、以下のような流れとなります。

①申立て準備(書類等を集める等)

②家庭裁判所に対して申立て

③家庭裁判所による調査
⑴申立人調査
⑵候補者調査
⑶本人調査
⑷親族への照会

④鑑定

⑤後見(保佐、補助)開始の審判

⑥審判の確定

⑦登記

⑧成年後見人による財産目録の作成、裁判所への提出等

成年後見人の候補者を決める

成年後見人選任の申立ての際、成年後見人等候補者を記載する欄があるため、その記載の上、申し立てることとなります。もっとも、成年後見人等候補者に記載された者が成年後見人に選任されない可能性はあります。
他方、成年後見人等候補者に記載された者がいなかったとしても、成年後見人の申立てを行うは可能です。

必要書類を集める

成年後見人開始の審判の申立てに関して必要な書類は、成年後見人申立書、本人情報シート(福祉関係者に作成してもらうものです。)、診断書、戸籍謄本、住民票又は戸籍の附票、本人について成年後見等の登記が既にされていないことの証明書、本人の健康状態に関する資料、本人の財産等がわかる資料(財産目録や預金通帳など)です。
申し立てる際、事前に裁判所に確認して、不備がないようにしておくべきでしょう。

後見・補佐・補助について

被成年後見人、被保佐人、被補助人になるか否かは、本人の事理弁識能力の程度によってきまります。
被後見人に該当するかどうかは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(民法7条)かどうかによって決せられ、被保佐人に該当するかどうかは、「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」(民法11条)かどうかによって決せられ、被補助人に該当するかどうかは、「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者」かどうかによって決せられることになります(民法15条)。

家庭裁判所に申し立てを行う

成年後見人申立てに関する書類等が揃えば、家庭裁判所に対して、成年後見人選任の申立てを行いましょう。
申し立てる家庭裁判所は、どの裁判所でも可能というわけではなく、被成年後見人の住所地を管轄する家庭裁判所となります。例えば、被成年後見人が姫路市に住んでいる場合には、神戸家庭裁判所姫路支部に申し立てることとなります。

家庭裁判所による調査の開始

成年後見人の選任を申し立てた後、家庭裁判所が成年後見人の選任に関する調査を行います。調査については、申立人、候補者、本人等に対して行います。場合によっては、医師による鑑定が行われることもあります。

成年後見人が選任される

家庭裁判所が様々な調査を行った結果、後見開始を相当と判断した場合、成年後見人が選任されることとなります。後見開始の審判が確定すると、家庭裁判所から法務局に対して、登記がされることとなります。

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成年後見人の役割は本人の死亡まで続く

成年後見人に選任されると、本人若しくは成年後見人の死亡又は家庭裁判所から成年後見人を解任される若しくは辞任するまで、継続されることとなります。本人が亡くなってしまった場合、成年後見人は家庭裁判所に対して、報告しなければなりません。
成年後見人という職務は、遺産分割協議の間だけで終了するような職務ではないため、しっかりとした覚悟をもって職務を遂行する必要があります。

成年後見制度にかかる費用

成年後見人選任申立てに関して必要な費用は、約1万円程度です。その他、医師の診断書等が必要となれば、その分必要ということとなりますし、申立てに関して、弁護士に依頼した場合には、その費用も必要となります。
なお、鑑定が必要となった場合の費用としては、10万円から20万円程度が必要となります。

成年後見人に支払う報酬の目安

家庭裁判所が、成年後見人の報酬を決定することとなります。
弁護士等の専門家が成年後見人となった場合について報酬は公開されていますが、基本的な報酬は、月額2万円程度、成年後見人の財産が1000万円から5000万円の間の場合には月額3万円から4万円、5000万円を超える場合には月額5万円から6万円となります。
弁護士等の専門家が成年後見人になる方が、親族が成年後見人になるよりも費用が高額になることが多いようです。

成年後見制度のデメリット

成年後見制度のデメリットとしては、成年後見人が被成年後見人の財産を管理することとなりますので、成年後見人が保有している財産を運用することができなくなります。また、相続税の対策などをすることもできなくなってしまします。
もっとも、認知症、知的障害、精神障害等になっている人がいる場合、遺産分割協議を行うことができないため、上記のデメリットを受け入れた上で、成年後見人を申し立てることを検討するべきといえます。

成年後見制度についてお困りのことがあったらご相談下さい

認知症、知的障害、精神障害等になっている人がいる場合、遺産分割協議を行うことができないため、成年後見人を選任するかどうかの判断をしなければなりません。一度、成年後見人が選任された場合、簡単に解任することができません。
したがって、成年後見制度を利用するかどうかの判断をしっかりしなければなりません。
弊所の弁護士であれば、相続問題を多く扱っているため、少しでもご依頼様の力になれると存じます。
ぜひ一度ご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。