交通事故の相手が無保険だった場合の示談について

交通事故

交通事故の相手が無保険だった場合の示談について

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

交通事故の加害者が、必ずしも自賠責保険や任意保険に加入しているとは限りません。
保険の契約が切れている、あるいは契約すらしていない可能性もあります。
こうした状態を「無保険」といいます。

交通事故の示談は、被害者と加害者側の任意保険会社の間で行われ、治療費や慰謝料といった損害賠償金=示談金が支払われるのが一般的です。
では、加害者が無保険だった場合、示談や賠償金の支払いはどうなるのでしょうか?

今回は、事故加害者が無保険だった場合の対処法について解説していきます。
交通事故の被害に遭っただけでなく、加害者から適切な賠償金が受け取れないかもしれないと不安を抱えていらっしゃる方のご参考になれば幸いです。

交通事故における無保険とはどういう状態?

交通事故における無保険とは、次の2パターンのうち、いずれかを指します。


●パターン1
自賠責保険だけに加入していて、任意保険が未加入
●パターン2
自賠責保険と任意保険、どちらも未加入


任意保険は言葉とおり、自動車やバイクの所有者・使用者が任意で加入する保険で、加入は義務ではないため、一定数の未加入者がいます。
ですが、自賠責保険は、自動車やバイクに加入が義務付けられた、いわば強制保険です。
本来であれば自賠責保険の未加入者は存在しないはずなのですが、ごくまれに未加入のまま、あるいは契約が切れていたなど、未加入=無保険の状態であることがあります。

交通事故の相手が無保険の時のリスクと問題

交通事故の被害に遭い、相手が無保険だった場合、次のようなリスクや問題が生じる可能性があります。

  • 被害者が、加害者と直接交渉しなければならない
  • 物損の補償をしてもらえない
  • 加害者が音信不通になる
  • 損害賠償金を踏み倒される可能性がある

それぞれ詳しくみてみましょう。

加害者と直接交渉しなければならない

事故加害者が任意保険に加入していないと、被害者の方が、直接加害者本人と示談交渉しなければならない可能性があります。

任意保険の多くには、示談交渉の代行サービスが含まれていて、被害者・加害者ともに利用することができるため、当事者で直接交渉する必要はありません。
ですが、加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険には示談交渉の代行サービスがないため、交渉相手は加害者本人となります。

もっとも、被害者の方に少しでも事故の責任=過失がある場合は、被害者自身が加入している任意保険会社を窓口に示談交渉が行われます。
一方、被害者に過失がまったくない場合は、被害者側に賠償責任がないため、保険会社が示談交渉をすることができず、被害者ご自身が、加害者と直接示談交渉することになります。
専門知識のない当事者だけでは、示談交渉が難航するおそれがあるのです。

物損の補償をしてもらえない

自賠責保険では、物損に関する補償をしてもらえません。
自賠責保険は、交通事故被害者の救済のため、加害者が負うべき経済的負担を補てんすることで、基本的な損害賠償金の確保を目的としていて、治療費や慰謝料などの人身損害のみを対象としているためです。
事故によって壊れた車やガードレール、建物などの賠償金は、加害者本人に請求することになります。

音信不通になる

加害者本人と示談交渉をする場合、音信不通になるおそれがあります。
示談交渉を煩わしく思っている、損害賠償金が支払えない・支払いたくないなど、理由はさまざまですが、電話に出ず、折り返しの連絡もないなど、連絡を無視する加害者も残念ながらいます。

踏み倒される可能性がある

加害者が無保険だと、損害賠償金を踏み倒される可能性が高くなります。

交通事故の賠償金は高額になることが多く、加害者が一括で支払えるだけの資力がないと、分割払いとなることがあります。
示談成立後、しばらくは支払いがあっても、途中で支払いが滞って、最終的に踏み倒されてしまうリスクがあります。

そもそも加害者に支払い能力がなく、1円も支払ってもらえないことも少なくありません。
また、加害者が音信不通となって、示談交渉すらできず、賠償金の請求自体をかわされてしまうことも考えられます。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

交通事故被害者専門ダイヤル

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
交通事故の経験豊富な弁護士にお任せください

無保険の加害者に請求する方法

無保険の加害者に対して、損害賠償金を請求する一番シンプルな方法は、加害者本人に請求する方法です。
被害者と加害者で話し合って(示談交渉)、双方が合意できれば示談が成立するので、示談書を公正証書化しておきましょう。公正証書にしておくと、相手が支払わない場合、強制的に支払いをうけることができます。

ですが、この方法で請求に応じてもらうのはむずかしいのが実状です。
そこで、最大限の賠償金が受け取れるための方法をご紹介します。

相手が任意保険に入っていない場合

相手が任意保険に加入していなくても、強制加入である自賠責保険には加入している場合があります。
ここでは、相手が自賠責保険だけに加入している場合の、損害賠償金の請求方法をご紹介します。

自賠責保険に請求する

相手が示談交渉に応じてくれない場合、被害者の方が直接、相手の自賠責保険に対して、保険金の請求ができます。
これを被害者請求といって、示談成立前でも保険金が受け取れるメリットがあり、示談交渉が長引いているときにも有効な方法のひとつです。

被害者自身で、支払請求書や交通事故証明書などの書類を集め、相手の自賠責保険に提出する必要があるので、まずは交通事故証明書に記載されている、相手方自賠責保険の保険会社を確認し、連絡してみましょう。
もっとも、自動車の修理費などの物損は、自賠責保険の補償対象外です。
また、補償対象の、治療費や通院交通費、休業損害、医療費といった人身損害部分には、支払限度額があるため、注意が必要です。

不足分は加害者に請求する

自賠責保険に請求できる保険金には、限度額が次のように定められています。
限度額を超える部分や、物損部分の賠償金は、加害者に直接請求して支払ってもらうことになりますが、支払ってもらえるとは限りません。

《自賠責保険に請求できる保険金の上限額》

補償対象 損害 被害者1名の上限額
傷害による損害 治療関係の費用
入通院慰謝料
休業損害
120万円
後遺障害による損害 後遺障害慰謝料
後遺障害逸失利益
後遺障害の等級に応じて
75万~4000万円(※)
死亡による損害 死亡慰謝料
死亡逸失利益
葬儀費用
3000万円

※神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で
 ・常時介護を要する場合(第1級) 4000万円
 ・随時介護を要する場合(第2級) 3000万円
※上記以外の後遺障害は、75万円(第14級)~3000万円(第1級)

相手が自賠責保険にも入っていない場合

相手が自賠責保険にも入っていない場合、加害者本人に請求する以外にも、損害賠償金を受け取れる方法があります。

  • 被害者自身が加入している任意保険から補償してもらう
  • 政府補償制度を活用する
  • 労災に請求する

以下、詳しくみてみましょう。

まずは自身の保険会社に対応できないか聞いてみましょう

被害者ご自身が加入している任意保険から補償してもらえる可能性があります。
使える特約がないか、任意保険会社に確認してみましょう。

《事故相手が無保険だった場合に受けられる補償の一例》

     
  • 人身傷害補償特約
      被害者ご自身や同乗者が、事故で負傷・死亡したとき   過失に関係なく、治療関係の費用や休業損害、慰謝料の補償が受けられます
  •  
  • 搭乗者傷害特約
      人身傷害補償特約に上乗せして、あらかじめ定められた額の補償が受けられます
  •  
  • 無保険車傷害特約
      被害者ご自身や同乗者が、事故で後遺障害を負った、あるいは死亡したとき   相手が無保険や、保険の補償内容が不十分な場合に、不足分の補償が受けられます
  •  
  • 車両保険
      事故で自動車に損害が生じたとき、保険金額を上限に補償が受けられます

政府保障制度を活用する

相手が自賠責保険にも加入しておらず、被害者自身の保険会社や労災保険など、あらゆる救済措置を尽くしてもなお、損害が残る場合は、政府保証制度が活用できる場合があります。

政府保障制度とは、ひき逃げなどで相手が不明な場合や、相手が無保険の場合に、相手から賠償を受けられない被害者が利用できる、政府による救済制度のことで、ほかの手段によって救済されない被害者に対する、最終的な救済措置といえます。

なお、政府保障制度の補償内容や支払限度額は自賠責保険と同じです。
限度額から、労災保険などによる給付額を差し引いた金額が最終的に支払われます。

労災に請求する

勤務中・通勤中に交通事故の被害に遭った場合、労災保険に対して保険金の請求ができる可能性があります。
まずは勤務先に確認してみましょう。

労災保険には支払限度額がなく、被害者に過失があっても保険金に影響せず、満額が受け取れます。
ただし、慰謝料の請求はできないため注意が必要です。

加害者が支払いに応じなかった場合の対処法

無保険の加害者が示談交渉に応じてくれない、示談が成立したにもかかわらず支払いを拒否するなど、損害賠償金が支払われない場合、どのような対処法があるのでしょうか?
想定されるケースごとに、詳しくみていきましょう。

そもそも支払い能力がない場合

加害者が無保険のケースでは、そもそも加害者に支払い能力(無資力)がないことが考えられます。
支払い能力のない加害者に対して、示談交渉の段階であれば、分割払いや減額を提案してみましょう。
それでも応じてもらえない場合や、示談後に「支払えない」と開き直られたら、法的措置を検討しましょう。

弁護士なら法的措置が可能

法的措置をするのであれば、弁護士への相談・依頼も有効です。

《無保険の加害者に、損害賠償金の支払いを求める法的措置の一例》

  • 示談成立前や、示談成立後、加害者が支払いに応じない場合は「訴訟(裁判)」
  • 裁判で加害者に対して支払い命令が出ている場合は「強制執行(差し押さえ)」

など、無保険の加害者に対してとれる法的措置は、さまざまなものがあります。
被害者ご自身で対応することもできますが、最適な方法の選択や煩雑な手続きを弁護士に任せることも可能です。

自己破産したと言われたら?

加害者が無保険で、損害賠償金を支払えない場合、加害者から「自己破産した」と言われることがあります。
自己破産とは、自身が所有する財産を失う代わりに、借金の免責を裁判所に認めてもらう手続きです。
つまり、自己破産が認められると、交通事故の賠償金は免責され、被害者は賠償金の請求ができなくなるということです。

ですが、加害者に「重大な過失」がある場合に限り、治療費や慰謝料などの損害賠償金は非免責債権となるため、請求することが可能です。
加害者に重大な過失があるといえるのか?本当に加害者は自己破産したのか?
疑問を感じたら、一度弁護士に相談してみましょう。

加害者が無保険の交通事故は弁護士にご相談ください

無保険の加害者に対して、損害賠償金を請求する方法をご紹介してきました。
どの方法も一筋縄ではいかず、直接加害者と交渉することを負担に感じたり、「本当に賠償金が支払われるのか?」と不安を感じていらっしゃる方も多いと思います。

弁護士であれば、無保険の加害者に賠償金を請求する方法、受け取るべき適正額、加害者との交渉、法的措置と、多岐にわたるサポートが可能です。
不安や問題を解消するためにも、交通事故問題の経験が豊富な弁護士に相談することを、ぜひご検討ください。

弁護士費用特約に加入していれば弁護士費用の心配はありません

被害者の方に代わって、保険会社が弁護士費用を負担してくれる「弁護士費用特約」に加入していれば、経済的な不安や負担を軽減できる可能性があります。


《弁護士費用特約の補償範囲と上限額》

  • 法律相談費用:上限10万円
  • 弁護士依頼後の弁護士費用:上限300万円

被害者の方が亡くなった、あるいは重い後遺障害が残ったなどの交通事故でない限り、上限額を超えることは少ないため、弁護士費用特約があれば、費用の心配はありません。
被害者ご自身の特約は当然ながら、ご家族が加入している特約を利用できることもあります。
弁護士費用は高いからと相談や依頼を諦める前に、ご自身やご家族の加入している保険を確認してみましょう。

費用倒れになってしまう場合は、事前にご説明します

弁護士費用特約が利用できないと、
「損害賠償金よりも弁護士費用の方が上回って、結果的に損をするのでは?」
と、費用倒れを心配される方もいらっしゃるでしょう。

弁護士法人ALGでは、費用倒れとなるおそれがある場合には、事前にご説明いたします。
もちろん、弁護士費用特約を利用される方も同様です。
加害者が無保険の交通事故に遭われた方が、適切な賠償金を受け取れるよう、弁護士・スタッフ一丸となって対応いたします、どうぞ安心してご相談ください。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

交通事故被害者専門ダイヤル

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
交通事故の経験豊富な弁護士にお任せください
姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。