監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
交通事故に関する手続や示談交渉を弁護士に依頼した後でも、弁護士を変更することが可能です。
「このまま今の弁護士に任せるべきか不安だ」
「依頼した弁護士の対応に不満がある」
現在依頼している弁護士に、こうした不安や不満を感じている場合は、弁護士の変更を検討すべきです。
そこで今回は、弁護士の変更をお考えの方に向けて、弁護士を変更する方法をご紹介します。
弁護士を変更するにあたって注意すべきことやデメリットについて、本ページで詳しく解説していきますので、ぜひご参考ください。
目次
交通事故の弁護士は変更できる!セカンドオピニオンの重要性
示談交渉を弁護士に依頼中でも変更できます。
弁護士への依頼は委任契約なので、依頼者の意思で契約を解除して、別の弁護士に依頼することができます。
これは法的に問題のある行為ではなく、弁護士が解除依頼を断ることもありませんのでご安心ください。
《今の弁護士のままで大丈夫?不安に感じたら、セカンドオピニオンがおすすめ》
医師のセカンドオピニオンと同じように、弁護士のセカンドオピニオンを受けることで、ご自身の現在の状況に問題がないかを確認することができます。
交通事故の示談交渉は、弁護士によって進め方が異なる場合が少なくないので、ほかの弁護士の見解を聞いた上で、弁護士を変更すべきかどうかを判断するのもひとつの方法です。
法テラスや交通事故紛争処理センターを利用している場合は注意が必要
法テラスや交通事故紛争処理センターで依頼した弁護士は、変更がむずかしいため注意しましょう。
法テラスを介して弁護士と契約している場合、弁護士の変更には法テラスの承認を得る必要があります。
また、交通事故紛争処理センターなどのADRを利用している場合、手続が終了するまで一貫して選任された弁護士が担当することになっているため、途中で変更することができないとされています。
弁護士の変更を検討したほうが良いケース
弁護士の変更を検討すべきケースを4つ、次項で詳しくみていきましょう。
相性が良くない
弁護士との相性が良くないと感じる場合も、弁護士の変更を検討すべきケースのひとつです。弁護士も人間なので、「どうしても相性が合わない」と感じる人がいてもおかしくありません。
弁護士に言いたいことが言えなかったり、言ったことを弁護士に理解してもらえないと感じて、コミュニケーションが不十分になると、信頼関係を築くのがむずかしくなって示談交渉や裁判での主張に影響するおそれもあります。
弁護士と相性が合わないと感じたときは、一度ほかの弁護士に相談してみましょう。
解決の方向性が合わない
弁護士と解決の方向性が合わない場合も、弁護士の変更を検討すべきです。
たとえば、示談交渉での早期解決を望んでいるのに、弁護士が時間をかければ損害賠償金の増額が見込めるとして訴訟提起を執拗にすすめてくるようなケースでは、時間ばかりかかってしまうだけでなく、解決内容に納得できず後悔するおそれがあります。
解決の方向性や示談交渉の進め方などは弁護士によってさまざまなので、納得のいく結果を得るためにも、妥協せず、ご自身に合った弁護士に変更することも重要になります。
対応が遅い、連絡が取りにくい
弁護士の対応が遅い、連絡が取りにくいと感じる場合、解決までに時間がかかるおそれもあるので、弁護士の変更を検討してみましょう。
多くの弁護士は案件を複数抱えていますし、後遺障害等級認定の審査など手続に時間がかかるものもあります。
また、治療期間中や相手方の対応を待っている間は連絡を取らないという弁護士もいるので、対応が遅い・連絡がないからと、直ちに弁護士を変更すべきとはいえません。
とはいえ、あまりにも弁護士から進捗の報告がなかったり、弁護士に日をあけて何度連絡しても数日間折り返しの連絡がなかったりする場合は、弁護士自身の問題である可能性が高いので、弁護士の変更を検討しましょう。
弁護士に業務停止処分が下った
依頼していた弁護士に業務停止処分が下った場合は、弁護士の変更をせざるを得ません。
業務停止処分が下った弁護士は、業務停止期間中は業務を行えなくなるため、全ての手続が止まってしまいます。
業務停止期間があけるのを待つこともできますが、解決までに余計な時間がかかりますし、場合によっては時効によって損害賠償請求ができなくなってしまうので、状況に応じて、弁護士の変更を検討しましょう。
弁護士を変更する方法
ここからは、弁護士を変更する方法を解説します。
- 新しい弁護士を探して相談する
- 今依頼している弁護士に変更したい旨を伝える
- 保険会社にも弁護士を変更する旨を伝える
- 新たな弁護士に着手金を支払う
- 引継ぎをしてもらう
- 新たな弁護士が対応を開始する
トラブルに発展するおそれもあるので、弁護士を変更する場合は正しい手順を踏みましょう。
それぞれの手順を、次項で掘り下げてみていきましょう。
新しい弁護士を探して相談する
弁護士を変更したい場合、依頼中の弁護士との契約を解除する前に新しい弁護士を探します。
まずは別の弁護士によるセカンドオピニオンを受けましょう。
可能であれば複数の弁護士に相談して、弁護士を変更すべきか?ご自身に合う弁護士か?を判断しましょう。
《どんなことを相談すればいい?》
弁護士の変更を検討している場合は、複数の弁護士に次のようなことを相談してみましょう。
なお、弁護士の探し方については後述します。
- ご自身が抱えている問題について、どのような解決方法があるか
- 獲得できる示談金や後遺障害等級について
- 解決までにかかる時間や費用について
- 今依頼している弁護士に感じている不安・不満・疑問が解決できるか など
今依頼している弁護士に変更したい旨を伝える
新しく依頼する弁護士を決めたら、今依頼している弁護士に、弁護士を変更したい旨を伝えます。
伝え方に決まりはありませんが、スムーズに手続を進めるためにも、なるべく口頭で直接、今後は別の弁護士に依頼することと、そのために契約を解除したいことを伝えましょう。
新しい弁護士の氏名・法律事務所名・連絡先を伝えておくと、引継ぎを円滑に行ってもらえる可能性が高まります。そうすることにより、新しい弁護士もスムーズに事件を処理することができます。
契約の解除を伝えた後は、それまでに生じた弁護士費用の清算を行います。
《弁護士の変更を言い出しにくい場合は?》
弁護士の変更は法的に問題のある行為でも、珍しいことでもないので、毅然とした態度で伝えましょう。
それでも、直接伝えにくい場合は、新しい弁護士から引継ぎを含めて変更の旨を連絡してもらえないか確認してみましょう。
(弁護士費用特約を利用している場合)保険会社にも弁護士を変更する旨を伝える
弁護士を変更する場合、ご自身が加入する保険会社にも事前に報告しておきましょう。
弁護士費用特約を利用していれば、「保険会社が弁護士費用を支払う相手」が変わることになるので、必ず事前に連絡しておく必要があります。
保険会社に連絡する際は、弁護士費用特約には利用できる上限額があるので、「現在の弁護士に支払う金額」と、「新しい弁護士に支払う金額の目安」を確認しておくと安心です。
また、すでに着手金が発生していた場合は、新しい弁護士に支払う着手金について特約が利用できるかも確認しておきましょう。
新たな弁護士に着手金を支払う
もともと依頼していた弁護士に契約解除を申し出た後は、新しい弁護士に引継いでもらうために契約を交わし、着手金を支払います。
なお、弁護士や法律事務所によって、着手金が不要だったり、着手金のほかに実費が必要だったりするので事前に確認しておきましょう。
弁護士費用特約を利用していて、事前に弁護士変更の了承を得ている場合は、引継ぎのタイミングなどを保険会社と相談しておくと、スムーズに対応してもらえるでしょう。
引継ぎをしてもらう
新しい弁護士と契約を交わしたら、前任の弁護士の氏名・法律事務所名・連絡先を伝えて、前任の弁護士から後任の弁護士へ引継ぎをしてもらいます。
依頼者から双方の連絡先をそれぞれに伝えるだけで、その後は弁護士間で引継ぎが行われるため、基本的に依頼者自身が引継ぎに直接かかわることはありません。
ただし、前任の弁護士から引継ぎをしてもらえないような場合は、被害者自身で預けていた書類・資料・データなどを全て受け取った上で、新しい弁護士へ渡し、しっかりと引継ぎを行わなければなりません。
新たな弁護士が対応を開始する
引継ぎが完了した後、依頼者自身の保険会社や相手方の保険会社に対して、前任の弁護士から辞任通知が、そして新しい弁護士から受任通知が送られることで、新しい弁護士による対応が開始されます。
弁護士を変更した場合のデメリット
弁護士を変更することで、よりよい解決に向けて動き出す可能性がある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 着手金は返ってこない
- 完全成功報酬型でも解任までの費用は請求される
- 解約金が発生する可能性がある
それぞれ詳しくみていきましょう。
着手金は返ってこない
弁護士に依頼する際に最初に支払う着手金は、返ってこないのが一般的です。
着手金とは、弁護士が事案の対応に着手することに対して支払う弁護士費用の一部です。
そのため、途中で弁護士との契約を解除した場合や、結果が不成功だった場合でも、着手金は基本的に返還されません。
着手金を無料とする法律事務所もありますが、新しく依頼する弁護士に着手金が必要な場合は、二重で着手金を支払うことになるため、経済的な負担が大きくなってしまいます。
弁護士費用特約を利用している場合でも、契約によっては着手金の二重払いに対応していないこともあるので、十分に注意しましょう。
完全成功報酬型でも解任までの費用は請求される
交通事故事案では、「着手金無料、成果に応じて成功報酬のみが発生する」という完全成功報酬型の費用体系をとる法律事務所も少なくありません。
この場合でも、依頼から契約解除までにかかった実費(交通費、宿泊費、収入印紙代、郵便切手代など)は請求されます。
また、途中で契約を解除した場合、成果が出ていないため成功報酬は発生しないように思えますが、弁護士を変更する理由や進捗状況によっては、弁護士の活動で一定の成果が得られたものとして報酬金が請求されることがあります。
解約金が発生する可能性がある
委任契約の内容次第では、途中解約の違約金が発生する可能性があります。
とくに、着手金無料とする契約では、違約金や解約金が発生することが多々あるので、事前に委任契約書を確認するようにしましょう。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士変更にあたっての注意点
弁護士を変更するにあたって注意すべきことを確認しておきましょう。
- 書類は全て返してもらう
- 弁護士費用特約を利用している場合は要確認
- 変更しても結果が変わらない場合もある
それぞれ詳しくみていきましょう。
書類は全て返してもらう
もともと依頼していた弁護士に提出した書類や、弁護士が取り付けた資料は、全て返却してもらいましょう。
新しい弁護士と契約していれば、書類を含めた引継ぎは弁護士間で行ってもらえますが、漏れのないようしっかり引継いでもらいましょう。
《返してもらう書類とは?》
弁護士に提出した書類や、弁護士が取り付けた資料など、次に挙げるような事案に関する書類・データ・証拠品は全て返却してもらいます。
- 交通事故に関する書類(交通事故証明書、事故状況報告書など)
- 怪我や後遺障害に関する書類(医師の診断書、検査結果、後遺障害診断書など)
- 損害賠償金に関する書類(給与明細書、診療報酬明細書、各種領収書など)
- 保険会社に関する書類(示談金の提示書面など)
- 事実関係に関する書類(事故現場の写真や動画、弁護士とのやりとりを記載したメモなど)
弁護士費用特約を利用している場合は要確認
弁護士費用特約を利用すると、上限額の範囲内で保険会社が弁護士費用を負担してくれますが、上限を超えた部分は依頼者の自己負担となります。
上限額がいくらか?2回目の着手金は支払ってもらえるのか?など、あらかじめ保険約款で確認しておきましょう。
《弁護士費用特約を利用している場合に確認すべきこと》
- 【上限額】
弁護士を変更した場合でも、弁護士費用特約の上限額はリセットされません。
たとえば、上限が300万円だった場合に、もともとの弁護士に対して50万円の弁護士費用が発生していたとすると、新しい弁護士に対して特約が利用できるのは250万円です。 - 【着手金】
保険会社によっては、1事故につき1回しか特約が適用されない場合があります。
この場合、弁護士費用特約があっても2回目の着手金は自己負担となってしまいます。
変更しても結果が変わらない場合もある
すでに締結された示談の内容や、症状固定の時期は、結果に納得できないからといって弁護士を変更したとしても、結果は変わらない可能性が高いです。
それはなぜなのでしょうか?次項で確認していきましょう。
示談を締結してしまった場合
示談を締結してしまった場合、弁護士を変更しても結果が変わる可能性は低いです。
示談は、被害者と加害者双方の合意がなければ成立しないため、示談成立後は弁護士を変更したとしても、その結果を覆すことがむずかしいのです。
現在がどのような状況にあるかを確認するようにしてください。
《弁護士変更の検討は、示談成立前にする》
ごくまれに、示談成立後に発覚した損害の追加請求や、詐欺によって成立した示談のやり直しが認められることがありますが、これらはあくまで例外なので、現状に不安を感じたら、示談成立前に弁護士の変更を検討しましょう。
症状固定してしまった場合
症状固定してしまった場合、弁護士を変更しても症状固定の時期を変更するのはむずかしいです。
症状固定は、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めなくなった時点で医師によって判断されるため、弁護士が結果を覆せる可能性は低いのです。
《症状固定後に弁護士を変更するメリット》
症状固定後は、慰謝料や休業損害などの損害賠償額が算定できるようになり、後遺障害慰謝料・逸失利益の請求を目指して後遺障害等級認定の申請を行うことになります。
これらは示談金に大きく影響するため、弁護士の変更がプラスに働く可能性はあります。
交通事故に強い弁護士の選び方
弁護士を変更して後悔しないためにも、「交通事故に強い弁護士」を意識して、ご自身に合った新しい弁護士を選びましょう。
次項で、交通事故に強い弁護士を選ぶ際に注目すべきポイントを確認していきましょう。
解決事例が豊富にある
弁護士を選ぶにあたって、交通事故事案を取り扱っているだけでなく、解決事例にも注目しましょう。
最近は、過去に解決した実際の事案=解決事例を記載している弁護士や法律事務所のウェブサイトも多くあります。
件数はもちろん、どのような事案を成功させたのかをチェックしてみましょう。
解決事例が豊富なほど、多くの経験・ノウハウを有していると考えられるので、より希望に近い解決が図れる可能性が高まります。
交通事故専門の部署があるか
弁護士が交通事故を専門的に取り扱っているかどうかも、弁護士を選ぶ際の重要なポイントです。
弁護士はさまざまな分野の案件を取り扱いますが、交通事故を専門とする弁護士であれば、豊富な経験をもとに、事故ケースに応じた最適な解決方法を検討できる可能性が高まります。
あまり多くはありませんが、交通事故を専門に取り扱う部署のある法律事務所もありますので、インターネットなどで一度検索してみましょう。
医学知識があるか
交通事故の示談交渉や後遺障害等級認定の申請では、医学的な知識が必要になるケースがあります。
「事故と怪我の因果関係が疑われた」、「後遺症が残ったため後遺障害等級認定の申請がしたい」といったケースでは、医学的な知識や根拠に基づいた主張・立証によって相手方を納得させられなければ、受け取れるはずの示談金が減ってしまいます。
したがって、弁護士に事故の怪我や後遺障害について医学的な知識があるかどうかも、交通事故に強い弁護士かどうかを判断する基準のひとつとなります。
交通事故は弁護士法人ALGにお任せください
弁護士を自由に変更できるとはいえ、何度も弁護士を変更するのはおすすめできません。
「このままでは不安なので弁護士を変えたい」と思ったときは、セカンドオピニオンを利用するなどして、弁護士の変更を慎重に判断しましょう。
弁護士を変更することで、希望する解決が実現できそうなのであれば、今度こそ信頼できる弁護士に依頼したいものです。
弁護士法人ALGでは、交通事故を専門に取り扱う部署や医療事故チームと連携することで、事故の被害に遭われた方に寄り添ったサポートを行っています。ご依頼者様のお力になれる可能性が高いといえます。
弁護士変更をお考えの方、交通事故に遭われてお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)