遺言書の無効を申し立てる方法

相続問題

遺言書の無効を申し立てる方法

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

「亡くなった親の遺言書を開いたら、特定の相続人に全財産を渡す内容だった」
「認知症が進んでいた時期に作られたもので、本人の意思とは思えない」
――遺言書の効力に疑問を抱く方は少なくありません。

遺言書は法律上の要件を欠くと無効となりますが、争いがある場合、無効を確定させるには一定の手続きが必要です。

本コラムでは、遺言書の無効を申し立てる方法や費用、無効が認められた後の流れなどについて解説します。

遺言書を無効にしたい!どうすれば無効にできる?

遺言は、民法に定める方式に従わなければすることができません(民法960条)。

そのため、方式違反のほか、遺言能力の欠如(民法963条)や偽造・変造などの事情があれば無効となり、詐欺・強迫があった場合には取消しにより効力を失うことになります。

もっとも、無効かどうかを巡って相続人間で意見が対立することは珍しくなく、まずは当事者間で話し合い、決着がつかない場合には家庭裁判所の調停、さらには訴訟によって無効を確定させるのが一般的な流れです。

形式の不備など、明らかに無効な場合でも申し立ては必要?

方式違反の遺言は本来当然に無効ですので、相続人や受遺者の全員が無効であることに納得しているのであれば、裁判手続を経ることなく、そのまま遺産分割協議を行えば足ります。

しかし、一部の相続人などが「この遺言は有効だ」と主張している場合、無効を前提とした相続手続きを進めることはできません。

このように有効性に争いがあるときは、調停や訴訟を通じて遺言の無効を公的に確定させる必要があります。

遺言書の無効の申し立て方法

遺言の無効を裁判所で争う手段には、遺言無効確認調停と遺言無効確認訴訟の2つがあります。

遺言の効力に関する紛争は家庭に関する事件として調停前置主義の対象とされているため(家事事件手続法257条1項)、原則として、いきなり訴訟を提起するのではなく、まず家庭裁判所に調停を申し立て、調停が不成立となった場合に訴訟へ移行するという順序をたどることになります。

もっとも、当事者間の対立が顕著であり、およそ調停での解決が困難であると見込まれる場合は、調停を経ずに訴訟を提起してそのまま審理されることがあります(家事事件手続法257条2項ただし書)。

遺言無効確認調停

遺言無効確認調停は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(または当事者が合意した家庭裁判所)に申し立てます。

調停では、裁判官と調停委員が双方の言い分を聞きながら、合意による解決に向けて話し合いを仲介します。

当事者全員が遺言の無効に合意すれば調停は成立しますが、調停には判決のような強制力がないため、合意に至らなければ不成立となり、訴訟での解決を図ることになります。

遺言無効確認訴訟

調停が不成立となった場合には、地方裁判所(訴額によっては簡易裁判所)に遺言無効確認訴訟を提起します。

訴訟では、双方が提出した証拠に基づく審理を経て、遺言の有効・無効について裁判所の判断(判決)が示されることになります。

遺言無効確認訴訟について

遺言書の無効を申し立てる場合の費用

調停の申立てには、収入印紙1200円と連絡用の郵便切手代がかかります。

訴訟を提起する場合の収入印紙代は、訴額に応じて算定されるため、対象となる遺産の額が大きいほど高額になります。

このほか、戸籍謄本などの取得費用、筆跡鑑定や医療記録の取り寄せにかかる実費、弁護士に依頼する場合には、着手金・報酬金などの弁護士費用も必要となります。

遺言書の無効申し立てに時効はある?

遺言の無効の主張そのものには時効や期間の制限がなく、相続開始から年数が経過していても申し立て自体は可能です。

ただし、時間の経過とともに証拠が散逸し、関係者の記憶も薄れていくため、立証は次第に難しくなります。

また、遺言が有効と判断された場合に備えて行う遺留分侵害額請求には、相続の開始及び遺留分の侵害を知った時から1年という短い期間制限があるため(民法1048条)、できる限り早く行動することが重要です。

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遺言書が無効と認められた事例・判例

日付を「昭和四拾壱年七月吉日」と記載した自筆証書遺言について、最高裁は、作成日を特定できず日付の記載を欠くものとして無効と判断しました(最判昭和54年5月31日)。

また、下級審には、遺言者が重度の認知症により遺言能力を欠いていたとして、公正証書遺言を無効とした裁判例も複数あります。

公証人が作成に関与する公正証書遺言であっても、無効となる可能性はゼロではないのです。

遺言書の無効が認められた後にすること

法定相続人全員で遺産分割協議を行う

遺言の無効が確定すると、その遺言は初めからなかったものとして扱われます。

そのため、基本的には、相続財産は未分割の状態に戻るため、法定相続人全員が参加する遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどのような割合で取得するのかを改めて決めることになります。

相続人が一人でも欠けた協議は無効となりますので、戸籍の収集による相続人の範囲の確定と相続財産の調査を確実に行ったうえで、協議を進める必要があります。

遺産分割協議について

遺産分割協議がまとまらなければ別途調停や審判で解決する

遺産分割協議で合意できない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。

調停でも合意に至らないときは手続きが審判に移行し、裁判官が法定相続分などを踏まえて遺産の分割方法を決定します。

遺言の効力を争った後の相続人間では感情的な対立が残りやすいため、調停や審判まで進む可能性も見据えて、早めに主張の根拠となる資料を整理しておくことが大切です。

遺言が無効にならなかった場合の対応策

調停や訴訟を経ても遺言が有効と判断された場合には、原則としてその内容に従って相続手続きを進めることになります。

もっとも、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分という最低限の取り分が保障されており(民法1042条)、遺言によって遺留分を侵害されたときは、財産を多く取得した相手方に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法1046条)。

遺留分侵害額請求について

遺言書の無効申し立ては弁護士にご相談ください

遺言無効の主張が認められるかどうかは、遺言書の記載内容や作成の経緯、作成当時の遺言者の心身の状態など、様々な事情を総合的に踏まえた法的判断を要します。

医療記録・介護記録などの証拠収集や、調停・訴訟への対応をご自身だけで行うのは容易ではありません。

遺言書の内容や作成経緯に疑問をお持ちの方は、できるだけ早い段階で、相続問題の経験豊富な弁護士へ相談されることをおすすめします。

弊所の弁護士は、相続問題を数多く取り扱っておりますので、お気軽にご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。