子供を連れて別居するときに注意すべきこと

離婚問題

子供を連れて別居するときに注意すべきこと

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

配偶者との価値観の違い等を理由に離婚を検討したときに、ひとまず別居を選択する方は少なくありません。子供がいる方であれば、子供を連れて行くべきか、連れて行った場合にどのような手続きをすべきか悩まれることでしょう。
子供を連れて別居をすると、その後の監護実績を積むことができることから、離婚時の親権の獲得において有利になるケースが多いです。しかし、一方で子供を無理に連れて別居する行為が問題視されており、このような行為をすると、状況によっては親権の獲得において不利になりかねません。 そこで、この記事では、子供を連れて別居するときの注意点や、子供を連れ去る行為のリスク等について解説します。

離婚しないで子供を連れて別居をするときの注意点

離婚せず、子供を連れて別居するときには、以下の事項に注意しましょう。

①別居後の養育環境
②婚姻費用、養育費
③児童手当、児童扶養手当
④面会交流

これらについて、以下で解説します。

別居後の養育環境

子連れ別居をすると、新たな家を借りたり、実家に移り住んだりするのに伴って、保育園や幼稚園、学校を転園・転校しなければならないこともあります。
公立の学校に転校させるときには、住民票を異動しなければなりません。住民票の異動が遅れてしまうと、転校の手続きも滞ってしまい、子供の成長に悪影響を及ぼしてしまうため注意しましょう。

婚姻費用や養育費

婚姻費用とは、夫婦とその子供が必要とする生活費のことです。別居しているとき等に、通常は夫婦のうち収入の少ない側が多い側に請求することができます。
離婚を視野に入れて別居する場合、離婚が成立するまでは、子供と一緒に暮らす親の方は、収入次第で子供の養育費に加え、自身の生活費を婚姻費用として受け取れます。
離婚が成立した後は、子供と一緒に暮らす方の親は、他方の親から子供の養育費を受け取ることができます。

児童手当、児童扶養手当

児童手当は、原則として夫婦のうち収入が多い側が請求者となります。そのため、子連れ別居をしても、これまで配偶者が児童手当を受け取っていた場合には、そのまま配偶者に振り込まれ続けることになります。児童手当を受け取るためには、世帯分離を行い、紛争中であることを役所に説明して、振込先を変える必要があります。
また、児童扶養手当はひとり親家庭を対象に支給されるものなので、離婚する前に受け取るのは難しいですが、DVの保護命令を受けたケース等については離婚前であっても受け取りが可能です。

面会交流

まだ離婚する前であっても、子連れ別居をしているのであれば、離れて暮らしている親と子供を会わせる「面会交流」を行う必要があります。それは、面会交流が子供の成長にとって重要であると考えられているからです。
別居をするほど関係が悪化しているのであれば、配偶者に対しては良い感情を抱いていないことが多いと思いますが、面会交流は監護していない親の権利であると同時に、子供の権利でもあるため、方法や頻度について取り決めて、その通り実行するようにしましょう。
ただし、「配偶者が子供に虐待やモラハラを行っていた」というように、子供を配偶者と会わせるべきでない事情があるときは、面会交流を拒否して構いません。

別居と子供の連れ去り

夫婦の一方が、もう一方の同意なく、子供を連れ出して別居してしまうことを「連れ去り別居」と呼ぶことがあり、問題視されています。
離婚時に親権について争うことになった場合、裁判所はそれまでの子供の監護実績を判断材料のひとつにします。そのため、少しでも監護実績を積み上げようと、離れて暮らす方の親が子供を学校帰り等に待ち伏せして、連れ去ってしまうケースがあるのです。
このような連れ去り別居は、正当な理由がない限り、違法行為に該当する可能性があります。また、親権を争う裁判においても、連れ去った側は親権者としてふさわしくないと判断されることになります。

違法な連れ去り別居と判断されないための注意点

連れ去り別居には、「違法だと判断されやすいケース」と、「正当だと判断されやすいケース」があります。以下にそれぞれの具体例を挙げたので参考にしてください。これ以外の場合も存在しているので、子供を連れて別居する際には、慎重に行うようにしましょう。

【違法だと判断されやすい】

  • 学校帰りの子供を待ち伏せして連れ去った
  • 面会交流後に子供を返さなかった

【正当だと判断されやすい】

  • 相手方が子供に虐待やモラハラ等を行っていた
  • 相手方が自身に対してDVやモラハラ等を行っており、子供に悪影響を及ぼすおそれがあった

別居中に子供を連れ去られた場合

すでに配偶者と別居しており、子供と一緒に暮らしていたにもかかわらず、配偶者によって子供を連れ去られた場合には、裁判所に「子の引き渡し審判」を申し立てましょう。また、それにあたって、「審判前の保全処分」と「監護者指定審判」を併せて申し立てるようにしましょう。
なお、子供を連れ去られたからといって、自力で連れ戻すような行為をすると、誘拐とみなされて違法行為に該当してしまうおそれがあります。相手方が先に連れ去りを行っているため、理不尽に思えるかもしれませんが、後の親権争いで不利な立場にならないためにも、上記の法的手続きを踏むようにしましょう。

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虐待・モラハラ加害者との別居

子供が配偶者から虐待やモラハラ等を受けている場合には、すぐに子供を連れて別居するべきです。しかし、相手方の虐待行為等を立証できなければ、連れ去り別居とされて親権の獲得等において不利な事情として考慮される可能性があります。
そこで、虐待行為等の証拠をなるべく確保することや保護命令を受けること、配偶者暴力相談支援センター等の公的機関に相談することが重要です。また、離婚の話し合いについては直接は行わずに、弁護士等の専門家に依頼するべきでしょう。

別居後の子供とのかかわり方

別居はそれまでと生活環境が大きく変わるため、子供にとって大きな負担を与えてしまうケースが少なくありません。
転居や離婚に向けた手続き、仕事・家事等で多忙なことかとは思いますが、できる範囲で子供との時間を多くとるようにして、疑問や不安を吐き出せるようにしましょう。別居の理由等について聞かれたら、子供に責任がないことを伝え、今後の生活について安心させるようにすることが大切です。
たとえ自身は配偶者のことを嫌っていたとしても、子供にとっては親であり、今後も面会交流を行っていけるよう、配偶者の悪口を言わないように気をつけましょう。

よくある質問

家庭内別居する際に子供に対して注意することはありますか?

家庭内別居をすると、子供は夫婦関係が良好でないことを感じ取り、自分に責任があるのではないかと考えて、強いストレスを受けるケースがあります。その影響により、常に両親の顔色や機嫌をうかがうようになったり、言いたいことを言わなくなったりするおそれがあります。また、精神的なダメージによって体調を崩すおそれや、親の気を引くために非行に走るおそれもあります。
家庭内別居をするときには、子供に責任がないことや、両親から子供への愛情は変わらないことを伝え、子供の状態を注意深く観察して、心のケアを最優先にする必要があります。

別居中から自分の扶養に子供を入れておいたほうがいいですか?

扶養には税法上のもの(扶養控除により税金が減額されるもの)と、健康保険のものがあります。
税法上の扶養は、入っておけば税金が減額される可能性があるため、入れておいた方が良いでしょう。また、健康保険の扶養についても、別居が続くと配偶者の健康保険における認定を取り下げられるリスクがあるので、自身の扶養に入れておくのが無難です。
しかし、子供の扶養を配偶者から自分に変更するのは、相手方の協力がないと難しいケースもあります。相手方の協力が得られない場合は、第三者や専門家に依頼する等して、相手方を説得する必要が出てくるでしょう。

配偶者に黙って子供を連れて別居をした場合は慰謝料請求されますか?

配偶者の合意を得ないまま子連れ別居をした場合には、慰謝料を請求されるおそれがあります。なぜなら、夫婦には同居する義務があり、別居する正当な理由がなければ「悪意の遺棄」とみなされるリスクがあるからです。
悪意の遺棄は、裁判で離婚を請求できる理由(法定離婚事由)のひとつとされています。そのため、自身の行為が悪意の遺棄に該当すると判断されれば、不利になるので注意しましょう。

子供を連れての別居が違法とならないためにまずは弁護士にご相談ください

子供を連れて別居することを考えている方は、事前に弁護士にご相談ください。
愛する子供と暮らし続けるために、子供を連れて別居しようと思うのは当然のことかと思いますが、強引なやり方で子連れ別居をすると、親権の獲得の際に不利になる場合があります。
弁護士であれば、子連れ別居を実行する際の注意点等をアドバイスすることができます。また、配偶者に子供を連れ去られてしまった場合には、迅速に法的に適切な対処をすることができます。
子供を連れての別居でお困りごとがあるようでしたら、弁護士法人ALGにお気軽にお問い合わせください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。