エンディングノートとは?書くべき内容や作り方について

相続問題

エンディングノートとは?書くべき内容や作り方について

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

エンディングノートは、自分の人生の最終段階において、家族や大切な人に伝えたい想いや情報を記録しておくノートです。高齢化社会の進展とともに終活の重要性が認識される中、エンディングノートへの関心も高まっています。

しかし、遺言書とは異なり、法的効力を持たないため、その位置づけや活用方法を正しく理解することが重要です。
本記事では、エンディングノートの基本的な概念から、遺言書との違い、記載すべき内容、作成方法、そして法的観点からの注意点まで、弁護士の視点から詳しく解説します。

エンディングノートとは

エンディングノートとは、ご自身がお亡くなりになるときに備え、財産情報や残される方への思いなどを記載するノートのことをいいます。
病気や加齢によって自分の意思を伝えられなくなった場合や、死亡した際に備えて、家族や周囲の人に伝えたいことを記録しておく備忘録としての役割を持ちます。

市販のノートや専用のエンディングノートを使用することができ、形式や記載内容に法的な制限はありません。
終活の第一歩として、自分の希望や思いを整理し、家族の負担を軽減するための有効なツールとして活用されています。

エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートと遺言書の最も決定的な違いは、法的効力の有無です。
エンディングノートには、法的効力はありません。そのため、エンディングノートを作成したからといって、財産を移転させる効果はありません。

一方、遺言書は、民法に規定された法律文書であり、要件を満たせば法的効力が発生します。
民法968条では、自筆証書遺言について「全文・日付・氏名の自書」と「押印」を義務づけており、訂正のルールも厳格に定められています。

遺言書は、法定の形式に従って作成する必要がありますが、エンディングノートには形式の制限がなく、パソコンで作成したり、音声や動画で残すことも可能です。

エンディングノートに書くべき内容

自分のこと(個人情報)

氏名、生年月日、本籍地、住所、電話番号、血液型、家族構成などの基本情報を記載します。
また、家系図や親族の連絡先、緊急時に連絡してほしい人のリストも含めておくと、遺族が必要な手続を進める際に役立ちます。

趣味や特技、人生の思い出、座右の銘なども記載することで、自分らしさを伝えることができます。
これらの情報は、遺族が各種手続を行う際の基礎資料となり、故人の人となりを偲ぶ手がかりにもなります。

なお、これらの情報は、死後の手続だけではなく、急病の際に医療機関で必要となるものなど、多くの場面で活用されることが想定されます。

財産・資産・形見分けについて

預貯金口座、証券口座、不動産、生命保険、年金などの財産情報を整理して記載します。
口座番号や保険証券番号、不動産の所在地などの情報を詳細に記録しておくことで、相続手続がスムーズに進みます。
形見分けの希望についても、誰に何を渡したいかを明記できます。

ただし、記入内容に制限はないため、エンディングノートに「現金は○○へあげる」と書いても問題ありませんが、法的効力は一切ないため遺言書の代わりにはなりません。
財産の処分について法的効力を持たせたい場合は、別途遺言書の作成が必要です。

なお、詳細な財産に関する情報を記載することになり、エンディングノートを見た者が悪用する可能性も考えられますので、エンディングノートの管理には注意してください。

医療・介護・延命治療に関する希望

エンディングノートには、延命治療の希望の有無、臓器提供の意思、介護が必要になった際の希望する施設や在宅介護の希望などを記載できます。

厚生労働省が推進する「人生会議」の考え方に基づき、自分の価値観や希望を明確にしておくことで、家族や医療関係者が判断に迷う場面での指針となります。

葬儀・お墓・納骨方法に関する希望

葬儀の形式(一般葬、家族葬、直葬など)、宗教・宗派、希望する葬儀社、遺影に使用してほしい写真、葬儀に呼んでほしい人のリスト、お墓や納骨の希望(既存の墓地、永代供養、散骨など)等について記載します。

その他にも、葬儀費用の準備状況や互助会への加入情報なども記載しておくとなお良いでしょう。
これらの情報により、遺族が故人の希望に沿った見送りを行うことができます。

保険情報の詳細な記載

生命保険、医療保険、損害保険など、加入している保険の情報を整理して記載するようにしましょう。
具体的には、保険会社名、証券番号、契約内容、保険金受取人、担当者の連絡先などを記載します。

特に、生命保険は、請求しなければ支払われないため、保険の存在を知らせることは重要です。
また、保険証券の保管場所も明記しておくと、遺族が速やかに手続を進められます。

ペットについて

ペットを飼っている場合、その後のペットの世話についての希望を記載しましょう。
誰に引き取ってもらいたいか、かかりつけの動物病院、ペット保険の情報、好きな食べ物や日常の世話の方法など、新しい飼い主に必要な情報を詳しく記載します。

ペット信託などの法的な手続きを検討している場合は、その旨も記載し、別途正式な手続を進める必要があります。

家族や友人へのメッセージ

家族一人ひとりへの感謝の気持ちや、伝えたかったメッセージを記載します。
生前には照れくさくて言えなかった言葉や、子どもたちへの人生のアドバイス、配偶者への感謝の言葉などを残すことができます。

友人や恩人への感謝のメッセージも含めることで、故人の想いを確実に伝えることができます。
これらのメッセージは、法的効力はありませんが、遺族の心の支えとなるでしょう。

なお、遺言書でも、付言事項という欄で感謝を伝えることができますが、制約が多いため、長い文章を残しておくのであれば、エンディングノートの方が望ましいでしょう。

エンディングノートの作成方法・書き方のコツ

エンディングノートの作成は、完璧を求めず、書けるところから始めることが大切です。
市販のエンディングノートや、法務省/ 日本司法書士会連合会が共同作成したエンディングノートなど、公的機関が提供するテンプレートを活用することも可能です。

デジタル形式での作成も選択肢の1つですが、家族がアクセスできるようパスワード管理に注意が必要です。また、定期的に内容を見直し、情報を更新することも重要です。
エンディングノートの存在と保管場所を信頼できる家族に伝えておくことで、必要なときに確実に発見してもらえるようにしましょう。

エンディングノートのメリット

自分の意思を伝えられる

エンディングノートは、自分の価値観や希望を整理し、家族に伝える機会を提供します。
日常生活では話しにくい内容でも、文書として残すことで確実に伝えることができます。

医療や介護の希望、葬儀の形式など、本人の意思を明確にすることで、家族が判断に迷う場面での指針となります。

また、エンディングノートの作成過程で、自分の人生を振り返り、今後の生き方を考える機会にもなります。

家族の事務的負担を軽減する

相続問題が発生した場合、まず問題になるのは「遺言書の有無」、「財産の全貌」、葬儀等の内容などです。
これらがエンディングノートにきちんと書かれていると、遺族の負担を少なくすることができます。

銀行口座や保険の情報、各種契約の詳細などが整理されていることで、相続手続や解約手続がスムーズに進みます。
また、葬儀の希望が明確であれば、遺族は迷うことなく故人の意向に沿った見送りができます。

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エンディングノートを作成しない場合の影響

エンディングノート未作成による身内の負担

エンディングノートがない場合、遺族は、故人の財産の全容を把握するのに時間がかかり、必要な手続が遅延する可能性があります。
どこにどのような財産があるのか、誰に連絡すべきかなど、基本的な情報の収集から始めなければなりません。

特に、デジタル資産やオンラインサービスの契約情報などは、本人以外には分かりにくく、解約や整理に困難を伴います。
また、葬儀の形式や納骨の方法についても、遺族間で意見が分かれる可能性があります。

医療や介護に関する本人の意志が不明確になるリスク

本人が意思表示できない状態になった際、延命治療の是非や介護の方法について、家族が重大な決断を迫られます。

エンディングノートがあれば、本人の価値観や希望が明確になり、家族の精神的負担を軽減できます。

資産把握の困難さ

現代では、銀行口座、証券口座、暗号資産、各種ポイントサービスなど、資産が多様化・複雑化しています。

エンディングノートがない場合、これらの資産の存在すら把握できない可能性があります。
特に、ネット銀行やネット証券など、通帳や証書が存在しない金融サービスは発見が困難です。

また、負債についても同様で、知らない借金が後から発覚するリスクもあります。

エンディングノートの選び方

エンディングノートの種類

市販のエンディングノートには、簡易版から詳細版まで様々な種類があります。
書店で購入できる冊子タイプ、ダウンロード可能なPDF版、オンラインで管理するデジタル版などがあります。

公的機関が提供する無料のエンディングノートも活用できます。
自分の状況やニーズに応じて、記載項目の充実度、使いやすさ、保管のしやすさなどを考慮して選択することが重要です。

エンディングノート選びの基準やポイント

エンディングノートを選ぶ際は、記載項目の網羅性、書きやすさ、保管のしやすさを重視します。
高齢者の場合は、文字が大きく読みやすいものを、デジタルに慣れている方は、オンライン版を選ぶなど、利用者の特性に合わせた選択が大切です。

また、定期的な見直しがしやすいよう、追記や修正が容易なものを選ぶことも重要です。
価格も考慮要素ですが、無料のテンプレートでも十分な場合が多いため、まずは試してみることをお勧めします。

弁護士なら相続に関する様々な面でサポートできます

エンディングノートは、法的効力を持たないため、相続や財産承継について確実性を求める場合は、遺言書の作成が不可欠です。
弁護士は、エンディングノートの内容を踏まえた上で、法的に有効な遺言書の作成をサポートします。

また、エンディングノートに記載された希望を実現するための法的手段として、任意後見契約、家族信託、死後事務委任契約などの制度活用もアドバイスします。
特に、認知症対策や身寄りのない方の終活支援など、複雑な事案にも対応可能です。
相続税対策を含めた総合的な相続プランニングも、税理士等の専門家と連携して実施できます。

弁護士への相談により、エンディングノートだけでは実現できない法的な保護を受けることができ、本人の意思を確実に実現し、相続トラブルを未然に防ぐことが可能となります。
終活を考える際は、エンディングノートの作成と併せて、ぜひ弁護士にご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。