婚姻費用算定表で婚姻費用の相場を知る方法

離婚問題

婚姻費用算定表で婚姻費用の相場を知る方法

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

離婚に向けて別居を開始したケース等において、離婚が成立するまでは、夫婦のうち収入の低い一方からもう一方へ婚姻費用を請求することができます。請求可能な婚姻費用の相場を調べるときには、“婚姻費用算定表”を使います。
算定表は裁判所のHPでも公開されているため、誰でも見ることができますが、誤った方法で用いると正確な金額になりません。また、算定表で導かれる金額はあくまでも目安であることに注意しましょう。 ここでは、婚姻費用算定表の概要や使い方等について解説します。

婚姻費用算定表とは

婚姻費用算定表とは、婚姻費用の目安となる金額を調べるための表です。「夫婦双方の収入の金額」「給与所得者か自営業者か」「子供の人数や年齢」といった要素によって、婚姻費用の金額を算定します。
ここで導かれる婚姻費用の金額は、標準的な生活を前提とした目安であり、「子供に持病があるため治療費がかかる」等の個別の事情は別途考える必要があります。また、夫婦双方の話し合いにより、算定表によらない金額の婚姻費用を支払うと取り決めるのは自由です。

婚姻費用算定表の使い方

婚姻費用算定表を用いて婚姻費用を決めるときに、勘違いをしていると相場と異なる金額になるおそれがあります。
どのように婚姻費用の金額を決めるのかについて、以下で解説します。

お互いの年収を調べておく

まずは、お互いの年収を調べます。年収は、税金や社会保険料を差し引く前の金額を用います。ここでいう年収にはボーナス等の金額も含めます。

給与所得者の年収の調べ方

給与所得者の年収は、源泉徴収票の「支払金額」を見ます。ボーナス等も含めた収入について、手取り額ではなく、税金や社会保険料が控除される前の金額で計算します。
なお、交通費については、それが標準的な金額であれば年収に含める場合もあります。

自営業者の年収の調べ方

自営業者の年収を調べる際は、まず直近の確定申告書から以下の項目を探します。

  • 所得金額合計
  • 社会保険料控除
  • 専従者給与(控除)額の合計額
  • 青色申告特別控除額

そして、上記の各金額を以下の計算式に当てはめて年収を算出します。

所得金額合計―社会保険料控除+専従者給与(控除)額の合計額+青色申告特別控除額

裁判所のHPから最新版の婚姻費用算定表をダウンロードする

婚姻費用算定表は、裁判所のHPに掲載されている最新版のものを利用します。
算定表のうち、表10~表19が婚姻費用算定表です。子供がいない場合、子供が1人~3人いる場合、また、子供が0歳~14歳の場合、15歳以上の場合によって、用いる算定表が異なります。

婚姻費用算定表(裁判所)

支払う側と受け取る側の年収が交わる箇所を探す

婚姻費用を支払う者(義務者)の年収は、表の縦軸に書いてあり、婚姻費用を受け取る者(権利者)の年収は、表の横軸に書いてあります。それぞれの年収について、給与所得者か自営業者かを区別して確認し、表において交わる箇所を探します。
例えば、子供がおらず、夫婦双方が給与所得者であり、義務者の年収が500万円、権利者の年収が200万円だとすると、婚姻費用の月額は4万円~6万円になります。

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婚姻費用算定表が自分のケースに当てはまらない場合

婚姻費用算定表が使えないケースの例として、以下が挙げられます。

  • 子供が4人以上いる
  • 子供が複数おり、双方が1人以上の子供を扶養している

これらの場合でも、算定表の元になっている計算式を使えば、婚姻費用を算出できます。
計算の手順は以下のようになります。ただ、計算が複雑なので専門家に相談することをおすすめします。

①夫婦双方の年収を確認し、それぞれの年収に応じて決められている割合の基礎収入を計算する。
②夫婦や子供の生活費指数を確認し、婚姻費用を受け取る側に振り分けられる金額を計算する。
③婚姻費用を受け取る側に振り分けられた金額から、受け取る者の基礎収入を差し引く。

婚姻費用算定表に関するQ&A

婚姻費用に関してよくある質問について、以下で解説します。

婚姻費用を算定表より多くもらうにはどうしたらいいですか?

婚姻費用を算定表より多くもらうためには、協議や調停において、算定表よりも高額な婚姻費用を受け取るべき事情を説明し、相手方に受け入れてもらうのが望ましいでしょう。
婚姻費用算定表で算定できる金額は、あくまでも目安です。しかし、相手方にも生活があるので、算定表よりも高い金額を受け入れさせるためには特別な事情が必要になるケースが多いです。
相手方を納得させるためには、子供に通常よりも高度な教育を受けさせることや、持病の影響で通常の家庭よりも多くの費用がかかること等を、具体的な数字を示しながら説明する必要があります。

子がおらず、私は専業主婦で収入がありません。算定表では義務者の年収(給与所得者)が350万円~450万円の場合、婚姻費用相場が6万円~8万円となっているのですが、年収が450万円に近ければ、婚姻費用は8万円という考え方で良いのでしょうか?

婚姻費用算定表で目安が6万円~8万円となっている場合において、その幅の中で一番上のマスに該当するのであれば、8万円程度が目安となります。
しかし、6万円~8万円という金額自体が目安であることから、個別の事情によって7万円以下にするべきであったり、8万円を超えるべきであったりする状況も考えられます。

婚姻費用算定表の金額に、子供の学費は含まれていますか?

算定表の金額には、子供の生活費だけでなく、標準的な学費が含まれています。しかし、公立中学校や公立高校のための学費が含まれているものの、私立中学校や私立高校の学費等は含まれていません。
そのため、子供が私立の学校に進学した場合には、その費用を婚姻費用に上乗せして請求することが考えられます。ただし、そのためには、なるべく相手方に進学等について同意してもらっておくのが望ましいでしょう。

専業主婦は収入0のところを見ればいいでしょうか?年収100万円として考えることもあると聞いたのですが…

専業主婦であっても、働けるのに働いていないのであれば、収入があるとみなして婚姻費用算定表を用いるケースがあります。
子供の世話や病気等、やむを得ない理由があって働いていない場合には、年収を0円とすることも正当だと考えられます。しかし、子供が成長して手のかからない年齢になっている等、働く気があればパートなどで働けるのに、楽がしたいから働かない等の状況であれば、同程度の年齢の者が短時間勤務をして得られる程度の収入はあるとみなして、算定表に当てはめることになります。

年金生活者です。年金を収入と見なして婚姻費用算定表を使えばよいでしょうか?

年金も給与と同じように定期的な収入ですが、年金を給与と同じようなものだと考えて婚姻費用算定表を用いてしまうと、正しい婚姻費用の相場にはなりません。なぜなら、給与で生活している人には、働くために必要な費用がかかるため、算定表にもそれが反映されているからです。
給与で生活している人は、収入のうち生活費に使える金額が40%程度だと考えられています。一方で、年金生活者の収入のうち、生活費に使える金額は60%程度だと考えられています。
そのため、相手方に収入がないケースでは、年金収入の60%の半分程度が婚姻費用の目安になります。

弁護士がそれぞれの事情を考慮して婚姻費用を算定します

適切な金額の婚姻費用を請求したいときには、弁護士にご相談ください。
婚姻費用は毎月受け取るお金であるため、金額がわずかに変わるだけでも、長期間に渡って受け取ると総額は大きく変化します。
婚姻費用算定表は、あくまでも目安の金額を算定するために使うものであり、個別の事情に応じて金額を調整することはあり得ます。しかし、相手方は、算定表よりも重い負担をすることについて簡単には納得しないでしょう。逆に、相手方が算定表よりも低額の支払いで済ませようと考えて様々な主張をしてくることも考えられます。
弁護士は、協議や調停等の場において、考慮するべき事情について訴えることで、適切な金額の支払いを求めることができます。婚姻費用の支払いについて困っている方は、まずはお電話でご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。