
監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士
被相続人(亡くなった方)が自分の財産を誰にどのように残したいかを明確にするためや家族間の紛争を避けるためなどに遺言書を残しているケースがあります。
今回のコラムでは、遺言書の検認手続が必要となるケースや期限、手続きの流れなどについてご説明いたします。
目次
遺言書の検認とは
遺言書の検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認し、偽造や変造を防止するための手続きです。
有効性を判断するものではない
検認の手続きは、遺言書の偽造・変造を防止する目的としており遺言書の有効無効を判断する手続きではありません。
そのため、検認手続を経た遺言書であったとしても、内容や形式が法的に無効であれば、その効力が否定されることがあります。
遺言書の有効性に争いがある場合には、遺言無効確認訴訟において、最終的に裁判所が判断することになります。
遺言書の検認が必要になるケース
遺言には、大きく分けて自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
その中で、遺言書の検認が必要なのは、被相続人が自筆証書遺言または秘密証書遺言を作成しており、かつ法務局の遺言書保管制度(2020年7月10日から開始された制度であり、自筆証書遺言を法務局に預け、紛失や改ざんを防ぐ制度)を利用していない場合です。
逆に、検認が不要なケースは、自筆証書遺言のうち遺言書情報証明書がある場合と、公正証書遺言による遺言書です。
公正証書遺言及び法務局において保管されている自筆証書遺言は、公証役場や法務局で保管されるため、遺言書の偽造・変造のリスクが極めて低いため、検認の必要はないとされています。
検認せずに遺言書を開封してしまったらどうなる?
民法では、「封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならない」(民法1004条)と定められており、「検認を経ないで遺言を執行し又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する」と定められています(民法1005条)。要するに、検認せず遺言書を開封した場合は5万円以下の過料となります。
ただし、検認前に開封したとしても、遺言が無効になるわけではありません。
遺言書の検認に期限はある?
遺言書の検認の期限について、明確な期限の定めはありませんが、「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。」(民法1004条1項)「遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。」(民法1004条2項)と定められていることから、「遅滞なく」検認手続をする必要があります。
遺言書の検認手続きの流れ
検認の手続は、通常は以下のように行われます。
手続きをする人(申立人)
遺言書の保管者又は遺言書を発見した相続人が検認手続を行います。
検認の申立てがあると、相続人に対し、裁判所から検認期日(検認を行う日)の通知をします。
申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは各相続人の判断に任されており、全員がそろわなくても検認手続は行われます。
必要書類
検認手続の申立てに必要な書類は、基本的に以下のとおりです。
- ①検認の申立書
- ②遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- ③相続人全員の戸籍謄本
- ④その他相続関係がわかる戸籍謄本
なお、申立人には、検認期日に、遺言書、申立人の印鑑、そのほか担当者から指示されたものを持参していただくことになります。
申立先
遺言書の検認手続の申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
遺言者の最後の住所地は、戸籍の附票または住民票の除票を取得することを調べることができます。
戸籍の附票には、戸籍が作られてから現在の住所履歴が記録されており、住民票の除票には、住民登録が抹消された時の住所が記載されています。
検認手続きにかかる費用
検認の申立てに必要な費用は遺言書1通につき収入印紙800円分が必要になります。
家庭裁判所との連絡用に郵便切手代も別途必要となりますが、裁判所により金額及び郵便切手の内訳が異なりますので、詳細は管轄の家庭裁判所にご確認下さい。
検認済証明書を取得する場合には、遺言書1通につき150円の収入印紙が必要です。
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遺言書の検認が終わった後の流れ
検認期日には、申立人から遺言書が提出され、出席した相続人等の立会のもと、裁判官が封がされた遺言書については開封の上遺言書を検認します。
検認が終わった後は、遺言の執行をするためには、遺言書に検認済証明書が付いていることが必要となるため、検認済証明書の申請をする必要があります。
その後、遺言書の内容に沿って相続手続を進めていきます。
具体的には、不動産の名義変更や預貯金の払い戻し手続等です。
遺言書に記載がない財産については、別途、相続人全員で遺産分割協議を行います。
なお、自筆遺言の有効性が争われる場合、話し合いによる解決が難しい場合には、遺言無効確認調停や訴訟などの手続きを進める必要があります。
遺言の有効性を争う理由としては、遺言作成時の遺言能力の欠如、遺言の偽造などが考えられます。
遺言書の検認に関するQ&A
遺言書の検認に行けない場合、何かペナルティはありますか?
検認の申立てがあると、相続人に対し、裁判所から検認期日(検認を行う日)の通知をします。
申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは各相続人の判断に任されており、全員がそろわなくても検認手続は行われます。
また、相続人が検認期日を欠席しても、何のペナルティもないですし、遺言検認手続きには影響はなく、遺言書の効力にも影響はありません。
検認できない遺言書はありますか?
検認が不要なケースは、自筆証書遺言のうち遺言書情報証明書がある場合と、公正証書遺言による遺言書です。
公正証書遺言及び法務局において保管されている自筆証書遺言は、公証役場や法務局で保管されるため、遺言書の偽造・変造のリスクが極めて低いため、検認の必要はないとされています。
遺言書の検認を弁護士に頼んだら、費用はどれくらいになりますか?
遺言書の検認にかかる弁護士費用については、各弁護士事務所で金額は、様々ですが、一般的には、10万円~20万円程度です。
検認せずに開けてしまった遺言書は無効になりますか?
上記3に記載のとおり、検認せず遺言書を開封した場合は5万円以下の過料となりますが、検認前に開封したとしても、遺言が無効になるわけではありません。
遺言書の検認手続きは専門家にお任せください
被相続人が自筆証書遺言または秘密証書遺言を作成しており、かつ法務局の遺言書保管制度を利用していない場合には、検認手続きをしないとその後の相続手続きを進められません。
弁護士に依頼をすれば、煩わしい必要書類の取得や書類作成など検認手続を全て任せられるだけではなく、その後の相続手続きまで依頼できます。
当法人には、相続問題に精通した弁護士が在籍しておりますので、お困りの際には是非ご相談ください。
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保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)