監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
ご家族やご親族が亡くなってしまった場合、相続人は、被相続人の相続手続を行わなければならなくなります。相続手続には、様々種類が存在しており、期限が定められているものもあります。ここでは、相続に必要な手続の種類や流れについてご説明いたしますので、是非ご参考にしてください。
相続の手続には期限のあるものが多い
相続に関する手続には、期限が定められているものがあります。法律に定められた期間内に相続の手続を完了しないと、手続を行えなくなったり、ペナルティが科されることがあるので、注意しなければなりません。
以下では、期限が定められている手続についてご紹介いたします。
7日以内に必要な手続
死亡届の提出
被相続人が亡くなった場合、死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届を提出しなければなりません。
死亡届を提出することができるのは、親族、同居人等で、提出先は、被相続人の本籍地、亡くなった土地、届出人の死んでいる土地のいずれかにある市区町村役場となります。
死亡届には、被相続人の死亡を確認した医師が記入する死亡診断書があります。
10日以内に必要な手続
被相続人の年金受給の停止(厚生年金)
国民は、亡くなった場合、年金の受給資格を喪失することになるため、厚生年金に加入していた被相続人が亡くなってから10日以内に年金受給を停止する手続を行わなければなりません。
年金受給を停止するための手続は、年金事務所や年金相談センターで行うことができます。用意しなければならない書類は、年金受給権死亡届、被相続人の年金証書、死亡診断書のコピーや戸籍抄本等です。
14日以内に必要な手続
保険証の返還
被相続人が国民健康保険に加入していた場合には、被相続人が亡くなってから14日以内に、被相続人が住んでいた住所の市区町村役場に、国民健康保険資格喪失届の提出と保険証を返却しなければなりません。
また、被相続人が会社の健康保険に加入していた場合、会社は被相続人が亡くなってから5日以内に手続を行わなければならないため、早急に会社に対して保険証を返却するようにしましょう。
被相続人の年金受給の停止(国民年金)
国民年金についても、厚生年金の場合と同様、年金受給の停止の手続を行わなければなりません。もっとも、国民年金の場合、被相続人が亡くなってから14日以内に手続を行わなければならない点で異なります。
3ヶ月以内に必要な手続
相続方法の選択
被相続人が亡くなった場合、被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内に被相続人の遺産を全部そのまま相続するか、相続放棄するか、一部だけ相続するかを選択しなければなりません。
単純承認とは、被相続人の相続財産を全て相続するということをいいます。被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内に何も手続を行わない場合、単純承認をしたことになります。
限定承認とは、被相続人の相続財産のうち、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を弁済することを条件に相続することをいいます。
相続放棄とは、被相続人の相続財産の一切を相続しないことをいいます。相続放棄のメリットは、被相続人の負債を負わないことですが、プラスの遺産も相続することができなくなります。
相続財産の調査、目録の作成
被相続人が遺言書や財産目録を作成していなかった場合、被相続人にはどのような遺産があるのかを調査した上で、財産目録を作成することになります。
相続放棄を行おうと考えている場合には、3か月以内に相続財産の調査・財産目録の作成をしなければならないことに注意が必要です。
4ヶ月以内に必要な手続
準確定申告
準確定申告とは、被相続人が自営業を生業にしていた場合、確定申告を行わなければなりませんが、被相続人に代わって相続人が確定申告を行い、納税を行うことをいいます。準確定申告は、被相続人が亡くなった日ことを知った日の翌日から4か月以内に行わなければならないことに注意が必要です。
準確定申告は、準確定申告書や源泉徴収票等を被相続人が住んでいたところを管轄する税務署に提出することにより行うことができます。
10ヶ月以内に必要な手続
相続税の申告及び納税
相続税の申告及び納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。相続税の申告及び納税については、被相続人が亡くなったときの住所を管轄する税務署に行いますが、支払いは金融機関等にすることも可能です。
申告書を提出する者が2人以上いる場合、全員で申告書を作成しなければならないことになりますので、ご注意ください。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書の作成については、期限が設けられていませんが、上記の通り、相続税の申告及び納税は10か月以内に行わなければなりません。したがって、遺産分割協議書はなるべく早期に作成しなければなりません。
なお、遺産分割協議は、相続人全員で行わなければなりませんので、ご注意ください。
1年以内に必要な手続
遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求は、相続人が最低額の遺産を獲得することのできる制度です。
遺留分侵害額請求は、被相続人が亡くなったとき又は、遺留分が侵害されていることを知ったときから1年以内に行わなければなりません(民法1044条)。遺留分は、被相続人の兄弟姉妹とその代襲者を除き、法定相続人に認められている手続です。
2年以内に必要な手続
埋葬料・葬祭費の請求
被相続人が会社の健康保険に加入していた場合、埋葬を行った人が、被相続人が亡くなった日の翌日から2年以内に会社の健康保険組合に対して請求することによって、埋葬料5万円を受け取ることができます。
被相続人が国民健康保険に加入していた場合、実際に葬儀を行った人が、葬儀を行った日の翌日から2年以内に市区町村役場に請求することによって、葬祭費3~7万円を受け取ることができます。
3年以内に必要な手続
生命保険(死亡保険)の生命保険会社への請求
生命保険(死亡保険)の生命保険会社への請求は、補償の対象となっていた被相続人が亡くなった非から3年以内に行わなければなりません。保険会社が自ら生命保険を振り込んでくれるということはなく、生命保険の請求をするまで受け取ることができませんので、忘れないように請求するようにしてください。
相続税の軽減措置
相続税の軽減措置は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に税務署へ申告しなければなりません。相続税の軽減措置には、配偶者控除や小規模宅地の特例があります。
10か月以内に相続税の軽減措置を行えない場合には、10か月以内に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、軽減措置の延長を求めましょう。
5年以内に必要な手続
相続税の還付請求
相続税の還付請求は、被相続人が亡くなったときから5年10か月以内に行わなければなりません。更生の請求書を作成した上で、税務署に提出することにより、払い過ぎていた相続税の還付を受けることができます。
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期限のない相続手続
以下では、特に期限が定められていないものの、早めに相続の手続を行った方がいいものについてご説明いたします。早めに手続を行うことにより、相続手続を円滑に行うことができますので、早めに行うことをお勧めします。
法定相続人の確定
遺産分割協議を行うにあたり、法定相続人の確定をしなければなりません。なぜなら、遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ有効な遺産分割協議とはいえないからです。
被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍等を取得して、相続人を調査するようにしましょう。
遺言書の有無の確認、検認
被相続人が亡くなったら、まず被相続人が作成した遺言書があるかどうかを確認しましょう。遺言書がある場合には、そのとおりに、遺産分割が行われることになります。
自筆証書遺言や秘密証書遺言が発見された場合には、開封することなく、裁判所での検認手続を経なければなりません。裁判所での検認手続を経ることなく、遺言書を開封すると罰則を受けることになりますので、注意してください。
預貯金などの解約、名義変更
預貯金などの解約や名義変更については、相続人全員の署名・捺印や印鑑証明書を用意しなければならない場合があります。相続人が各地にいる場合には相続人全員の署名・捺印を取得するのに時間を要することがありますので、なるべく早めに行うようにしましょう。
(不動産を相続する場合)相続登記
不動産を相続する場合、相続登記を行わなければなりません。相続登記とは、法務局に登記申請書を提出し、名義変更をすることをいいます。相続登記を行わないと不動産を売却等することができなくなるので、早めに相続登記を行うようにしましょう。
(車やバイクを相続する場合)名義変更
自動車やバイクを相続する場合には、なるべく早く名義変更を行うようにしましょう。なぜなら、自らの権利を対外的に主張(対抗)するためには、名義変更をしておかなければならないからです。第三者とのトラブルを避けるためにも、なるべく早く名義変更を行いましょう。
相続の手続は自分でできる?
相続の手続をご自身で行うことは可能ですが、大変な手間や労力、時間がかかることになります。
たとえば、相続人の調査を行う場合、平日しか対応できない役所に行くためには、ご自身が仕事を休まないと行けなくなります。また、提出した書類に不備等があれば、用意した上で、改めて提出しなければならなくなります。
このように、相続人が相続手続自体をご自身で行うことは可能ですが、大変な手間や労力や時間がかかることになるため、一括して弁護士に依頼しておくことをオススメします。
相続手続についてわからないことがあったら弁護士にご相談ください
これまでご説明したとおり、ご家族やご親族が亡くなった場合、行わなければならない手続が多く存在しており、用意しなければならない資料も多く存在しております。ご自身で相続の手続を行う場合には、大変な手間や労力、時間がかかることになります。また、相続手続の中には、期限が定められているものも存在しており、早急に対応しなければならない場合もあり、精神的に大きく負担がかかることになります。
弁護士にご依頼いただければ、弁護士が代わりに、相続の手続を行わせていただきます。弁護士がご依頼様の代わりに相続手続を行うことによって、ご依頼者様の精神的・体力的な負担を軽減させることができるとともに、法的な観点からもご依頼者様の利益を確保することができます。
まずは、お気軽にお問い合わせください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)