不要な土地は相続放棄できる?管理責任や固定資産税はどうなる?

相続問題

不要な土地は相続放棄できる?管理責任や固定資産税はどうなる?

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

相続人にとって不要な土地を相続すると、土地の管理や土地の固定資産税で負担がかかってしまうことがあります。そのような場合に、土地の相続放棄をすることは可能なのでしょうか。
ここでは、そのような土地を相続放棄しないリスクや相続放棄する際の注意点などをご説明いたします。

土地や建物などの不動産は相続放棄できるのか?

被相続人が所有していた土地・建物・空き家などの不動産は、相続放棄することができます。相続放棄をすると、「初めから相続人とならなかったものとみな」されます(民法939条)。相続放棄をすると、次の法定相続人に相続する権利が移動することとなり、土地の固定資産税等を支払う必要がなくなります。

相続放棄せずに土地を所有し続けるリスクとは?

以下では、相続放棄をすることなく土地を所有し続けた場合のリスク等についてご説明いたします。

固定資産税を支払わなければならない

被相続人が所有していた土地を相続放棄することなく、相続した場合、固定資産税を支払わなければならなくなります。土地は資産価値のある財産であり、土地の所有者に課税義務があります。固定資産税は、毎年支払わなければならないものであり。決して負担が軽いというものではありません。

空き家問題と固定資産税について

近年、空き家が増加し、その空き家の管理が行われていない等により、空き家等対策特別措置法が制定されました。空き家等対策特別措置法は、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空き家等の活用を促進するために制定されました。
空き家が「特定空き家等」に認定されると固定資産税が6倍に増えてしまうということになります。

共有名義にするとトラブルに発展することも

被相続人が所有していた土地を、相続人のうち誰が所有するかということを決めない場合、相続人全員が共有しているという状態になります。そうすると、誰が土地を管理するのか、管理する際に支出した経費を誰が負担するのか、誰が固定資産税を支払うのか等、トラブルに発展することも少なくありません。
共有している土地を売却などする場合には、共有している者全員の同意が必要となり、その場合にもトラブルになる可能性があります。

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土地を相続放棄する際の注意点

被相続人が所有していた土地を相続放棄する場合、いくつかの注意点がありますので、以下でご説明いたします。

土地だけ相続放棄することはできない

相続放棄という制度は、被相続人の相続財産に関する一切の権利義務を放棄し、「相続人でなかったとみなす」制度であるため、特定の土地のみを放棄するということはできません。不要な土地を相続放棄すると、必要であった預貯金などの財産も全て放棄することとなります。

相続放棄しても土地の管理義務は残る

土地が不要で、土地の所有権を放棄したとしても、当該土地を管理する義務まで放棄することはできません。相続放棄した土地の管理義務は、相続放棄した相続人にありません。そこで、当該不動産の管理義務はいつまで及ぶのかについて問題となりますが、相続財産管理人を選任し、相続財産管理人が相続財産の清算を行うこととなります。

土地の名義変更を行うと相続放棄できなくなる

相続放棄をする前に、土地の名義変更をしてしまうと、被相続人の財産を処分したことになり、その結果、単純承認したものとみなされます。
単純承認したとみなされた場合、相続放棄ができなくなりますので、ご注意ください。

相続放棄には3ヶ月の期限がある

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」に行わなければなりません。もし、3箇月以内に相続放棄をしないと、単純承認したとみなされてしまい、相続放棄をすることができなくなります。
3箇月以内に相続放棄をするか否かの判断ができない場合、家庭裁判所に対し、相続放棄の期間を伸長することを申請することができます。

相続放棄の期限はいつまで?

相続放棄した土地はどうなるのか?

法定相続人全員が相続放棄すれば、すぐに土地が国庫に帰属というわけではありません。
法定相続人や検察官や利害関係人などが、弁護士などの第三者を相続財産管理人として選任し、その相続財産管理人が相続財産の清算を行います。その結果、誰も相続しなかった財産が国庫に帰属することになります。

「相続土地国庫帰属法」が2024年(令和5年)4月27日に施行されることになり、当該法律により、一定の要件を充たした場合には、施行以前に相続した土地を含め相続した土地を手放し、国庫に帰属させることが可能となります。

土地を相続放棄する手続きの流れ

土地を相続放棄する手続の流れについてご説明いたします。

①まずは、相続放棄の申述書を作成し、住民票除票や戸籍謄本などの必要書類を集めます。
②作成した申述書、集めた必要書類を家庭裁判所へ提出します。
③家庭裁判所から届いた回答書に必要事項を記入し、返送します。
④家庭裁判所から、相続放棄申述受理通知書が届いたら、相続放棄が完了したことになります。

相続放棄の手続き方法と注意点について

相続放棄以外で土地を手放す方法はある?

土地以外の財産がプラスで、相続放棄したくない場合には、土地を含めて相続することが考えられます。その場合、以下のような方法により、土地を処分することが考えられます。なお、土地を相続する場合は、相続放棄(不動産の名義変更)が必要となりますので、ご注意ください。

売却する

まず、相続した土地の処分方法として、売却することが考えられます。土地の場所が田舎であったり、古い家屋が建っていた場合には、買い手がつかず、売却に困る可能性があります。
その場合、土地の売却金額を下げたり、家屋を取り壊し、更地にした状態で売却したり、不動産会社に仲介を依頼したり、空き家バンクに登録したりするという方法により対処することが考えられます。

寄付する

相続した土地を寄付することも可能です。
その場合、①土地を管轄する自治体へ寄付する、②個人へ寄付する(この場合、贈与税がかかるため、注意が必要です。)、③法人へ寄付するなどの方法があります。

土地活用を行う

相続した土地を活用することも考えられます。
具体的には、相続した土地の上に、賃貸物件を建築し、第三者へ賃貸する、トランクルームを設置するなどの活用方法があります。
立地がよければ、継続して収益を得ることが可能となります。
土地の立地調査をしてもらうことも検討しましょう。

土地の相続放棄に関するQ&A

以下では、土地の相続放棄に関するQ&Aについてご紹介いたします。

被相続人から生前贈与された土地を相続放棄できますか?

生前贈与とは、被相続人が亡くなる前に、相続財産を無償で贈与することをいいます。生前贈与は、贈与なので、相続発生時に遺産を相続するか否かとは別であるため、問題なく相続放棄することが可能です。

土地の共有持分のみを相続放棄することは可能ですか?

相続放棄という制度は、被相続人の相続財産に関する一切の権利義務を放棄し、「相続人でなかったとみなす」制度であるため、共有持ち分だけを相続し、他の遺産を相続することはできません。なお、土地の共有持分とは、特定の土地を複数人で共有している場合で、それぞれの共有者が有している割合のことをいいます。土地は相続したくないけど、預貯金等を相続したい場合には、他の法定相続人と協議することが必要となります。

農地を相続放棄した場合、管理義務はどうなりますか?

農地の所有権を相続放棄した場合であっても、相続財産管理人が当該農地を生産するめで、相続放棄した法定相続人は、管理義務を負うことになります。その管理義務は、「自己の財産における同一の注意」義務となります。

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土地を相続放棄するかどうかで迷ったら、一度弁護士にご相談ください。

被相続人が所有していた土地を相続放棄すれば、土地に関する固定資産税を負担しなくてよくなりますが、当該土地の管理義務は、以前として残ることになります。
被相続人が所有していた土地について相続放棄をするべきか否かについて、少しでも悩まれている場合には、ご相談ください。弊所の弁護士は、これまで数多くの相続放棄に関する相談を受け、相続放棄の申述を行ってきましたので、少しでもご依頼者様のお力になれるものと存じます。

また、相続放棄は、3か月以内に行わなければならないという制約があり、その手続も弁護士に任せることができます。
まずは、お気軽にお問い合わせください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。