盗撮で逮捕!受ける可能性のある刑罰と逮捕後の対応

盗撮
公共の場所、乗り物等で盗撮した場合
6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
(迷惑防止条例8条1項、5条1項2号(東京都の場合))
公共の施設内で盗撮した場合 3年以下の懲役または10万円以下の罰金
(建造物侵入罪:刑法130条)
映画を盗撮した場合 10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(知的財産権侵害) のぞきの場合 拘留又は科料(軽犯罪法1条23号)

盗撮という言葉はよく耳にしているかと思いますが、実は「盗撮罪」という犯罪は存在していません。ここでは、盗撮という行為に対してどのような犯罪が成立するかをご説明いたします。

また、携帯電話のカメラ機能が発展したこともあり、盗撮行為に対する検挙件数は近年増加しており、再犯率も高い犯罪類型です。

盗撮事件とは

盗撮とは、一般的に許可なく、人の身体や下着等を撮影することを言いますが、近年ではそれにとどまらず、映画等を撮影する行為も盗撮行為として含まれています。 ここでは、盗撮行為についてご説明いたします。

盗撮にあたる行為

盗撮に当たる行為には、公共の場所や乗り物で盗撮する行為や公共の場所以外で盗撮する行為があります。公共の場所の具体例としては、駅構内、商業施設、路上等があります。

のぞきの場合

撮影をしなかったものの、のぞき行為を行った場合には、軽犯罪法1条23号に該当することになります。都道府県によって異なりますが、迷惑防止条例にのぞき行為を禁止する旨の記載がある場合には、迷惑防止条例違反にも該当することになります。

盗撮で問われる可能性がある刑罰

盗撮行為は、盗撮場所や盗撮状況によって適用される法律が異なり、刑罰の重さが変わってくるため、注意が必要です。

迷惑防止条例違反

迷惑防止条例違反とされる盗撮は、「公共の場所又は公共の乗物」という場所で盗撮した場合に成立します。この場合の罰則は、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。

常習性が認められた場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となり、通常の盗撮行為に比べて加重されています。

迷惑防止条例違反について詳しく見る

軽犯罪法違反

軽犯罪法違反とされる盗撮は、人の住居等、公共の場所以外で盗撮した場合に成立します。軽犯罪法違反の罰則は、1日以上30日未満の拘留又は1万円未満の科料となります。

児童ポルノ禁止法違反

児童ポルノ禁止法が対象としている映像は、①18歳未満の児童を相手とする性行為、又は18歳未満同士の性行為又は性交類似行為、②18歳未満の児童の性器等を触る行為等、③18歳未満の児童が衣服の全部、又は一部を着衣がない児童の姿態であって性欲を興奮刺激するものという児童ポルノです。

このような児童ポルノを所持していた場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

また、児童ポルノを提供した場合には、3年以下の懲役又は300万円の罰金に処せられることになります。

児童ポルノ禁止法違反について詳しく見る

住宅(建造物)侵入罪

盗撮するために他人の住居に侵入した場合には、住居侵入罪も同時に成立します。また、盗撮するためにビル等の住居以外の建造物に侵入した場合には、建造物侵入罪も同時に成立します。

盗撮するという目的のために住居(建造物)に侵入したことから、盗撮行為と侵入行為それぞれに犯罪が成立し、それぞれ牽連犯という関係にあります。この場合、2罪を比べて重い罪で処罰されることになり、住居(建造物)侵入罪(3年以下の懲役又は10万円以下の罰金)が科せられる可能性が高いといえます。

知的財産権侵害

上映中の映画、撮影が禁じられている美術品等を録画、撮影した場合、知的財産権侵害とした罪に問われることになり、その場合の罰則は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処されることになります。

盗撮での逮捕

現行犯逮捕について

盗撮事件における現行犯逮捕の場合として、撮影しているところ、若しくは撮影し終わったところを被害者に見つかった、警察官に目撃された、周辺の人に目撃された際にその場で逮捕される場合があります。

現行犯逮捕は現に犯行を行っているか、又は犯行を行い終わったことが要件となります。

後日逮捕について

盗撮行為を行った当日に逮捕されるのではなく、後日、警察官から逮捕令状を見せられて、通常逮捕される場合があります。逮捕令状は請求を受けた裁判官が発行するものですが、裁判官は「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があると判断した場合に逮捕令状を発行します。

したがって、通常逮捕により逮捕される場合は、捜査機関の捜査により裁判官が「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があると判断されていることになります。

逮捕されない場合

盗撮行為を行ったとしても、当該行為が検挙されない場合は存在しています。盗撮行為がばれず、気分が舞い上がったことにより、犯行がエスカレートするケースは少なくありません。

そして、現行犯逮捕されなかったとしても、後日通常逮捕されるケースも少なくありません。

逮捕後の流れ

盗撮をしたとして逮捕された場合、48時間以内に検察へ事件が送致されます。送致を受けた検察は24時間以内に対象者を勾留するかどうかを決定します。勾留されなければそのまま釈放となりますが、勾留された場合には、最大20日間捜査を行い、起訴するかどうかを決定することになります。

逮捕後の流れについて詳しく見る

20歳未満の未成年が盗撮行為をした場合

20歳未満の未成年者が盗撮行為を行った場合、刑事事件ではなく少年事件に該当することになり、「少年法」が適用されることになります。

少年法は、少年による犯罪行為や非行行為に対して、今後犯罪を犯さないように教育し、更生することを目的としています。刑事事件と異なり、少年法は懲役や罰金という処罰は科されず、少年院や観護措置という処分になります。

盗撮で逮捕されたくない・起訴されたくない

盗撮で逮捕され勾留されてしまえば、最大23日もの間、留置施設に収容されてしまうことになります。そうすると、会社に出勤することができず、逮捕された事実が会社にばれてしまうことも十分考えられます。会社にばれてしまえば、最悪の場合、会社から解雇される可能性があります。

その後、起訴された場合、有罪率は99.9%と言われており、前科がつく可能性が高いといえます。そうならないようにするためにも、早期の段階で弁護士に相談し、身柄拘束から解放されるようにしましょう。

盗撮に関する裁判例

⑴ 判例
最高裁判所第三小法廷平成19年11月27日

⑵ 判断
被告人が、女性を少なくとも約5分間、40m余り付け、背後1ないし3mの距離から女性の臀部(着衣の上から)をデジタルカメラで撮影した行為について、最高裁判所は、被害者が撮影に気付いておらず、また、被害者の着用したズボンの上から撮影されたとしても、迷惑防止条例の規定する、「卑猥な言動」に該当するとした。

⑶ 解説
盗撮の対象は、一般的に身体や下着を思い浮かべるところですが、着衣の上から長期間録画した場合に盗撮に該当すると判断した判例です。最高裁判所による判断ですから、下級裁判所は当該判断に従った判断をすることになります。

盗撮の事件でよくある質問

盗撮で使用したカメラには過去に盗撮したデータも入っています。そのせいで罪が重くなりますか。

容疑をかけられた盗撮以外の盗撮、つまり余罪がある場合には、常習性があると判断される可能性があります。

常習性があると判断された場合には、罪が重くなる可能性があります。通常の盗撮行為に対する罰則は、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金となりますが、常習性が認められた場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となり、加重されることになります。

性依存症を理由に盗撮の罪が減刑されることはあるのでしょうか。

性依存症は、性に関する問題行為を自分の意思でコントロールすることができない状態のことをいいます。性依存症の傾向があり、専門機関に通うなど治療の努力をしている場合には、減刑される可能性があります。

性依存症の傾向がある場合には、ご自身の努力で再犯を防ぐことは簡単ではありません。専門機関を利用し、治療を行うことにより、自分の意思でご自身の行動をコントロールできる一歩を踏み出すことができます。

その他、精神疾患等を理由に減刑される場合もあります。

海水浴場で水着の女性を盗撮したのですが罪にあたるのですか。

海水浴場という公共の場所で、水着の女性を許可なく撮影している行為については、迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。水着ではなく、ズボンの上から臀部を撮影した行為について、迷惑防止条例違反とされた事例もあります。

盗撮で実名報道されてしまう可能性はありますか。

実名報道される可能性はあります。報道されるか否かの基準は不明ですが、社会的にも関心がある場合や、事件の態様が悪質だった場合には実名報道される可能性は高いといえます。

私有地に入り、トイレの外窓から盗撮をしたのがばれてしまいました。

盗撮目的で私有地に入った行為については住居侵入罪が成立します。そして、公共の場所以外での盗撮行為であるため、迷惑防止条例違反ではなく、軽犯罪法違反が成立します。

盗撮という目的を達成するために私有地に侵入したことから、住居侵入罪と軽犯罪法違反は牽連犯という関係にあり、重い罪である住居侵入罪で処罰される可能性があります。

デリヘルでの盗撮がばれ、店から示談金を要求されました。

盗撮がばれて気が動転してしまい、要求されている示談金を払おうと思っているかもしれません。

要求されている示談金が正当な金額だとしても、紛争の蒸し返し等を防ぐために示談書を作成した上で支払うべきです。また、要求されている示談金があまりに高額である場合には、減額の交渉をするべきです。

示談書を作成する、示談の減額交渉、いずれの場合においても弁護士に相談するべきといえます。

使用するカメラを無音に改造して盗撮を行いました。

通常発生するシャッター音を無音に改造し、盗撮行為を行った場合、犯行態様が悪質と判断され、罪が重くなる可能性はあります。

盗撮による逮捕で社会生活への影響を少なくしたいなら急いで弁護士へ!

盗撮行為については、逮捕段階であれば勾留阻止に向けた弁護活動、勾留されてしまった場合には不起訴処分に向けた弁護活動を行います。 盗撮行為により逮捕されてしまった場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。

他方、盗撮行為は、何度も繰り返してしまう犯罪行為であるため、弊所では再犯防止に向けた活動に力を入れており、ご依頼者様の将来にも貢献できると存じます。

数多くの盗撮事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。

迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。

強制わいせつ罪 6ヶ月以上10年以下の懲役 公然わいせつ罪 6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金
又は拘留若しくは科料(刑法174条)
迷惑防止条例違反 6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金(東京都の場合)

家族が痴漢で逮捕されてしまった、痴漢をしてしまって今にも逮捕されそう、という方のために、ここでは痴漢についての知識、痴漢で逮捕されてしまった場合にどのようにしたらいいかをご説明いたします。

痴漢事件の場合、初動が肝心です。早期の段階で弁護士に相談することをお勧めします

そもそも痴漢とは?

そもそも痴漢とはどのような行為のことをいうのでしょうか。

痴漢とは、相手の意思に反して卑猥な言動や行為などの嫌がらせをすることをいいます。

痴漢が行われる場所・ケース

痴漢が行われやすい場所は、電車・駅構内や店舗内、バス、エレベーターなどで、痴漢が行われやすい時間帯は、人が密集しやすい時間帯で、具体的には、朝や夕方のラッシュ時であるといえます。 痴漢が行われやすい場所や時間等をみても、身近で起きやすい犯罪類型であることがわかります。

痴漢の刑罰

痴漢といっても、行為態様によっては異なる犯罪が成立する可能性があります。ここでは、どのような行為態様であれば、どのような犯罪が成立するのか、成立した犯罪の刑罰についてご説明いたします。

迷惑防止条例違反

兵庫県の迷惑防止条例では、痴漢は、「人に対する不安を覚えさせるような卑猥な言動」をした場合に成立する犯罪と規定しています。

強制わいせつ罪とは異なり、迷惑防止条例における痴漢行為は、暴行又は強迫を用いずにわいせつな行為をした場合に、迷惑防止条例違反となります。

例えば、公共の場所で、他人の身体に触れた場合には、迷惑防止条例違反となります。

迷惑防止条例違反について詳しく見る

強制わいせつ罪

強制わいせつ罪とは、暴行又は強迫を手段として、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。

「暴行又は強迫」とは、相手の犯行を著しく困難にする程度でなければならず、例えば、手足や顔を押さえつけたりする行為のことをいいます。

強制わいせつ罪について詳しく見る

公然わいせつ罪

公然わいせつ罪とは、公然とわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。

「公然」とは、不特定多数の人が認識できるような状態にあることをいいます。例えば、路上で性器を露出した場合には、公然わいせつ罪が成立することになります。

公然わいせつ罪について詳しく見る

痴漢で逮捕される場合とは

現行犯逮捕

痴漢事件における現行犯逮捕の場合として、痴漢しているところ、若しくは痴漢し終わったところを被害者に見つかった、警察官に目撃された、周辺の人に目撃された際にその場で逮捕される場合があります。

現行犯逮捕は現に犯行を行っているか、又は犯行を行い終わったことが要件となります また、現行犯逮捕は捜査機関のみならず、私人によう現行犯逮捕についても、刑事訴訟法上認められています(刑事訴訟法213条)。

後日逮捕

痴漢行為を行った当日に逮捕されるのではなく、後日、警察官から逮捕令状を見せられて、通常逮捕される場合があります。逮捕令状は請求を受けた裁判官が発行するものですが、裁判官は「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があると判断した場合に逮捕令状を発行します。

したがって、通常逮捕により逮捕される場合は、捜査機関の捜査により裁判官が「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」があると判断されていることになります。

逮捕・勾留の流れ

痴漢をしたとして逮捕された場合、48時間以内に検察へ事件が送致されます。送致を受けた検察は24時間以内に対象者を勾留するかどうかを決定します。勾留されなければそのまま釈放となりますが、勾留された場合には、最大20日間捜査を行い、起訴するかどうかを決定することになります

逮捕後の流れについて詳しく見る

逮捕されない場合

痴漢行為を行ったとしても、当該行為が検挙されない場合は存在しています。痴漢行為がばれず、気分が舞い上がったことにより、犯行がエスカレートするケースは少なくありません。

そして、現行犯逮捕されなかったとしても、後日通常逮捕されるケースも少なくありません。

生活への影響

痴漢事件を起こしたことにより、逮捕・勾留されてしまった場合には、留置施設に拘束されることになります。そうすると、私生活を送ることはもちろん、職場等に行くことができなくなります。長期間勾留され職場に行けなくなると、解雇される可能性もあり、収入を得ることができなくなります。

その他、ご家族や恋人、友人にまで知られてしまう可能性があり、そうなってしまえば私生活への影響は大きいといえます。

痴漢で逮捕された場合すべきこと

痴漢で逮捕された場合、捜査機関の取調べに対してどのように回答すればいいか、という点についてご説明いたします。

実際行った場合は否認せず認める

痴漢を行っていないにもかかわらず、痴漢行為を認めるべきではありませんが、実際に痴漢を行っている場合には、犯行を素直に認めることで早期に釈放される可能性はあります。

不起訴を獲得し前歴で食い止める

前歴とは、捜査機関から逮捕され被疑者として捜査の対象となってことをいいます。これに対して、「前科」とは、刑事裁判により審理され、有罪判決の言い渡しを受け、その刑が確定したものをいいます。 前科がついてしまうと、就職に不利になることもありますし、一定の職業につくことができなくなります。他方、前歴は、就職に不利になることもなければ、職業が制限されることもなく、生活への影響をほとんど受けることなく済ませることができます。

したがって、不起訴処分を獲得し、前科ではなく前歴で食い止めるようにするべきといえます。

不起訴について詳しく見る

釈放されたいからといって罰金刑にしない

捜査機関から、「罰金刑で済ませればすぐに釈放できる」と言われたとしても、応じないようにしましょう。罰金刑は刑罰の一種であり、罰金刑に処されると前科になるからです。前科が付くことによってデメリットも当然存在していますから、簡単に罰金刑で済ませないようにしましょう。

早期の段階で弁護士に依頼し、被害者と示談することができれば、罰金刑ではなく不起訴処分を獲得できる可能性もあります。不起訴処分は、罰金刑とは異なり、前科には含まれないことから、不起訴処分を獲得するべきといえます。

前科について詳しく見る

痴漢に関する裁判例

被告人を無罪と判断した、比較的新しい裁判例をご紹介いたします。

⑴ 判例
東京地方裁判所平成30年9月12日

⑵ 判断
被告人が、電車内において、被害者の着衣の上からその右胸に右手の甲を押し当てる等したとして迷惑防止条例違反の罪に問われた事件において、裁判所は、被害者の胸に犯人の右手甲が複数回接触したこと自体について被害者の供述の信用性は高いと判断し、被害者が痴漢と信じたことも信用することができると述べました。
しかし、被告人が右手で執拗に胸を触ってきた経緯について被害者の供述は信用性に疑問があり、意図的ではなく電車の揺れなどによる可能性があり、痴漢の故意に基づく行為とは言い切ることができないとして、被告人を無罪としました。

⑶ 解説
被害者が痴漢と認識したとしても、被害者が認識した痴漢行為が本当に被告人の故意によるものなのかという点において、被害者の供述の信用性、被告人の供述の信用性を総合的に判断し、無罪を言い渡しました。
故意はないにもかかわらず、痴漢行為と疑われた場合には、決して諦めて自白することなく、正々堂々と争うべきであることを示してくれる裁判例です。

よくある質問

痴漢の被疑者が学生だった場合、刑罰に違いはありますか。

被害者が学生(未成年)だった場合、成人と比べて被害者の受けた精神的ショックが大きいおそれがあり、そのことが考慮されて、刑罰を決める上で不利に働く可能性があります。なぜなら、未成年者である場合、精神的に発達していないことが多く、精神的なショックが大きいと考えられているからです。

また、被害者が未成年である場合には、親権者と示談交渉をしなければならないことが多く、親権者が感情的になり示談交渉が困難となることも少なくありません。

現場から逃げてしまったのですが、後ほど自首した場合刑罰は軽くなりますか。

一般的に自首が成立した場合には、刑罰は軽くなる可能性はあります。 しかし、現場から逃げた際、捜査機関が犯人の特定をしていた等の場合、自首は成立しない可能性があります。

すなわち、自首は、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前」でなければ成立しないところ、捜査機関が犯人の特定としていれば、そもそも自首が成立しないからです。

痴漢で逮捕されたら弁護士へすぐご連絡ください

痴漢行為については、逮捕段階であれば勾留阻止に向けた弁護活動、勾留されてしまった場合には不起訴処分に向けた弁護活動を行います。

痴漢行為により逮捕されてしまった場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。

他方、痴漢行為は、何度も繰り返してしまう犯罪行為であるため、弊所では再犯防止に向けた活動にも力を入れており、ご依頼者様の将来にも貢献できると存じます。 数多くの痴漢事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。

迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。

逮捕には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕があり、それぞれ要件が異なります。そのため、事件の種類(罪名)によって、どの形で逮捕されやすいかにも違いが出てきます。このページでは、逮捕の各類型について解説します。

逮捕の種類

刑事事件で逮捕される場合、逮捕の種類としては大きく分けて通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕があります。

通常逮捕

通常逮捕とは、逮捕状を示して行われる逮捕です。次に解説するように、通常逮捕では逮捕の根拠について裁判官があらかじめ審査してから逮捕状を発行することで、不当な逮捕による身体拘束がなされることを防止しており、この通常逮捕が逮捕の原則で、逮捕時に令状を要しない現行犯逮捕と緊急逮捕は例外として認められるものとされています。

通常逮捕の要件

通常逮捕の要件は、逮捕の理由と逮捕の必要があることです。

逮捕の理由があるというのは、特定の犯罪が行われたということと、被逮捕者(逮捕される者)がその犯罪を行ったことが、相当程度に確からしいと認められることを指します。何らかの犯罪が行われた、というように犯罪事実の特定が不十分である場合や、被逮捕者が犯人である可能性が低い場合には、この要件を満たしません。

次に、逮捕の必要があるというのは、被疑者の逃亡と罪証隠滅の防止のために逮捕が必要であることを指します。被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重などの事情に照らし、逮捕の必要がないとき(逃亡や罪証隠滅の可能性が高くない一方、逮捕により被疑者が著しい不利益を受ける場合など)には、この要件を満たしません。

逮捕状について

逮捕状とは、検察官または司法警察員(公安委員会の指定する警部以上の者)の請求により、地方裁判所または簡易裁判所の裁判官が通常逮捕の要件である逮捕の理由と必要の有無について審査し、それらがあると認められる場合に発行されます。

憲法上、誰であっても、現行犯として逮捕されるか、権限を有する司法官憲が発する令状がある場合でなければ逮捕されないと定められています(憲法33条)。これを受けて、刑事訴訟法では裁判官が発する逮捕状が通常逮捕のために必要であると定めており(刑事訴訟法199条1項)、逮捕者である捜査官に逮捕の根拠を示すことで、不当な身体拘束を防止しています。

通常逮捕の多い罪名

通常逮捕では、次に述べる現行犯逮捕の場合と異なり、犯罪が行われた後に犯罪の内容や犯人が誰であるかについて捜査され、逮捕状の発付を経て逮捕されることとなります。

そのため、犯行時には被害者等に発覚しにくく後になって被害に遭ったことが発覚することの多い詐欺罪、横領罪などは、通常逮捕によることが多いです。

現行犯逮捕

現行犯逮捕は、犯罪の瞬間または直後において、逮捕状が無くとも犯人を逮捕できるというものです(刑事訴訟法212条1項、213条)。

上記で述べたように、不当な逮捕を防ぐために逮捕の理由と必要について審査した上での令状による逮捕が原則とされているところ、犯罪行為を行っている最中あるいは直後の者(現行犯人)については特定の犯罪の発生とそれを行った者であることが明らかであり、また、逮捕状を取得するよりもその場で逮捕しなければ逃亡の恐れが大きいことから、例外として逮捕状によらない逮捕が認められています。

準現行犯逮捕

準現行犯逮捕(刑事訴訟法212条2項)は、逮捕者が犯人の犯行の瞬間または犯行直後の状況を見ていなくとも、犯行が終わってから間が無く、同条同項各号所定の事由(犯人として声を掛けられ、追いかけられているとき、犯行に用いたと思われる凶器などを持っている場合など)がある場合には、現行犯人とみなして、逮捕状が無くとも逮捕できるとするものです。

私人逮捕

現行犯逮捕の場合のみ、警察官や検察官などの法律上逮捕権限を持つ者でない一般人(私人)でも、犯人を逮捕することができます。

現行犯逮捕の場合は誤認逮捕のおそれがなく、また逃亡する前に逮捕する必要性が高いという、逮捕状なしに逮捕できることと同じ理由から、警察官等でなくとも逮捕できることとされています。私人が現行犯人を逮捕したときは、ただちに犯人を検察官または警察官に引き渡さなければなりません(刑事訴訟法214条)。

現行犯逮捕の要件

現行犯逮捕の要件は、犯罪の存在と犯人性(逮捕されようとしていることが犯人であること)が明らかであることと、犯行と逮捕との時間的接着性です。それらが認められることにより、令状主義(逮捕状がなければ逮捕できない)の例外として、逮捕状が無くても逮捕できることとされています。

また、通常逮捕と同様に、逮捕の必要(逃亡や罪証隠滅のおそれ)がない場合には、逮捕の要件を満たさず、逮捕することはできません。

現行犯逮捕が多い罪名

現行犯逮捕される可能性があるのは、詐欺罪や横領罪のように犯行時に外部の人間(被害者や第三者)から見て犯行が行われていると気付かれにくい罪ではなく、傷害罪や窃盗罪、強制わいせつ罪など、行為者以外の人間が行為者の行為を目撃した時に、それが犯罪行為であると一見して分かるような態様の犯罪です。

覚せい剤や大麻などの薬物の所持についても、職務質問などの際に違法薬物らしきものを所持しており、その場で検査して違法薬物であると確定すれば、現行犯で逮捕されます。

緊急逮捕

緊急逮捕とは、現行犯ではないが犯罪事実の存在と犯人性についての疑いが強く、また逮捕状を取れない緊急の必要性がある場合に、事後に令状審査を行うことで逮捕状なしでの逮捕ができるとされているもので、現行犯逮捕と同じく例外的な逮捕状のない逮捕として認められているものです。

緊急逮捕の要件

緊急逮捕の対象となる犯罪は、死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪、という一定以上の重い法定刑の犯罪に限定されています。

また、逮捕されようとしている者がその犯罪を犯したことについて充分な疑いがあること、逮捕に急速を要し、逮捕状を求めることができないという緊急性があることも要件となります。また、通常逮捕、現行犯逮捕と同様に、逮捕の必要(逃亡や罪証隠滅のおそれ)がない場合には逮捕できません。

緊急逮捕の多い罪名

緊急逮捕が行われるのは、上記のように一定以上の重い法定刑が定められている罪に限定されていますが、殺人罪、傷害罪、窃盗罪、強盗罪、強制性交等罪、強制わいせつ罪、詐欺罪、横領罪など、該当する罪は少なくありません。

該当するいずれの罪についても、犯罪の十分な嫌疑、緊急性などの要件を満たせば、緊急逮捕される可能性があります。

逮捕された場合の流れ

警察に逮捕されると、72時間以内に勾留されるか否かが決定されます。勾留されると、逮捕に引き続き刑事施設に収容され、取調べを受けます。勾留の期限(10日から20日)内に、検察官が事件を起訴するかしないかを決定します。

逮捕後の流れについて詳しく見る

逮捕されてしまった場合の対処について

逮捕された場合、引き続き身柄を拘束する必要があるとして勾留が決定されることが多いですが、事案によっては、弁護人が勾留されるべきでないことを検察官や裁判官に主張することにより、勾留されなかったり、一旦決定された勾留が取消しになる場合もあります。

多くの場合、逮捕の翌日には勾留されてしまうことから、それまでの間に勾留を防ぐ主張の準備を進めることが重要で、そのためには可及的速やかに弁護士に相談する必要があります。

接見・面会について

逮捕・勾留されている被疑者とは、刑事施設の接見室でアクリル板越しに会うことができます。

弁護士は、逮捕・勾留中いつでも被疑者と会う(接見)ことができますが、被疑者の家族や友人は、勾留前には面会できません。勾留後は刑事施設の所定の時間(平日の日中)内であれば面会することができます。

接見について詳しく見る

不起訴で釈放されたい場合

逮捕・勾留されていても、不起訴となれば釈放されます。事案によりますが、不起訴となるためには被害者との示談成立や贖罪寄付などの事実が必要となることが多く、勾留されてから処分決定までの約1~2週間(勾留延長された場合を含む。)の間にそれらの手続を完了する必要があります。

したがって、不起訴となって釈放されたい場合、逮捕・勾留されてからできるだけ早く弁護士に相談する必要があります。

不起訴について詳しく見る

逮捕の種類に関するよくある質問

準現行犯逮捕は、どの程度距離や時間 に間がある場合認められるのでしょうか。

準現行犯逮捕の要件の1つである犯行と逮捕との時間的・場所的接着性については、212条2項各号に定められた犯人性を示す類型的事情(盗んだらしき物や犯行に用いられたと思われる凶器などを持っている、体や衣服に犯罪の痕跡があるなど)への該当性と併せて準現行犯逮捕の適法性の判断要素とされます。

つまり、犯人であることを示す事情が顕著であったりいくつもあったりして犯人性の明白さが強まるほど、犯行時刻・現場との時間的・場所的な隔たりが大きくなっても準現行犯逮捕が認められることとなります。被逮捕者の身なりや態度等から犯人性がかなり明白といえる場合に、犯行から1時間~1時間40分、4キロほど離れた時間・場所での準現行犯逮捕が認められた例がありますが、犯人性が上記ほど明白とはいえない場合には、もっと時間的・場所的な間が小さくなければ準現行犯逮捕が認められない可能性があります。

万引きで、後日通常逮捕されることはあり得ますか?

万引き(窃盗罪)の逮捕について、窃取の瞬間を目撃されて現行犯逮捕される場合ばかりではなく、後日に通常逮捕や緊急逮捕される場合もあります。

その場では逮捕されなかったが店員や他の買い物客に犯行を目撃されていたり、店内や町中の防犯カメラに犯行や逃走の様子が記録されていたりなど、犯罪事実や犯人の特定につながる証拠が存在する可能性は大いにあります。そのため、後日の捜査によって犯人として特定され通常逮捕されることや、捜査を進めている警察官にたまたま発見されて緊急逮捕されることもありえます。

緊急逮捕の場合、警察が家に上がり込むことはあるのでしょうか?

逮捕状や自宅内の捜索差押を認める令状がある場合には警察が家に上がり込むことが認められますが、緊急逮捕の場合、逮捕にあたって警察が家宅内に立ち入ることはあるでしょうか。 通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕のいずれにおいても、警察官は逮捕に必要な場合に人の住居や建造物内に立ち入ることができます(刑事訴訟法220条1項1号)。

また、逮捕の現場では令状が無くとも捜索、差押えや検証の手続を行うことが認められています(同条同項2号)。したがって、緊急逮捕の際に逃走する被疑者を追いかけて警察が被疑者の自宅内に立ち入ったり、自宅を現場とする逮捕に伴い自宅内で捜索・差押えを行ったりすることはありえます。

再逮捕とはなんですか?

ある事件で逮捕され、その判決が出る前に、別の被疑事実(事件)で逮捕されることを再逮捕といいます。

同じ事件で2度目の逮捕を受けることも極めてまれにあり、それも再逮捕といいますが、ここでは省略します。再逮捕の例を挙げると、覚せい剤の所持で逮捕された後、尿検査の結果から使用で再逮捕される例、強制わいせつ事件で逮捕された後、別の被害者からも被害申告があり、その被害者に対する事件について再逮捕される例などです。

弁護士への依頼が被疑者の命運を分けます

逮捕されてしまった場合に何の対応も行わないと、そのまま勾留され、起訴され、有罪判決を受けるという可能性が高いです。

逮捕後早い段階で弁護士に依頼することで、勾留を防ぐことが出来たり、被害者との示談等により不起訴となったり、正式な裁判の起訴ではなく略式手続による罰金刑で済んだりする可能性が見えてきます。逮捕されてしまったら、出来るだけ早く弁護士にご相談、ご依頼ください。

ニュースなどで「前科前歴」という言葉をよく耳にしますが、前科と前歴とは何が違うのでしょうか。また、前歴が付いてしまうことを回避するにはどうすればよいのでしょうか。

前歴とは

前歴とは、捜査機関から逮捕され被疑者として捜査の対象となってことをいいます。これに対して、「前科」とは、刑事裁判により審理され、有罪判決の言い渡しを受け、その刑が確定したものをいいます。有罪判決というのは、懲役刑のみならず、罰金刑や禁固刑も含みます。

なお、捜査機関による捜査の対象となったものの、不起訴処分で事件が終了した場合には前科ではなく前歴にとどまります。

前歴がつくことによるデメリット

前科が付くことになれば、就職の際に不利になったり、就くことができる職業が制限されたりという不利益を被ることになりますが、前歴の場合はどうでしょうか。

インターネット上に記録が残る可能性がある

逮捕されたことが新聞やインターネットのニュースで報道された場合には、それを消すことは困難です。もっとも、サイトの運営側に依頼すれば削除してもらえることもありますので、サイト運用側と交渉することも検討する必要があります。

再犯の際に不利になる

前歴の場合は、検察庁の「犯歴記録」、警察庁の「前歴簿」に記録が残されますが、本籍地の市区町村に備え付けられている「犯罪人名簿」には記録されません。捜査機関に記録が残っている以上、その後新たに犯罪を犯した場合には、その前歴も含めて処分が下されることになります。

前歴は調べられるか

第三者が警察庁、検察庁へ照会をかけて前歴を調べることはできません。探偵に依頼したり、インターネトの情報から探し当てることができる可能性はありますが、その可能性は限りなく低いでしょう。そのため、前科が第三者に明らかになることはほぼありません。

前歴は本人が死亡するまで消えることはありません。これに対して、前科は犯罪人名簿から削除される場合があります。それは、①刑法34条の2の規定により、名簿に登録されている犯歴の刑の言い渡しの効力が失われたとき、②刑法27条の規定により、名簿に登録されている犯歴(執行猶予が付されているものに限る)の刑の言い渡しの効力が失われたときです。

前歴は消せるか

前歴は本人が死亡するまで消えることはありません。これに対して、前科は、犯罪人名簿から削除される場合があります。

それは、①刑法34条の2の規定により、名簿に登録されている犯歴の刑の言い渡しの効力が失われたとき、②刑法27条の規定により、名簿に登録されている犯歴(執行猶予が付されているものに限る)の刑の言い渡しの効力が失われたときです。

前科について詳しく見る

前歴は履歴書に書く必要があるのか

一般企業における就職活動の際、ご自身の前科前歴を申告する必要があるのか、という質問をよく聞きます。提出を求められている履歴書に「賞罰」の欄があったとしても、前歴は前科と異なり「罰」にはあたらないため、申告しなければならない義務はなく、申告しなくても経歴を詐称したということにはなりません。

前歴があっても海外旅行はできるか

旅券法13条に、「死刑、無期若しくは長期2年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者」にはパスポートを発給しない旨が記載されています。

そのため、過去の前歴の場合には海外旅行することはできます。

前歴に留め、前科を回避するには

「前科」がつくと、犯罪歴が残ったり就職になったりと様々な不利益を負うことになります。そのため、逮捕された場合には、不起訴処分を獲得するべきだと言えます。起訴された場合の有罪率は99.9%であり、起訴されると前科がついてしまうといっても過言ではありません。そうならないためにも早期の段階で弁護士に依頼するべきといえます。なぜなら、起訴される前の段階で、被害者との間で示談が成立した場合には、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなるからです。逆に、被害者との間で示談ができなかった場合には、不起訴処分を獲得することが難しくなります。

被害者は加害者との示談交渉を避ける傾向がとても強くありますが、弁護士との交渉であれば、被害者が受け入れてくれる可能性が高くなります。

前科について詳しく見る

前歴で留め、前科がつくことを避けるには弁護士へご相談ください

被害者との間に示談が成立した場合には、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。前科がつくことにより、様々なデメリットを受ける可能性があります。

弊所の弁護士は、被害者との示談の交渉をし、不起訴処分を多く獲得してきました。示談交渉については、専門家である弁護士が行うことにより、示談が成立する可能性が高くなります。弊所の弁護士であれば、少しでもご依頼者様のお力になれることがあるかと思います。

まずはお気軽にご相談ください。

ご依頼者様から、「前科がついてしまうと今後の生活に影響が出るのではないか。」と相談されることが少なくありません。また、「前科がつかないようにしたいのだが、どうすればいいか。」と相談されることも少なくありません。

ここでは、そのようなご依頼者様の不安を解消するべく「前科」についてご説明いたします。

前科とは

前歴とは、捜査機関から逮捕され被疑者として捜査の対象となってことをいいます。これに対して、「前科」とは、刑事裁判により審理され、有罪判決の言い渡しを受け、その刑が確定したものをいいます。有罪判決というのは、懲役刑のみならず、罰金刑や禁固刑も含みます。

なお、捜査機関による捜査の対象となったものの、不起訴処分で事件が終了した場合には前科ではなく前歴にとどまります。

前歴について詳しく見る

前科の記録は残るか

前科については、消滅することはありませんが、一定以上の場合には、犯罪人名簿から削除される場合があります。ここでは、犯罪人名簿についてご説明いたします。

犯罪者名簿とは

犯罪人名簿は、市町村で厳重に管理されているもので、前科者の情報等が記載されています。ただ、犯罪人名簿は極めてプライバシー性の高いものであるため、一般に公開されることはありません。

犯罪人名簿から削除されるとき

犯罪人名簿から削除される場合があります。それは、①刑法34条の2の規定により、名簿に登録されている犯歴の刑の言い渡しの効力が失われたとき、②刑法27条の規定により、名簿に登録されている犯歴(執行猶予が付されているものに限る)の刑の言い渡しの効力が失われたときです。

①34条の2の場合は、禁固以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処されないで10年を経過したとき、また、罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処されないで5年を経過したときのことをいいます。

②27条の場合は、刑の全部の執行猶予の言い渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときのことを言います。

インターネット上に情報は残る可能性はある

現代はインターネット社会ということもあり、インターネットで公開された情報を抹消することは困難といえます。しかし、ご自身の情報が記載されているインターネットサイトを発見した場合には、削除してもらえる可能性もありますから、弁護士に相談し、削除してもらえるよう交渉してもらうことも可能です。

前科がつくことによる生活への影響

就職に不利になることがある

一般企業における就職活動の際、ご自身の前科を申告する必要があるのか、という質問をよく聞きます。提出を求められている履歴書に「賞罰」の欄があれば、記載しないと経歴を詐称したことになりますが、「賞罰」の欄がないにもかかわらず、申告しなければならない義務はなく、申告しなくても経歴を詐称したということにはなりません。

また、前科があると就くことができない職業が存在します。例えば、国家公務員や地方公務員、弁護士、司法書士、教員、警備員等です。ここに挙げたのは具体例にすぎませんので、ご注意ください。

前科は離婚の理由になるか

前科がついたとしても、そのことが直ちに離婚事由になるわけではありません。もっとも、前科の対象となった犯罪行為の態様等などを総合的に判断し、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当すると判断される可能性はあるので注意が必要です。

ローンは組めるか

ローンを組むにあたり、信用情報機関は、信用情報を基に判断することになりますが、その信用情報に前科・前歴という情報は記載されません。したがって、前科・前歴の存在が、ローンの審査に影響することはありません。

生活保護や年金はもらえるか

生活保護や年金を支給するにあたって、前科の有無は判断要素にならないので、前科があったとしても、生活保護や年金を受給することができます。

海外旅行はできるか

旅券法13条に、「死刑、無期若しくは長期2年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者」にはパスポートを発給しない旨が記載されているため、この場合には海外旅行をすることができません。

他方、日本でパスポートの発行が認められたとしても、渡航先の入国審査により入国できない場合もあります。

前科は回避できるのか

不起訴処分となれば前科はつかない

既に述べたとおり、逮捕されたとしても、不起訴処分の場合には、前科ではなく前歴にとどまります。したがって、逮捕された場合には、不起訴処分を獲得するべきだと言えます。

起訴された場合の有罪率は99.9%であり、前科がついてしまうことになります。そうならないためにも早期の段階で弁護士に依頼するべきといえます。

不起訴処分には示談の成立が重要

起訴される前の段階で、被害者との間で示談が成立した場合には、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。仮に起訴されたとしても、示談が成立していることにより、刑が軽くなる可能性が高くなります。逆に、被害者との間で示談ができなかった場合には、不起訴処分を獲得することが難しくなります。

被害者は加害者との示談交渉を避ける傾向がとても強くありますが、弁護士との交渉であれば、被害者が受け入れてくれる可能性が高くなります。

前科がつくのを回避するには、弁護士へご相談ください

被害者との間に示談が成立した場合には、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。前科がつくことにより、様々なデメリットを受ける可能性があります。

弊所の弁護士は、被害者との示談の交渉をし、不起訴処分を多く獲得してきました。示談交渉については、専門家である弁護士が行うことにより、示談が成立する可能性が高くなります。弊所の弁護士であれば、少しでもご依頼者様のお力になれることがあるかと思います。 まずはお気軽にご相談ください。

家族が逮捕され、留置されている警察署に行っても、「接見禁止のため、面会することができない」と答えられ、会うことができず、困っていると思います。ここでは、逮捕されてしまった家族に会えないのはなぜか、会うためにはどうしたらいいのか等、「接見禁止」についてご説明いたします。

接見禁止とは?

「接見」「面会」とは、刑事事件を起こしたと疑われ、身柄拘束を受けている被疑者や被告人に、弁護士や弁護士以外の人が会うことをいいます。原則として、弁護士以外の人は、身柄拘束を受けている被疑者や被告人と接見することができるのですが、「接見禁止」をすることが相当であると判断された場合には、自由に会うことができないことになります。もっとも、被疑者や被告人は、接見交通権が憲法上保障されているため、弁護士とは制限されることとなく会うことができます。

接見禁止となるのはなぜか

検察官の接見禁止の要求に対して、裁判官が接見禁止を相当であると判断された場合には、接見禁止となります。裁判官は、被疑者が逃亡のおそれがあること、罪証隠滅のおそれがあること、容疑を否認していること、共犯者がいて共犯者(被疑者を含む)が容疑を否認していること、暴力団のような組織犯罪である場合には、接見禁止を相当とする場合が多いといえます。

接見を許してしまうと、被疑者が弁護士以外の人に証拠隠滅等を依頼するなど、証拠収集に支障が生じる可能性があると考えられており、それらを禁止しようとすることに接見禁止の意義があります。

接見禁止の期間

接見禁止の期間については、明確な基準はありません。捜査機関による捜査が終了されれば、「証拠隠滅のおそれ」は相当程度下がることになりますから、起訴後には、接見禁止が解除されることは多いと言えます。

ただ、共犯者が存在し、共犯者の捜査が完了していない場合には、共犯者の捜査が完了するまで、場合によっては被疑者の公判まで長引いてしまうことはあり得ます。

接見禁止で制限されること

手紙 のやり取りの禁止

接見禁止の場合、手紙や写真のやりとりすらも禁止されています。手紙や写真のやりとりを許すことにより、被疑者が弁護士以外の人に罪証の隠滅等を依頼することが可能となり、そうすると、逃亡のおそれや罪証の隠滅を防止するという接見禁止の意義を失わせることになるからです。

伝えたい内容がある場合には、被疑者と唯一接見することが許されている弁護士にお願いする必要があります。もっとも、弁護士を通じたとしても罪証隠滅や逃亡のおそれに繋がるような伝言等はできないので注意が必要です。

罪証隠滅や逃亡のおそれにかかわる物の差し入れ禁止

上記のとおり、手紙や写真のやり取りは禁止されています。それは、罪証隠滅や逃亡に繋がると考えられているからです。

もっとも、生活必需品に関しては、接見禁止がない場合と変わりなく、差し入れをすることが可能ですが、罪証隠滅や逃亡に繋がるような物の差し入れは禁止されることになります。

宅下げの禁止

宅下げとは、被疑者・被告人の荷物や手紙等の持ち物を弁護士以外の人が受け取ることを言います。

接見禁止処分がなされている場合には、証拠隠滅のおそれがあるとの観点から、宅下げが出来なくなります。

接見禁止でも弁護士は接見可能

既に述べた通りですが、接見禁止がされている状況においても、弁護士であれば、接見することが可能です。被疑者や被告人は、憲法上、接見交通権を補償されているからです。

弁護士以外の人は、勾留されるまで面会することができませんが、弁護士であれば、逮捕直後から自由に接見することが認められています。

時間制限、回数制限なく面会できる

一般面会において、平日午前9時から午後5時まで、1日1回20分間の面会と制限されています。しかし、弁護士による接見は、時間制限・回数制限なく、土日祝日においても接見することが認められています

警察官の立ち合いはない

一般面会において、弁護士以外の人が面会する場合には、警察官の立ち合いが必須の条件となっています。

しかし、弁護士による接見は、警察官の立ち合いなく、接見することができます。したがって、被疑者や被告人は、警察官に聞かれたくないことを弁護士にだけは話すことができ、弁護士からの回答を得ることができます。

回数制限なく差し入れができる

一般面会における差し入れは、1日2回と制限されています。しかし、弁護士による差し入れは、回数制限なく、差し入れをすることができます。

接見禁止を解除する方法

準抗告・抗告

被疑者・被告人が接見禁止決定を受けている場合には、まず、裁判官・裁判所に対して準抗告(被疑者段階)・抗告(被告人段階)を行い、接見禁止決定を解除することを求めることが考えられます。

裁判官・裁判所において、被疑者・被告人が「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があると判断されていることから、接見禁止決定がされているわけですから、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」がないと主張・立証することに成功すれば、接見禁止を解除することができる可能性があります。

「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」がないことの具体例としては、被疑者や被告人、共犯者の捜査が終了していることや被疑者・被告人やその身内が被害者と何ら接点のないことを証明すること、罪証を隠滅しないという誓約をすることなどです。

接見禁止処分の一部解除申し立て

接見禁止処分に対する準抗告・抗告が認められなかった場合には、接見禁止処分の一部解除の申し立てを行うことが考えられます。全ての外部の者との接見を禁止するのではなく、家族等との接見は認められる場合もあります。

なお、法令に基づく申し立てではないため、裁判官・裁判所は判断する義務は負っていないことに注意が必要です。

勾留理由開示請求

接見禁止処分に対する準抗告・抗告や一部解除の申し立てが認められなかった場合には、勾留理由開示請求を求めることができます。勾留理由開示請求は、公開の法廷で行われ(刑事訴訟法83条)、被疑者・被告人が参加し意見を述べることができます。

そして、「公開の法廷」ということもあり、直接会話をすることはできませんが、家族の方は被疑者・被告人の姿を見ることができます。

接見禁止になっても弁護士なら被疑者との面会や接見禁止解除の働きかけができます。

これまで述べてきたように、接見禁止の処分がされると、弁護士以外の人が被疑者・被告人に接見することができなくなります。しかし、このような状況においても弁護士は被疑者・被告人と面会することができます。そして、接見禁止処分に対する準抗告・接見禁止処分に対する一部解除申し立て等を行うことにより、弁護士以外の人と、被疑者・被告人が面会することができるようになります。

接見禁止処分に対する措置の経験が豊富にある弊社の弁護士であれば、少しでもご依頼者の利益になる弁護活動を行うことができます。

まずは、お気軽にご相談ください。

接見は、身体拘束されている方と弁護人が「立会人なくして」話をすることができる重要な機会です。

初回接見の場合は、取調べ等に対する防御のアドバイスを聞くことができますし、その後の接見では、不当な取調べを受けていないか等を弁護士がチェックすることができるという点で身体拘束されている方と弁護人にとって重要な権利です。

以下では、接見についての理解を深めていきましょう。

接見について

接見交通権とは

接見交通権とは、身体拘束されている本人が、「立会人なくして」弁護人と自由に十分な面会ができる権利のことです。この「立会人なくして」弁護人と接見できる権利を、秘密交通権といいます。

なぜ接見交通権が必要か?

身体拘束されると、様々な重大な不利益を被ることになります。信頼できる家族や友人らとの交流が断たれ、精神的にも困惑し、不安感に襲われ、多大なる精神的苦痛を受けます。また、仕事などを含めた社会的な活動が一切できなくなり、収入の道も断たれ、名誉が失墜し、生まれてきてから積み上げてきた多くのものを一挙に失うことになる可能性もあります。

そのような逮捕が正当な手続きによるものでなかった場合、つまり、違法な逮捕で会った場合、早期に立会人なくして接見することで、逮捕に至った経緯が明らかになり、場合によっては直ちに釈放を求めたり、逮捕に続く勾留手続を阻止したりすることで、身体拘束を受けている方の不利益を最小限にすることができます。

逮捕直後の接見についての重要性

家族や友人でも面会が可能になるは、勾留決定が出された翌日になるのが一般的です。そのため、逮捕直後に接見することができるのは弁護士だけです。

とりわけ、逮捕直後の初回接見は、身体拘束されている方にとって貴重なアドバイスを受けることができるとともに、精神的に不安定は身体拘束されている方とそのご家族等との懸け橋になる重要な機会になります。

逮捕直後の動きで重要なポイント

捜査段階の手続きは流動的な側面があるので、それに応じて不安に駆られている逮捕・勾留されている方と弁護士との接見を行うことで精神的に安定するということはよくあります。ことに、家族も面会できない逮捕段階においては、家族や友人との面会ができないため、精神的に不安定になっている精神状態のなか、否認事件などでは、長く厳しい取調べが行われており、虚偽の自白をしてしまう危険性もあります。

そのような状況におかれている方にとって、逮捕初期の段階で被疑者と立会人なくして何回でも自由に接見できる接見交通権は極めて重要であるといえます。

そのため、逮捕段階で迅速に接見に行き、少しでも早く身体拘束されている方の精神を安定させることが必要です。

逮捕後の流れについて詳しく見る

接見禁止・接見指定とは

接見禁止とは、弁護士以外の第三者との面会を禁止する処分をいい、接見指定とは、捜査機関において、捜査のため必要があるとき、弁護人と身体拘束されている方との接見の日時・場所及び時間を指定する処分をいいます。

これらは対象となる当事者が異なります。

接見禁止について詳しく見る

一般面会について

捜査段階の手続きは流動的な側面があるので、それに応じて不安に駆られている逮捕・勾留されている方と弁護士との接見を行うことで精神的に安定するということはよくあります。ことに、家族も面会できない逮捕段階においては、家族や友人との面会ができないため、精神的に不安定になっている精神状態のなか、否認事件などでは、長く厳しい取調べが行われており、虚偽の自白をしてしまう危険性もあります。

そのような状況におかれている方にとって、逮捕初期の段階で被疑者と立会人なくして何回でも自由に接見できる接見交通権は極めて重要であるといえます。

そのため、逮捕段階で迅速に接見に行き、少しでも早く身体拘束されている方の精神を安定させることが必要です。

接見との違い

接見と一般面会とは、「立会人なくして」身体拘束されている方と面会できるかどうかが決定的に違います。「立会人なくして」面会してコミュニケーションをとることは、身体拘束による不利益を最小限にするという観点から、極めて重要なことです。

差し入れがしたい場合

家族から差し入れがしたい場合、家族の方でも警察署等に行って差し入れをすることができます。一般的には、現金、便箋、封筒、衣類(下着類を含みます)が喜ばれる可能性が高いです。留置中はとても暇なので、雑誌やマンガなどを望む方は多いです。

もっとも、施設内の治安維持や自殺防止の観点から、差し入れすることができるものに一定の制限がかかっています。例えば、ズボンの紐は抜いてから差し入れしなければなりませんし、本のカバーも取って差し入れしなければなりません。詳しくは、その留置施設の担当官に聞けばよいでしょう。なお、一般の方だと①土日や夜間早朝は不可②1日に1回までといった様々な制約を受けますが、弁護士ならこれらの制約は受けません。

接見に関するよくある質問

友人が勾留されたのですが、家族ではなくても接見・面会は可能ですか?

家族でない場合、友人や恋人であっても面会は可能です。

もっとも、弁護士接見とは異なり、一般面会は接見禁止が付いていれば面会することはできません。

差し入れと併せて手紙を渡したいのですが。

手紙を差し入れして直接渡すことも可能です。ただし、検閲といって、留置管理の方が手紙の内容を確認し、問題ないと判断された場合に限ります。

接見・面会の時間はどの程度なのでしょうか?

弁護士接見の場合は、無制限に接見することができますが、一般面会の場合は、20分程度と制限時間がります。

弁護士への依頼で早期解決できる可能性があります

ご家族や友人等の身近の人が逮捕されてしまった場合、その方と連絡が取れないことは不安だと思います。そして、身体拘束されている方は、それ以上に不安定な立場にあります。

早期の段階で弁護士に依頼することで、身体拘束されている方やそのご家族らのご不安を取り除くことができるうえ、活動できる幅が広がり、よりいい結果に結びつく可能性が高くなります。

弊所の弁護士は、逮捕前段階や逮捕直後の早期段階から弁護活動を行い、早期に身柄解放をした実績があります。ご依頼者様にとって少しでも利益になるような弁護活動を行うことをお約束します。

まずはお気軽にご相談ください。

他人に対して、暴行を加えたことにより怪我をさせてしまった場合には、傷害罪(刑法204条)が成立します。

被害者は、怪我をしたことに驚き、警察に逃げ込むことが多く、怪我としては大きくなかったとしても、捜査機関は被害者が被害届を出している限り捜査を行います。

その結果、捜査機関に逮捕されてしまうことも少なくありません。ここでは、傷害罪についての概要や傷害罪を犯してしまった場合の対処法などをご説明します。

傷害罪とは

傷害罪は、被害者に怪我をさせたことにより成立する犯罪であるため、被害者が怪我をしているか否かが非常に重要です。被害者がどのような怪我を負い、どのくらいの治療期間を要するかどうかは、医師が作成した診断書により判断されます。

私人間のちょっとしたトラブルが原因で傷害事件に発展することが多く、傷害事件に関して弁護士への相談も少なくありません。

なお、傷害罪は、親告罪ではないため、被害者の告訴がなくても検察官は被疑者を起訴することができます。

傷害罪の刑罰

被害者に対する暴行によって怪我をさせてしまった場合には、暴行罪が成立します。

暴行罪の刑罰は、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」(刑法208条)と定められていますが、傷害罪の刑罰は、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(刑法204条)と、暴行罪の刑罰に比べて、傷害罪の刑罰は、重く定められていることがわかります。

傷害罪の成立要件

傷害罪が成立するためには、①傷害罪の実行行為(傷害行為)の存在、②人の身体を傷害させたこと(傷害結果の発生)、③実行行為と傷害結果との因果関係があること、④暴行の故意があることが必要となります。以下で、各要件について詳しくご説明いたします。

傷害罪の実行行為があるか

傷害罪の実行行為とは、「人の身体に対する有形力の行使」と解釈されており、典型例としては他人に対して平手打ちや手拳で殴る等が挙げられます。

では、無形的方法又は不作為による傷害も認められるのでしょうか。判例は、「人の身体に対する有形力の行使」で足りるとだけ述べ、その方法は限定していません。「人の身体の安全」を害するのは、有形的方法でなくても可能だからです。

無形的方法又は不作為による傷害として判例が認めたものとして、性病に罹患している者が姦淫行為により性病を感染させる行為(最高裁昭和27年6月6日)、無言電話等により人を極度に恐怖にさせて精神衰弱症に陥らせた行為(東京地方裁判所昭和54年8月10日)等があります。

したがって、傷害罪の実行行為は、一般的な暴行に限らず、無形的方法又は不作為による傷害も認められているため、注意が必要です。

傷害という結果が生じた

「傷害」とは、人の生理的機能を侵害することと解されており、傷害の典型例としては、創傷や打撲傷のような外傷がある場合が挙げられます。

では、外傷が生じていなければ人の生理的機能を侵害していると言えないのでしょうか。

判例は、睡眠薬等を服用させ約6時間の意識障害にさせた場合(最高裁判決平成24年1月30日)、ラジオ等の騒音により精神的ストレスを与えて睡眠障害等に陥れた場合(最高裁判決平成17年3月29日)に傷害罪が成立すると述べ、外傷がなくても人の生理的機能を侵害していると判断しています。「人の身体の安全」を害するのは外傷に限定されないからです。この他、めまい、湿疹、中毒、病気の罹患、疲労倦怠などの外傷がない場合にも、判例は「傷害」にあたると判断しています。

実行行為と結果との因果関係があるか

傷害罪の実行行為である「人の身体に対する有形力の行使」によって、人の生理的機能を侵害したという因果関係がなければ傷害罪は成立しません。被害者に対して、暴行を加えた結果、その部位に傷害が生じた場合に、暴行行為と傷害との間に因果関係が認められることは明らかです。

では、被害者に対して暴行を加えていたが、被害者が暴行から逃亡した際に転倒し、暴行を加えた部位とは異なる部位に傷害が生じた場合に、暴行と傷害との間に因果関係が認められるのでしょうか。

確かに、加害者が暴行を加えた部位とは異なる部位に傷害が生じているため、因果関係がないように思えます。しかし、加害者の暴行がなければ、被害者は逃げ出し転倒することもありませんでしたし、加害者の暴行という行為が危険性を有していたからこそ、被害者に傷害結果を生じさせたのです。したがって、異なる部位に傷害が生じたとしても、因果関係が認められることになります。

故意が認められるか

他人に怪我をさせようと思い、暴行を加えた場合、すなわち、傷害の故意がある場合に傷害罪が成立するのはいうまでもありません。

では、他人に怪我をさせようとは思っていない場合、すなわち、傷害の故意はなく、暴行の故意にとどまる場合に傷害罪が成立するのでしょうか。

この点について、判例は、暴行の故意だけで足り、傷害の故意までは不要とされています。暴行罪(208条)は、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」と規定しており、暴行の故意で暴行を加え、人を傷害させた場合は、傷害罪に問われることを想定しています。つまり、被害者を怪我させようとする意思までなくても、被害者に暴行を加えようとする意思だけで怪我をさせた場合でも、傷害罪は成立するとされています。

傷害罪の時効

傷害罪の時効は10年です。

傷害行為を行ったとしても、起訴されることなく10年間を経過すれば、検察官は、今後、傷害行為について起訴することができなくなります。

もっとも、刑事事件としての時効が成立した場合でも、民事事件としての時効が完成しておらず損害賠償を請求される場合もあるので注意が必要です。

外傷のない場合 でも傷害罪になりうる

「傷害」とは、人の生理的機能を侵害することをいいますが、外傷がなくても人の生理的機能を侵害していると評価されることがあります。

近時の判例では、睡眠薬等を服用させ約6時間の意識障害にさせた場合(最高裁判決平成24年1月30日)、ラジオ等の騒音により精神的ストレスを与えて睡眠障害等に陥れた場合(最高裁判決平成17年3月29日)に傷害罪が成立するとされています。

傷害罪で逮捕されたときの対処法

傷害罪で逮捕されてしまった場合でも、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分ないし減刑される可能性が高くなります。

被害者との示談を成立させるために最も重要なことは、被疑者が被害者に対して、真摯に謝罪することです。被害者に対して怪我を負わせたにもかかわらず、何ら謝罪することなく金銭的な解決だけを求めても、被害者は到底受け入れてくれないでしょう。

被疑者が真摯に反省していることを被害者に伝えるためには、謝罪文等を読んでもらうことが効果的です。しかし、被害者は被疑者と接触することを拒むことが多いため、弁護士を通して謝罪文を渡し、自らが反省していることを伝えましょう。そうすることにより、被害者の感情を和らげることができ、示談を成立させることが可能となります。

傷害罪の示談・被害弁償について

傷害事件を起こしてしまった場合でも、被害者との間で示談が成立すれば不起訴処分を獲得できる可能性は高くなります。示談をするにあたり、被害者に一定の金額を支払わなければなりませんが、示談金の相場を述べることは困難です。ただ、被害者が負った傷害の程度が大きかったり、被害者が通院のために会社を休む等した場合には、示談金は多額になる可能性があります。

一般的に示談金の相場を述べることが困難であることは既に述べましたが、傷害罪の罰金額(刑法204条)は示談金額の一応の目安になると考えられます。

傷害事件を起こしてしまったら、弁護士へご相談ください

傷害罪を犯してしまった場合には、早期の段階で、弁護士に相談することをお勧めします。事件直後に被害者に謝罪をすることで、被害者の感情を和らげることができ、示談が成立する可能性が高くなります。

傷害事件では、被害者との示談が成立しているかどうかが非常に重要です。被害者との示談が成立していれば不起訴処分を獲得できていたにもかかわらず、被害者との示談が成立していないことにより、略式起訴による罰金を科せられたり、公判請求による懲役を科せられる場合も十分に考えられます。

傷害事件で、被害者との示談を成立させ不起訴処分を多く獲得してきた弊所であれば、ご依頼者様の利益になる弁護活動をすることができると考えます。 まずはお気軽にご相談ください。

在宅事件と身柄事件の違い

刑事事件の中には、逮捕・勾留しないまま何度か呼び出して取調べを行い、検察官が処分を決めるような事件があります。

在宅事件であっても、後に逮捕されてしまう場合もありますが、基本的には、在宅事件と身柄事件との違いは「身体拘束されているかどうか」という点にあります。

在宅事件となる条件

逮捕勾留することができる要件は、①犯罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由の他②罪証隠滅又は逃亡のおそれですから、在宅事件になるかどうかは罪証隠滅又は逃亡のおそれがあるかどうかによるのですが、実務上は、軽微な傷害事件や交通事故事件など比較的軽微な事件について在宅事件として処理されているように思います。

在宅事件と起訴(略式起訴)

逮捕されないなら前科がつかないの?と疑問に思われるかもしれませんが、起訴されたら前科がつくことになります。検察官のする起訴処分には、公判請求と略式請求というものがあり、在宅事件の場合であっても、起訴処分がなされることもあります。

在宅事件の流れ

在宅・身柄事件の流れ

【身柄事件】
警察に逮捕された場合、取り調べが行われた後、48時間以内に検察官に送致されます。検察官送致後、検察官による取り調べが行われ、24時間以内に勾留請求をするかどうかの判断を行います。勾留請求がされない場合には直ちに釈放されますが、検察官が勾留請求をした場合、裁判官による勾留質問が行われ、裁判官が勾留するべきであると判断すれば、10日間勾留されることになります。

捜査機関は勾留10日間で捜査を行うことになりますが、10日間の捜査で起訴が可能となれば、起訴されることになり、不起訴が相当と判断されれば釈放されることになります。しかし、10日間の捜査では足りない場合には、さらに最大10日間の勾留が延長されることになります。

その後、起訴された場合には、約1か月後に第1回の公判期日があります。

【在宅事件】
在宅事件は、警察官の捜査が終了次第、検察庁に書類送検されます。その後、検察官から呼び出しがあり、取調べを受けた後に起訴されるかどうかが決まります。

書類送検とは?

警察官が犯罪の捜査をしたときは、検察官への全件送致が義務付けられています。ひらたく言うと、事件を書類や証拠などとともに検察庁に移さなければなりません。

被疑者を逮捕せずに捜査を行った場合には、被疑者の身柄を確保していないため被疑者の身柄を検察官に送致する必要はなく、捜査関係書類のみを検察官に送致することで足ります。この捜査関係書類のみを検察官に送致する場合のことを「書類送検」といいます。

どのように検察から呼び出しがかかるの?

書類送検された後は、犯罪地を管轄する検察庁から電話等による方法で呼び出しがかかります。

呼出しがかかった場合には、きちんと対応しましょう。

在宅事件のメリットは普通の生活ができること

在宅事件は、身体拘束されないため、学校や仕事に出勤する等、普段と変わらない社会生活を営むことができます。身体拘束され、仕事が欠勤することで解雇されたりする場合と比べると身体拘束されないメリットは大きいです。

在宅事件のデメリットは長期化する可能性があること

身体拘束を伴う事件では、逮捕勾留の手続について時間的制約があり、この時間内に起訴しない限り釈放しなければなりませんが、在宅事件の場合には時間的制約が公訴時効しかありません。

そのため、捜査機関も、法律上厳しい時間的制約のある身体拘束を伴う事件の方を優先して捜査する傾向にあるように思います。

公訴時効1年 侮辱罪、軽犯罪法違反など、拘留または科料にあたるもの
公訴時効3年 暴行罪、名誉棄損罪、過失傷害罪、威力業務妨害、器物損壊罪など、人は死亡させていないが、長期5年未満の懲役または禁錮、罰金刑にあたるもの

在宅捜査中に注意すること

在宅事件の場合、普段と変わらない生活を送れるため、自分が捜査の対象になっているという緊張感があまりなく、中には軽く考えてしまっている方もおられます。

そのため、在宅事件の場合は、弁護人を付けないケースが多いという印象を受けています。弁護人を付けていなければ、在宅期間中の捜査活動に対する準備ができていないことが多いです。

検察の呼び出しにはきちんと応じましょう

在宅事件の場合は、警察官又は検察官から取調べのための呼出しがなされます。

その場合には、決められた日時に出頭して取調べを受けることになります。呼び出しに応じなければ、逃亡のおそれがあるとして逮捕される可能性もあるので、呼出しにはきちんと対応しましょう。

在宅捜査中の行動に気を付けましょう

在宅事件とはいえ、逃亡又は罪証隠滅のおそれがあると認められれば、逮捕されることもあります。

例えば、警察又は検察からの呼出しに出頭しなかったり、被害者と過度に接触したような場合には、逮捕されることもあるので気を付けましょう。

在宅事件は弁護士に相談を

これまで述べてきた通り、在宅事件とはいえ、捜査機関から取調べを受けることになるので、それに対してどのように対応すべきか等の備えをしなければなりません。自身に不本意な供述調書等の証拠を取られてからでは、いくら後に無罪を主張しようと思っても遅い場合が少なくありません。

弊所の弁護士は、在宅事件であっても、早期段階から適切な弁護活動を行い、ご依頼者様の不利益を最小限に軽減することができます。まずはお気軽にご相談ください。

業務上横領で逮捕された場合の刑罰
業務上横領罪
業務上横領罪の法定刑:10年以下の懲役(刑法253条)

業務上横領罪は、業務上行われた横領について成立する罪で、典型的には社員が仕事上管理している会社のものを着服してしまった場合などが挙げられます。業務上横領罪と同じく会社と社員などの間で起こりうる罪には背任罪があります。このページでは、背任罪との違いや、横領額と量刑の間に関係はあるのかなどについて解説します。

業務上横領罪とは?

業務上横領罪とは、「業務上」「自己の占有する他人の物」を「横領」した場合に成立する罪です。対象となる財物の所有者がその人を信用して財物の管理を任せた(にもかかわらず自分のものにしてしまう=横領)という点では単純横領罪と同じですが、業務上横領罪の場合、その財物の管理が業務上、つまり仕事として行われていることが特徴であり要件となります。

横領罪の種類

業務上横領罪は、単純横領罪、遺失物等横領罪と並ぶ3つの横領罪のうちの1つです。横領罪全般については、こちらのページで詳しく解説します。

横領罪について詳しく見る

背任罪と業務上横領罪のちがい

業務上横領罪と背任罪はいずれも任務に反して会社などの他人に損害を与えるという点で共通しますが、大まかに言えば、業務上管理している他人の「物を得る(領得)」行為は横領、それ以外の方法で損害を与える場合は背任になります。

会社の金を第三者に貸し付ける場合など、「物の領得」の有無だけでは区別がつかない場合もありますが、経済的効果の帰属先が自分である場合には業務上横領、金の正当な所有者である他人本人である場合には背任となります。

背任罪となる例

形のある財物ではなく価値のある情報を流出させた場合、会社の金を会社を貸主として不正に貸し付けた場合、会社のものを会社を売り主として不当に安い値段で売った場合などは、業務上横領罪ではなく背任罪となります。背任罪については、こちらで詳しく解説します。

背任罪について詳しく見る

窃盗罪と業務上横領罪のちがい

窃盗罪は、他人が占有している物の占有を奪うもので、行為者が占有している他人のものを自分のものとする業務上横領罪とは異なります。そのため、会社などの他人のものを仕事として任されて管理しており、それを自分のものにしてしまったのであれば業務上横領罪、会社などから管理を任されているわけではないものを取ってしまった場合は窃盗罪となります。

窃盗罪となる例

業務上横領罪と似ているが窃盗罪が成立する例として、会社の金銭を管理する業務に従事していない従業員が会社のお金を着服する例、小売店の従業員(商品を管理する権限を持つ人以外)が店舗の商品を持ち帰る例、従業員が社用車を私用で乗り回す例などがあります。

業務上横領罪の刑の重さ

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役です(刑法253条)。業務上、つまり仕事として財物の管理を委託されているという関係にある分、その責任に反して横領してしまうと、単純横領罪よりも重い罪責を追うことになります。

業務上横領の時効

業務上横領罪の時効は7年です。ここでいう時効とは公訴時効、すなわち刑事事件として起訴するにあたっての期限です。なお、業務上横領罪の被害者への損害賠償は民事の問題となりますが、その時効(損害賠償請求の時効)は、業務上横領による損害と加害者を知った時から3年か、事件から20年です。

業務上横領罪の判例

・協議会の会計、口座管理業務を行う者が、協議会の口座から現金150万円を自身の口座に振込送金した例(懲役2年、執行猶予4年)※鹿児島地方裁判所 令和元年(わ)第77号 業務上横領被告事件 令和元年10月8日

・農協の税金等受取の収納業務に従事していた者が、税金として収納して保管していた現金51万400円を農協に納入せず、手元に保留して着服した例(懲役1年6月、執行猶予3年)※津地方裁判所 令和元年(わ)第165号 業務上横領被告事件 令和元年7月22日

・証券会社の取締役・部長として会社の預金口座の管理等の経理業務全般を統括していた者が、61回にわたり現金合計約1億6000万円を払い戻して受け取る等して着服した例(懲役5年)※松山地方裁判所 平成31年(わ)第15号、平成31年(わ)第36号、平成31年(わ)第82号、平成31年(わ)第102号、令和元年(わ)第127号 業務上横領被告事件 令和元年7月11日

これも業務上横領?ケース別事例

以下では、業務上横領罪が成立するのか質問が多い事例について解説します。

空出張で出張費を着服した

空出張、つまり実際には出張して行う仕事がないにもかかわらず、経費で私用の旅行に出かけたり、切符代や宿泊費を払い戻して自分の物にしたりする行為について、あらかじめ会社から預かっている、つまり業務上管理している経費を使った場合は、業務上横領罪が成立します。会社を騙して経費を受け取った場合には、詐欺罪となります。

交際費を着服した

会社の交際費の着服、つまり取引先など社外の人間の接待が無いにもかかわらず、自分だけで、あるいは社内の人間だけで飲食し、接待のための交際費として計上することも、あらかじめ会社から預かっている経費を用いれば業務上横領罪となり、会社を騙して経費を受け取った場合には、詐欺罪となります。

領収書を偽造した

領収書を偽造して会社に提出し、経費として金銭を受け取る行為については、領収書の偽造についての私文書偽造罪・行使罪や、会社に対する詐欺罪が成立します。

交通費を着服した

会社から支給される交通費の着服についても、あらかじめ会社から預かっている経費を用いれば業務上横領罪となり、会社を騙して経費を受け取った場合には、詐欺罪となります。

備品を自分のものにした

会社の備品を自分のものにすることについて、その備品が個々人に支給・貸与されて自分が管理しているもの(文房具など)であれば業務上横領罪、自分が管理しているわけではないもの(コピー用紙など)であれば窃盗罪が成立します。

会社のカードのポイントを私用で使う

会社から支給されているクレジットカードに貯まったポイントは会社に帰属するものであるため、それを私用で使うと業務上横領罪が成立する可能性がありますが、ポイントの領得を罰する法律や裁判での先例が無いため、必ず成立する・しないと断定はできません。いずれにしても、罪になる可能性のある行為を行うべきではありません。

会社のマイルを私用で使ったり、自分のカードにマイルを貯める

会社の経費で出張をしたときなどに自分のカードにマイルを貯めたり、会社の出張用に作られたカードに溜まったマイルを私用の旅行で利用したりといった場合に業務上横領罪が成立するか否かですが、まず、会社の就業規則に出張などで貯まるマイルを個人に付けてはいけないという定めがある場合には業務上横領罪が成立する可能性があります。

一方、現状として各航空会社においてマイルは法人ではなく搭乗した個人に付与される扱いとなっていることや、会社に損害や不利益を生じさせる行為ではないことから、就業規則に上記のような定めが無い場合、業務上横領罪が成立する可能性は低いです。

業務上横領は必ず逮捕される?

業務上横領は会社と従業員など、一定の関係性のある者の間で発生することから、会社としても社内で発生したトラブルを外部に知られたくないことが少なくなく、被害額が少ない場合、横領の被害分について返済された場合など、ことさらに大ごとにしたくないとして事件化されないケースもあります。

被害者から被害申告(告訴)により事件化するケースが多い

業務上横領罪は被害者である会社等からの被害申告や被害者以外の第三者(会社役員等ではない従業員など)からの通報で事件化することもありますが、被害者である会社等が被害申告をしなければ、刑事事件として捜査され、逮捕などされることは通常ありません。横領罪は親告罪(被害者が告訴しなければ起訴できない罪)ではありませんが、会社と社員など、被害者と加害者の間に一定の関係性がある中で発生するものであることから、被害者である会社等の被害申告がない限り、事件化されないという実情になっています。

横領した会社のお金を返済したら逮捕されない?

会社のお金などを横領してしまった場合、事後に横領してしまったものの被害弁償・返済を行うことは被害者である会社にとっても加害者自身にとっても重要です。

しかし、返済したとしても横領してしまった事実が無くなるものではなく、事件化した場合に逮捕されるか否かは返済の有無だけで判断されるものではないため、返済していたとしても必ずしも逮捕されないわけではないことには注意が必要です。

逮捕されてからの流れ

業務上横領罪で逮捕されるとどうなるかや、弁護士に依頼するタイミングなど、逮捕されてからの流れについては、こちらのページで解説します。

逮捕後の流れについて詳しく見る

業務上横領に執行猶予はつく?

業務上横領罪は単純横領罪と比較して法定刑が重い(それぞれ10年、5年)ですが、犯行の悪質性の程度や被害額、同種前科の有無、被害弁償や示談の有無などの事情によっては、執行猶予がつくこともあります。

500万円以上なら実刑?横領した額は刑の重さに影響あるの?

横領した金額の大きさは被害者である会社等に与えた被害の大きさであり、犯してしまった罪の重さ、それに対する刑の重さの決定に影響してくる事情です。

横領額が大きくなればそれだけ実刑の可能性も高くなりますが、被害弁償や示談を行った上、横領してしまったことについて汲むべき事情があるなどすれば、被害金額が大きい場合でも執行猶予が付き実刑にならない可能性もあります。

横領した額が少額の場合

横領の被害額が1万円~10万円単位(100万円以下)といった比較的少額の場合、被害額がより大きな場合と比較して刑が軽くなる方向に働く事情となります。

もっとも、同種前科があり反省が見られないと思われたり、金額が少なくとも犯行が悪質であるとされたりなど、被害額以外で刑が重くなる事情がある場合にはそれらと併せて判断されることとなり、被害金額の大小のみで刑の重さが決まるわけではありません。

その他の量刑に影響を与える要素

10.1でも述べたように、量刑は被害額の大きさだけで決まるものではなく、以下に挙げる事情も刑の重さに影響を与えることがあります。

横領行為をした動機

横領の動機が、自らの遊ぶ金欲しさであるなど私利私欲のための身勝手な動機である場合は、そのような事情は刑を重くする方向に働きます。

反対に、病気の家族の治療費を払うためであるとか、会社が激務薄給で生活が立ち行かなくなっていたとか、横領の理由に同情の余地があるような場合には、量刑を軽くする事情とみられる可能性があります。

社会的影響

会社の財産を横領したことにより、直接の被害者である会社だけでなく、会社の取引先や債権者、株主などまでが横領行為の影響により不利益を被るなど、会社の内外に与えた社会的影響が大きい場合、それだけ横領行為の責任は重くなり、量刑を重くする事情となります。

被害者との示談は成立しているか

被害者との示談・被害者への被害弁償がなされている場合、被害弁償がなされていること、示談の中で被害者が行為者を許す、あるいは厳罰を求めない意思を表明したこと、行為者が自身の行いを認め反省していることなどを示すものであり、刑を軽くする事情となります。

親族間でも業務上横領は成立するの?

親族間で発生しうる業務上横領として、たとえば親族が営む自営業のお金を管理する仕事をしている別の親族が横領してしまうとか、後見人と被後見人が親族である場合に、後見人が管理している被後見人の財産を横領してしまうといった例が挙げられます。

単純横領罪と同じく、一定の親族(配偶者、直系血族、同居の親族)の間で業務上横領があった場合、業務上横領罪自体は成立しますが、刑罰は免除されます(刑法255条、244条2項)。また、その他の親族(配偶者や直系血族以外で、同居していない親族)については、業務上横領罪は親告罪となり、被害者である親族の告訴が無ければ起訴されません(刑法255条、244条2項)。

ただし、上記の後見事務上の横領では、親族間であっても、後見事務の公的性質から、刑罰は免除されないとした判例があります(最高裁平成20年2月18日決定)。

業務上横領は弁護士による弁護活動が必要です

業務上横領は、事件化する前に被害者との示談などを行うことで逮捕や刑事裁判になることを防げる可能性があり、刑事事件となる前にできるだけ早く解決に向けて動くべき類型といえます。弁護士は、行為者に代わって会社等の被害者との間で謝罪、示談交渉を進めます。

すでに刑事事件化されている場合でも、示談交渉等を行った上、量刑を軽くする事情を主張して執行猶予獲得を目指します。業務上横領が起こってしまったら、ぜひ、できるだけお早目に弁護士にご相談ください。