性格の不一致による離婚について

離婚問題

性格の不一致による離婚について

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

最初は相手に好意的な感情を有していたとしても、結婚生活を送る中で価値観のズレが気になったり、相手に対する気持ちに変化が生じたりしてしまうことは、どんな夫婦にも起こり得ます。しかし、単に性格や価値観が合わないからという理由で、必ず離婚ができるのかというと、そうとは言い切れません。

本記事では、相手との性格や価値観の違いを理由に離婚を検討されている方に向けて、離婚を成立させるためのポイントや注意点などについて解説します。

性格の不一致で離婚することはできるのか

お互いに、性格が合わないという理由で離婚意思が合致している場合では、性格が合わないことを理由に離婚することは可能です。
なぜなら、日本では、どんな理由であっても、協議や調停で話し合い、お互いに離婚することに合意すれば、離婚が成立するからです。
ただし、話し合いで解決できずに裁判に発展した場合で、相手が離婚するという意思を有していない場合には、離婚が認められるとは限りません。

詳しくは、次項で解説します。

性格の不一致とは

「性格の不一致」とは、生活習慣や食の好み、休日の過ごし方、家族観、親族との付き合い方など、些細なものから大きなものまで、ありとあらゆることに対するお互いの価値観の違いを総称した言葉だといえます。
例えば、「休日は家族で外出したいのに、家でゲームばかりしている夫と離婚したい」というのも、性格の不一致が原因であるといえるでしょう。その他にも、以下のような夫婦間の感覚・考え方の違いも、「性格の不一致」に当てはまります。

  • 金銭感覚
  • 性的不一致(性的嗜好の相違やセックスレス)
  • 子供の教育方針
  • 政治思想、宗教観
  • 几帳面か大雑把か

法律が定める離婚原因とは?

離婚自体について裁判で争う場合、離婚理由が以下の法定離婚事由(法律で認められた離婚が認められる理由)のいずれかに該当していなければ、裁判所が離婚を命じることはありません。

①不貞行為(肉体関係を伴う浮気)
②悪意の遺棄
③3年以上の生死不明
④回復見込みのない強度の精神病
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由

基本的に、単なる性格の不一致は上記のいずれにも該当しません。しかし、性格の不一致が原因で夫婦関係がもはや修復が不可能なほどに悪化している場合は、⑤に該当すると判断されるケースがあり、離婚が認められる可能性も、ゼロではありません。

性格の不一致で離婚する場合に必要な要素

夫婦といえども、所詮は赤の他人であり、考え方や価値観が違っていて当然です。本来はお互いが歩み寄って解決していくべき問題ですので、単に性格が合わないというだけでは、裁判で離婚は認められません。
裁判で離婚を認めてもらうためには、性格の不一致が原因で【夫婦関係が修復不可能なほど破綻】し、法定離婚事由である【婚姻を継続し難い重大な事由】に該当することを、客観的に証明しなければなりません。

夫婦関係が破綻した証拠を集める

夫婦関係が破綻したことを示す証拠に有用なものとして、例えば、以下のものが挙げられます。

  • 相手の様子を記録した日記やメモ
  • 喧嘩の様子の音声データや録画データ
  • 夫婦仲が良くないことが分かる手紙やLINEのやり取り

なお、日記やメモは手書きのものに限られず、スマホやPC上に記録したデータでも使用可能です。しかし、後から加筆修正することが容易であるという点から、「改ざんしている」などと相手に反論の余地を与えてしまったり、手書きのものと比べ証拠としての価値が低いと判断されたりする可能性があります。
日記やメモを証拠とする場合は、可能な限り、消えないボールペンで書いた手書きのものを準備すると良いでしょう。

長期間の別居

夫婦が別居しており、別居期間が長期にわたっているケースでは、夫婦関係が破綻したものとして、裁判でも離婚が認められる可能性があります。
「●年間別居していれば離婚が認められる」という、法律で定められた絶対的な基準があるわけではありませんし、婚姻期間や子供の有無などの個別の事情によりますが、実務上、3年~5年の別居期間があれば、夫婦関係が破綻していると評価される可能性が高いでしょう。
別居期間の証明には、転居の手続きを終えた住民票や別居先の賃貸借契約書、公共料金の請求書などが役に立ちます。

性格の不一致での離婚の進め方

性格の不一致に限ったことではありませんが、離婚が成立するまでには、一般的に、「①協議離婚」「②離婚調停」「③離婚裁判」の手順を踏むことになります。

「①協議離婚」または「②離婚調停」では、話し合いの結果、2人が合意すれば離婚が成立します。
しかし、「③離婚裁判」まで発展した場合で、離婚意思が合致していない場合には、単なる性格の不一致だけでは離婚が認められない可能性が高く、離婚成立のハードルが高くなるというのが実情です。

離婚の切り出し方やタイミング

性格の不一致を理由に離婚したくても、冷静さを欠き、感情任せに相手との話し合いをしない方がいいでしょう。
感情任せに協議をしてしまい、後悔したり、子供の心を必要以上に傷つけたりしないためにも、離婚話を切り出す適切なタイミングを見計らうことは、とても重要です。
とはいえ、いつが離婚するのにベストなタイミングかというのは、夫婦の性格や家庭での立場、家族構成などによって、それぞれ異なります。一概に、いつ、どう切り出せば良いとは断言できませんが、例えば、以下のような時期や人生の節目をタイミングとしてみるのはいかがでしょうか。

  • 子供の進学に支障がない時期
  • 専業主婦が就職して経済的に自立したとき
  • 子供が精神的に成長し、離婚することに理解を得られたとき
  • 子供が経済的に独り立ちしたとき
  • 夫が定年退職したとき

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性格の不一致と離婚後の子供の親権について

まず、【なぜ離婚するのか】と【どちらが親権者として相応しいか】というのは、全く別の問題です。
親権者は、あくまでも子供の福祉に重点を置き、子供にとって、どちらと暮らす方が子供の福祉に資するかという観点から判断されます。自分にとって、配偶者としては相性の悪い相手であっても、子供にとっては良い父(母)である可能性は十分にあります。そのため、親権者は、これまで子供の日常の世話をしてきた実績や子供への愛情、健康状態、離婚後の生活環境、子供の意思などを総合的に考慮して判断されます。
なお、別居時に相手に無断で子供を連れて行く場合、その態様(子供が嫌がっているのに無理やり連れて行く、保育園や幼稚園、学校に待ち伏せして連れて行くなど)次第では、違法な連れ去りだとして、引き渡しを求める審判等を申し立てられたり、慰謝料を請求されたりするリスクもあるため注意が必要です。

性格の不一致での慰謝料請求について

性格の不一致だけを理由に慰謝料を請求するのは、かなりハードルが高いと考えます。
なぜなら、慰謝料は、「相手の違法な行為」「によって」「自分の権利が侵害されたとき」に発生する、精神的苦痛に対する損害賠償だからです。
相手が、「自分と価値観が違うこと」「自分にとって受け入れられない性格であること」は、「違法な行為」とは評価されないため、慰謝料の請求までは認められません。
しかし、例えば「相手が浮気をしている」「夫婦仲が悪化しDVやモラハラを受けるようになった」といった、離婚原因の中に性格の不一致以外の「違法な行為」に該当するものがあれば、これらの行為に対する慰謝料を請求できる可能性はあります。
また、なかには、慰謝料は発生しないにしても、相手に一定の謝意を示したり、離婚を円満に解決したりするための手段として、「解決金」という名目のお金が支払われるケースもあります。

よくある質問

性格の不一致で離婚しても財産分与を受け取ることは可能ですか?

性格の不一致が原因で離婚する場合でも、他の離婚原因のときと同じように、離婚時の財産分与を請求することができます。
財産分与とは、夫婦が婚姻生活中に築いた財産を離婚時に公平に分け合う制度です。夫婦の共有財産であれば、どちらがどれだけ稼いでいたか、財産がどちらの口座にあるかにかかわらず、基本的には、夫婦で2分の1ずつの割合で分けられます(もちろん、分配割合は話し合いで任意に定めても構いません)。
2人の話し合いで財産分与の内容や分配割合が決められないときは、調停を申し立て、裁判所を仲介して話し合うことも可能です。
離婚原因が性格の不一致であっても、この基本的な考え方に変わりはありません。

離婚裁判で相手が離婚を拒否し続けた場合、離婚は認められないのでしょうか。

いくら相手が「離婚したくない」と言い張っても、裁判で離婚を認める判決が出され、判決が確定すれば、離婚は成立します。
ただし、裁判で離婚を認める判決を出してもらうためには、離婚原因が法定離婚事由に該当することを主張・立証し、裁判官に認めてもらわなければなりません。しかし、単なる性格の不一致は、法定離婚事由のいずれにも該当しません。そのため、性格の不一致のみを離婚原因とする場合、裁判で離婚を認める判決を勝ち取ること自体が、かなりハードルが高いといわざるを得ません。
この点、性格の不一致のほかに、「相手が不倫している」「DVやモラハラの被害を受けている」などの法定離婚事由に該当し得る事情があるのであれば、裁判でも離婚が認められる可能性が高まります。

性格の不一致で離婚した場合のデメリットはありますか?

まず、基本的に、性格の不一致を離婚原因とする場合には相手に慰謝料を請求することはできません。「相手が自分と異なる価値観である」ということは、慰謝料を請求する根拠となる「違法な行為」とはいえないためです。
また、性格の不一致だけを離婚原因とする場合、裁判では離婚を認めてもらえない可能性が高いため、できるだけ話し合いや調停の段階で決着をつける必要があります。もし相手に離婚を拒否されたり、条件面で折り合いがつかなかったりする場合には、話し合いが年単位で長期化する可能性もあります。
そのため、離婚を申し出る側が、離婚を成立させるため、「解決金」という名目で相手に対し一定の金銭を支払うことで、離婚問題の解決を図るという手段も考えられます。しかし、その場合は解決金の出費が嵩むというのも、デメリットの1つであるといえるでしょう。

性格の不一致で離婚したい場合は弁護士にご相談ください

性格の不一致を理由に離婚する場合、裁判では離婚が認められない可能性が高いため、なるべく話し合いの段階で解決させることが望ましいといえるでしょう。しかし、夫婦での話し合いが上手くいかずに膠着状態に陥ってしまえば、話し合いが年単位で長期化してしまうリスクも考えられます。
この点、弁護士などの第三者を話し合いに介入させることで、状況が好転し、そこから話し合いが一気にスムーズに進むケースはよく見受けられます。
性格の不一致を理由に離婚を検討されている方、なかなか話し合いが上手く進まずお悩みの方は、一度、離婚事件に強い弁護士に相談されると良いでしょう。
弁護士法人ALGには、離婚などの家事事件を専門とする経験豊富な弁護士が多数在籍しております。ぜひ、お気軽にご相談ください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。