
監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
休業損害証明書とは、給与所得を得ている方で休業損害を請求したい場合に必要となる書類です。
しかし、交通事故に初めて遭った方や、初めて休業損害を請求する方にとって、何を記載すべきか、誰が書くのか、分からないことも多くあると思います。
この記事では、休業損害証明書はどこでもらうのか、誰が記入するのか、記入例などについて詳しく解説していきます。
目次
休業損害証明書とは
交通事故の怪我で仕事を休んだ場合に、「休業損害」を請求するにあたって必要となるのが「休業損害証明書」です。
- 休業損害とは?
交通事故で負った怪我の治療や療養のために仕事を休んだ、あるいは遅刻・早退をしたことで減少してしまった収入の補償のことです。
- 休業損害証明書とは?
「交通事故の怪我で仕事を休んだ事実」と「それによる収入の減少=損害」を証明するための書類です。
会社員やパート、アルバイトなど勤務先から収入を得ている“給与所得者”が、休業損害を請求するために必要となる書類です。
休業損害証明書はどこでもらえばいい?
休業損害証明書は、基本的に相手方保険会社から取り寄せることができます。
休業損害証明書が届いたら、まずは勤務先に記入を依頼しましょう。
また、休業損害証明書が届かない、紛失してしまったような場合では、保険会社のホームページから書式をダウンロードできることもあります。
相手方が任意保険に加入していない無保険の場合は、自賠責保険へ休業損害証明書を提出します。
そのため、自賠責保険のホームページから書式をダウンロードして作成します。
休業損害証明書は自分で記入してもいい?
休業損害証明書は被害者自身で書くものではありません。まずは、勤務先に記載を依頼しましょう。 担当部署は、人事部・労務部・総務部など各会社で異なりますので、勤務先に確認しておくと良いでしょう。また、派遣社員の方は派遣元の会社の担当者に依頼することになります。
休業損害証明書をご自身で記入してしまうと、信用性が失われ、示談交渉時に不利になる可能性があります。勤務先に記入を依頼しにくいと思っても、ご自身で記入することだけはやめましょう。
休業損害証明書の記入例
1.事故に遭った人の氏名等
まずは、休業損害を請求する人である被害者の氏名や職業、勤務先に採用された日を記載します。
給与所得者であれば、正社員に限らずパート・アルバイトの方も記載します。
その際、職業欄には「パート」、「アルバイト」などご自身の勤務形態を記入しましょう。
2.休業期間
休業期間には、遅刻や早退を含めて、交通事故による怪我で休んだ最初の日と最後の日を記載します。
この休業期間が間違っていると、休業損害の金額が減ってしまう可能性があるため、注意しましょう。
3. 3ヶ月間の勤怠状況
3ヶ月間の勤務状況に関して、記号を使って表します。
書式によって若干異なりますが、一般的には次のように書き分けることが多いです。
欠勤 | 有給 | 半休 | 遅刻・早退 | 勤務先の所定休日 |
---|---|---|---|---|
〇 | ◎ | / | △ | ✕ |
(※)勤務先の所定休日とは、勤務が一斉に休業するような休日や就労シフトによる公休日、休日出勤時の代休を指します。
4.休んだ期間の給与
休業中の給与については、まず「全額支給した」、」「全額支給しなかった」、「一部支給・減給した」から選択します。
一部支給・減給の場合は、その内訳や計算式も記入します。
実際に支払われた金額と差異がないか確認しましょう。
また、交通事故の怪我が原因で有給休暇を取得した場合には、減給はありませんが、本来であれば自由に使える有給休暇を損失したことになりますので、休業損害を請求できます。
5.事故前3ヶ月の支給された給与額
事故前3ヶ月の給与に関しては、以下の項目を記入します。
- 稼働日数
- 支給金額
- 社会保険料
- 消費税
- 差引支給額
給与明細などを照らし合わせながら、誤りがないか確認しましょう。
なお、ここに記入する金額に、賞与は含まれません。
6.社会保険や労災保険からの給付の有無
他の保険から受けている補償の有無を記入します。
社会保険の傷病手当金や、労災保険の休業給付などを既に受け取っている場合、それらの金額と休業損害の金額とが一部相殺されることがあります。
これらは同じ性質の補償のため、重複して受け取ることはできないのです。
そのため、すでにほかの保険から補償を受けている場合は、該当する保険名と連絡先を記入する必要があります。
7.作成日、勤務先情報、社印等
休業損害「証明書」であるため、作成日、作成者となる勤務先の情報の記載、社印は必須です。
社印が押されていないと、保険会社に被害者自身で自作したものと疑われてしまうおそれもありますので、ご注意ください。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
休業損害証明書を作成するときの注意点
記載漏れや間違いがないか確認する
休業損害証明書を記載してもらえたら、以下の点に注意しましょう。
- 内容を確認する
記載内容の誤りや記入漏れがあると、適切な休業損害が受け取れなくなってしまいます。
そのため、休業損害の計算にミスはないか、休業日に間違いはないか、必ずご自身でも確認しましょう。 - 正しく修正する
内容に修正すべき点があったら、担当者に訂正してもらいましょう。
その際、訂正箇所に二重線を引き、その上に作成担当者の訂正印を押してもらいます。
本給と付加給について
本給と付加給には、以下のような違いがあります。
- 本給:基本給
- 付加給:時間外勤務手当や通勤手当などの基本給に追加して支給を受けているもの
休業損害における被害者の労働能力は、事故前の本給と付加給の合計額から判断されるため、誤りのないように注意しましょう。
休業損害証明書を書いてもらえないときの対処法
勤務先に休業損害証明書を書いてもらえないときは、まず以下の点について説明し、会社側の協力が必要であることを理解してもらいましょう。
- 休業日数や給与を相手方に説明し、適切な休業損害を得るには、休業損害証明書が必要であること
- 休業損害証明書を書いたことで、通常は会社が何か相手方との争いに巻き込まれることはないこと
それでも休業損害証明書を書いてもらえない場合は、別の書類により減収額や休業日数を証明することになります。
【休業損害証明書の代替となる書類の一例】
- 給与明細書
- 勤怠管理
- タイムカード
- 給与の振込額が分かる通帳の写し など
休業損害証明書を正しく書いてもらうためにも弁護士に依頼してみませんか?
休業損害証明書は、相手方に休業損害を請求するために重要な書類です。
そのため、記入漏れや誤りなどの不備があれば、適切な休業損害を受け取れなくなってしまう可能性もあります。
しかし、勤務先が記入に協力的でなかった場合の対応や、記入してもらった休業損害証明書が適切であるかの判断は、被害者の方では難しいでしょう。
そこで、休業損害証明書については、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは、交通事故に精通した弁護士が多数在籍しており、休業損害証明書についても、個々の状況に応じたサポートが可能です。
少しでも休業損害証明書や休業損害についてお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)