監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
離婚裁判はどのような流れで進み、各段階でどういった手続が必要になるのでしょうか。離婚裁判の流れについて説明します。
目次
離婚裁判の流れ
離婚裁判は、0.離婚調停をする、1.家庭裁判所に訴状を提出する、2.第1回口頭弁論期日の通知が届く、3.被告が答弁書を提出、4.互いに準備書面や証拠を提出して主張・立証を行う、5.本人尋問や証人尋問を行う、6.判決、という流れになります。次の項目で詳しく解説します。
離婚裁判を提起する前に
離婚裁判を提起する前になすべきこととしては何があるでしょうか。
まず、離婚裁判を提起する前には原則として離婚調停を行わなければならないことが法律で定められています(調停前置主義)。裁判を行う前に、まずは裁判所での話合いである調停手続により離婚について協議して決定できるのであればそれが望ましいため、離婚調停を行った(が離婚が成立しなかった)ことが要件となっています。
また、離婚裁判を提起するにあたっては、法定の離婚事由の有無について検討が必要です。夫婦間で離婚について合意することにより離婚が成立する協議離婚や調停離婚と異なり、離婚裁判では、第三者である裁判所・裁判官が法律に定められた離婚事由の有無によって離婚を認めるか否かを判断するためです。
また、自身(原告)が有責配偶者にあたるか否かの検討も必要です。自身が浮気した、相手に暴力を振るったなど、夫婦関係の破綻について責任を負うようなことを行った場合(有責配偶者)、その他の事情にもよりますが、有責配偶者からの離婚請求は裁判で認められないことが多いためです。
家庭裁判所に訴状を提出する
上記のような手続や検討の後、家庭裁判所に訴状を提出します。離婚裁判を行う裁判所は、夫婦どちらかの住所地を管轄する家庭裁判所です。訴状とともに提出する必要のある書類等については次の項目で解説します。
訴状提出の際に必要な書類と費用
- 訴状(2部)
訴状のひな形は裁判所のHPから入手することができます。 - 収入印紙、郵便切手
収入印紙の額は請求の内容によって異なり、またどこの裁判所かによって郵便切手の金額も異なるため、それぞれ裁判所に確認しましょう。 - 夫婦の戸籍謄本及びそのコピー
夫婦が現状として婚姻関係にあることを示すために必要となります。 - 年金分割のための情報通知書
離婚に際して年金分割を求める際には必要となります。 - 証拠となる源泉徴収票や預金通帳などのコピー
これらは裁判が始まった後から提出することもできます。
第一回口頭弁論期日の通知が届く
訴状提出後、裁判所から夫婦それぞれに第1回口頭弁論期日の通知を含む郵便物が届きます。その郵便物には第1回口頭弁論期日の日時を記した呼び出し状のような書類が封入されるほか、被告に対しては、原告が提出した訴状や、提出していれば証拠も一緒に届きます。
被告が答弁書を提出
上記の裁判所からの郵便物には、被告は訴状に対する答弁書を作成して提出するようにと書かれた書類も入っています。被告は書類上指定されている日までに、原告からの訴状に書かれている請求や主張に対する回答・反論を記載した答弁書を提出することとなります。
口頭弁論を行う
訴状提出から5~6週間ほどで、第1回目の口頭弁論が行われ、裁判が始まります。口頭弁論とは原告・被告それぞれの主張・反論を述べたり、証拠を提出したりするための機会です。以後、1~2か月に1回のペースで期日が開かれることになります。以後の審理の流れは次の項目で詳しく解説します。
審理の流れ
第2回目以降の期日は、公開の法廷で行う口頭弁論という手続ではなく、裁判所の非公開の部屋で裁判官と当事者のみで行われる弁論準備という手続で行われることが多くなっています。この弁論準備を何回か重ねる中で、原告・被告それぞれの主張を踏まえて離婚問題の争点が整理され、争点についての判断に必要な証拠の提出などを経て、裁判官による事実認定がなされることになります。
離婚裁判における事実の認定
上記のように離婚裁判では不貞やDVなどの離婚事由が存在することの主張・立証が求められますし、また、離婚に伴う慰謝料(慰謝料の発生原因は上記の浮気やDVなどの離婚事由と重なることも多いです。)を請求する場合や親権、養育費、財産分与などに争いがある場合にはそれらについての主張や証拠も求められます。たとえば、被告の不貞を理由として離婚を求め、また慰謝料も請求するというような場合、その証拠としては、密会や肉体関係があったことを示す探偵の報告書、ホテルへの出入りの写真、ラインやメールのやりとりなどが挙げられます。
証拠調べ
原告・被告それぞれの主張や証拠が出そろうと、証拠調べが行われ、原告・被告それぞれへの本人尋問が行われることになります。夫婦以外で争点となっていることについてよく知る人物がいる場合には、証人として尋問を行うこともあります。詳しくは次の項目で解説します。
本人尋問や証人尋問
・(行う場合)証人尋問
主尋問(その証人を請求した側の代理人)→反対尋問(証人を請求したのと反対側の代理人)→裁判官からの質問
↓
・原告本人尋問
主尋問(原告代理人)→反対尋問(被告代理人)→裁判官からの質問
↓
・被告本人尋問
主尋問(被告代理人)→反対尋問(原告代理人)→裁判官からの質問
という流れで行われることが多いです。主尋問では、その証人や本人の経験・認識したことについての証言(質問に対する回答)が出てきます。反対尋問では、主尋問での証言内容の信用性を崩すべく質問がなされます。
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離婚裁判の判決
尋問・証拠調べが終わると口頭弁論が終結され、判決が出されることになりますが、尋問の問答内容の反訳が作成されたり、その内容も反映した原告・被告それぞれの最終準備書面が提出されたりすることもあり、口頭弁論終結から判決が出るまでの期間は1~2か月ほどとなることが多いです。判決は、裁判所から郵送されます。離婚裁判は判決以外によって終了することもあり、次の項目で解説します。
和解を提案されることもある
裁判の手続が進む中で、裁判官から和解の提案があることもあります。和解の提案は、原告・被告それぞれの主張や証拠が出そろい、裁判の結論について裁判官の中である程度の心象が固まってきたときや、尋問後、判決が出る前など、いくつかのタイミングでなされる可能性があります。裁判官からの勧めに限らず、当事者間で話し合い、和解をすることもできます。和解は、裁判開始後、判決が出るより前であれば、いつでもすることができます。
訴えの取下げにより裁判終了
訴えの取下げにより裁判が終了することもあります。訴えを取り下げることができるのは訴えを起こした原告からのみです。また、被告から答弁書の提出や口頭弁論への出席などの応答があった後は、取下げについて被告の同意が必要となります。
判決に対して控訴できる
判決の内容に不服がある場合、原告からも被告からも控訴ができます。控訴は、判決が送達された日から2週間以内に控訴状を提出して行います。原告・被告のいずれからも控訴がないまま期間を経過すれば、判決は確定します。
判決後の流れ
離婚の判決が確定すると、10日以内に離婚届を提出する必要があります。離婚届については、協議離婚の場合のように夫婦の双方が署名する必要はなく、夫婦の一方(多くの場合は原告)が必要事項を記載したものを、判決の謄本とともに提出します。
離婚裁判にかかる期間
離婚裁判にかかる期間の目安は、半年から2年と比較的幅のあるものとなっています。これは、事案により離婚原因の有無や親権、養育費や慰謝料など、何について争いとなるかが異なり、それによって裁判にかかる期間も大きく変わってくるためです。
よくある質問
離婚届を提出した後に必要な手続きにはどのようなものがありますか?
離婚届を提出した後に必要な手続としては、自分や子どもの名字が変わる場合にはその手続が必要となります。自分の名字については戸籍の届け出だけで済みますが、子どもの名字の変更には家庭裁判所での手続が必要となります。また、子どもの扶養や保険証を変更する場合にはその手続なども必要となります。
離婚に合意しており養育費のみ争う場合はどのような流れで離婚裁判は進みますか?
このような場合、双方が争点である養育費に関する主張・立証を行い、源泉徴収票等の収入資料や、一般的な養育費よりも増額または減額を求める場合にはその主張に関する資料を提示し、裁判所が養育費の金額や支払期間などを含む離婚の判決を出すことになります。もっとも、養育費以外の点で争いがないのであれば、離婚は協議離婚や調停により成立させ、養育費についてのみ、養育費の調停・審判により決定することもできます。審判の手続は裁判に近く、双方の主張や証拠に基づき裁判官が判断をします。
離婚裁判が不成立になってしまったら離婚は諦めるしかありませんか?
法律で定められた離婚事由に該当する事情が認められないなど、裁判離婚が不成立となる場合もあります。このような場合でも、離婚をあきらめなければならないわけではありません。離婚裁判後に長期間の別居が継続されたなど、離婚事由として認められそうな事情が新たに生じたとき、改めて離婚裁判を提起し、離婚事由があると認められれば、離婚することができます。
離婚裁判の流れをケース別で知りたい場合は弁護士にご相談ください
一口に離婚裁判といっても、個々の夫婦の結婚生活に関わる事情はさまざまであり、どのような理由で離婚を求め、どのような主張をするべきか、裁判はどのような流れになりそうか、判決までにどれぐらいの時間がかかりそうかなどの事情は千差万別です。離婚裁判の流れをケース別で知りたい場合は、弁護士にご相談ください。-
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)