DVの証拠を集める方法|証拠がない場合はどうなる?

離婚問題

DVの証拠を集める方法|証拠がない場合はどうなる?

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

「証拠がなければ、DVを理由に離婚することはできないのでしょうか」。
配偶者からの暴力(DV)に悩む方から、よくいただくご相談です。

裁判で離婚や慰謝料が認められるには、DVがあったことを裏づける客観的な資料が大きな意味を持ちます。もっとも、いま手元に何もないという方でも、これから備えられることは少なくありません。

本コラムでは、DVの証拠として役立つものと集め方、証拠が乏しい場合の考え方を、条文と裁判例を踏まえて整理します。

DVで離婚・慰謝料請求するには証拠が必要

夫婦の話し合いで合意できれば、理由を問わず離婚できます(協議離婚)。

しかし、相手が離婚に応じない場合、最終的には裁判となり、民法が定める離婚事由(法定離婚事由)に該当することが必要です。

民法第770条第1項(裁判上の離婚)

  • 一 配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  • 四 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

※令和6年改正民法(令和8年4月1日施行)で旧4号(強度の精神病)が削除され、旧5号が4号に繰り上がりました。

DVは、この4号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
また、暴力は、いわゆる不法行為(民法709条・710条)にも該当する可能性があり、慰謝料請求の根拠となり得ます。

ただし、裁判では、DVがあったと主張する側が証拠でDVがあったことを証明しなければならず、相手がDV自体を否定し、かつ、DVがあったことを立証する証拠もない場合、裁判上「DVはなかった」ものとして扱われることがあります。

DVの証拠になるのはどんなもの?集める方法は?

実務でよく用いられる「DVの証拠になるもの」は、次のとおりです。

  • 怪我の写真
  • 医師の診断書、通院・受診の記録
  • 暴行や暴言の録音・録画
  • 被害を記録した日記やメモ
  • 警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談記録
  • 壊れた家具など被害状況の写真
  • LINE、メール、預金通帳などの記録

DVがあったかどうかについて、上記証拠のどれか一つで決まるとは限りません。
いつ・どこで・どのような行為があり、どんな被害が生じたのかを、複数の資料で裏づけることが大切です。

ただし、証拠集めよりも身の安全の確保が最優先です。
危険を感じたときは迷わず110番通報してください。

怪我の写真

相手のDVによって生じたあざや腫れは、時間が経つと消えてしまいます。
そのため、あざや腫れなどの怪我を負った場合は、受傷後できるだけ早く撮影しましょう。

ポイントは、①患部のアップと全身の両方を撮る、②本人の顔が一緒に写るカットも残す、③撮影日時が記録されるスマートフォンのカメラで撮る、④定規や当日の新聞など大きさ・日付が分かるものを一緒に写す、の4点です。

撮影後は、自分だけがアクセスできる場所にも保存しておくと安心です。
撮影のために相手を刺激するなど、危険を伴う行動は避けてください。

医師の診断書や受診歴

診断書は、第三者である医師が作成する資料であり、証拠としての価値が高いものの一つです。

受診の際は、いつ・誰から・どのように負傷したのかを具体的に伝え、初診日、傷病名、治療に要する見込み期間を記載してもらいましょう。

暴力や暴言によりうつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した場合は、精神科・心療内科の診断書も重要です。

神戸地裁平成13年11月5日判決(平成12年(タ)第114号)は、夫の継続的な暴力等により妻がPTSDに罹患したと認め、離婚と慰謝料の支払を認めました(金額は事案ごとに大きく異なります)。

診断書をもらい忘れても、カルテ(診療録)は原則5年間保存されます(医師法24条2項)。
後日、開示請求のほか、弁護士会照会(弁護士法23条の2)や文書送付嘱託(民事訴訟法226条)で取り寄せられる場合があります。

DVの様子を記録した音声・動画

「無断の録音は証拠にならないのでは」と心配される方がいます。

しかし、民事裁判では、裁判官が証拠調べの結果などを踏まえ、自由な判断で事実を認定します(自由心証主義。民事訴訟法247条)。

東京高裁昭和52年7月15日判決(判例時報867号60頁)は、著しく反社会的な手段で人格権を侵害する方法により集めた証拠は証拠能力を否定され得るとしつつ、相手が知らない間に会話を録音したにとどまる場合には証拠能力を認めました。

もっとも、録音は身の安全が保てる範囲で行ってください。

DVを受けたことが記載してある日記やメモ

日記やメモは、暴力を受けた日時・場所・具体的な言動・怪我の部位・受診の有無を、その都度書き残すことで価値が高まります。

逆に、後日まとめて書いたものは内容を作ることもできるため、それだけで事実が認定されるとは限りません。

日記単体で決め手になるとは考えず、診断書やLINE、相談記録と結びつけ、被害の継続性を示す資料と位置づけるのが実務的です。

日付が自動で残るメモアプリや、自分宛てのメールに書き送る方法も有効です。

警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録

警察や配偶者暴力相談支援センター(DV防止法3条)に相談すると、相談日や内容が記録に残ります。

第三者機関の記録として、被害の存在と時期を裏づける有力な資料です。
実務上さらに重要なのは、裁判所に保護命令(接近禁止命令等)を申し立てる場合、原則として事前にこれらの機関へ相談していることが求められる点です。

被害者への接近禁止命令の期間は1年間で、違反すると2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が科されます(DV防止法29条)。

荒れた部屋など被害状況の写真

殴られた壁の穴、壊れた家具や食器、破られた衣類、投げつけられた物、こうした被害状況の写真も、暴力の激しさを物語る資料になります。

直接身体に向けられていない暴力(物を壊す、壁を殴るなど)であっても、強い恐怖や威圧を与える行為として、婚姻関係が破綻しているかどうかの判断で考慮され得ます。

撮影のポイントは、①片付ける前に撮る、②部屋全体と破損部分の両方を撮る、③修理費の見積書や領収書も残す、④信頼できる親族や友人にメールで送り、日付の記録を残す、の4点です。

なお、子どもの目の前で行われる暴力(面前DV)は、児童虐待防止法上の心理的虐待に当たり得ます(同法2条4号)。

お子さんの安全という観点からも、早めのご相談をおすすめします。

モラハラ(精神的DV)を受けている場合

精神的DVの証拠とは、暴言の録音、人格を否定する内容のLINEやメール、日記、うつ病等の診断書、事情を知る家族や友人の証言などです。

一度の暴言だけで離婚が認められることは通常なく、言動の内容・頻度・期間や被害の程度を総合して「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無が判断されます。

なお、令和5年改正のDV防止法(令和6年4月1日施行)により、身体への暴力だけでなく、自由・名誉・財産に対する脅迫を受けた方も接近禁止命令等を申し立てられるようになりました。

経済的DVを受けている場合

生活費を渡さない、収入や預金を一切明かさない、就労を妨害する、キャッシュカードを取り上げる、こうした行為は経済的DVと呼ばれます。

夫婦には、同居・協力・扶助の義務(民法752条)と婚姻費用の分担義務(民法760条)があり、正当な理由なく生活費を渡さない行為は、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)や「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性があります。

証拠としては、預金通帳、家計簿、給与明細、クレジットカードの明細などが役立ちます。

DVの証拠が不十分、または証拠がない場合は離婚できない?

証拠が十分でなくても、離婚を諦める必要はありません。
協議離婚や調停離婚は、相手が同意すれば、理由や証拠を問わず成立します。

裁判でも、別居の期間や経緯、当事者尋問での供述、周辺の事情を総合して「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無が判断されます。

他方で、「証拠がなくても必ず認められる」わけではありません。
相手が争い、真偽が分からない場合には、DVはなかったものとして扱われます。

だからこそ、今日から診断書や相談記録を積み重ねていくことに意味があります。

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DVの証拠を集めるポイント

軽微な怪我でも病院に行く

軽いあざや打撲でも、医療機関を受診してください。

「これくらいで病院に行くのは大げさ」と思われるかもしれませんが、受診した事実と受傷の経緯がカルテに記録されることに大きな意味があります。
時間が経ってから受診すると、怪我と暴力との結びつきを相手から争われやすくなります。

転んだ・ぶつけたなどと説明せず、配偶者から受けた行為をそのまま医師に伝えてください。

メールは消さずに残しておく

「見返すのがつらい」という理由でメールを削除してしまう方がいますが、いったん削除すると復元は容易ではありません。

受信箱に残すだけでなく、自分だけが使えるアドレスへの転送、スクリーンショット、印刷など、複数の形で保存しておきましょう。

相手にパスワードを知られている場合は、消される危険もありますので、パスワードの変更と二段階認証の設定もおすすめします。

LINE等のメッセージアプリはスクリーンショットを残しておく

LINE等のメッセージは、機種変更やアカウントの削除、相手による送信取消しで見られなくなることがありますので、スクリーンショットを残すことが有効です。

スクリーンショットを残すときは、相手の名前・発言日時・前後のやり取りが分かる形で撮り、複数枚に分けて会話の流れが追えるようにしてください。また、トーク履歴をテキストファイルとして書き出す機能も有効です。

保存先は、相手が触れられない端末やクラウドにしておきましょう。

DV加害者と離婚したいときは弁護士に相談してください

DVは、証拠の問題であると同時に、安全の問題です。

危険が迫っているときは、証拠集めよりも避難と110番通報を優先してください。
相談先として、各都道府県の配偶者暴力相談支援センターや警察の窓口があります。

弁護士は、手元の資料でどこまで主張できるか、何が足りないかを見極め、不足を補う手段を検討します。あわせて、保護命令の申立て、別居中の婚姻費用の請求、慰謝料・財産分与・親権、住所を相手に知られないための配慮まで、一体としてお手伝いできます。

もっとも、事案の内容や証拠の状況によって見通しは大きく異なり、結果をお約束することはできません。だからこそ、早い段階で見通しを共有することに意味があります。

弊所は、DV案件を多数取り扱っておりますので、DVでお悩みの方は、お一人で抱え込まず、まずは弊所へご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。