監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
結婚の約束をした相手から、突然一方的に別れを切り出されたら、とてもショックは大きいことでしょう。新居や結婚式の準備をしたり、親族・友人・職場の人にも報告したりしていたのに…と、場合によっては、金銭的な償いをしてほしいと感じることもあるかと思います。
しかし、婚約破棄で慰謝料を請求するには、まず「婚約が成立していた」ということを証明する必要があります。一般的に婚約の際に契約書を交わすことはないので、この点を証明できるかがポイントとなります。
ここでは、婚約破棄によって慰謝料の請求が認められる条件や、慰謝料額の相場、慰謝料額に影響を与える要素等について解説します。
目次
婚約破棄で慰謝料は発生するのか
婚約破棄をされたら、慰謝料を受け取れる可能性があります。しかし、結婚の口約束はお互いに本気ではなくても行われるケースがあるため、「いずれ結婚しよう」などと話していたとしても、必ず慰謝料が取れるわけではありません。
婚約破棄を原因として慰謝料を請求するためには、まず以下の事実を確認する必要があります。
- そもそも婚約が成立していたか
- 婚約破棄が正当だといえるような理由があるか
たとえ婚約が成立していたとしても、例えば自分が婚約相手に暴力を振るっていたり、婚約相手以外とも交際していたりすれば、婚約破棄されても当然なので、慰謝料を請求することはできません。
婚約成立と見なされる条件
婚約は契約書等の書面を作成する必要がなく、当事者の合意によって成立します。ただ、客観的に婚約が成立したと認められるためには、「婚約が成立したと考えられる言動」があるか否かが重要と考えられます。
次のような言動は、婚約を前提とするケースが多いため、婚約していたと認められる可能性が高いです。
- 婚約指輪や結婚指輪を渡した
- 結婚式の準備をしていた
- 二人で暮らすための住居や家財道具を購入した
- 女性が婚約相手の子を妊娠・出産した
- 両親や他の親族、友人等に対して結婚する意思を伝えていた
- 結婚相手を探すためのイベント等で知り合って交際していた
これらの事情があったことを証明するためには、領収書や知人の証言等を証拠として残しておく必要があります。
婚約破棄の正当な理由
婚約破棄をしても、次のような正当な理由があれば慰謝料を請求されるリスクは低くなります。
- 不貞行為をされた
- 相手方が結婚していることを隠していた
- DVやモラハラを受けた
- 相手方が失踪して連絡が取れなくなった
- 相手方が返済困難な借金を抱えていた
- 相手方が、とても重い病気にかかり、回復する可能性が低い
相手方の不貞行為やDV等が婚約破棄の理由である場合、慰謝料を請求されるリスクは低くなるだけでなく、逆にこちらから相手方に慰謝料を請求できる可能性があります。
不当な婚約破棄の理由
相手方が婚約破棄をした理由が不当なものであれば、慰謝料を請求することができます。
不当な婚約破棄の理由として、次のようなものが挙げられます。
- 他の人と結婚したくなった
- 親などに結婚を反対された
- 宗教が異なる
- 性格や考え方が異なる
- 国籍等についての差別を理由としている
- 本人には前科はないが、相手方の親族に前科があった
婚約破棄の慰謝料相場
婚約破棄の慰謝料の相場は、おおむね30万円~300万円程度です。
双方が合意できれば、より高額な慰謝料を受け取ることも可能ですが、通常はそれなりの理由がなければ高額の請求は受け入れられないでしょう。
一般的に、精神的なダメージが大きくなる要素が多いほど、より高額な請求が認められる傾向にあります。そのため、交渉するときには慰謝料の増額要素を主張することが重要です。
慰謝料の増額要素
婚約破棄の慰謝料が増額される要素として、次のようなものが挙げられます。
- 婚約期間が長かった
- 妊娠した、さらには中絶に追い込まれた
- 両親や職場の人間等に結婚する旨を伝えていた
- 結婚することを前提として退職した
- 婚約破棄の理由が、相手方による不貞行為やDV等であった
- 婚約破棄されたことにより、精神疾患を発症する等の影響があった
- 他の者と婚約したこと等を理由に婚約破棄をする等、相手方の態度が不誠実であった
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婚約破棄の慰謝料を請求する方法
婚約破棄の慰謝料を請求するときには、まずは話し合いを行います。当事者の話し合いで合意できれば、お互いが納得した金額が慰謝料になります。
しかし、慰謝料を支払いたくない相手方が交渉を引き延ばし、時間が経過したら時効の完成を主張する等の対応をされるおそれがあります。そのため、慰謝料を請求したことを証明するために、あらかじめ内容証明郵便を送ると良いでしょう。
婚約破棄の慰謝料請求に時効はあるか
婚約破棄の慰謝料を請求するときには、次の2つの根拠が考えられます。
- 債務不履行に基づく損害賠償請求
- 不法行為に基づく損害賠償請求
債務不履行とは、商品を受け取ったのに代金を支払わなかった場合等、契約によって行うべきことを怠ったときに成立します。
一方で、不法行為とは、誰かの所有物を盗んだ場合等、他人の守られるべき権利を侵害したときに成立します。
債務不履行や不法行為を根拠として用いるときには、それぞれ時効になる期間が異なるため注意しましょう。
- 債務不履行:通常であれば婚約破棄から5年
- 不法行為:通常であれば婚約破棄から3年
慰謝料以外に請求できるもの
婚約破棄をされたときには、慰謝料以外にも、婚約によって生じた費用の返還を請求できます。
具体的には、次のような費用です。
- 結納金
- 結婚式場や新婚旅行のキャンセル料
- 結婚式の招待状の送付にかかった費用
- 家財道具等の購入費用
婚約破棄の慰謝料についてのお悩みは弁護士にご相談ください
婚約破棄をされて、慰謝料を請求したい場合には弁護士にご相談ください。
慰謝料を請求するためには、お互いが本気で結婚するつもりであったことを証明しなければなりません。また、慰謝料を増額できる要素が多ければ、有利に交渉できます。
弁護士であれば、状況を客観的に判断することができます。結婚するつもりだった相手が自分から離れてしまった場合等には、それが婚約破棄に該当するかについて検討いたします。
近年は、マッチングサイト等の普及によるトラブルも増えています。悔しい気持ちを抱えていらっしゃる方は、まずはお電話でご相談ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)