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ここでは、保護観察処分とは何か、保護観察中のルールや生活についてご説明いたします。

保護観察処分とは

保護観察処分とは、犯罪をした人又は非行のある少年が、社会の中で保護観察所の指導監督を受けながら更生を図る処分のことをいいます。刑務所等の矯正施設で行われる施設内の処遇に対して、保護観察は施設外、つまり社会の中で処遇を行うものであるため、社会内処遇と言われています。

保護観察の対象者

保護観察処分少年

保護観察処分少年とは、非行により家庭裁判所から保護観察の処分を受けた少年のことをいいます。更生保護法48条1号に定められていることから、「1号観察」と言われています。

少年院仮退院者

非行により家庭裁判所から少年院送致の処分を受け、その少年院から仮退院となった少年のことをいいます。更生保護法48条2号に定められていることから、「2号観察」と言われています。

仮釈放者

懲役又は禁固の刑に処せられていたものの、仮釈放を許され更生保護法40条の規定により保護槓子に付せられている者をいいます。更生保護法48条3号に定められていることから、「3号観察」と言われています。

保護観察付執行猶予者

刑の執行猶予と合わせて保護観察付の言い渡しを受けたものをいいます。更生保護法48条4号に定められていることから、「4号観察」と言われています。

保護観察の種類

一般保護観察

一般保護観察の対象となるのは、一般事件(交通事故事件以外の事件)により保護観察に付され、短期処遇勧告がなされていない者が対象です。

一般保護観察は、保護観察に付されてからおおむね1年を経過し、3か月以上継続して良好な成績を獲得していた場合には、保護観察処分が解除されることになります。

一般短期保護観察

一般短期保護観察とは、社会適応を促進するための指導を中心とした短期間の保護観察を行うことによって、保護観察対象者の改善更生を図る制度です。

一般短期保護観察の対象となるのは、一般事件(交通事故以外)により保護観察に付され、短期処遇勧告がなされた者が対象です。

一般短期保護観察は、おおむね6か月以上7か月以内の期間に解除が検討されます。10か月以内に解除できない場合には、保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いた上で、一般保護観察に切り替えられることになります。

交通保護観察

交通保護観察の対象となるのは、交通関係事件で保護観察に付され、短期処遇勧告がなされていない者が対象です。

交通保護観察は、できるだけ交通事件対象者の保護観察を専門とする保護観察官や交通法規に通じた保護司が担当するように配慮されていることに特殊性があります。

交通保護観察は、おおむね6か月経過後に解除が検討されることになり、一般的保護観察よりも短期間で解除されるのが一般的です。

交通短期保護観察

交通短期保護観察の対象となるのは、交通関係事件で保護観察に付され、短期処遇勧告がなされた者が対象。

交通短期保護観察は、おおむね3か月以上4月以内に解除が検討されることになります。6か月を超えて解除できないときは、保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いた上で、交通保護観察に切り替えられることになります。

保護観察の期間

成年に関する保護観察の期間は、裁判官が言い渡した期間となります。

少年に関する保護観察の期間は、原則として少年が20歳に達するときまでと規定されています(更生保護法66条)。ただし、保護観察に付することを決定したときから少年が20歳に達するまでの期間が2年に満たないとき、には、保護観察の期間を2年とされています(同条)。

もっとも、少年の改善更生に資すると認められるときは、期間を定めた上で、保護観察を一時的に解除することができ(更生保護法70条)、また、保護観察を継続する必要がなくなったと認められるときには、保護観察は解除されることになります(同法69条)。

保護観察官と保護司

保護観察官

保護観察官は、犯罪をした人や非行のある少年が社会の中で自立できるよう、その者たちを取り巻く地域の力を活かしながら、再犯・再非行の防止と社会復帰のための指導や援助を行う者です。なお、保護観察官は、法務省の職員で国家公務員に属します。

保護司

保護司は、民間人としての柔軟性と地域の実情に通じているという特性を活かし、保護観察官と協働して保護観察にあたるだけでなく、犯罪や非行をした人が刑事施設や少年院から社会復帰を果たしたとき、スムーズに社会生活を営めるよう、釈放後の住居や就業先などの環境の調整や相談を行うものです。

なお、保護司は、保護観察官とは異なり、民間のボランティアです。

保護観察の遵守事項と良好措置・不良措置

保護観察対象所が、一般遵守事項や特別遵守事項を守り、社会の一員として更生したと判断された場合には、「良好措置」を取られることがあります。他方、一般遵守事項や特別遵守事項を違反してしまった場合には、「不良措置」を取られることがあります。

一般遵守事項

保護観察中の一般遵守事項は、更生保護法第50条に規定されています。特別遵守事項とは異なり、保護観察中の者全員に共通して定められているものです。

一般遵守事項の内容は、①再犯・再非行をしないよう健全な生活態度を保持すること、②保護観察官や保護司による指導監督を誠実にうけること、③住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長に届け出をすること、④③に届け出た住居に居住すること、⑤転居又は7日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の許可を受けることとされています(更生保護法50条)。

特別遵守事項

特別遵守事項は、一般遵守事項とは異なり、それぞれの者の犯罪傾向に応じて定められた遵守事項となります。特別遵守事項は、保護観察所長が、それぞれの者ごとに保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いた上で定めます。

保護観察中の再犯

保護観察中に再犯を犯してしまうことも少なくありません。

保護観察中に再犯を犯してしまった場合、不良措置や再処分等が行われることになります。

不良措置には、仮釈放者に対しては仮釈放の取消しや保護観察付執行猶予者に対する刑の執行猶予の言渡しの取消しがされることがあります。

保護観察中の生活について

面接

保護観察中、月に数回、保護司との面接があります。

そこでは、保護観察対象者の生活状況を聞いたり、遵守事項を守っているかどうかの確認、悩みごと等の相談やその指導等が行われます。

学校生活

中学校や高等学校に在籍している保護観察対象者についても、他の保護観察対象者と同様に遵守事項を守って生活することが義務付けられています。

保護観察対象者が継続して、遵守事項を守って学校に通い続けられるようい、本人に指導・助言をしていくとともに、保護者に対しても指導・助言を行います。また、学校やそのほかの関係機関と連携した上で、保護観察対象者が学校に通い続けられるような環境を整えるようにします。

仕事・結婚

保護観察中であっても、もちろん仕事を始めたり、結婚したりすることはできます。もっとも、保護観察中は、保護観察官や保護司に「生活状況を報告する義務」があるので、保護観察対象者が仕事を始めたり、結婚する場合には、「生活状況」に変化が生じるため、保護観察官や保護司に報告しなければなりません。

旅行

保護観察中であっても、旅行をすることができます。 もっとも、7日以上の旅行をする場合には、あらかじめ保護観察所の長に許可を受けなければなりません(更生保護法50条)。

また、海外旅行については、パスポートを申請する際に、「保護観察中か否か」というチェック項目があるため、当該項目にチェックをした場合、パスポートが交付されない可能性があります。

少年事件や保護観察についてのご相談は、弁護士へご依頼ください

少年事件は、手続が成人の刑事事件の場合と異なり、特に専門性が不可欠な事件となります。少年は心身ともに未熟ということもあり、とても難しい問題が多く存在しています。

また、保護観察についても、今後の生活に大きく影響するものといえます。

数多くの少年事件や保護観察に関する意見を多く扱ったことのある弊所であれば、少しでもご依頼者様のお力になれると思います。

迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。 まずは、お気軽にご相談ください。

刑事事件の被疑者として取調べ等の捜査を受けたが、不起訴となる場合もあります。どのような場合に不起訴となるのか、逮捕されてしまった場合に不起訴となるにはどうすればよいのかなどについて解説します。

不起訴とは

検察官は、捜査した事件を起訴(刑事事件について裁判を求めること)するか、不起訴(裁判を求めない)とするかを判断します。つまり、不起訴とは、捜査の結果、検察官によってその事件は裁判を求める必要がないと判断されることをいいます。

起訴と不起訴の違いについて詳しく見る

不起訴と無罪の違い

不起訴と無罪は、刑罰を受けないという点では同じですが、異なるものです。無罪は、刑事事件について起訴されたが裁判の結果、罪とならない、あるいは犯罪の証明がないとされることです。不起訴は、裁判を受けることがなく、そのために何も処罰を受けないことになります。

不起訴処分で前科はつくのか

前科は、有罪判決(罰金刑などを含む。)を受けた場合につきます。前歴は、被疑者として刑事事件の捜査の対象となった場合に残ります。不起訴処分となった場合、被疑者として捜査を受けたことから前歴は残りますが、前科はつきません。

前科と前歴の違いについて詳しく見る

不起訴と罰金の違い

上記のように、有罪判決を受ければ前科がつくこととなります。罰金刑も刑罰の一種であり、有罪判決にあたるため、略式裁判などにより罰金刑となった場合も、前科がつくこととなります。不起訴処分と(略式裁判による)罰金刑は、正式な裁判を受けることがないという点では同じですが、前科がつくかつかないかという点で異なります。

不起訴になる理由

嫌疑なし

不起訴処分となる場合の1つに、「嫌疑なし」と判断される場合が挙げられます。これは、捜査の結果、被疑者とされていた人が犯人であるという疑いが完全に晴れた場合です。

嫌疑不十分

「嫌疑不十分」であるとして不起訴処分となる場合もあります。これは、「嫌疑なし」の場合のように疑いが完全に晴れるわけではないが、裁判になった場合にその被疑者が犯人として犯行を行ったことの十分な証明をすることが難しいというような場合です。

起訴猶予

不起訴となる場合の9割以上はこの「起訴猶予」です。被疑者が犯人であることは証明できるが、事件の内容や事件後の事情(示談の成立など)を考慮した上で起訴しないこととする場合です。

親告罪の告訴取り下げ

親告罪について告訴が取り下げられた場合も、不起訴となります。親告罪とは被害者による告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がなければ裁判を提起できない犯罪です。親告罪については告訴が取り下げられると起訴の要件を満たさなくなるため、不起訴となります。

不起訴処分を得るには

日本の刑事裁判においては、起訴されてしまった場合の有罪率は99.9%であり、無罪を立証できる可能性のある事件でない限り、ほぼ確実に有罪になるといえます。そのため、不起訴となる可能性を高めるための手を尽くすべきものといえます。

不起訴にしてほしい・前科をつけたくない

否認事件の場合

否認事件、つまり疑われているようなことはやっていないと主張する場合、否認や黙秘を貫き、自白の供述調書を取られないことが重要です。

否認事件の場合、必然的に取調べも厳しいものとなり、1人で否認や黙秘を続けることはとても難しいです。取調べへの対応のアドバイスや不当な取調べに対する抗議など、弁護士の協力が必要不可欠となるでしょう。

被害者がいる自白事件の場合

事件の内容を認めており、被害者がいる事件の場合、被害者との示談が成立すれば、不起訴の可能性が高まります。示談の内容として被害弁償がなされていたり、被害者が被疑者を許したりすることで、起訴して処罰する必要性が低下するためです。

多くの場合、被疑者は逮捕されていたり被害者に拒絶されていたりして、被害者との直接の面会や連絡はできませんが、そのような場合でも弁護士を通じて示談交渉を行うことができます。示談が成立すれば、弁護士が刑事処分の証拠として効果的な内容・形式の示談書を作成したり、被害者に嘆願書を書いてもらったりして、それを証拠として検察官と交渉し、不起訴を目指します。

被害者がいない自白事件の場合

薬物犯罪などの被害者がいない事件の場合、被疑者が事件についてしっかり反省しており再犯の可能性がないこと、被疑事実が軽微であることなどを主張し、場合によっては贖罪寄付なども行って不起訴の可能性を高めることとなります。

不起訴になったことはいつわかるのか

身柄事件の場合、勾留期間の終了(満期)までの間に起訴か不起訴が決定され、起訴されればその旨を言い渡されてそのまま勾留、不起訴となれば釈放されるため、被疑者は起訴か不起訴かを知ることができます。

在宅事件の場合、捜査にかかる期間は検察の裁量によるため、起訴・不起訴の決定まで時間がかかることもあります。起訴された場合は裁判所から起訴状が届くことで分かりますが、不起訴となった場合、被疑者の方から検察に連絡して聞かなければ不起訴となったことを知らされません。

不起訴を証明するには不起訴処分告知書の請求を

不起訴処分となったことを証明する資料がほしい場合、検察に対して不起訴処分告知書の交付を請求することができます。不起訴処分告知書には、被疑者の氏名、被疑事実の内容、その被疑事実について不起訴処分となったことやその日付などが記載されます。不起訴となった理由(嫌疑不十分、起訴猶予など)については記載する義務がなく、記載される場合もあれば、記載されない場合もあります。

不起訴処分を得るには、早期の弁護活動が重要です。

不起訴処分となれば、前科はつきません。ただし、特に起訴猶予を理由とする不起訴処分となるか否かという場合、何も処罰をしないという不起訴の決定がされるには、それだけの理由が必要であり、被疑者本人が十分に反省していることのほか、被害者のいる事件の場合は示談の成立などの事情があることが重要となります。また、自白事件の場合でも取調べの際に自身のやっていないことまで認めたり、犯行の動機、手段・態様などが実際よりも悪質なものと捉えられてしまったりすると、それだけ不起訴の可能性が下がってしまうことになります。

弁護士に依頼されれば、被害者との示談交渉、取調べへの対応のアドバイス、検察官との処分決定に関する交渉など、不起訴処分に向けた弁護活動を行います。不起訴に向けて充実した活動を行うには、より早期の段階でこうした弁護活動を開始することが重要ですので、ぜひお早めにご相談ください。

このページでは、背任罪の成立要件や罰則、背任行為発覚後の対応などについて解説します。

背任罪とは

背任罪は、他人(会社や個人)のために財産上の事務処理を行う義務のある者が、その任務に背いて本人に損害を与えた場合に成立する罪です。背任行為の典型例としては、回収の見込みのない不良貸付や粉飾決済、企業秘密の漏洩などが挙げられます。

背任罪の刑罰

背任罪の法定刑は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。後述のように背任罪は横領罪と似たところのある罪ですが、横領罪の法定刑は5年以下の懲役であり罰金刑の定めがないことから、横領罪の方が重い罪であるといえます。

背任罪の成立要件

他人のために事務を処理している

背任罪が成立するには、行為者が「他人のためにその事務を処理する者」であることを要します。ここでいう「事務」とは財産上の事務を指し、金銭や品物といった財産の管理などのほか、財産についての権利のために何かしなければならない場合(登記手続への協力義務など)なども含まれます。

任務違背行為

「任務に背く行為」(任務違背行為・背任行為)とは何かについては多数の学説が主張されていますが、判例・通説では、信任関係に違背した財産侵害、言い換えれば、誠実な事務処理者としてなすべきものと法的に期待されるところに反する行為のことであると解されています。

図利加害目的

背任罪では行為者の主観に関する要件として、背任行為を行う故意のほか、「自己若しくは第三者の利益を図る目的(自己図利目的・第三者図利目的)」または「本人に損害を加える目的(本人加害目的)」が必要とされます。財産上の事務処理にあたっては本人の財産を損なうリスクのある取引などを行う場合もあり、本罪で処罰すべき行為とそうでない行為を区別するために、このような目的があったことが要件とされています。

財産上の損害

要件として、財産上の損害が発生したことも必要です。ここでいう「財産上の損害」には、既存の財産が減少したという積極的損害のほか、将来取得しうる利益を失ったこと(消極的損害)も含まれます。

背任罪の時効

背任罪の公訴時効は5年です。また、民事上の責任追及としての損害賠償請求の時効は、任務に違背したという債務不履行として請求する場合には背任行為の時から10年、不法行為として請求する場合には、背任行為を知った時から3年または背任行為の時から20年の時効となります。

未遂でも処罰される

背任罪は未遂でも処罰されます(刑法250条)。背任罪が既遂か未遂かは、財産上の損害が発生したか否かによって区別されます。背任罪は個々の財産ではなく被害者の全体財産に対する罪であり、個別の財産の減少ではなく、本人の全体財産の減少があった場合に財産上の損害が発生したと認められます。

特別背任罪とは

特別背任罪は会社の役員・幹部など、特に重要な役割・任務を追っている者による背任行為を処罰するもので、会社法や保険業法など、刑法以外の複数の法律に定められています。法定刑は10年以下の懲役または1000万円以下の罰金あるいはその両方とされ、通常の背任罪よりかなり重いものとなっています。

背任罪と横領罪の違い

横領罪は行為者が管理している他人のものを着服した場合に成立する罪です。横領罪は自分が管理している他人の財産を任務に反して着服する行為、背任罪は任務に反して財産の着服以外の方法で損害を与える行為というように区別できます。物の着服がない不正貸付などの場合、貸した名義や経済的効果の帰属先が行為者か本人かによって横領と背任を区別します。

横領罪について詳しく見る

逮捕前後の流れ

会社などの組織において背任行為があった場合、社内で事実調査が行われ、背任行為の事実があったことが明らかになれば、多くの場合、背任行為を行った従業員に対して損害賠償が行われることになります。会社として社内の問題を公にしたくないという理由で刑事事件化されないこともありますが、会社や従業員の通報により刑事事件としての捜査が開始されることも当然ながらあります。

刑事事件となった場合、背任罪の捜査は在宅事件として進められることが多いですが、逮捕された場合はそのまま勾留されてしまうことが多いです。在宅事件、身柄事件のいずれの場合も、取調べ等の捜査を経て、起訴・不起訴が決定されます。

逮捕後の流れについて詳しく見る

背任行為をしてしまった場合の対応

上記のように、被害者本人(会社等)が刑事事件化することをためらい、先に損害賠償等の話が進められることも多いです。この段階で示談の話がまとまれば、刑事事件化するのを防ぐことができます。

刑事事件化され逮捕されてしまった場合は、早期の身体拘束からの解放を目指すとともに、被害者との示談等により不起訴処分を目指すこととなります。いずれの段階でも、弁護士が代理人・弁護人としてスピーディーに対応することで、刑事事件化を防いだり、身体拘束からの解放や不起訴処分というよりよい結果を得られたりすることに繋がります。

背任行為をしてしまったら、早期に弁護士へご相談ください

背任行為をしてしまった場合、刑事事件の被疑者として逮捕され起訴されてしまったり、会社等から高額な損害賠償請求をされてしまったりする可能性があります。

刑事・民事いずれの問題を解決するにあたっても、弁護士がより早期の段階で介入して被害者との示談交渉や刑事弁護活動を行うことで、よりよい結果となる可能性が高まります。ぜひ早期に弁護士にご相談ください。

ここでは、道路交通法違反の罰則や道路交通法違反により逮捕される場合についてご説明いたします。

道路交通法とは

道路交通法は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的としている法律です(道路交通法1条)。簡単に言えば、道路交通法は、交通の安全を確保するために定められた法律です。

道路交通法違反における罰金と反則金の違い

交通違反を犯した場合、通常であれば、裁判により罰金刑等に処せられることになります。しかし、交通違反の違反点数が6点以下の軽微な違反である場合には、手続が簡略され罰が軽減される制度があり、これを交通反則通告制度といいます。交通反則通告制度が適用され請求されるものが、反則金といいます。他方、交通反則通告制度を適用することができないほどの重大な違反である場合には、裁判を経て罰金を科せられることになります。

反則金と罰金の両方が規定されている場合には、反則金を納付することで罰金を支払う必要がなくなります。

道路交通法違反の罰則例

飲酒・酒気帯び運転 ・酒酔い運転

飲酒運転は、アルコールを摂取した状態で自動車等を運転した場合に成立する犯罪で「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に分けられます。

「酒気帯び運転」とは血中アルコール濃度の数値が、1ミリリットル中0.3ミリグラム以上、又は呼気1リットル中0.15ミリグラム以上が検出された場合に成立し、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。

「酒酔い運転」とは、アルコールを摂取したことが原因で、正常な運転が困難となった状態で運転した場合に成立し、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

無免許運転

無免許運転は、公安委員会の発行する運転免許を受けることなく、自動車又は原動機付自転車を運転することにより成立し、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。

無免許運転は、今まで運転免許を受けたことのない者が運転する行為のみならず、運転免許が取り消されたり、運転免許が停止されているにもかかわらず、自動車等を運転する行為に対しても成立します。

ひき逃げ

ひき逃げは、救護義務違反のことをいいます。ここで、救護義務違反とは、自動車や原動機付自転車で人身事故を起こしたにもかかわらず、適切な処置をすることなく、その場から逃走した場合に成立し、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられることになります。

当て逃げ

当て逃げは、自動車や原動機付自転車で物損事故を起こしたにもかかわらず、道路における危険を防止する等必要な措置を講じない場合に成立し、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられます。

自転車運転でも道路交通法違反になる

自転車での事故は、自動車での事故とは違うと思っている人も多いのではないでしょうか。

しかし、自転車は軽車両に該当し、自動車と同様に道路交通法の適用を受けます。

したがって、自転車で事故を起こしてしまった、交通の規則を守らなかった場合にも、道路交通法が適用されるので注意が必要です。

道路交通法違反で逮捕されるケース

軽微な道路交通法違反の場合には、交通反則通告制度が優先され、反則金で処理されることが多いのです。しかし、軽微ではない道路交通法違反、住所氏名が不明であること、逃亡のおそれがあること等の場合には、道路交通法違反により逮捕される可能性があります。

道路交通法違反をしてしまったら、弁護士へ相談を

道路交通法違反により捜査機関から出頭を要請されている場合等には、事前に弁護士からアドバイスを受けたり、弁護活動や厚生支援を受けることにより、ご依頼者様にとって有利になる可能性があります。

また、逮捕・勾留された場合にも、身柄の早期解放に向けた弁護活動を行うことができます。

数多くの道路交通法違反事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。

迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。

まずはお気軽にご相談ください。

ここでは、逮捕・監禁罪が成立する場合と逮捕・監禁罪を犯し逮捕された場合の対処方法についてご説明いたします。

逮捕・監禁罪とは

逮捕・監禁罪とは、人の身体に直接働きかけ、ないしは一定の場所からの移動を困難にして人の行動の自由を奪う罪のことをいいます。もっとも、人に対して「動くと殺すぞ」等と脅す等、心理的な働きかけによって自由を奪うことは、脅迫や強要罪に該当し、逮捕・監禁罪には該当しません。

逮捕・監禁罪の成立要件

逮捕・監禁罪における「逮捕」はどのような行為か

逮捕とは、身体に直接強制を加えて行動の自由を奪うことをいいます。典型例としては、人の身体を縄で縛って動けなくすること、手錠等により拘束することが挙げられます。逮捕は、身体に対する直接的強制により行動の自由を奪うことが本質であるため、直接的に身体的拘束を受けていれば、器具等を使用している必要はありません。

逮捕・監禁罪における「監禁」はどのような行為か

監禁とは、一定の場所からの脱出を困難にして移動の自由を奪うことをいいます。典型例としては、鍵のかかった部屋に閉じ込めることが挙げられます。

監禁罪は、物理的な意味で人の身体に強制を加えることを内容とする罪であるため、心理的な働きかけにより自由を奪ったとしても監禁罪は成立しません。入浴中の女性の衣服を奪い風呂場から出られなくするような場合には、心理的な働きかけのように思えますが、実際に外に出ることができなくなるのであれば、その場所からの移動の自由が奪われており、監禁罪が成立することになります。

「不法」であること

逮捕・監禁罪の成立には「不法」であることが必要となります。ここで、「不法」とは、逮捕・監禁行為に正当な理由がないことが必要となります。法令行為(刑事訴訟法上の逮捕等)や被害者の承諾等がある場合には、逮捕・監禁罪は成立しないことになります。

移動の能力を有しない者でも客体になれます

判例は、逮捕・監禁罪の保護法益として、移動しようと思えば移動できる自由としています。したがって、移動の能力を有していない者でも客体になることができます。裁判例は、生後1年7か月の幼児を監禁した場合、認知症の母親を緊縛した場合にも逮捕・監禁罪が成立するとしています。

逮捕・監禁罪の刑罰

逮捕・監禁罪の刑罰は、「3か月以上7年以下の懲役」となっています。「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」が刑罰である暴行罪に比べて重いものとなっています。

ここで注意が必要なのは、逮捕・監禁罪には罰金刑が規定されていないことです。

したがって、検察官は、逮捕・監禁罪を犯した者に対して罰金刑を求刑することができず、懲役刑しか求刑することができないのです。

逮捕・監禁罪に問われるケース

ここで、逮捕・監禁罪に問われるケースについてご説明いたします。

誘拐

刑法は、略取・誘拐罪についても規定していますが、ある者を誘拐するために、その者の身体を拘束した場合、身体を拘束する行為について、逮捕・監禁罪が成立する可能性があります。

また、女性を強姦目的で自動車に乗せたまま移動した行為について、その女性の移動しようと思えば移動できる自由を奪っているため、逮捕・監禁罪が成立する可能性があります。

いじめ・虐待

いじめや虐待の一環で、ある者を部屋に閉じ込めた場合、「児童虐待の防止等に関する法律」の規定が及ぶことになりますが、状況等によっては、逮捕・監禁罪が成立する可能性があります。

私人逮捕

刑事訴訟法上では、私人による逮捕を認めていますが、私人が逮捕した場合には、逮捕罪が成立するのでしょうか。逮捕・監禁罪は、当該逮捕行為が「不法」でなければならないので、犯罪者に対して私人による現行犯逮捕をした場合には、逮捕行為に正当な理由があるといえるため、「不法」とはいえず、逮捕・監禁罪は成立しないことになります。

逮捕・監禁によって被害者が怪我や死亡した場合

刑法221条は、逮捕・監禁致死傷罪を規定しています。本罪は、逮捕・監禁罪の結果的加重犯だと考えられています。逮捕・監禁の手段として用いた暴行・脅迫行為から致死傷結果が生じた場合のみならず、逮捕・監禁行為から生じた場合にも本罪が成立することになります。たとえば、監禁中に被害者が逃げようとして怪我をした場合、逮捕監禁致傷罪が成立することになります。

逮捕・監禁罪で逮捕された場合の対処法

逮捕・監禁罪にとより逮捕されてしまった場合には、早期の段階で弁護士に相談することが必須となります。弁護士に相談することにより、早期の段階で身体拘束から解放される可能性が高くなります。また、逮捕・監禁行為に正当な理由がある場合には、捜査機関にその旨を主張しましょう。

被害者との間で示談が成立した場合には、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。

逮捕・監禁事件を起こしてしまったら、早急に弁護士にご相談ください

逮捕・監禁罪については、逮捕段階であれば勾留阻止に向けた弁護活動、勾留されてしまった場合には不起訴処分に向けた弁護活動を行います。

逮捕・監禁行為により逮捕されてしまった場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。

数多くの逮捕・監禁事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。 迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。 まずは、お気軽にご相談ください。

ここでは、窃盗罪が成立するための要件、刑罰、逮捕された後の流れ等をご説明いたします。

窃盗罪とは

窃盗罪とは、他人の財物をその人の意思に反して自己の占有下に置くことにより成立する犯罪です(刑法235条)。例えば、通りすがりの人のポケットに入っている財布を盗む行為が窃盗罪にあたります。他方、誰の占有にも属さない物を自己の占有下に置くと占有離脱物横領罪(254条)が成立します。例えば、誰かの忘れ物を拾い、勝手に自分のものにする行為が占有離脱物横領罪にあたります。

なお、窃盗罪は、他人の財物を窃取しようとしたものの、自己の占有下に置くことができなかった場合、すなわち、未遂の場合でも処罰されます。例えば、通りすがりの人のポケットに入っている財布を盗もうとして触ったものの、気づかれて盗むことができなかった場合、窃盗未遂罪が成立します。

窃盗罪の刑罰

窃盗罪の刑罰は、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります。 どのような刑罰になるかは、事件の内容、被害金額、前科の有無、示談の成立の有無等により処分や刑の重さが決定されます。

窃盗罪は、常習的に行う者も多く、その場合には、通常の窃盗犯よりも重い3年以上の懲役に処せられることになります。

親族間の場合の特例

窃盗罪には、親族相盗例という例外が規定されています(刑法244条)。親族相盗例とは、親族間の犯罪については、刑が免除されるという例外です。この規定は、「法は家庭に入らず」という考え方に基づいています。

親族相盗例は、配偶者、直系血族又は同居の親族の間で窃盗罪を犯した場合に適用されます。なお、親族とは、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族のことをいいます(民法725条等)。

「配偶者、直系血族又は同居の親族」以外の親族との間の窃盗罪については、親告罪であるため、被害者が告訴をした場合のみ処罰の対象となります。

窃盗罪の構成要件

窃盗罪が成立するためには、①窃盗した物が他人の占有する財物であること、②窃取した者が不法領得の意思を有していること、③窃取したという事実が存在していることが必要となります。 以下で、各要件について詳しくご説明いたします。

他人の占有する財物

窃盗罪が成立するためには、窃取する対象が「他人の占有する財物」でなければなりません。ここで、「占有」とは、占有意思に基づき、財物を事実上支配している状態をいいます。裁判例で占有が及んでいるとして認められたものは、自宅内にあるものの、その所在を失念した財物、自宅前の公道に放置された自転車、公園のベンチに置き忘れたが、200メートル離れた時点で置き忘れたことに気づいたポシェット等があります。

不法領得の意思

最高裁判所は、「不法領得の意思」について、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思であると述べます。簡単にいうと、自分のものにしようとする意思があることです。

不法領得の意思は、毀棄隠匿罪や使用窃盗と区別するために必要とされています。

例えば、人の財物を壊す目的で盗った場合には、自分のものにしようとする意思はないため、不法領得の意思がなく、毀棄隠匿罪が成立することになります。

窃取

「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。

窃盗罪は、一般的にこっそり盗むという風に考えられていますが、ひったくりのように公然と財物を窃取する場合にも窃盗罪は成立します。

窃盗罪に問われる可能性のある行為

窃盗罪とは、万引きを想定する人も多いかと思います。しかし、窃盗罪には様々な行為を対象としています。例えば、ひったくり、置き引き、車上荒らし、無断充電なども窃盗罪に問われる可能性のある行為です。裁判例では、磁石でパチンコ玉を当たり穴に誘導する行為や窃取したキャッシュカードを用いて現金自動預払機から現金を引き出す行為についても、窃盗罪に該当するとしたものもあります。

万引きなどの常習犯の刑事処分

窃盗行為を繰り返し、何度も刑罰を受けている場合には常習累犯窃盗罪に該当し、通常の窃盗罪よりも刑が重くなる可能性があります。

ここで、常習累犯窃盗罪とは、①過去10年の間に、窃盗罪で6か月以上の懲役刑を3回以上受けたものが、②常習として窃盗を行った場合に成立します。常習累犯窃盗罪の法定刑は、3年以上20年以下の懲役となります。

窃盗罪の時効

刑事事件における時効とは、公訴時効といい、公訴時効を過ぎると検察官が公訴を提起することができなくなります。

窃盗罪の公訴時効は、7年とされています(刑事訴訟法250条)。

もっとも、刑事事件としての時効が成立した場合でも、民事事件としての時効が完成しておらず損害賠償を請求される場合もあるので注意が必要です。

逮捕後の流れ

窃盗行為を行ってしまった場合でも、窃取した財物の金額が比較的低い場合には、逮捕されない可能性があります。他方、被害金額が大きい、前科を有している、犯行態様が悪質である場合には、逮捕・勾留される可能性が高くなります。

窃盗罪を犯し、逮捕勾留されてしまった場合には、被害者との間で示談等を成立させることが重要となります。

逮捕された時の流れについて詳しく見る

窃盗罪に問われた場合の対応について

ここで、窃盗罪に問われた場合の対処方法について述べます。

窃盗罪に問われた場合には、まず被害者との間で示談を成立させることができれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。被害者との間で示談ができなかった場合には、「贖罪寄付」といって反省と贖罪の気持ちを表明するために、公益活動をしている団体などに寄付をする方法もあります。その他の方法としては、窃盗行為を行ったことについて真摯に反省しているという態度を示すことも重要です。

窃盗症(クレプトマニア)の場合には、再犯率が高いため、専門機関の治療等を受けるなどして、再犯防止に努めなければなりません。

窃盗罪に問われた場合は、弁護士へ相談を

窃盗行為については、逮捕段階であれば勾留阻止に向けた弁護活動、勾留されてしまった場合には不起訴処分に向けた弁護活動を行います。

窃盗行為により逮捕されてしまった場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。

他方、窃盗行為は、何度も繰り返してしまう犯罪行為であるため、弊所では再犯防止に向けた活動にも力を入れており、ご依頼者様の将来にも貢献できると存じます。

数多くの窃盗事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。

迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。

まずはお気軽にご相談ください。

「信用毀損罪」という罪名は、ほかの罪に比べて、あまり耳慣れないものかもしれません。このページでは、信用毀損罪が成立する要件や罰則などについて解説します。

信用毀損罪とは

 信用毀損罪は、人の経済的な信用・社会的評価を保護法益とするもので、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損することによって成立します。

信用を毀損する対象には、個人だけでなく、法人・団体も含まれます。非親告罪であり、信用を毀損された被害者の被害申告・刑事告訴が無い場合でも捜査・起訴される可能性があります。

信用毀損罪の罰則

信用毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

信用毀損罪の構成要件

信用毀損罪の構成要件は、「虚偽の風説を流布」し、または「偽計を用い」て、人の「信用を毀損」することです。

虚偽の風説

「虚偽の風説を流布」するとは、客観的真実に反する事実を不特定または多数人に伝播させることをいいます。

不特定多数の人に広まる可能性があれば足り、特定かつ少数の人に対してであっても話を伝えれば要件に該当します。また、広めた内容が真実である場合は、信用毀損罪は成立しません。

偽計

「偽計」を用いるとは、人を欺罔・誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用することをいいます。自身の行為により被害者をだますことや、被害者がある事実を知らなかったり勘違いしたりしていることに乗じることです。

信用を毀損

信用毀損罪における「信用」とは経済的な側面における人の社会的な評価をいい、人の支払能力や商品の品質などについての信用を害する行為を行えば、信用を毀損することになります。実際に信用が低下したことまでは必要ではなく、信用が低下するおそれのある行為をすれば既遂となります。

信用毀損罪にあたる虚偽情報の例

信用毀損罪にあたる虚偽情報の例として、①あの会社はもうすぐ倒産しそうだ、②あの人は品物の代金を払ってくれない、③あの店で販売している食品や飲料に異物が混入しているなどが挙げられます。①と②のような支払能力・支払意思についての信頼を害する虚偽情報だけでなく、③のような販売している商品やサービスの品質についての信頼を害する虚偽情報も、信用毀損罪にあたります。

信用毀損罪と関連する犯罪

偽計業務妨害罪

偽計業務妨害罪は、信用毀損罪と同じ手段である「虚偽の風説の流布」または「偽計」により、人の業務を妨害するものです。

手段は共通しますが、信用毀損罪が人の経済的な信用を害するものであるのに対して、偽計業務妨害罪は人の業務を妨害、つまり仕事を邪魔するものです。偽計業務妨害罪の法定刑は、信用毀損罪と同じく3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

業務妨害債について詳しく見る

信用毀損罪と業務妨害罪が両方成立する場合

上記のように、2つの罪は手段が共通であり害する対象が異なるものですが、「虚偽の風説の流布」または「偽計」により人の経済的な信用が害されるとともに業務も妨害されるという場合も少なくなく、このような場合、信用毀損罪と偽計業務妨害罪の両方が成立します。

なお、そのように1つの行為が2つの罪に該当する場合、処罰は重い方の罪の法定刑を基準に判断されることとなりますが、信用毀損罪と偽計業務妨害罪の法定刑は同じであるため、2つの罪にあたる場合でも、いずれか一方のみが成立する場合と法定刑は変わりません。

名誉棄損罪

名誉毀損罪は、公然と事実を適示して人の名誉を毀損することにより成立する罪で、法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。信用毀損罪が人の経済的な信用を害することを処罰するものであるのに対し、名誉毀損罪は人の名誉・社会的評価を害することを処罰するものであるという違いがあります。また、信用毀損罪では、広めた話が真実である場合は罪は成立しませんが、名誉毀損罪の場合、広めた話が真実であっても名誉を害するものであれば罪が成立します。

信用毀損罪と名誉毀損罪が両方成立するケース

虚偽の話を広めたことにより被害者の経済的な信用・経済面以外の社会的評価のいずれもが害されるような場合、信用毀損罪と名誉毀損罪の両方が成立することもあります。この2つの罪の法定刑は大体同じですが、懲役より軽い禁錮刑の定めがない信用毀損罪の方が重く、1つの行為が両方の罪にあたる場合、信用毀損罪の「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」という法定刑の範囲内で処罰されることになります。

ネットの書き込みで信用毀損罪に問われた場合

インターネットに被害者の経済的な信用を損なうような書き込みをした場合、信用毀損罪が成立することもあります。刑事告訴されたり、書き込みによって経済的な信用を失ったために損害を受けたとして、民事上の損害賠償請求をされたりすることもあります。

匿名での投稿であっても、被害者からの請求により、プロバイダを通じて投稿者の情報が開示される場合があります。その際、プロバイダから投稿者のもとに「発信者情報開示に係る意見照会書」が送られてきます。つまり、そのような書類が届いたということは、書き込みをされた被害者が刑事告訴や損害賠償請求に向けて投稿者の特定などに向けた手続を進めていることを意味します。刑事告訴などをされてしまう前に弁護士に相談し、解決に向けてできるだけ早く動き出すことが望ましいでしょう。

刑事事件になった場合の対処法

信用毀損罪で逮捕・勾留された場合、身体拘束からの早期解放を目指すには、弁護士による働きが必須です。起訴・不起訴の決定などの処分に向けてなすべきこととしては、被害者と示談することが挙げられますが、虚偽の情報を伝播して信用を毀損した場合、それにより生じた損害の金額、ひいては適正な示談金の金額がいくらかが問題となることも多いですし、示談金の支払いだけでなく、傷付けられた被害者の経済的信用を回復するための謝罪広告等の対応を求められることも少なくありません。信用毀損罪の示談交渉は、他の罪以上に一筋縄ではいかない場合が多く、弁護士による対応が必須であるといえるでしょう。

逮捕後の流れについて詳しく見る

信用毀損罪に問われたら、弁護士に相談を

上記のように、信用毀損罪への対応、特に被害者との示談に向けた交渉は、示談金(損害賠償)の金額や謝罪広告等の対応など、他の罪以上に難しいものとなる場合が多く、弁護士の関与が必須といえます。信用毀損罪に問われたら、ぜひお早目に弁護士にご相談ください。

ここでは、児童ポルノの禁止行為と罰則についてご説明いたします。

児童ポルノとは

児童ポルノとは、写真、磁気的記録にかかる記録媒体その他のもので、児童の性交や性交類似行為、衣服の全部又は一部を着けない児童の容態で特に性器などが露出され、性欲を興奮刺激させるもののことをいいます。 もっとも、アニメ・漫画等の二次元については、児童ポルノの対象外となります。

児童ポルノに関する法令

児童買春・児童ポルノ禁止法

児童買春・児童ポルノ禁止法は、18歳未満の未成年者を性犯罪から保護し、未成年者を健全に育成させるための法律で、児童ポルノの要件や罰則などが規定されています。

平成26年の法改正により、児童ポルノを自己の性的好奇心を満たす目的で所持・保管していた場合にも処罰されることとなりました。

自治体の青少年健全育成条例

各自治体が定める青少年保護育成条例では、児童との性交、性交類似行為、その他わいせつな行為を行うことを処罰の対象としています。罰則や条文の規定ぶりについては、各自治体によって異なりますが、兵庫県の青少年愛護条例には、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処すると規定されています。

児童ポルノの禁止行為と罰則

単純所持

平成26年の改正により、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持・保管していた場合には、児童ポルノの単純所持として、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されることとなりました(児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項)。例えば、自己のパソコンに児童ポルノに関する映像等を保管していた場合等です。

製造・提供

動画撮影等の方法により、児童ポルノを製造したり、第三者に提供した場合には、児童ポルノを製造・提供したとして、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されることとなります(児童買春・児童ポルノ禁止法7条2項ないし4項)。

不特定多数への提供・公然と陳列

児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した場合には、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処されることになります(児童買春・児童ポルノ禁止法7条6項ないし8項)。 例えば、インターネットに児童ポルノをアップロードし、第三者がダウンロードすることを可能にする状態にする行為のことをいいます。

児童ポルノの製造目的の買春

児童ポルノを製造する目的で、児童と買春行為をした場合、1年以上10年以下の懲役に処せられることになります(児童買春・児童ポルノ禁止法8条)。罰金刑がないという点において、児童買春罪(5年以下の懲役又は300万円以下の罰金)よりも重い罪となっています。

児童ポルノの製造目的の盗撮

児童ポルノを製造する目的で、児童の裸等を盗撮した場合には、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されることとなります(児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項、2項)。 当該犯罪が成立するためには、対象自動に知られることなく、こっそりと撮影していることが要件となります。

児童ポルノ事件の時効

刑事事件における時効とは、公訴時効といい、公訴時効を過ぎると検察官が公訴を提起することができなくなります。

自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持・保管したり、他人に製造・提供する行為についての公訴時効は3年となります。また、不特定若しくは多数の者に児童ポルノを提供し、又は公然と陳列した行為についての公訴時効は5年となります。

公訴時効については刑事訴訟法250条に規定されています。

児童ポルノ事件の捜査

児童ポルノ所持の容疑で捜査が行われる場合、自宅にあるパソコン等に対して捜索差押処分が行われる可能性があります。なぜなら、パソコン等に児童ポルノを保存している可能性が高いと予測されているからです。捜索差押処分によりパソコン等が押収され、捜査された結果、余罪が判明することも少なくありません。

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逮捕後の流れ

児童ポルノを単純に所持しているだけなのになぜ検挙されるのか、疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。 多くの場合、児童ポルノを販売・公開している業者やサイトが捜査機関により摘発されることにより、芋づる式で購入者まで捜査が及び、検挙されるケースが多く存在しています。したがって、単純に所持しているからといって安心しては危険といえます。

あとは、児童の両親から通報されたりするケースも存在しています。

逮捕後の流れについて詳しく見る

児童ポルノで逮捕された場合の弁護活動について

児童ポルノで逮捕された場合の弁護活動としては、まず勾留を回避することが考えられます。例えば、検察官に対して勾留請求をするべきでないという意見書を提出、裁判官に対して勾留を却下するべきであるとの意見書を提出、裁判官の勾留決定に対して異議を申し出る等の弁護活動を行う必要があります。場合によっては、裁判官に直接面談し、勾留するべきでないことを主張することもできます。

次に、勾留を回避できなかったとしても、身柄の早期解放を働きかける弁護活動をすることが考えられます。検察官に対して勾留延長をするべきでないという意見書を提出、裁判官に対して勾留延長を却下するべきであるとの意見書を提出、裁判官の勾留延長決定に対して異議を申し出る等の弁護活動を行う必要があります。

さらに、被害者との間、若しくは被害者の両親と示談を成立させることにより、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。

児童ポルノの禁止行為をしてしまったら、早期に弁護士へ相談を

児童ポルノの禁止行為については、逮捕段階であれば勾留阻止に向けた弁護活動、勾留されてしまった場合には不起訴処分に向けた弁護活動を行います。

児童ポルノの禁止行為により逮捕されてしまった場合、被害者との間で示談が成立すれば、不起訴処分を獲得する可能性が高くなります。

現在、児童ポルノを所持等している場合には、どうしたらいいのか不安に思う方もいらっしゃるかと思います。弁護士に相談することにより、今後どのようにしたらいいかというアドバイスを受けることができます。

数多くの児童ポルノ事件の刑事弁護を扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。

迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。

まずはお気軽にご相談ください。

ここでは「勾留」について解説しています。勾留請求がされるまでの流れや期間、勾留された場合の対応策などを解説していきます。

勾留とは

勾留とは、被疑者や被告人を、逃亡や証拠の隠蔽を防ぐという目的で、警察署の留置場などの刑事施設に拘束することを言います。逮捕のみの場合には、最大72時間で釈放されることになりますが、勾留された場合には、より長期間、刑事施設に収容されてしまうことになります。

勾留される要件

勾留については、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、それに加えて、①住居が不定であること、②証拠隠滅のおそれがあること、③逃亡のおそれがあることのうちいずれか一つでも該当した場合に、裁判官が勾留を認める可能性が高くなります。

罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある

「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」について、犯罪を犯したことが相当程度の可能性をもって認められれば足りると考えられています。身体を拘束する以上、犯罪を犯したことが相当程度認められなければ、勾留できません。

住居不定である

勾留される要件として「住居不定であること」が挙げられています。住居が不定であると、今後の捜査で必要なときに呼び出しをすることができなくなります。

その場合に備えて、住居が不定である場合には、勾留が許可される可能性が高くなります。例えば、逃亡生活や野宿をしている場合はもちろん、住所や居所があったとしても、具体的な住居がわからない場合には、「住居不定」とされることがあります。

証拠隠滅のおそれがある

勾留される要件として「証拠隠滅のおそれがあること」が挙げられており、証拠に対する不正な働きかけによって、判断を誤らせたり、捜査や公判に影響を与えるおそれがあることをいいます。証拠隠滅の対象は、「物証」のみならず、「人証」も対象とされています。被疑者や被告人の身柄を拘束しなければ、勾留請求の対象となった被疑事実に関する証拠を隠滅する可能性が相当程度見込まれるかどうかによって決まります。

逃亡のおそれがある

勾留される要件として「逃亡のおそれがあること」が挙げられており、被疑者が刑事訴追や刑の執行を免れる目的で裁判所に対して所在不明になることをいいます。

被疑者や被告人の所在は判明しており、今後所在場所が変わる可能性はないものの、捜査機関の出頭要請に応じないおそれが高い場合には、「逃亡のおそれが高い」と判断されることになります。

勾留と拘留の違い

「勾留」に似た言葉に「拘留」という言葉がありますが、意味は全く異なります。 既にご紹介したとおり「勾留」とは、被疑者や被告人を、警察署の留置場などの刑事施設に拘束することを言います。他方、「拘留」とは、刑罰のうちの一つで、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘束する刑罰です。

勾留までの流れ

警察官に逮捕された場合、48時間以内に検察官に送致しなければなりません。検察官が警察官から送致を受けて24時間以内に、勾留請求をするかどうかを判断することになります。警察官が逮捕し、検察官が勾留請求をするまでの時間は、72時間以内に行わなければならなりません。

勾留請求

検察官が被疑者を勾留することなくそのまま釈放すると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断した場合には、裁判官に対して、被疑者を勾留するよう求めます。このことを勾留請求といいます。

勾留質問

検察官から勾留請求を受けた裁判官は、被疑者を勾留するかどうかを判断するために、被疑者に対して質問をします。そのことを勾留質問といいます。

勾留質問の際、裁判官は被疑者に対して、被疑事実に誤りがあるかどうかの意見を聞きます。身に覚えがない容疑をかけられている場合には、しっかりとその旨を主張しましょう。

勾留後の処分

勾留がされれば最大20日間の間、捜査機関は、被疑者等に対する取調べ・捜査を行います。検察官は、最大20日間の勾留期間で、被疑者を起訴するかどうかを決定することになります。

もっとも、検察官が被疑者を起訴したとしても、直ちに身柄拘束から釈放されるわけではなく、被告人となった場合でも、逃亡や証拠の隠蔽を防ぐ必要性が高く、警察署の留置場などの刑事施設に拘束するべきであると判断されれば、起訴後に勾留されることになります。

釈放と保釈

釈放と保釈という言葉は似ていますが、意味は全く異なります。

「釈放」は、捜査機関が被疑者の身柄を解放することをいい、「保釈」は、起訴された後に、一定額の保釈保証金を納付し、被告人に対する勾留の執行を停止し、身体拘束から解放することをいいます。

勾留の期間

ここでは勾留の期間についてご説明いたします。

起訴前の勾留・勾留延長

検察官の勾留請求に対して、裁判官が勾留を許可した場合、勾留期間は10日間となります。その後、検察官が、被疑者に対して今後も捜査を行う必要があると判断した場合には、最大10日間を勾留の延長を請求することができます。その請求に対して、裁判官が勾留を延長するべきと判断した場合には、最大10日間の勾留が延長されることになります。

起訴後の勾留

検察官が、被疑者を起訴した場合、原則としてその後も身柄が勾留されることになります。

起訴後の勾留は、原則として2か月間身柄が拘束されますが、1か月毎に更新されることになります。

そして、被告人に対する「保釈」は、起訴後勾留から認められることになります。

勾留の延長

勾留の期間は、刑事訴訟法上、原則として10日間と規定されていますが、「やむを得ない事由」が存在する場合には、勾留の期間を最大10日間延長することができるとされています。

もっとも、勾留の期間延長に対しては、「準抗告」という手段により争うことができます。

勾留延長の「やむを得ない事由」

勾留の期間を延長するには、「やむを得ない事由」が必要であることは上述したとおりですが、「やむを得ない事由」とはどのような事由のことを言うのでしょうか。

最高裁判所は、「やむを得ない事由」とは、事件の困難性、あるいは、証拠収集の遅延若しくは困難等により勾留期間w100を延長して更に調べるのでなければ起訴若しくは不起訴の決定をすることが困難な場合を解するのが相当であると判断しています。例えば、勾留の期間を延長しなければ捜査を完了することができない場合、検察官が当該事件の処分を決定することができない場合等です。

勾留中の面会

一般面会は、被疑者若しくは被告人が勾留されているときに認められています。もっとも、当該被疑者若しくは被告人に対して、「接見禁止処分」が付されている場合には、弁護士以外の一般面会が禁止されています。

勾留を回避するためには

勾留は、逮捕されてから遅くとも72時間以内に勾留か否かの判断が下されることになります。したがって、勾留を避けるためには72時間以内に弁護活動を行わなければなりません。例えば、検察官に対して勾留請求をするべきでないという意見書を提出、裁判官に対して勾留を却下するべきであるとの意見書を提出、裁判官の勾留決定に対して異議を申し出る等の弁護活動を行う必要があります。場合によっては、裁判官に直接面談し、勾留するべきでないことを主張することもできます。

そのような活動をすることにより、勾留を避けることができ、より早期に身柄を解放させることができます。

勾留決定に納得がいかない場合の対応

裁判官が行った勾留決定に対して不服がある、裁判所が行った勾留決定に対して、「準抗告」や「勾留取消請求」を主張することができます。当該請求が正当であると判断された場合には、被疑者を身柄拘束から解放することができます。

もっとも、裁判所の勾留決定に対する準抗告や勾留取消請求は、とてもハードルが高く、豊富な経験が不可欠であるといえます。

勾留された場合の弁護活動について

勾留されたとしても決して諦めてはいけません。勾留されたとしても、不起訴処分を獲得することにより、早期に身柄拘束から解放させることができます。

被害者との間で示談が成立した場合には、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。また、起訴後に勾留されている場合には、保釈をすることによって、身柄拘束から解放させることができます。 一般的に接見禁止処分がなされている場合には、一般面会が禁止されているものの、弁護士は被疑者に面会することができます。

勾留されていたとしても、様々な弁護活動を行うことができるのです。

勾留を回避したい、釈放・保釈してほしい場合は、早急に弁護士へ相談を

ある事件で逮捕されてしまったが、勾留を回避したい、勾留されてしまい、早期に釈放・保釈してほしいという方は多いと思います。

早期段階で、身体拘束から解放するためには、知識のみならず、迅速な対応が不可欠です。 勾留に対する弁護活動を多く扱った弊所であれば、少しでもご依頼者様の力になれると思います。 迅速に行動するとともに、事件の問題点を適切に把握し、最善の弁護活動を行います。 まずはお気軽にご相談ください。