セックスレスとは

セックスレスとは、日本性科学会によれば、「病気など特別な事情がないのに、1ヶ月以上性交渉がないカップル」と定義されています。
一般的には、どちらかが性交渉をしたいと望んでいるのに、長期間性交渉が行われていない状態を「セックスレス」と呼ばれています。

セックスレスは離婚原因として認められるのか

離婚協議や調停では、夫婦の話し合いで合意すれば離婚が成立しますので、セックスレスを理由に離婚することも当然できます。

しかし、一方が離婚を拒否した場合に、裁判で離婚が認められるためには、以下の法定離婚事由（民法７７０条１項各号）を立証する必要があります。

①配偶者に不貞行為があったとき
②配偶者から悪意の遺棄をされたとき
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

セックスレスは、上記⑤の考慮要素となります。

セックスレスでの離婚率

性交渉を行わない夫婦も一定数いますが、一方が望んでいるのに性交渉を拒むことは離婚の原因になります。

実際、裁判所に離婚調停を申立てた理由として、「性的不調和」を理由として挙げた方は、4940名います（令和3年司法統計年報）。一般的な離婚理由の多くは、「性格の不一致」「価値観の相違」ことなどがあげられますが、「セックスレス」も離婚理由になりえるのです。

セックスレス離婚の慰謝料

離婚理由として多い「性格の不一致」や「価値観の相違」など、どちらかが一方的に悪いわけではない場合には、慰謝料の請求ができない可能性が高いです。

しかし、正当な理由なく性交渉を長期間にわたって拒まれ続けたことが原因で離婚するに至った場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。

慰謝料の相場

セックスレスが原因で離婚するに至った場合、慰謝料の相場は５０万円～２００万円程度です。

もっとも、慰謝料の額は、夫婦間の様々な事情を総合的に判断しますので、セックスレスの状況に、モラハラやDVが加わるとより高額な慰謝料が認められることもありますし、逆にセックスレスに至った状況によっては、相場より極めて低額な慰謝料しか認められないこともあります。

請求方法

セックスレスを理由に離婚する場合に、慰謝料を請求する方法としては以下の３つが考えられます。

①交渉：交渉で相手方に対し慰謝料を請求する。
②調停：離婚調停を申し立て、調停手続の中で慰謝料請求をする。
③訴訟：調停での話し合いが決裂した場合、離婚訴訟を提起して慰謝料を請求する。

離婚慰謝料の請求の方法については、「離婚慰謝料請求」のページをご参照ください。

セックスレス離婚の切り出し方

セックスレスの原因は、夫婦によって異なります。
まず、相手方に対し、正直な気持ちを伝え、話し合ってみましょう。
相手方は、パートナーがセックスレスに悩んでいることを気付いていないだけで、話し合いで離婚を回避できるかもしれません。

離婚したくないと言われた場合

離婚を拒否された場合、セックスレスが原因で離婚をしたい場合には、相手方に対し、正当な理由なく性交渉を長期間にわたって拒まれ続けたこと（相手方が有責配偶者であること）を証明するための証拠を収集していくことをおすすめします。

ただし、セックスレスだけで「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認定されるのは簡単なことではありませんので、話し合いで解決できない場合には、別居するなど、裁判所に婚姻関係が破綻していると認めてもらいやすい状況を作ることも一つの手段です。

セックスレス離婚に必要な証拠

夫婦間というプライベートの問題であることから、相手方が正当な理由なく性交渉を長期間にわたって拒み続けたことの証明は、容易ではありません。

以下のとおり、セックスレス離婚に必要な証拠を事前に収集しておくことが大切です。

夫婦の生活時間帯などがわかる表

夫婦の生活時間帯などがわかる表は、相手方との生活時間がずれているわけではないことを明らかにし、相手方が正当な理由なく性交渉を長期間にわたって拒み続けたことの証拠として役立つ可能性があります。詳細な生活時間帯まで作成する必要はありません。

セックスレスについて夫婦で話した会話の録音

相手方とのセックスレスについての話し合いを録音したものは、重要な証拠になる可能性があります。

相手方が性交渉を拒む理由に正当な理由がなく、また拒んでいる期間が長期間にわたっている場合、その録音内容は、重要な証拠になるでしょう。

セックスレスのことが書かれた日記

セックスレスについて記載してある日記は、証拠の一つになり得ます。ただ、事後的に自分に都合の良いよう記載されたものと疑われないように、できる限り、毎日その他の出来事も含め手書きで書いておいてください。また、正当な理由なく拒まれた時の感情も継続的に記載してください。

セックスレスにより離婚する場合は弁護士にご相談ください

セックスレスで離婚を考えることは、決して珍しいことではありません。第三者に言いにくい問題かもしれませんが、多くの夫婦が離婚調停を申し立てる動機の一つとして列挙しています。

もっとも、夫婦間というプライベートの問題であることから、相手方が正当な理由なく性交渉を長期間にわたって拒み続けたことの証明は、容易ではありません。

弁護士であれば、セックスレスについての証拠を収集するのと同時に、婚姻を継続し難い重大な事由があると認められやすい状況を作出するなど、状況に応じて法的知識に基づいた適切なアドバイスができますので、早い段階でご相談ください。