監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
ダブル不倫とは、当事者の双方に配偶者がいる不倫のことをいいます。
不貞をされた配偶者は、不倫をした二人に対して慰謝料を請求できます。
もっとも、相手側の家庭にも同じように傷ついた配偶者がいるため、請求をきっかけに、今度は自分の配偶者が相手方から責任を問われることも少なくありません。
この記事では、慰謝料を請求できる相手や金額の目安、請求の進め方、時効や求償権といった注意点について解説します。
ダブル不倫とは
ダブル不倫とは、互いに配偶者がいる男女が肉体関係を持つことをいいます。
配偶者以外の異性と性的な関係を結ぶ行為は、法律上「不貞行為」にあたり、夫婦が互いに負う貞操義務に反する行為として、損害賠償の対象になります。
また、不貞行為は民法が定める離婚原因の一つでもあります(民法770条1項1号)。
片方だけが既婚者であるケースと違い、二つの家庭の婚姻関係が同時に問題となる点が大きな特徴です。
慰謝料を請求する相手
慰謝料を請求できる相手は、不貞行為をした自分の配偶者と、その交際相手の二人です。
二人は共同で相手方を傷つけたと評価され、連帯して賠償の責任を負うため(民法719条)、どちらか一方にまとめて全額を請求しても構いませんし、両方に請求することも可能です。
ただし、二人から重ねて受け取ることはできず、総額は認められた慰謝料の範囲にとどまります。ダブル不倫では二組の夫婦の計4人が当事者となり、それぞれの配偶者が請求できる立場に立ちます。
ダブル不倫では慰謝料請求が難しいと言われる理由
ダブル不倫で慰謝料請求が難しいといわれるのは、請求が一方通行で終わらないためです。
不倫相手に請求すれば、その配偶者にも関係が知られ、今度は自分の配偶者が相手方の家庭から責任を問われることになります。
互いに請求し合った結果、差引きで清算され、手元にほとんど残らないという結末も珍しくありません。また、自分の配偶者に請求しても、離婚しない限りは同じ家計から支払われるだけで、実質的な補償になりにくい点も理由の一つです。
ダブル不倫の慰謝料の相場はいくら?
| 離婚する場合 | 100万円~300万円 |
|---|---|
| 離婚しない場合 | 50万円~100万円 |
上の表のとおり、慰謝料は離婚に至ったかどうかで大きく変わります。
ただし、これは目安であり、実際の額は個々の事情で上下します。ダブル不倫では互いに請求し合うことが多く、手元へ残る金額は目安を下回る傾向にあります。
ダブル不倫の慰謝料を増額させるポイント
慰謝料の金額は一律ではありません。
ここでは、増額の方向に働きやすい事情を見ていきましょう。
ダブル不倫の期間や頻度
関係が続いた期間が長く、会う頻度が高いほど、夫婦関係を壊した程度が大きいと評価され、慰謝料は高くなりやすくなります。
数回限りの関係だったのか、数年にわたる交際だったのかで、判断は大きく変わります。
精神的・肉体的苦痛の程度
不倫によって受けた苦痛が重いほど、慰謝料は増額されやすくなります。
たとえば、発覚後に不眠やうつ状態に陥り、通院や服薬が必要になったようなケースです。
心身の不調は外から見えにくいため、医師の診断書や通院の記録を残しておくことが大切です。記録があれば、苦痛の大きさを示す材料になります。
また、不倫相手が妊娠した、中絶に至ったといった事情も、配偶者の受けた精神的苦痛が大きくなる要素として考慮されます。
婚姻期間の長さ
婚姻期間が長い夫婦ほど、積み重ねてきた生活や信頼が失われたと評価され、慰謝料は高くなる傾向にあります。
反対に、結婚して間もない時期の不倫では、比較的低い金額にとどまることもあります。
相手の収入
慰謝料は、本来は受けた精神的苦痛の大きさをもとに決まるものであり、相手の収入によって金額が自動的に決まるわけではありません。
もっとも、資力や社会的地位は、裁判所が金額を判断する際の事情の一つとして考慮されることがあります。
交渉の場面でも、相手に十分な支払能力があれば高めの金額で合意しやすい一方、資力が乏しければ分割払いに応じざるを得ないこともあります。
相手の資力を事前に把握しておくことも大切です。
子供の有無
夫婦の間に子供がいる場合は、慰謝料が高くなりやすい傾向にあります。
不倫によって家庭が不安定になれば、子供の生活環境や心の成長にも影響が及び、被害の広がりが大きいと評価されるためです。
特に、子供が幼い時期の不倫や、不倫が原因で離婚に至ったケースでは、増額が認められやすくなります。
なお、不倫相手との間に子供ができた場合は、さらに高額になることもあります。
子供が不倫の事実を知ってしまった場合も同様です。
不倫の主導者がどちらなのか
関係を主導したのがどちらなのかも、金額を左右します。
執拗に交際を迫った、立場を利用して関係を強いたといった事情があれば、責任は重く見られます。反対に、相手から強く誘われて関係に至った場合や、既婚であることを隠されていた場合には、慰謝料が減額されることもあります。
ダブル不倫では、互いに既婚者であると知ったうえで関係を持つのが通常であるため、どちらが働きかけたのかが重要な意味を持ちます。
夫婦関係が円満だったかどうか
不貞行為があった時点で夫婦関係が円満だったかどうかも、大きな判断材料になります。
仲の良い夫婦を壊したと評価されれば、慰謝料は高くなります。
逆に、不倫が始まる前からすでに夫婦関係が破綻し、長期間の別居が続いていたようなケースでは、守るべき関係がなかったとして、不倫相手への請求が認められないこともあります。
婚姻関係が破綻しているか否かについては、別居の有無や期間、夫婦の会話の状況などから総合的に判断されます。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
ダブル不倫で慰謝料を請求する方法
慰謝料の請求は、一般に次のような流れで進めていきます。
慰謝料請求のための証拠を集める
慰謝料を請求するには、肉体関係があったことをうかがわせる証拠が欠かせません。
二人でホテルに出入りする写真や動画、関係を裏付けるメッセージのやり取り、宿泊先の明細などが代表例です。
二人で食事をしていた程度の事実では、証拠としては弱いのが実情です。
なお、相手のスマートフォンを無断で操作するなど、違法な方法で集めた資料は、かえってこちらの責任を問われるおそれがあるため、避ける方が望ましいと言えます。
当事者間の話し合いで慰謝料の請求額を決める
証拠がそろったら、当事者同士で話し合い、金額や支払方法を詰めていきます。
合意できた場合は口約束で終わらせず、必ず書面に残しておくべきです。
金額と支払期限のほか、今後は連絡や接触をしないこと、内容を口外しないことなども取り決めておくと安心です。分割払いにするときは、合意内容を公正証書にしておけば、支払が滞った際に裁判をしなくても財産の差押えができます。
このように書面は、後々の争いを防ぐための大切な資料になります。
内容証明郵便を送る
話し合いに応じてもらえない場合や、直接やり取りしたくない場合は、内容証明郵便で請求するのが一般的です。
内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明してくれる仕組みで、相手から後から請求を受けていないと言われるのを防げます。
相手に心理的な圧力をかける効果も期待できます。また、時効の完成が迫っている場面では、請求を届けることで完成を6ヶ月間猶予してもらえます。
合意できなければ調停や裁判を検討
話し合いがまとまらなければ、裁判所の手続きに移ります。
不倫相手に対する慰謝料請求は、請求額が140万円以下であれば簡易裁判所、これを超えるときは地方裁判所に訴えを起こします。
一方、配偶者に離婚とあわせて慰謝料を求める場合は、まず家庭裁判所に離婚調停を申し立て、話し合いがつかなければ離婚訴訟へ進みます。
裁判では証拠の有無が結論を左右するため、準備は入念に行いましょう。
ダブル不倫の慰謝料を請求する際の注意点
請求を進めるにあたっては、次の二つの点にも注意が必要です。
慰謝料請求の時効
慰謝料を請求できる期間には制限があります。
不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から3年が経過すると、時効によって請求できなくなります(民法724条1号)。
ダブル不倫では、不貞の事実と相手が誰かを把握した時点が起算点です。
また、不倫に気づかないまま20年が過ぎた場合も同様です。
なお、離婚そのものによる苦痛に対する慰謝料は、離婚が成立した時から3年が期限となります。
求償権について
求償権とは、共同で責任を負う者の一人が賠償金を支払ったときに、他の者へ負担部分の支払いを求められる権利です。
不倫相手が慰謝料を全額支払った場合、その相手はあなたの配偶者に対して求償できます。
ダブル不倫では、受け取ったはずの慰謝料が求償を通じて家計から出ていき、請求した意味が薄れてしまうこともあります。
そのため、示談の際に求償権を放棄してもらう条項を入れておくことが多いです。
ダブル不倫の慰謝料は早い段階で弁護士に相談することをおすすめいたします
ダブル不倫の慰謝料請求は、相手方からの請求や求償権の問題が絡むため、通常の不倫よりも見通しを立てにくい状況と言えます。
感情のままに動いた結果、かえって不利な条件で決着してしまうことも少なくありません。
弁護士であれば、証拠として使えるかどうかの見極めから、相手との交渉、示談書の作成までを任せることができます。
ダブル不倫の慰謝料を請求したい方、相手方から請求された方等、今後の対応についてお悩みの方は、早い段階で弊所までご相談ください。

-
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
