監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
「身内を養子に迎えると相続税が減額される」という話を聞いたことがあるかもしれません。確かに、養子制度を活用することで税負担を大幅に抑えられるケースは多々存在します。
しかし、法的な仕組みを正しく把握しないまま手続きを進めてしまうと、親族トラブルや税務調査での否認といった予期せぬ不利益を被るリスクもはらんでいます。
本記事では、養子縁組による節税のカラクリから、実践される主なケース、事前に知っておくべき注意点や具体的な手続きまで分かりやすく解説します。
養子は相続税対策になる?
養子縁組は有効な相続税対策となり得ます。法律上の養子となった人物は、実子と同じ法定血族としての権利を有するためです(民法727条)。
相続税については、下記の金額は基礎控除として非課税となります。
「3000万円+600万×法定相続人の人数」
また、死亡保険・死亡退職金等も、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となりますが、下記の金額は非課税となります。
「500万×法定相続人の人数」
このように、養子縁組によって、法定相続人の人数が増えることにより、税額計算の基準となる各種控除枠が広がり、結果として納めるべき相続税全体を押し下げる効果が生まれます。
相続税対策として行われる養子縁組にはどんなものがある?
孫と養子縁組
本来、財産が次の世代へ引き継がれる際は親から子(第1回)、子から孫(第2回)と、2度の相続を経るたびにそれぞれ相続税が課せられます。
ここで孫を養子にしておくことで、子を介さず直接、財産を移転できるため、結果として、1世代分の税負担を省くことが可能になります。
また、上記のように孫を養子とすることで法定相続人の人数が増加し、各種非課税枠が拡大します。
しかし、後述するように、被相続人の養子になった孫は、相続税が発生する場合には、相続税の2割加算の対象となります(相続税法18条)。
嫁と養子縁組
子の配偶者(嫁)であっても、遺言等がない限り相続権は一切認められません。
こうした義理の家族を養子に迎えることで、正当な権利として財産を遺せるようになると同時に、上述したように、法定相続人の人数を増やして全体の税負担を軽減できます。
なお、孫を養子縁組する場合と異なり、子の嫁を養子縁組をする場合には、相続税の2割加算の対象となりません。
相続税対策に養子縁組することのメリット
相続税対策に養子縁組をすることのメリットをまとめると、下記の通りとなります。
- (1) 基礎控除額の底上げ
非課税となる基礎控除額は「3,000万円 +600万円 × 法定相続人の数」で決まります。
養子縁組することで法定相続人が1人増えれば、控除額もそのまま600万円上乗せされます。 - (2) みなし相続財産の非課税枠拡大
遺族に支払われる「生命保険金」や「死亡退職金」の非課税限度額(それぞれ500万円 × 法定相続人の人数)も、養子縁組によって法定相続人数が増えれば、それに応じて非課税枠が広がります。 - (3) 適用税率の引き下げ効果
養子縁組によって法定相続人の数が増えれば、各相続人が受け継ぐ財産が少なくなります。相続税は累進課税制度を採用しているので、適用される税率も下がる結果となり、税額全体も少なくてすむことになります。
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相続税対策のために養子縁組することの注意点
他の相続人とトラブルになることがある
養子の加入は、実子をはじめとする他の相続人にとって、自分の取分(法定相続分や遺留分)が減ることを意味します。
他の親族へ事前の説明や合意形成がないまま進めると、相続発生時に強い不公平感が生まれ、深刻な親族間トラブルへ発展する可能性があります。
基礎控除の枠として有効な養子の数には制限がある
税負担を免れるためだけに無制限に養子を増やす行為を防ぐべく、税法上、下記の通り、法定相続人としてカウントできる養子の人数には明確な上限が設けられています(相続税法15条2項)。
- 被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合:一人
- 被相続人に実子がなく、養子の数が2人以上である場合:2人
相続税が2割加算されるケースもある
配偶者や一等親の血族(実子や両親)以外の人物が財産を取得した場合、最終的な税額に20%が上乗せされる「2割加算」のルールが存在します(相続税法18条1項)。
孫を養子にした場合も原則この2割加算の対象となるため、節税による減額分と加算分を比較検討することが重要です。なお、実子がすでに他界しており、孫が代襲相続人として権利を得ている場合は加算されません(相続税法18条2項)。
節税目的の養子縁組は否認されることがある
戸籍上の手続きが完了していても、当該養子を相続人の数に算入することが、「相続税の負担を不当に減少させる結果となる」と税務署長に判定された場合、税務計算上その養子を相続人の数にカウントしてもらえなくなると恐れがあります(相続税法63条)。
単なる形式上の手続きではなく、親子関係を結ぶ合理的理由や生活上の実態があるかが問われます。
相続税対策として養子縁組する方法
節税対策として養子縁組をする場合は、特別養子縁組ではなく普通養子縁組をするのが一般的です。
普通養子縁組をする手続は、養子縁組届に養親と養子、2名以上の証人が署名捺印をして役所に届出することによって効力を生じます。
なお、養親となるものは20歳以上であることを要します(民法792条)。
その他、養子となる者が未成年の場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は家庭裁判所の許可は不要となります(民法798条)。
さらには、養子となる者が15歳未満である場合には法定代理人の合意があることが必要となります(民法797条)。
相続についてのお悩みは弁護士にご相談ください
養子縁組を活用した節税策は、法的な要件確認や将来の遺産分割を見据えたトータル設計を怠ると、予期せぬ法的リスクを引き起こしかねません。
当事務所では、ご家庭ごとのご事情に応じた最適な資産承継プランをご提案いたします。
親族関係に配慮した生前対策や相続手続きに少しでもご不安がおありでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
