監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
民法には、相続人が被相続人の生前、財産の維持・増加のために特別に寄与した場合、寄与分として、被相続人の遺産を多く受け取ることができるという制度を用意しています。
ここでは、寄与分に関することをご説明いたします。
目次
寄与分の主張に必要な要件
寄与分を主張するためには、①相続人であること、②特別の寄与をしていること、③被相続人の財産が維持・増加されたこと、④相続人の寄与(①・②)と被相続人の財産が維持・増加されたこと(③)との間に因果関係があることが必要となります。
特別寄与料について
民法改正により、「特別寄与料」(民法1050条)が新設され、相続人以外の者の寄与分が認められるようになりました。すなわち、相続人の配偶者が被相続人の介護を行っていた場合などのことを指します。
寄与分はどう主張したらいい?
寄与分の主張は、遺産分割協議や遺産分割調停の場で主張しなければなりません。
そして、「寄与分が欲しい」という主張では認められず、自らの寄与により、被相続人の遺産をどのくらい維持・増加させたのかを主張し、「〇〇万円を求める」等具体的な金額を請求しなければなりません。
証拠がないと寄与分の主張は認められにくい
寄与分を認めてもらうためには、「寄与分が欲しい」だけ主張すればいいのではなく、自らがどれだけ寄与したのかという証拠を提出する必要があります。なぜなら、他の相続人からすれば、寄与分により遺産が減少することになり納得されない可能性があるからです。
寄与分の証拠になるもの
寄与分を主張する際の証拠として、以下のような証拠が考えられます。
介護していた場合(療養看護型)
療養看護型とは、相続人が一般に相続人として期待される以上の療養看護を被相続人に対して行った場合のことをいいます。寄与分を証明するための証拠としては、診断書、カルテ、介護ノート等相続人が被相続人の療養看護を行っていた証拠等が考えられます。
事業を手伝っていた場合(家事従事型)
家事従事型とは、被相続人が事業等を営んでおり、相続人が無償若しくは通常の補償より著しく低額な給料で、事業を手伝っていた場合のことをいいます。この場合、寄与分を証明するための証拠としては、被相続人の確定申告書、寄与した相続人の給料明細や事業を手伝った証拠等が考えられます。
お金を出していた場合(金銭出資型)
金銭出資型とは、相続人が被相続人のために、お金を支出した場合のことをいいます。この場合、寄与分を証明するための証拠としては、被相続人の預金通帳、相続人の預金通帳や振込通知書等、相続人から被相続人へお金が動いたという証拠等が考えられます。
生活費を負担していた場合(扶養型)
扶養型とは、相続人が一般に相続人として期待される以上の扶養を被相続人に対して行った場合のことをいいます。寄与分を証明するための証拠としては、家計簿、レシートや預金通帳等相続人が被相続人に対して扶養していた証拠等が考えられます。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
寄与分主張の流れ
ここでは、寄与分の主張についての流れをご説明いたします。
遺産分割協議での主張
まずは、寄与分に関する協議において、自己の寄与分を主張することになります。
その際、自己の寄与分を証明する証拠を提示しておきましょう。なお、相続人の配偶者が寄与していた場合には、相続人の配偶者が寄与分を主張するのではなく、相続人が寄与分を主張した方が円満に話し合いができるかもしれません。
合意が得られない場合は調停で主張する
相続人間での協議で、寄与分の合意が得られなかった場合には、遺産分割調停や、寄与分を定める調停を申し立て、調停内で話し合うようにしましょう。調停内における話し合いで寄与分の金額を合意することができれば、調停を成立させることができます。
調停不成立の場合は審判に移行する
遺産分割調停の中で話し合ったとしても合意することができなかった場合、遺産分割審判に自動的に移行することになります。また、寄与分のみを定める調停の場合には、自動的に移行するのではなく、別途申立てが必要となります。
遺産分割審判の場合、裁判官が当事者の主張やその証拠等を精査し、客観的に判断することになります。
寄与分の主張が認められた事例・判例
被相続人が認知症になり、常時見守り等の身上監護を行ったとして、相続人の一人が寄与分を主張した裁判例(大阪家裁平成19年2月8日)で、1日あたり8000円程度、合計876万円の寄与分が認められています。
寄与分の主張は認められにくいので弁護士にご相談ください
寄与分は、相続人間で争いになることが少なくなく、寄与した相続人の方の主張が認められるのは容易ではありません。さらに、調停や審判において寄与分を主張する場合、法的な主張が不可欠となってきます。専門知識を有する弁護士に依頼することで、ご依頼者様の状況に応じた寄与分の主張立証をすることが可能となります。
弊所では、これまで寄与分に関する問題を多く取り扱ってきました。寄与分のみならず、相続問題に強い弊所の弁護士であれば、少しでもご依頼者様のなることができると考えています。
お気軽にお問い合わせください。
-
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)