物損事故とは | 物損で請求できる損害賠償

物損事故とは | 物損で請求できる損害賠償

物損事故の被害に遭ってしまった場合、加害者に車両の修理代等の損害賠償を請求することができます。
このページでは、物損事故で被害者の方が加害者に請求できる費目、物損事故に遭ってしまったときの処理の流れ、人身事故との違い、そもそも物損事故ではなく人身事故として処理した方がいいケースなど、物損事故の概要について詳しく解説していきます。

物損事故とは

物損事故とは、交通事故の中で、車両や持ち物などにのみ物理的被害が生じたケースのことをいいます。物損事故は人身事故とは異なり、基本的に加害者は被害者の財産に生じた損害を賠償する責任のみを負います。後の項目で説明しますが、これは警察による事故処理にも影響しますので、交通事故に遭ってしまったら、その事故が本当に物損だけなのか(人身への被害はないか)、よく確認するようにしましょう。

物損事故で請求できる損害賠償

以下では、物損事故の被害に遭ってしまったとき、加害者に請求できる損害賠償の費目を解説します。

修理費

交通事故によって車両や持ち物などが破損し、修理が必要になったら、加害者に対して修理費を請求することができます。ただし、修理費が車両本体の時価額を超える場合、修理費はその時価額分までしか認められない場合があります。

格落ち損(評価損)

車を修理したとしても、交通事故に遭ったことのある車(事故車)と認定されることによって、車両の価値が下落する場合があります。この価値の下落分(事故当時の車両価格と、修理後の車両価格との差額)のことを、「格落ち損(評価損)」といいます。

ただし、評価損は必ずしも加害者への請求が認められるものではなく、①車種、②走行距離、③初年度登録からの期間、④損傷の部位・程度、⑤修理の程度、⑥事故当時の同型車の時価、⑦事故減価額証明書における査定等を考慮して判断されます。裁判例の傾向として、外国車または国産人気車種で初年度登録から5年(走行距離6万km程度)以上、一般の国産車では初年度登録から3年(走行距離4万km)以上を経過すると、評価損が認められにくくなっています。つまり、評価損が認められるかどうかは、ケースバイケースといえます。

代車料

車両の修理中や買替までの期間、つなぎとして代車が必要になる場合があります。代車料の請求が認められるためには、①代車を使用したこと、②代車料を支払ったこと、③代車が必要であったことの証明をしなければなりません。

代車料はレンタカー料金を基準としますが、車種については、代車は短期間しか使用しないということから、被害車両と同程度の車両であれば認められる傾向にあります。なお、裁判例では国産高級車が上限とされています。

また、請求が認められる代車の使用期間は、一般的には修理中や買替の期間のみです。無制限ではありませんので、ご注意ください。不必要に長く代車を使い続けていると、その間の代車料の請求が認められない可能性もあります。

買替差額

物損事故の程度によっては、車両を買い替えなければならないケースもあります。
買い替える場合、事故時の時価相当額と車両の売却代金との差額(買替差額)を損害として請求することができます。通常、全損の場合は車両の売却代金はゼロですので、多くのケースでは車の時価相当額がそのまま買替差額になります。

なお、車両の買替は、物理的な全損と経済的な全損に分けられます。物理的な全損とは、修理不可能と判断される場合のことであり、経済的な全損とは、車の時価を修理費が上回ってしまう場合のことです。車両の買替差額の請求が認められるのは、車両を買い替える必要があった場合です。具体的には、物理的な全損または経済的な全損が生じた場合には、買替の必要があったとされるでしょう。

登録手続関係費

車が全損となってしまい車両を買い替える際は、本体価格だけでなく、登録費用や手数料、税金が必要になります。これらの費用も、損害賠償に含めて請求することができます。
具体的には、以下のような費目です。

  • 自動車移転登録費用・車庫証明費用・廃車費用等法定費用
  • 自動車取得税
  • 廃車解体処分費用
  • リサイクル料金
  • 自動車販売会社への登録・車庫証明・納車整備・廃車手続き手数料・代行費用
  • 車両購入価格に対する消費税

休車損害

タクシーやトラックなどの営業車が、交通事故に遭って使用できなくなってしまった場合、使用できていれば得られていたはずの利益は「休車損害」として請求することが可能です。ただし、使用していた場合に通常生じていたと予想されるガソリン代や有料道路代金については、請求額から差し引かれます。

その他

上記の費目のほか、以下のような費目についても、事故の損害として加害者への請求が認められる場合があります。

  • 事故処理に要した雑費(レッカー代金、車両保管料、交通事故証明書交付手数料など)

物損の場合は慰謝料が請求できない?

一般的に、物損事故においては慰謝料を請求することができません。
慰謝料は交通事故によって受けた精神的苦痛に対して支払われるものですが、物損事故では、財産的損害が賠償されれば、精神的苦痛に関しても賠償されたものとみなされることが理由です。

物損でも例外的に慰謝料が認められる場合

ただし、物損事故でも例外的に慰謝料の請求が認められる場合があります。以下は、実際に物損事故での慰謝料請求が認められた裁判例です。

  • 車両同士の事故ではなく、加害者の車両が被害者の店舗兼自宅を破損し、平穏な生活が脅かされたことへの慰謝料を認めた事案(大阪地方裁判所 平成元年4月14日判決)
  • 夜も一緒に寝るほど可愛がっていた飼い犬が死亡した事案(東京地方裁判所 昭和40年11月26日判決)
  • 先祖代々の墓石が破壊され、骨壺が露出した事案(大阪地方裁判所 平成12年10月12日判決)

このように、物損事故であっても、個別の事情によっては慰謝料の請求が認められる可能性があります。

物損事故の事故処理の流れ

物損事故が発生したら、まず救急車での搬送が必要な怪我人がいないことを十分に確認したうえで、警察へ通報します。物損事故の場合、警察への通報は必要ないと思われるかもしれませんが、道路交通法72条1項により、すべての交通事故は警察へ届け出ることと定められています。

警察官が事故現場に到着すると、事故の状況や当事者を確認し、実況見分を行います。ただし、①緊急性を要さない場合、②当事者が実況見分を希望せず、車両とともに警察署に向かうことが可能な場合、この両方を充たす場合、実況見分は行われません。

警察に通報した後は、自身が加入している任意保険会社に連絡し、今回の事故において保険が適用できるか、保険会社のサポートが受けられるか等を相談しましょう。受け取ることのできる保険金やサポート内容は保険会社や商品によって異なりますので、保険会社の担当者に確認する必要があります。

なお、事故の発生後、すぐにではなく、後日あらためて警察に届けることも可能ですが、発生時から日が経つにつれて事故の正確な内容を把握することは困難になります。事故の状況の把握は過失割合などにも影響しますので、できるだけ早く(事故発生から直ちに連絡することが理想です)、警察へ届け出ることが重要です。

また、加害者の連絡先・住所や、加害者が加入している保険会社の情報を聞いておくことが重要となります。

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少しでも人的損害があった場合は、物損事故ではなく人身事故に切り替える

交通事故が起こった際、被害者の方に怪我があるにもかかわらず、加害者が「物損事故として処理してほしい」と言ってくるケースがあります。加害者に説得され、「怪我はあるけど、それほどではないし……」と言われる通りにしてしまうと、思わぬ不利益を被ることになってしまいます。交通事故で負傷した場合は、必ず人身事故として届け出るようにしてください。

以下で、人身事故を物損事故として処理してしまった場合のデメリットを解説します。

人身事故を物損事故にしておくリスク

加害者側からすれば、人身事故では刑事処分や免許停止などの行政処分を受ける可能性があるのに対し、物損事故では民事上の賠償責任を負うのみで済みます。それゆえ、加害者としては人身事故ではなく物損事故で済ませたがります。

しかし、例えば、交通事故による負傷の症状として代表的なものである、いわゆる「むちうち」は、事故からしばらく経った後に症状を自覚することも珍しくありません。治療・通院の費用や慰謝料を請求したいと思っても、人身事故として届出をしていない場合、それらの被害に対する賠償請求はできないことになります。また、人身事故として届出をしていない場合、警察による実況見分が行われないこともあるため、実況見分調書も作成されず、症状と交通事故の因果関係を証明することが難しくなってしまうおそれがあります。

このように、本来は人身事故として処理するべきものを物損事故とした場合、受け取ることができるはずだった賠償額が不当に低額になってしまうだけでなく、被害者が一方的に不利になることもあり得ます。怪我をしたかもしれないと少しでも感じたら、人身事故として届け出るようにしましょう。

物損事故から人身事故に切り替える方法

物損事故として届け出た事故を、人身事故に切り替えることは可能です。
病院に行って診察を受け、医師に診断書を書いてもらい、警察に再度届け出て、事故と怪我の因果関係があるとされれば、人身事故として扱われることになります。

しかし、事故から時間が経ってしまうと、現在の怪我の症状と事故との因果関係が認められにくくなるうえ、実況見分を行っていない場合には、警察も事故状況を正確に把握することが難しくなります。物損事故から人身事故に切り替える際は、事故からできるだけ早く行う必要があります。

物損事故の弁護士依頼は損?費用倒れにならないケースとは

物損事故は、人身事故よりも損害賠償金額がずっと低額です。そのため、弁護士に依頼すると、得られる賠償金よりも弁護士への依頼費用の方が高額になってしまう、いわゆる“費用倒れ”になるおそれがあります。しかし、弁護士費用特約に加入している場合には、自身が加入している保険会社が弁護士費用を上限額まで負担してくれるため、基本的に費用倒れを心配する必要はありません。また、弁護士費用特約がない場合でも、人身に切り替えて損害賠償金を得ることで費用倒れにはならない可能性もあります。

以下で、弁護士に依頼した方が良いケースを解説します。

過失割合が少ない

被害者の方の過失がまったくないか、ほとんどない(例えば、信号無視の車と衝突した、路肩に停車しているときに車に追突された等)にもかかわらず、加害者側の事実認識と被害者側の認識に食い違いがあり、加害者側の言い分が通ってしまうことがあります。そのような場合、被害者にも過失があるとされ、賠償金額が大幅に下がってしまうおそれがあります。このようなとき、弁護士に依頼することで過失割合を大幅に変更できれば、損害賠償金を増額できる可能性があります。

評価損が認められた

交通事故によって自身の車に対する評価が低下した場合でも、多くのケースで、保険会社は評価損を認めてくれません。しかし、走行距離がほとんどなく、年式も新しい新車同様の車や、高価な外国車などは裁判で評価損があると認められることもあります。評価損の主張は非常に困難な場合が多いですが、弁護士が介入し保険会社との交渉を行うことにより、評価損が認められる可能性があります。

物損でも場合によっては弁護士の介入がプラスになることがあります。まずはご相談ください

物損事故と人身事故では、事故処理の手間も賠償金額も大きく異なりますので、物損事故で弁護士に依頼するのは費用倒れになると思われるかもしれません。しかし、本来は人身事故として処理するべきだった場合や、過失割合に不満がある場合、車両の評価損を認めてもらいたい場合など、物損事故においても、弁護士にご依頼いただくことで被害者の方にプラスに働くケースがあります。

弁護士法人ALGでは、費用倒れになるおそれがある場合、必ずご契約前にその旨をご説明しております。物損事故に遭ってしまい対応でお悩みの方は、ぜひ一度、弊所にご相談ください。

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この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 所長 弁護士 西谷 剛
弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 所長弁護士 西谷 剛
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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