監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
当事者間では協議離婚が成立しない場合、配偶者から離婚調停を申し立てられることがあります。
今回は、配偶者から離婚調停を申し立てられた場合に離婚を拒否できるのかどうか、拒否した場合のデメリットや離婚調停を申し立てられた場合の対処法等についてご説明いたします。
目次
そもそも離婚を拒否することはできるのか
離婚の種類 | 解説 | 拒否の仕方 |
---|---|---|
協議離婚 | 裁判所外で夫婦の合意によって離婚するもの | 相手方に対して離婚する意思がないことを伝える |
離婚調停 | 裁判所の調停手続を利用して、夫婦で協議を行い合意によって離婚するもの | 相手方に対して離婚する意思がないことを伝える |
離婚裁判 | 当事者間で離婚の協議ができない場合、一方当事者が離婚の訴えを提起し、裁判所において法定離婚事由があるか否か審理され、これが認められたときに離婚判決をするもの | 相手方の離婚請求の棄却を求める。法定離婚事由がないことを主張・立証する |
拒否が難しいケース
協議離婚・調停離婚は、一方当事者が離婚を拒否した場合に離婚が成立することはありません。
もっとも、離婚裁判において、裁判所において法定離婚事由があると判断された場合には、いくら離婚を拒否したとしても結局のところ離婚が認められてしまいます。
そこで、法定離婚事由(民法770条1項)が認められるケースは、離婚を拒否することが難しいといえます。
なお、法定離婚事由(民法770条1項)は、以下の事由が定められています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停の拒否について
離婚調停においては、離婚を拒否することは可能です。
しかし、離婚を拒否した場合のデメリットや離婚調停と離婚裁判で離婚を拒否する場合との違もありますので以下で説明いたします。
拒否した場合のデメリット
- 一般的に離婚調停を拒否したとしても相手方の気持ちが変わることはなく、結局離婚訴訟が提起される可能性高い
- 訴訟より調停の方が離婚条件について柔軟な解決が図れる可能性が高いにもかかわらず、その機会を失うこと
- 訴訟においては、裁判所において法定離婚事由があると判断された場合には、離婚を拒否し続けたとしても結局離婚が認められてしまうこと
欠席する場合の連絡方法
一方の当事者が裁判所に離婚調停を申し立てると、もう一方の当事者に対して、裁判所から、第1回調停期日の日時、裁判所の連絡先。担当書記官等の情報が記載された呼出状が送付されます。
第1回調停期日の日時は、離婚調停を申し立てた側の都合により決まりますので、申し立てられた側としては、既に予定が入っているなどの都合により出席できない場合があると思います。
その場合には、裁判所(担当書記官)に対して、出席できない理由を伝え欠席の連絡をする必要あります。裁判所は、当事者双方が出席可能な日程を調整することになります。
離婚裁判を拒否すると離婚が成立する可能性が高くなる
離婚調停は、当事者間で協議を行い合意によって離婚する手続ですので、一方当事者が欠席した場合に離婚が成立することはありません。しかし、離婚訴訟は、裁判所において法定離婚事由があるか否か審理され、これが認められたときに離婚判決をするものですので、一方当事者が離婚裁判を拒否して何も主張しなかった場合には、離婚訴訟を提起した当事者の主張する法定離婚事由があると認められ、判決により離婚が成立する可能性が高くなります。
離婚調停での財産分与の拒否はできるのか
離婚調停は、上記のとおり、あくまで当事者間で協議を行い合意によって離婚する手続ですので、財産分与を拒否することはできます。
しかし、離婚調停が不成立となり、離婚裁判となった場合には、財産分与を拒否し続けたとしても、結局、裁判所が当事者の主張・立証を基に財産分与に関する判断を行うことになります。
通帳開示を拒否する場合
通帳開示を拒否することはできます。
しかし、相手方からの調査嘱託の手続(裁判所が、公私の団体に対して、必要な調査を嘱託し回答を求める手続)が実施された場合には、一方当事者が通帳開示を拒否したとしても、結局、強制的に通帳が開示されてしまう可能性があります。
離婚調停の拒否に関する質問
離婚調停を拒否したら相手から別居したいと言われた場合はどうしたらいいですか?
上記のとおり、離婚裁判においては、法定離婚事由が認められる場合、一方当事者がいくら離婚を拒否し続けたとしても離婚が認められてしまいます。
そして、長期間の別居状態は、法定離婚事由(民法770条1項)のうち「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
したがって、離婚を拒否したい場合には、民法上、夫婦には同居義務があることを理由にできる限り、同居生活を継続することが望ましいでしょう。ただし、正当な理由がある別居の場合には、同居義務違反として責任まで問うことは困難です。離婚に至る理由は、複合的な理由が重なっており、当事者に多々言い分があることが殆どだと思いますので、まずは別居したい理由を話し合い夫婦関係の修復をすることを試みることが大切でしょう。
離婚調停の拒否(欠席)はいつまで通じますか?
離婚調停で離婚を拒否(欠席)する場合には、当事者間で協議を行う余地がないと考えられ、離婚調停が不成立となります。
裁判所において、どの時点で協議を行う余地がないと考えるかはケースバイケースであり、一方当事者の離婚拒否の意思が明確であれば、1回目の期日で調停が不成立になることもありますし、欠席理由が明確でない場合、1回~2回様子を見ることもあり、それでも欠席が続く場合には、2、3回目の期日で調停不成立となることが多いです。
ただし、離婚調停が不成立となった後、相手方から離婚訴訟を提起された場合には、一方当事者が離婚裁判を欠席して何も主張しなければ、離婚訴訟を提起した当事者の主張する法定離婚事由があると認められ、判決により離婚が成立する可能性が高くなりますので注意が必要です。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚調停の拒否を検討している場合は弁護士にご相談ください
離婚調停の拒否を検討している場合、拒否することのデメリット、調停の意義やその先の離婚訴訟の手続を理解しておかなければなりません。どのような離婚条件であったとしても、離婚を拒否したいのか、離婚条件によっては離婚に応じていいのかによって取るべき対応が異なります。特に、後者の場合、離婚調停を拒否し続けること自体が得策ではないことも多いです。
相手方から離婚調停を申し立てられ、離婚調停を拒否することを検討されている場合は、まず、弁護士にその目的や動機を伝え、どのような対応を取るべきかについて、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)