監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
夫婦の一方配偶者が離婚したいと考えていても、もう一方の配偶者がやり直したいと考えている場合には、協議離婚や離婚調停を成立させることはできませんが、裁判によって離婚できる可能性があります。しかし、法定離婚事由がなければ、裁判でも離婚が認められません。その場合には、長期間の別居によって、夫婦の婚姻関係が破綻しているという状況を作出する必要があります。
ここでは、離婚する前の別居について、離婚しやすくなる期間等について解説します。
目次
婚姻期間の破綻が認められる別居期間の目安は3年~5年
ある程度の期間に渡って別居していることは、裁判において婚姻関係の破綻が認められる要素となり得ます。別居期間が何年になれば離婚が認められるのかは個別の事情によりますが、一般的に別居期間が3年~5年になれば婚姻関係が破綻していると認められる可能性が高くなります。別居によって婚姻関係が破綻していることは、「婚姻を継続し難い重大な事由」として法定離婚事由と認められます。
つまり、相手方に不貞行為や悪意の遺棄、あるいはDVやモラハラといった、法定離婚事由に該当する事情がなくても、別居期間が長期間に及んだ場合には、それによって離婚が認められる可能性が高まるということです。そのため、離婚したいと考えたときには別居を検討するべきであるといえるでしょう。
相手が有責配偶者であれば、より短い別居期間で離婚できる可能性も
相手方が不貞行為やDV・モラハラ等を行っており、有責性があるケースでは、別居期間が3年未満であっても離婚が認められる可能性があります。もちろん、相手方が不貞行為を繰り返しているケース等では、それだけで法定離婚事由になりますが、1回の不貞行為だけで離婚が認められる可能性は低いのが実態です。そこで、相手の不貞行為が、別居が長期間に及んだ決定的な要因とする方法が考えられるのです。
不貞行為やDV等をする配偶者とは、すぐに別れてしまいたいと思う方も多いでしょう。相手方がそういった言動をする有責配偶者である場合には、2年程度の別居期間であっても裁判によって離婚することが可能なケースがあります。
実態としては別居期間1年未満の離婚が多い
別居を経て離婚した夫婦のうち、別居期間が5年以上に及ぶケースは少なく、1年以下であるケースがかなりの割合を占めます。これは、日本では裁判によって離婚する夫婦は珍しく、協議離婚する夫婦が大半であることが影響していると考えられます。加えて、別居に踏み切ると本気で離婚したいのだという意思を伝えられるため、協議離婚が成立しやすくなることも影響しているといえるでしょう。
仮に、別居を開始した当初は相手方が離婚に反対していたとしても、別居期間が延びるにしたがって、裁判によって離婚できる可能性が高まります。そのため、別居期間が延びれば相手方が離婚に応じる可能性が高まります。
離婚までの別居期間が長期に及ぶケース
離婚が成立するまでに、別居が長期間になりやすいケースについて、以下で解説します。
ただの夫婦喧嘩の場合(性格の不一致)
この場合の別居期間の目安は3年~5年程度です。ただし、暴力を伴う夫婦喧嘩だった等の事情があれば、どちらがどの程度の暴力を振るったのか等、詳細な経緯によって判断されることになるでしょう。
口喧嘩で終わる等、単なる性格の不一致と評価されるような状況であった場合には、別居期間はなるべく長い方が、裁判によって離婚が認められる可能性が高くなるでしょう。
自身が有責配偶者の場合
有責配偶者が離婚を求めるときの別居期間の目安は、最低でも7年~8年程度であり、なるべく10年以上であることが望ましいです。ただし、有責配偶者からの離婚請求について裁判所は消極的な意見を持っているため、自身が有責配偶者の場合には別居期間が長いだけでなく、離婚によって相手方が過酷な状況に陥らないことや、未成熟の子供がいないといった条件を満たさなければ離婚請求は認められない可能性が高くなります。そのため、別居期間を引き延ばすだけでなく、別居中は婚姻費用や養育費を支払うようにして、子供の養育費を支払う必要なくなるまでは裁判を待つ等することが望ましいでしょう。
そもそも相手が離婚に同意していない場合
相手方が離婚に同意せず、協議や調停によって解決する見込みが乏しい状況では、別居期間はなるべく長期間である方が望ましいでしょう。なぜなら、最終的に裁判によって決着する必要があるため、裁判所に法定離婚事由があると認めてもらわなければならないからです。別居期間が3年程度の場合、婚姻関係が破綻していると認められる可能性があるとはいえ、まだ夫婦としてやり直せると反論されるリスクが高いので、できるだけ別居期間を引き延ばしておくことをおすすめします。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
別居は相手の同意を得てから
相手方との離婚を考えたとしても、勝手に家から出て行って別居を開始するのは望ましくありません。というのも、夫婦には同居義務があり、一方的に別居を開始してしまうと、悪意の遺棄をしたとみなされてしまうリスクが生じるからです。相手方によるDVやモラハラ等により、今すぐに別居しなければ心身が危険な状況であるならば一刻も早く別居するべきですが、そうでなければ別居するのは相手方の同意を得てからにするのが望ましいでしょう。
別居期間が長い場合、親権はどうなる?
別居期間が長い場合、子供の親権は、共に暮らして監護していた親が獲得する可能性が高いです。これは、子供を監護した実績がより多い方が有利になるからであり、監護していたのが父親であるか母親であるかは関係ありません。また、子供の監護状況の現状を維持することを重視する原則(継続性の原則)により、子供の監護状況を変化させるよりも、現在の生活をそのまま続けることが子供の利益になると考えられていることも、共に暮らしている親にとって有利に働きます。
単身赴任は別居期間に含まれる?
通常の場合、単身赴任は別居期間に含まれません。なぜなら、仕事の都合で別居することは、離婚の準備としての別居とは事情が異なるからです。
しかし、単身赴任中に離婚したくなるケースもあるでしょう。そのため、単身赴任中に離婚したくなったときには、証拠が残るように離婚を求める必要があります。例えば、メールを送って離婚の意思を伝える等の方法が考えられます。状況によっては、内容証明郵便を用いることも検討しましょう。
離婚に必要な別居期間を知りたい方は弁護士にご相談ください
離婚するために別居をしたいと考えている方は弁護士にご相談ください。また、すでに別居を開始している方からのご相談も承っています。
別居が長期間に及んでいることは、裁判によって離婚を請求するときに決定的な事項となるだけでなく、そのことを根拠として交渉すれば、裁判をせずとも協議離婚等を成立させられる可能性があります。しかし、別居を開始したときの状況や別居期間中の状況によっては、相手方から悪意の遺棄をされたと主張されてしまい、離婚を成立させられないおそれがあります。そのため、相手方の主張を予防し、なるべく短期間で確実に離婚を成立させるために、多くの知識を有し実績も豊富な弁護士への相談をぜひご検討ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)