監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
遺留分に関するトラブルは、遺言書がある場合がほとんどです。遺言書の内容に、「遺産を一人に集中させる」等の内容があった場合には、遺留分に関する問題が生じることになります。
ここでは、遺留分について、ご説明いたします。
目次
遺留分とは
遺留分とは、一定の法定相続人に認められる最低限の遺産の取得分のことをいいます。
遺留分制度は、被相続人の財産処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸利益との調整を図るものです。
遺留分の請求が認められている人
遺留分は、すべての法定相続人に認められているものではなく、遺留分の請求が認められている人が限定されています。
遺留分の請求が認められている人は、配偶者と子どもと親であり、それらの代襲相続人も含まれています。
遺留分の請求が認められていない人
遺留分の請求が認められている人が限定されているため、遺留分が認められていない人については、以下の通りです。
兄弟・姉妹
法定相続人の中でも、被相続人の兄弟姉妹は、遺留分の請求が認められていません。それは、兄弟姉妹は、配偶者や直系尊属に比べて、被相続人との関係が薄いと考えられているからです。
遺留分制度は、遺族の生活を保障することに目的があるため、別に生計を立てている可能性が高い兄弟姉妹の生活を保障する必要性が低いといえます。
また、兄弟姉妹について、代襲相続は生じないことに注意が必要です。
相続放棄した人
相続放棄をした人には、遺留分が認められていません。相続放棄は、被相続人の相続財産に関する一切の権利義務を放棄するという方法です。相続放棄が認められると、初めから相続人ではなかったことになりますので、遺留分についても認められないということになります。
また、相続放棄をした場合、代襲相続は生じないことになっているので、注意が必要です。
相続欠格者にあたる人
相続欠格者に該当する人には、遺留分が認められていません。相続欠格者とは、民法891条各号に該当する事由があった場合に、被相続人の相続人になることができなくなった者のことをいいます。民法891条には、被相続人または先順位等の相続人を死亡させたりして刑に処せられた者や詐欺または強迫により、被相続人の遺言書させたりした者が記載されています。
民法891条各号に該当する行為を行った人には、遺留分が認められていません。
また、相続欠格者がいる場合でも、代襲相続は生じるため、代襲相続人は遺留分侵害額請求権を行使することができます。
相続廃除された人
被相続人から相続人の廃除をされた人には、遺留分が認められていません。
推定相続人が非行を行った場合や被相続人に対する虐待若しくは重大な侮辱をした場合に、被相続人の意思に基づいて、当該行為を行った相続人の相続資格を剥奪することができます。
相続廃除された人は、被相続人から相続する権利を奪われるため、遺留分も認められていません。また、相続廃除された場合でも、代襲相続は生じるため、代襲相続人は遺留分侵害額請求権を行使することができます。
遺留分を放棄した人
遺留分を放棄した場合、その人に遺留分は認められません。
遺留分を放棄したとしても、相続人の地位を放棄するということにはならないため、遺産分割協議等に参加することは可能です。
遺留分を放棄した場合、代襲相続は生じますが、代襲相続人は、遺留分減殺請求権を行使することはできないので注意が必要です。
遺留分侵害額請求権と代襲相続
代襲相続とは、相続となる者が相続開始以前に死亡してしまったり、相続欠格や廃除等の一定の事由によって相続権を失った場合、その相続人の子ども等の直系卑属がその相続人に代わって、相続することをいいます。
代襲相続された人が遺留分の放棄をしていない限り、代襲相続した人は、遺留分侵害額請求権を取得することができます。
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遺留分の割合
遺留分の割合については、民法1042条1項が規定しており、直系尊属のみが相続人になる場合には3分の1、それ以外の場合には2分の1と定められています。
上の表の通り、相続人が誰であるかによって、個別的遺留分は異なってきます。
遺留分の計算方法
個別的遺留分は、法定相続分×遺留分割合によって算出されます。
例えば、相続人が妻と子供2人である場合、妻の遺留分は、法定相続分1/2×遺留分割合1/2=1/4となり、子供2人の遺留分は、法定相続分1/4×遺留分割合1/2=1/8となります。
それぞれの遺留分額については、「基礎財産×個別的遺留分」により算出され、基礎財産は、「積極財産+贈与財産の価額-消極財産」により算出されます。
遺留分を貰うには、遺留分侵害額請求を行う
ご自身の遺留分が侵害されている場合において、遺留分を受け取るためには、侵害の対象となる遺贈・贈与の受遺者・受贈者及びその包括承継人に対して、遺留分侵害額請求権を行使する意思表示をしなければなりません。遺留分侵害額請求権の行使については、必ずしも訴えの方法によることは要しません。
また、遺留分侵害額請求権は、相続開始及び減殺すべき遺贈等があったことを知ったときから1年以内に行使しないと、時効により消滅してしまいますので、注意が必要です。
遺留分を渡したくない場合にできること
遺留分を侵害してしまった場合、遺留分を渡さない方法や遺留分を減らす方法はあるのでしょうか。
結論から述べますと、遺留分は法律で認められた権利であるため、遺留分を渡さない方法や遺留分を減らす方法はありません。
遺留分の権利者が亡くなった場合はどうなる?
遺留分の権利者が亡くなってしまった場合、遺留分侵害額請求権は、遺留権利者の相続人が相続することになります。相続人は、被相続人の権利義務をそのまま受け継ぐため、遺留分権利者が有していた遺留分の割合をそのまま受け継ぐことができます。
遺留分権利者が亡くなる前に、遺留分の放棄をしていた場合、遺留分権利者の相続人は遺留分を相続することができず、遺留分減殺請求権を行使することはできません。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)