貯金・預金の相続に必要な手続き

相続問題

貯金・預金の相続に必要な手続き

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将

監修弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長 弁護士

相続が発生すると、相続財産を分配する手続(遺産分割)を行わなければなりません。

多くの方が銀行等に預金口座を持たれていると思いますが、相続が発生すると、その預金口座に含まれている預金を誰が相続するのか、そして、どのような手続を経て、預金を解約するのかなど、問題となってきます。

ここでは、預金口座についての手続方法などについて解説いたします。

亡くなった人の口座は凍結される

被相続人が口座を保有している金融機関が、被相続人が亡くなったことを把握すると、当該預金口座は凍結されることになります。

預金口座が凍結されることになると、預金口座から引き出す行為など、一切の行為を行うことができなくなります。
凍結された預金口座から預金を引き出すためには、凍結状態を解除しなければなりません。

凍結を解除するには

凍結された預金口座を解除するためには、各金融機関が必要とする凍結解除の手続を行わなければなりません。

凍結解除については、後述しますが、遺言書や遺産分割協議書などの書類が必要とされています。

預貯金を放置したらどうなる?

預金口座が凍結されたにもかかわらず、凍結解除の手続を行わず、長期間(最終取引日から5年から10年)にわたって放置してしまうと、休眠口座とされてしまいます。

休眠口座とされてしまうと、預金口座内に残されていた預金は、休眠預金等活用法に基づき、民間公益活動のために活用されてしまいます。 金融機関で必要な手続を行えば、預金を引き出すことが可能になりますが、手続が複雑になってしまいますので、休眠口座にならないようにしましょう。

預貯金を相続する場合の注意点

多くの場合、預貯金が相続財産に含まれておりますが、預貯金を相続する場合には、

  • 遺産分割手続が完了するまで口座からお金を引き出さない
  • 平日の日中しか手続ができない
  • 銀行ごとに書式が違う

ことについて注意してください。以下で詳しく述べます。

遺産分割手続きが完了するまで口座からお金を引き出さない

遺産分割手続が完了する前に、預金口座からお金を引き出すと、他の相続人から引き出されたお金の使途を追及され、トラブルが生じてしまう可能性がありますし、返金しなければならなくなる可能性もあります。

また、預金口座からお金を引き出すという行為が、「単純承認」該当してしまうと、後に相続放棄ができなくなる可能性もあります。
以上のことから、遺産分割手続が完了するまでは被相続人の預金口座からお金を引き出さないようにしましょう。

平日の日中しか手続きができない

預貯金に関する手続をするためには、金融機関等の窓口で行わなければなりません。そうすると、金融機関の窓口対応が可能な平日の日中で行う必要があります。

一般的な金融機関は、平日午前9時から午後3時までの対応ですが、ゆうちょ銀行については、平日午前9時から午後4時までの対応となります。
一部の金融機関は、営業時間を延長したり、土日も営業していることもあるので、事前に調べておく必要があります。

銀行ごとに書式が違う

被相続人が保有している預金口座の払戻し手続を行う場合、各金融機関で行わなければなりません。払戻しに必要な書類は、全金融機関で統一されているわけではなく、各金融機関で書式が異なるので、注意が必要です。

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銀行等の金融機関で行う相続手続の流れ

これまで被相続人の預貯金についてご説明しましたが、実際に金融機関で行う相続手続はどのような流れでしょうか。

遺言書がある場合、遺産分割協議書がある場合にどのような流れについてもご説明いたします。

1. 銀行等、口座のある金融機関に相続手続を申し出る

まず、被相続人が保有している金融機関に対して、相続手続を行いたいという申出を行います。直接窓口で伝えてもかまいませんし、電話でもかまいません。

ただ、二度手間にならないように、事前に必要な書類を聞いておいた方がいいでしょう。

2. 必要書類を準備する

金融機関に相続手続を行いたいという申出を行った際、相続手続に必要な書類を教えてもらえるので、不足がないように必要な書類を準備しましょう。以下では、遺言書がある場合やない場合などのケースに分けてご説明いたします。

遺言書がある場合

被相続人が作成した遺言書がある場合、以下のような書類が必要となります。

  • 遺言書
  • 上記の遺言書が公正証書以外の場合は、検認調書又は検認済証明書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の通帳・キャッシュカードなど
  • 金融機関が指定する「相続手続依頼書」などの届出
  • 受遺者又は遺言書の印鑑登録証明書

遺言書がない場合

被相続人の遺言書がない場合における必要な書類については、遺産分割協議書がある場合とない場合で、以下のとおり、異なってきます。

遺言書はないが、遺産分割協議書がある場合:

遺言書はないものの、遺産分割協議書がある場合には、以下のような書類が必要となります。

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の印鑑登録証明書(発行日より6か月以内)
  • 被相続人の通帳・キャッシュカード
  • 相続手続依頼書(相続人の署名・押印)

遺言書も遺産分割協議書もない場合:

遺言書もなく、遺産分割協議書もない場合には、以下のような書類があれば、相続手続をすることができます。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(死亡が確認できるもの)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の印鑑登録証明書(発行日より6か月以内)
  • 被相続人の通帳・キャッシュカード
  • 相続手続依頼書(相続人の署名・押印)

3. 払戻し等の手続

上述したように、必要な書類を用意して、金融機関に提出するようにしましょう。仮に、一回で完了させなければならないわけではないので、不足書類があった場合には、あとから追完するようにしましょう。ただ、できる限り、一回で完了できるように不足書類がないようにしましょう。

必要な書類を金融機関に提出して、概ね数週間後に払戻手続が完了することになります。

貯金・預金の相続に関するQ&A

銀行預金の相続に期限はありますか?

銀行預金の相続に関して、「〇年までに行わなければならない」というような定めは存在しておりません。しかし、できる限り早めに手続を行うことをお勧めします。

なぜなら、上述のとおり、最終取引日から5年から10年経過すると、休眠口座とされてしまいます。
休眠口座になってしまうと、預金を引き出す際の手続が複雑になってしまいます。

また、手続をしないうちに、他の相続人がなくなってしまう事態が発生すると、遺産分割協議が複雑になってしまいます。
以上より、預金の相続に関して、特に期限は設けられていませんが、できる限り早めに行うべきといえるでしょう。

生活保護を受けているのですが、貯金を相続したら保護は打ち切られてしまいますか?

生活保護を受給している方でも、預貯金を相続することは可能です。
もっとも、預貯金を相続することにより、相続した金額によっては、生活保護を受給するための要件を充足しなくなる可能性があります。

そこで、ご自身が被相続人の預貯金を相続する可能性がある場合には、予めケースワーカーなどに相談しておくといいでしょう。

相続人は自分だけです。相続手続きせず口座を使っていても良いですか?

相続人がお一人の場合、遺産分割協議をする必要はありません。しかし、相続手続を行うことなく、被相続人の預金口座から預金を引き出すことはお勧めしません。

なぜなら、金融機関からすると、被相続人の預金口座から預金を引き出すことができるのは、被相続人であって、相続人ではないからです。

更なる問題が発生する可能性もありますので、しっかりと手続をおこなった上で、被相続人の預金口座から預金を引き出すようにしましょう。

相続する貯金がどこの銀行にあるか分からない場合はどうしたらいいですか?

被相続人がどこの金融機関の預金を保有しているかわからない場合には、まず、被相続人の自宅に残っている預金通帳、キャッシュカード、金融機関の資料などを探すようにしてください。

その他、被相続人の自宅から近い金融機関に問い合わせてみてもいいでしょう。
また、弁護士に遺産調査を依頼すれば、弁護士が一括して金融機関に対して調査することができるので、ご自身の負担を軽減することができます。

貯金の相続手続きをするなら、弁護士への相談・依頼がおすすめです

これまで、被相続人の預金口座に関することをご説明しました。
被相続人の預金口座の相続手続を行うためには、様々な書類が必要で、時間を要する可能性があります。

弊所は、これまで相続に関する相談を多く取り扱ってきました。弊所の弁護士であれば、相続手続に必要な書類等や手続などをご説明することが可能です。

また、相続手続に関する手続を代理で行うことも可能で、その場合、弊所が代理で手続を行いますので、ご依頼者様が面倒な手続を行う必要はありません。 まずは、お気軽にお問い合わせください。

姫路法律事務所 副所長 弁護士 松下 将
監修:弁護士 松下 将弁護士法人ALG&Associates 姫路法律事務所 副所長
保有資格弁護士(兵庫県弁護士会所属・登録番号:57264)
兵庫県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。