受け取っても相続放棄に影響しない財産|影響があるものを受け取ってしまったらどうしたらいい?

相続問題

受け取っても相続放棄に影響しない財産|影響があるものを受け取ってしまったらどうしたらいい?

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

被相続人の遺産を受け取ってしまった場合、相続放棄することができないということを聞いたことがあるかもしれません。しかし、被相続人の遺産の中で、受け取った後でも相続放棄することができる遺産が存在しているのです。
ここでは、受け取ってしまったとしても、相続放棄することに影響のない遺産についてご説明いたします。

相続財産にならないものなら受け取っていても相続放棄できる

被相続人の財産とみなされないものであれば、仮に、相続人が受け取っていたとしても相続放棄をすることができます。言い換えれば、相続放棄をしていたとしても、被相続人の財産とみなされないものについては、相続人が受け取ることができます。

受け取っても相続放棄に影響しないもの

以下では、相続人が受け取ったとしても、相続放棄に影響しないものについてご説明いたします。

香典・御霊前

香典や御霊前は、死者への弔意、遺族へのなぐさめ、葬儀費用など遺族の経済的負担を軽減することを目的とするものであり、祭祀主宰者や遺族への贈与と考えられています。そのため、被相続人の財産とは考えられていないことから、相続放棄には影響を及ぼしません。

仏壇やお墓

仏壇やお墓はなどの祭具は、祭祀主宰者に属すると考えられている(民法897条1項)ため、被相続人の財産には含まれないといえます。その結果、仏壇やお墓を受け取ったとしても、相続放棄には影響を及ぼしません。

生命保険金(元相続人が受取人に指定されている場合)

生命保険は、被保険者が死亡した場合に、保険者が保険金受取人に対し、契約している保険金を支払うことを約束し、保険契約者が保険料の支払う契約です。
そのため、生命保険金は、保険受取人の固有の権利として保険金請求権を取得することとなるので、相続人のうちの一人が保険金を受け取ったとしても、相続放棄には影響を及ぼしません。

遺族年金

遺族年金は、国民年金又は厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった方が亡くなった際に、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。遺族に対して支払われる給付であるため、被相続人の財産には含まれません。したがって、相続人が遺族年金を受け取ったとしても相続放棄には影響を及ぼしません。

未支給年金

未支給年金とは、被相続人が亡くなったときにまだ受け取っていない年金のことをいい、遺族に対して支払われるものです。未支給年金は、被相続人の生活を支えていた遺族に対する補償という意味があるため、被相続人の財産には含まれません。したがって、相続人が未支給年金を受け取ったとしても相続放棄には影響を及ぼしません。

受け取りが相続放棄に影響するもの

被相続人の現金や被相続人の所有の家を受け取ったり、処分した場合には、もちろん、相続した者が相続放棄をすることはできません。現金や家だけでなく、以下のような財産を受け取ったり、処分したりした場合には、相続放棄することができなくなるため、注意が必要です。

受取人が被相続人本人になっている生命保険

生命保険金は、保険受取人の固有の権利として保険金請求権を取得することとなるので、被相続人が生命保険金を受け取るという契約になっていた場合、被相続人が固有の権利として保険金請求権を取得することとなります。そうすると、生命保険金は、被相続人の相続財産になります。
したがって、被相続人を受取人とする生命保険金を取得してしまった場合には、相続放棄をすることができなくなってしまいます。

所得税等の還付金

所得税等の還付金は、生前に被相続人が取得していた還付金の支払い請求権に基づいて返金される性質のものです。そうすると、被相続人が受け取るべき財産であり、相続財産に含まれることとなります。したがって、相続人が被相続人の所得税等の還付金を受け取ってしまった場合には、相続放棄ができなくなる可能性が高いといえます。

未払いの給与

未払いの給与は、生前の被相続人の労働に対する対価であるため、生前に被相続人に対し、発生していたものとなります。そうすると、被相続人が受け取るべき財産であり、相続財産に含まれることとなります。したがって、相続人が被相続人の未払い給与を受け取ってしまった場合には、相続放棄ができなくなる可能性が高いといえます。

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相続放棄できるかどうか、判断が分かれるもの

これまでは、被相続人の財産であるか否かを明確に判断することができたものでしたが、被相続人の財産であるか否かを明確に判断できないものも存在しております。それらについて、ご紹介いたします。

死亡退職金

死亡退職金の場合、被相続人の財産に含まれるか否かについて判断が分かれる可能性があります。
被相続人の財産に含まれるか否かについては、まず、死亡退職金に関する支給規程があるか否かで場合が分かれます。
死亡退職金に関する支給規程がある場合には、支給基準、受給権者の範囲又は順位などの規定により被相続人の遺産に含まれるかどうかを判断することになります。
他方、死亡退職金に関する規定がない場合には、従来の支給慣行や支給の経緯等を考慮して個別的に被相続人の遺産に含まれるかどうかを判断することになります。

高額療養費の還付金

高額療養費の還付金については、被相続人の生前に発生している権利ですので、被相続人の財産に該当し、この場合、高額療養費を受け取ってしまった場合、相続放棄をすることができなくなります。
他方、扶養されている者が亡くなってしまった場合、被保険者が療養費の還付を受けることとなりますので、当該還付金は、被保険者が受け取ることになります。したがって、このような場合、当該還付金は、相続財産に含まれないことになり、受け取ったとしても相続放棄をすることができます。

受け取っただけならまだ大丈夫、相続放棄したいなら保管しましょう

被相続人の財産を受け取っただけで、法定単純承認に該当するのかというと、そういうわけではありません。被相続人の財産を受け取り、費消したり処分したりしてしまうと、法定単純承認に該当することとなりますので、相続放棄をすることができなくなります。したがって、被相続人の財産を保管するだけでは、問題ないということとなります。

財産を受け取ってしまった場合の相続放棄に関するQ&A

受け取った保険金で被相続人の借金を返済しました。あとからもっと多くの借金が判明したのですが、相続放棄できますか?

相続放棄ができるかどうかについては、受け取った保険金を誰が受取人であったかによります。すなわち、被相続人が受取人であった場合には、被相続人の財産となりますので、その保険金で借金を返済すれば、法定単純承認に該当することとなり、相続放棄ができなくなります。
他方、相続人が受取人であった場合には、被相続人の財産となりませんので、その保険金で借金を返済したとしても、法定単純承認には該当せず、相続放棄をすることは可能です。

衛星放送の受信料を払いすぎていたので返金したいと連絡がありました。相続放棄するつもりなのですが、受け取っても問題ないでしょうか?

衛星放送の受信料を支払いすぎた時点で、支払った者が返還請求権を取得することとなります。被相続人が生前に衛星放送の受信料を支払いすぎた時点で、被相続人が返還請求権を取得することになりますので、被相続人の財産に帰属しているということができます。
そうすると、払いすぎた受信料を受け取った場合、相続放棄ができないことになります。

相続放棄したいのに財産を受け取ってしまった場合は弁護士にご相談ください

これまで、被相続人の財産を受け取ってしまった場合、受け取った相続人が相続放棄をできるかどうかについてご説明いたしました。相続人が受け取った財産がどのようなものであるかによって、相続放棄ができるか決まることとなりますが、その判断は容易ではありません。
どのような財産が被相続人の財産に含まれるか否かについて、少しでも不安がある場合には、弊所の弁護士にご相談ください。弊所の弁護士は、これまで数多くの遺産相続問題を取り扱ってきましたので、少しでもご依頼者様の力になれると存じます。
お気軽にお問い合わせください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。